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2024年2月

2024/02/29

クロス・ジャンルな横断をさわやかに聴かせる 〜 黒田卓也

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(2 min read)

 

黒田卓也 / Rising Son

https://open.spotify.com/album/7GDnn7XSLCIjZkBkw0SMZd?si=DoGFm_ceT9aNA5x5pn5U5A

 

日本人ジャズ・トランペッター、黒田卓也の名前は前からときたま目にしていました。台湾出身のネオ・ソウル歌手、9m88の作品にもゲスト参加したりしていましたし。自身のアルバム『Rising Son』(2014)はデビュー作なんでしょうか。こないだリイシューされたということでふたたび話題となっていたので知りました。

 

このアルバムは日本人ミュージシャンがはじめてブルー・ノートからリリースした作品という点でも注目度が高いようです。いはゆるヒップ・ホップ通過後の21世紀的新世代ジャズで、ネオ・ソウルとも距離が近いです。ホセ・ジェイムズのプロデュース。

 

ホセはアルバムのプロデュースだけでなく、一曲ではシンガーとして参加もしています。それもずいぶんと出来がいいですよね。アルバム全体でいえることですが、インプロ・ソロも自由に展開しつつ、それでもかなりていねいにアレンジされていることが目立つ内容です。

 

整っているというか、さっぱりした印象で、ソロ・パートも熱く盛り上がるというよりは、かなりクール。この二点、ていねいなアレンジメントとそのあいだを縫うようにして走るクールなソロというのは、コンテンポラリーな新世代ジャズに聴かれる特徴でしょう。

 

1980年代的なジャズ・フュージョンのおもむきも持ちながら、クロス・ジャンルな横断をさわやかに聴かせる音楽です。ナイト・ムードな落ち着いた生演奏クラブ・ジャズともいえます。

 

(written 2024.2.14)

2024/02/28

ブルーズ女子 〜 マリン・ブラッドリー

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(3 min read)

 

Muireann Bradley / I Kept These Old Blues

https://open.spotify.com/album/5MjoBf6hON9meluGYgLECs?si=1UGS052nSA-VHO8tmuqTig

 

若いくせにどうこうとか、ぼくはあんまり言わないんですけど。年齢差別だし、そもそも10代でデビューする音楽家はめずらしくもないでしょ。でもこのマリン・ブラッドリーのデビュー作『I Kept These Old Blues』(2023)のばあいは17歳の少女ということがことさら特別なことに思えてきます。

 

なんたってやっているのがブラインド・ブレイクそっくりな第二次大戦前のオールド・ブルーズ弾き語りなんですから。マリンというか日本のレコード・ショップなんかではミューリアンと表記されていますけど、アイリッシュで、YouTubeにある弾き語り動画を視聴すると自己紹介であきらかにマリンと発音していますからね。

 

ともあれ、父親が熱心なオールド・ブルーズ・ファンで、家でも車のなかでも聴きまくり、そのよさを熱心に語りまくるというひとであるらしく、そういう家庭環境で育ったせいで子のマリンも自然とオールド・ブルーズ・ファンになったんだとか。

 

しかも父は自分でギターを弾くので、それを聴いていたマリンは自分でもやってみたいと思うようになり、9歳のときに小さなギターを買ってもらって弾きはじめたみたいです。

 

育った家庭環境に影響されて古いジャズとかブルーズとかその他レトロな趣味を持つようになったという例は近年きわめて多いようにみえます。いままでも多数書いてきました。それがマリンのばあいはブラインド・ブレイクみたいなブルーズだっただけで。

 

アルバムはゲイリー・デイヴィス師の「キャンディマン」ではじまって、以降、ミシシッピ・ジョン・ハート、ブラインド・ブレイク、エリザベス・コットン、ステファン・グロスマン、ジョン・フェイヒィらのレパートリーがならんでいます。

 

フィンガー・ピッキングで弾くギターのほうの腕前はすでに一級品。自分でもそこに自信があるのかそれを聴かせるギター・インストルメンタルも二曲あります。じつにうまいですよ。チューニングも多彩なものを駆使。

 

そしてヴォーカル。17歳が「無垢」だとは必ずしも思わないんですがぼくは。でもこのアルバムで聴くマリンの声はかなり幼いです。そこがですね、こんなガキじゃあブルーズやったって説得力ないよと思うか、それともおもしろい効果を産む結果になっていると思うかで評価は分かれそうですよね。

 

(written 2024.2.12)

2024/02/27

しんどいときの音楽〔82)〜 カーメン・マクレエ

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Carmen McRae / The Great American Songbook

https://open.spotify.com/album/01LjoVd39soQ63i3NKQiZO?si=kJYw-RwNR_yakMAqFSpo6A

 

ジャズ歌手、カーメン・マクレエのライヴ・アルバム『The Great American Songbook』(1972)は、タイトルどおり有名スタンダードが中心。なかにはあまり知られていない良曲やオリジナルもありはしますが、あくまでスタンダードを歌っているのが大きな特徴です。

 

さらにいえば、リオン・ラッセル、バート・バカラック、アリーサ・フランクリン(のレパートリー)など通常ジャズ歌手はあまり歌わないもので、しかもライヴをやった71年時点ではまだ「グレイト・アメリカン・ソングブック」のなかに入っていなかったであろうものもとりあげています。

 

いまではそれらもすっかりスタンダードの仲間入りをしているので、ライヴを企画したときのカーメンや製作陣の慧眼ぶりがうかがえますね。そうしたロックやポップスもここでの解釈はもちろんジャズ的な演唱になっていて、保守的なジャズ・ファンでも安心して聴けます。

 

伴奏はギター+ピアノ・トリオ。このバンドが実にいい演奏ぶりを聴かせているのもポイント。もちろんあくまで歌の伴奏に徹していて、黒子のように決して目立たず、しかし必要な音はしっかり出してカーメンを支えるというひじょうに重要な要素になっています。

 

特にピアノのジミー・ロウルズ。このひとの達者ぶりにはため息が出るばかり。ピアノ一台だけの伴奏でカーメンが実にしっとりと歌う落ち着いたバラード系のものがアルバムには多いんですが、ロウルズの歌伴ぶりはまるでお手本。ヴォーカルへの押し引きがあまりにも絶妙で、呼吸感がほんとうにすばらしいです。

 

アルバムで個人的に特に大好きなのはむかしの二枚組レコード二枚目B面。「Close to You」や「Mr. Ugly」「It’s Like Reaching for the Moon」など好きな曲が多いし、カーメンの歌も粘っこくありながら実に美しいと思います。声のハリ、ツヤなどもふくめどこをとっても文句のつけようがありません。レコードやCDでは聴けた曲前の楽しいおしゃべりがサブスクでカットされているのは残念ですけれど。

 

(written 2024.1.30)

2024/02/26

サウダージあふるる 〜 ルイ・バラタ、パウロ・アンドレ曲集

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v.a. / A Música de Paulo André e Ruy Barata

https://open.spotify.com/album/21EcBp7epRIkGdlmPN1nJL?si=Vc5SQttSRzqrW2JiKLFefw

 

ブラジルはバラ州出身の作詞作曲家、ルイ・バラタの生誕100周年を記念して制作・リリースされたアルバムが『A Música de Paulo André e Ruy Barata』(2023)。ルイ・バラタとその子でシンガー・ソングライターのパウロ・アンドレ・バラタの曲を収録しています。

 

カヴァーしているのはほとんどがぼくの知らない歌手ですが、それでもマリア・リタ、ゼカ・パコジーニョ、レイラ・ピニェイロ、ジョイス・モレーノ、モニカ・サウマーゾといった有名どころもまじっています。それら以外は初めて聴く歌手たちですが、とってもいいですね。

 

いいっていうのはつまり曲がもとからいいということでしょう、このアルバムのばあいは。ブラジルの哀愁感を意味するサウダージに満ちたものが多く、なかには明るい曲もありますが、アルバムを一貫するトーンはあくまでサウダージ。

 

ほんとうにサウダージあふるるアルバムで、ときどきグッと強く胸をつかまれるものがあります。ルイ・バラタの名前もはじめて見たんですが、つまり今回はじめて聴いた曲なんですがぜんぶ、でも前からよく知っているぞという不思議なデジャブがありますよ。

 

(written 2024.1.26)

2024/02/25

なかなか上質のジャズ・アルバム 〜 松田聖子『Seiko Jazz 3』

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松田聖子 / Seiko Jazz 3

https://open.spotify.com/album/5xohvyPtGGW1wks4Z4qzbR?si=TTfciWBFQt6v3mHnoYIwlA

 

これもこないだのバレンタイン・デーにリリースされていた松田聖子の新作アルバム『Seiko Jazz 3』(2024)。日本の音楽は水曜日発売が多いですね。本作はカヴァーばかりをそれもジャズ・アレンジでやってみるというシリーズの三作目。

 

今回はネイザン・イーストをアルバム・プロデューサーにむかえ、サウンド・メイクをまかせています。それがとってもいい仕事をしていますよね。二作目までもそうでしたが、この曲をジャズでやるのかっていう新鮮な選曲も多いのがシリーズの特徴で、本作でもそうです。

 

1曲目からそうですが、2曲目の「赤いスイートピー」はもちろん聖子の持ち歌。これがジャズになるなんてねえ。ソプラノ・サックスはケニーGらしいですよ。聖子のヴォーカルは歌謡曲をやるときと特段の違いはなし。むかしからこうしたさわやかさやわらかさに持ち味がありましたから。

 

そしてちょっとビックリはマイケル・ジャクスンの3「Rock with You」。これもジャズになるとは驚きですが、かなりよくはまっています。しかもみごとな躍動感。これなら納得でしょう。

 

エリック・クラプトンとかシャーデーとかウィットニー・ヒューストンとかのレパートリーもあざやかなできばえで、ロス・アンジェルスと東京の二ヶ所で制作されたというアルバム全体的に、経験のなせるわざなのか落ち着きが聴きとれて、こじんまりしたおだやかなサウンドが魅力のなかなか上質のジャズ作品にしあがっていると思います。

 

(written 2024.2.23)

2024/02/22

親近感のあるさわやかさ 〜 中澤卓也「Love Letter」

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中澤卓也 / Love Letter

https://open.spotify.com/track/0xtAIDNEHuUD57mvppvqry?si=4f0a30c14d394735

 

こないだのバレンタイン・デーに出ました中澤卓也の新曲「Love Letter」(2024)。といっても2022年にリリースされていた「陽はまた昇る」の新タイプ(タイプB)カップリングなんですけど、これがいいんですよね。

 

「陽はまた昇る」とは違って卓也のギター弾き語り。淡々とさわやかだし、ぼくはだいぶ好みです。歌詞も曲も自作。以前も言いましたが自分や周囲のバンド・メンバーによる支えしかなくなって、かえって持ち味のクールなポップネスがきわだつようになっているなと思います。

 

アクースティック・ギターの腕前は前から証明されていたこと。昨年の全国ツアーでも弾き語りでやったコンサートがたくさんあったし、ぼくが出かけて行ったバンド・ツアーでも弾き語りコーナーがありました。

 

クラウン・レコード時代は演歌のフィールドでデビューし活躍していたんですが、独立後はむしろさわやかJ-POP路線を走っていて、「陽はまた昇る」 にしろ、昨年のアルバム『Hands Made』にしろ、そして今回の「Love Letter」にしろそうです。

 

親近感のあるフィーリングはファンも歓迎でしょうしね。年間多数のライヴをこなすようになってすっかりコンサート歌手としてのポジションを確立したような格好になっていますが、今後とも弾き語りを中心にこんな路線で楽しませていってほしいと思います。

 

(written 2024.2.21)

2024/02/21

不穏な民謡クルセイダーズ 〜『日本民謡珍道中』

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民謡クルセイダーズ / 日本民謡珍道中

https://open.spotify.com/album/7wGkxUU2BAHk6vPEypdUJ2?si=Z_GwlW8yQQS8Wum5dkpNfg

 

民謡クルセイダーズの二作目『日本民謡珍道中』(2023)。一作目からちょっと時間が経ちましたが、そのあいだライヴ・バンドとして世界で経験をみがきいっそう強靭になっての新作リリースという印象です。

 

出だしはかなりダークで不穏。「佐渡おけさ」を筆頭にダビーでサイケなアレンジが数曲続くのはやや意外でしたが、ジリジリと粘っこいグルーヴを醸成していっているような感じです。

 

女声ヴォーカルが歌う4「南部俵積み唄」あたりからはストレートなノリになって、従来的な直球勝負のラテン民謡になります。しかしそうなってからも不穏なムードは残っていてときおりおりまぜられ、どうもそれがこの新作を貫くトーンのようになっているのかも。

 

サルサと混合している7「貝殻節」からは安心して聴けますね。ラストの9「ソーラン節」はホーン・セクション+合いの手が明るく映える快活でグルーヴィな一曲で、どっちかというとぼくはこういうのがいいなあ。

 

(written 2024.1.29)

2024/02/20

しんどいときの音楽〔81)〜 サッチモ1920s

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Satchmo 1925-28

https://open.spotify.com/playlist/2PzFxPZDrkCu8Wws02CAXt?si=ceb4f41c2b0e415b

 

ジャズ・グレイトだ偉大だとかいうと身構えたり敬遠したりするひともなかなかいるのであれなんですけど、もっとカジュアルにどんどん入ってきてほしいと願うばかり。あんまりむずかしいことを言いすぎる評論家にも問題はあります。

 

サッチモことルイ・アームストロングのばあいは、しかも全盛期が1920年代というSP時代なので、録音がかなり古いってこともあって、現代のリスナーはとっつきにくいかもしれませんよね。実に楽しいので、ホントもっと気軽に聴いてみてほしいと思います。

 

個人的にはいまから約40年ほど前の大学生のころに二枚のレコードがありました。どっちもCBSソニー盤で『サッチモ1925-27』と『ルイ・アームストロングの肖像1928』。文字どおり1925年から28年のベスト名演を収録したもので、ぼくはこの二枚で楽しんでいました。まさにバイブルみたいなもんでした。

 

CD時代になって、オーケー・レーベル時代のコンプリート盤は出るものの、サイズがバカでかいですからきわめて聴きにくいことはたしか。ぼくみたいに20歳前後のころからセレクション・レコードで20年代のサッチモになじんでいた人間ならいいですけど、ちょっと覗いてみたいけどっていう入門に全集は不向きです。

 

その後もずっとそんな状態が続いて、『サッチモ1925-27』『ルイ・アームストロングの肖像1928』みたいなものはリイシューされる気配すらなく、レコード時代だけのものでありました。サブスクでもサッチモは録音順完全集があるばかり。

 

もちろんあるってことはいいんですけど、そのままじゃあちょっとね。どこから入っていけばいいかの手ほどきが必要だと思いました。そんなわけでむかし親しんでいた二枚のレコード『サッチモ1925-27』『ルイ・アームストロングの肖像1928』をくっつけて、それと中身が同じになるようにしたのがいちばん上のプレイリスト・リンクです。

 

ほんと、楽しいですよ。

 

(written 2024.1.27)

2024/02/19

しんどいときの音楽(80)〜 ドクター・ジョン(2)

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Dr. John / Gumbo

https://open.spotify.com/album/15jDv2HgLoilWgd4KWaLQn?si=jwKFLSRnT_OTk5Js0A4wgw

 

以前言いましたように個人的にいちばん好きなドクター・ジョンは『デューク・エレガント』なんですが、それでも最高傑作だとかは思っていないです。それは1972年の『ガンボ』でしょうねやっぱり。

 

ニュー・オーリンズ・クラシックの数々をカヴァーしたアルバムで、これでドクター・ジョンを知ったとか評価するようになったとかいうファンも多かったはず。ぼくもそうでした。大学生のころ。

 

そもそも名盤だという話が雑誌などに載っていて大きくとりあげられていましたから。ぜひ聴いてみたいと思ったものの松山のレコード・ショップのどこにもなくて。ないとなればいっそうほしくなるってもんで、ノドから手が出るような思いでした。

 

ようやく入手したのは1983年(大学四年生)でマイルズ・デイヴィスを聴きに大阪へ行ったときのこと。ついでに街をブラブラしたんですが、松山でお世話になっていたジャズ喫茶のおやじさんから「大阪へ行くなら阪根楽器というレコード屋へ行ってみろ」との話で、ぼくはそのとおりにしました。

 

行ってみたら、もう宝の山みたいなもんで、あ、これもある、これもだ!とビックリするやらよだれが出るやらで、見つけたなかにドクター・ジョンの『ガンボ』もありました。阪根楽器はたしか心斎橋にありましたっけ。

 

あのときは合計四万円くらいレコードを買ったように思います。それを自宅まで送ってもらいました。

 

(written 2024.1.21)

2024/02/18

8:30世代

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ちょっと前にTwitterで能地祐子さんが「8:30前夜世代」っていうことばを使っていたことがあって、ちょっとおもしろいいい表現だなと思いました。それでいくと1979年にジャズなどを熱心に聴きはじめたぼくのばあいウェザー・リポートの『8:30』(1979)はちょうどリアルタイムどまんなかですから、前夜ではなく「8:30世代」ですよ、まさに。

 

『8:30』こそはじめて買ったウェザー・リポートのアルバムで、そもそもジャズのレコード全体のなかでもかなり最初のほうに買ったものでした。いまも忘れない、日曜日の今治でのアルバイト帰りに寄った銀天街入り口のレコード・ショップ。

 

ウェザー・リポートというバンドがあることはすでに知っていて、なにか一枚レコード買ってみたいけどどれ買ったらいいかわからなくて、レコード・ショップ店頭でかなり迷ったのでした。そいで収録曲を見くらべて、二枚組だけど『8:30』ってのに「ブラック・マーケット」も「バードランド」も入っているし、これがいいんじゃないかと思ったのかも。

 

『8:30』はライヴ・アルバムで、あの当時のベスト盤的な意味合いで代表曲が多く収録されていたんですよね。思い出してひさしぶりにちょっと聴いてみようとSpotifyで見てみたら、このジャケットなんですよねえ↓

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これねえ、前も言いましたけど、聴く気が半分くらい失せちゃうんです。サブスクなんか適当でいいだろうというソニーの判断に違いありません。ひどいなあ。そもそもコロンビアって20世紀当初からミュージシャンや自社のカタログを大切にしない会社ですけどね。

 

なんだかんだ言ってもこれしかないんだからと(ジャケはガマンして)ちょっとなんどか聴いてみました。ライヴということでウェイン・ショーターもジョー・ザヴィヌルも比較的自由に空間性のあるアド・リブ・ソロをくりひろげているのが大きな特徴ですね。

 

ぼくとしてはこれが最初に聴いたウェザー・リポートだったから、どの曲もこういう自由な感じのもんなんだろうとまず思っていました。その後収録曲のオリジナル・ヴァージョンが入っているこれ以前のアルバムも買って聴いてみたらぜんぜん感じが違っていて、そっちが本当の?曲なのかと考えたり。

 

二枚組レコードの二枚目B面だけはスタジオ録音で、当時の最新曲が四つ入っています。それも大好きだったなあ。8:30世代ということばでなにが言いたいかっていうと、ぼくらはフュージョン世代どまんなかなんだってこと。

 

そのきっかけをつくってくれたのがウェザー・リポートの『8:30』でしたよ。ランドマークっていうかシンボルっていうか。

 

(written 2024.1.28)

2024/02/15

いかにも新世代らしい歌いかた 〜 おかゆウタ 3

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おかゆ / おかゆウタ カバーソングス3

https://open.spotify.com/album/0rRwz8bwmu64Z24n3jNDLN?si=s3rZMzUzRDC-UblHWRZSzg

 

昨年暮れにリリースされたおかゆの新作アルバム『おかゆウタ カバーソングス3』(2023)は、タイトルどおりカヴァー集三作目。たしか二作目のことは以前書いたことがありましたね。おかゆはちょっとお気に入りの歌手です。

 

いちおう演歌界の存在として活動を続けていますが、本作には演歌というより歌謡曲、ポップスのレパーリーのほうが多いです。おかゆ自身の資質からしてもそっちのほうが似合っているようにぼくも思います。本作で演歌といえるのは7「夜空」(五木ひろし)、10「女のブルース」(藤圭子)だけ。

 

知っていた曲もはじめて聴く曲も、演歌でもポップスでも、おかゆ自身の歌いかたはストレートで、あっさりさっぱりしたもの。そのあたりいかにも新世代っぽいですね。個人的にはそういうコブシもヴィブラートも使わない第七世代的な歌唱法も支持しています。

 

もちろんコッテリした濃厚演歌の世界も好きなんですけどね。2020年代の若手はそういう歌いかたではありません。ぼくはどっちも好きですよ。そのへんのことは上で書いた「夜空」「女のブルース」あたりをオリジナルと聴き比べれば世界観の違いがよくわかります。

 

もっとも「夜空」とか「化粧」(中島みゆき)とかはロック調のエレキ・ギターをフィーチャーしたアレンジですけども。10「女のブルース」だけはおんな流しとして活動を続けてきているおかゆらしいアクースティック・ギター弾き語り。しかもライヴ収録みたいです。

 

これがアルバムの締めくくりにちょうどいいなと思っていたら、続けてもう一曲なぜか「Amazing Grace」が流れてきます。キリスト教会ふうのオルガン伴奏に乗せて、おかゆ自身が書いたという日本語詞で歌われています。ソングライターとしても活動しているので、その本領発揮といったところでしょうか。

 

(written 2024.1.16)

2024/02/14

しんどいときの音楽〔79)〜 スティーリー・ダン

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Steely Dan / Alive in America

https://open.spotify.com/album/66rBZ848b4aO0hCJQF6GGc?si=JKozVvDaR6i13xKDlu7ZdQ

 

スティーリー・ダンの『Alive in America』(1995)CDは渋谷東急プラザ内にあった新星堂で見つけて買ったもの。東急プラザってもうないんでしたっけ?1970年代に間に合わなかったぼくにとってリアルタイム初のダンでした。ジャケットからしてよさそうと興味をいだいてレジに持って行ったんですよね。

 

そもそもダンが復活するとも思っていなかったですから、意外な感じもありました。Aliveの文字が見えるのでライヴ盤かなと思って、そこなんかちょっとビックリするような気持ちで。だってあのダン(ドナルド・フェイゲン)がライヴ・アルバムを出すとは考えられなかったです。

 

1990年代にはクラシック・ロックのリバイバル・ムードがあったから、そんな波にも乗ったんでしょうか。バンドの復活第一作がライヴになったことは、いま考えたらかなり意義深いことでした。フェイゲンが一回性の生演奏を信頼するようになったということですから。

 

70年代にはスタジオ密室作業でテープを複雑に切り貼りして作品を仕上げていたバンド、というかフェイゲンでしたけれど、約20年が経過してミュージシャンの力量がかなり向上したというのが、ツアーをやろう、そしてそれを録音してライヴ・アルバムを出そうと思えた大きな理由だったんでしょう。

 

『Alive in America』のツアー・メンバーも大半がジャズ/フュージョン系のミュージシャンでそこは70年代と同じ。しかし時代の新しいミュージシャンたちの演奏能力は高く、だからフェイゲンの信頼を得ることができて、ライヴ作品に結実したんでしょうね。

 

ダンのベストとして聴くこともできる選曲なのがまたいいですね。それをライヴ演奏で聴けるっていうのが格別ですよ。やっぱり音楽は生きものですからね、一回性の生演奏にはそれにしかないイキイキしたヴァイブが宿るんです。

 

(written 2024.1.24)

2024/02/13

しんどいときの音楽(78)〜 ハード・バップのブルーズ

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Blues in Hard Bop

https://open.spotify.com/playlist/6LfXg7WFpFqSoM8YCCIQz0?si=49d3e06c210849ab

 

ハード・バップにおけるあまりにもベタで典型的すぎるようなブルーズがたまらなく大好きなぼく。いま心身ともにコンディションが悪いっていう時期に聴いて癒されたりするんですから、ほんとうに好きなんですよね。

 

上のプレイリストに選んでおいたのはそんなベタすぎるような12小節の定型ジャズ・ブルーズばかり。なかでもソニー・クラーク「クール・ストラッティン」やカーティス・フラー「ファイヴ・スポット・アフター・ダーク」なんかは日本人の従来的なジャズ・ファンのあいだで大人気だったものでしょう。

 

いまでもそのあたりが人気あるのかどうかよく知りませんが、ぼくは古いジャズ・ファンなので、むかし好きになってそのまま現在まで来ているっていう。あっ、ブルーズ定型とはなにか?っていうのは説明の必要がないと思います。

 

こういうのはですねえ、いはゆる「通」とか「マニア」が好きだと公言するような種類のものではありません。ミーハーっていうか初心者が一聴いいねえと感じるような世界です。ミーハーっていうことにぼくは価値をおいている人間ですよ。言い換えればそれは一途な情熱ってことですから。

 

(written 2024.1.23)

2024/02/12

ときに熱く 〜 スー・ユーハン

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 Yuhan Su / Liberated Gesture

https://open.spotify.com/album/4OE4CbyVxvQyMtucs1jmsK?si=3VfwkbexRTKnkYXA2QXhzg

 

bunboniさんのブログで知りました。

https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-12-18

 

台湾出身のジャズ・ヴァイブラフォン奏者、スー・ユーハン。現在は米NYCで活動していますが、その最新作『Liberated Gesture』(2023)はぼくでも好みの硬質な音楽。

 

ふだんこの手の抽象度の高いジャズとはあまり縁がないというか好みじゃないんですが、これは気に入りましたね。ヴァイブにアルト・サックス+ピアノ・トリオの編成で、時折かなり熱い即興を聴かせるのがいいです。

 

ユーハンのヴァイブもいいし、なかでも気に入ったのがマット・ミッチェルのピアノ。全体的にかなりフリーな演奏ぶりなんですが、曲によってはセロニアス・モンクを想起させる弾きかたをしていて、そんなところも大好き。

 

インプロ・ソロは各人ともかなり抽象的なんですが、ユーハンのコンポジションは聴きやすいリリカルさも備え持っていて好み。アルバム全体でエリック・ドルフィーの『アウト・トゥ・ランチ』にかなり似ているかもなと思います。

 

(written 2024..1.8)

2024/02/11

ちょっと遠くから聴こえてくる 〜 ウィルソン・バチスタ

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Wilson Baptista / Eu Sou Assim

https://open.spotify.com/album/7tgFLbdVELwvQ0mjtYeqDd?si=WKS6RQNBQaKj0VkmFhSSHg

 

ウィルソン・バチスタ(ブラジル)のアルバム『Eu Sou Assim』(2023)のことはみんながいいぞと言っていますよね。ぼくも好きで去年からくりかえし聴いてきました。

 

バチスタはとっくに故人なので、ヴォーカルは過去音源から抜き出し、それに現代の腕利き演奏家たちによる伴奏をつけたといった具合。バチスタの時代にマルチ・トラック録音はないので、声だけ抜き出すのはたいへんだったでしょう。

 

ビートルズも最後の新曲「Now and Then」を制作するにあたりジョンの声を抜き出すために、AIによるデミックス技術を使いましたが、ひょっとしたら今回のバチスタのアルバムでも同様のAIデミックスを使ったかもしれませんよね。それでもって過去音源からヴォーカルだけ抽出したかも。

 

それと現代の演奏を混ぜるっていう、なんかちょっとふだんなら敬遠しちゃいそうな企画なんですが、聴いてみたらこれが成功しています。ちょっと遠くから聴こえてくるようなバチスタのヴォーカルにはえもいわれぬ孤独と哀愁がただよっていて、とってもいい味。

 

さらに現代の演奏家たちによる伴奏がジャジーに洗練されているというのも個人的には大好きなポイント。ほんとうにおしゃれなんですよね。特にディスク2で目立つように思います。

 

ヴォーカルもバチスタだけでなく多くのゲスト・シンガーを迎え、ソングライターだったバチスタの曲を歌わせているのもグッド。バチスタの声との対比も一つのポイントです。

 

(written 2024.1.3)

2024/02/08

しんどいときの音楽(77)〜 江玲

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江玲 / Hong Kong Presents Off-Beat Cha Cha

https://open.spotify.com/album/5vyOYncrhWKS7F1WUNjRSf?si=RbRVnoZITSGne47u0O3IJA

 

香港の歌手、江玲(コン・リン)の1960年作『Hong Kong Presents Off-Beat Cha Cha』がめちゃめちゃ楽しい。オフ・ビート・チャ・チャとはマンボやチャチャチャなどラテン・ビートがアジアに入ってきて変型したもの。そ〜れがもうチャーミングで言うことなし。

 

フィリピンや香港を中心として流行は1960年ごろだけですぐに終わってしまったもののようですが、それでも江玲の本作はいまでも輝きを失わない傑作と思います。USアメリカの曲を中心に英語と中国語で歌っていますが、やっぱりバンド演奏のコケティシュなかわいらしさがいいですね。

 

ホーンズがややコミカルにぐりぐりっとリフを演奏して、それがぱっとストップ・タイムしたあいまにすかさず小物打楽器がポコリンチョと鳴ったりして、キュートなことこの上ないです。演奏ぶりはかなり達者ですね。バンドの演奏こそがぼくの感じる本作の聴きどころ。

 

江玲のヴォーカルはクセのない素直でストレートなもので、こうした一種のノヴェルティものを品よくしあげていますが、個人的にはどこまでもモンドなエキゾ風味をばらまく演奏のおもしろさがこのアルバムで好きなところです。

 

(written 2024.1.20)

2024/02/07

しんどいときの音楽(76)〜『ザ・ポピュラー・デューク・エリントン』

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Duke Ellington / The Popular Duke Ellington

https://open.spotify.com/album/6URIqk1y6x60pUh5RZx03O?si=agvLZiESQwWlWNPiV18qjQ

 

『The Popular Duke Ellington』(1967)を貫くトーンは、ずばり力強さとたくましさ。演奏されているのは1920〜40年代に初演されたデューク・エリントンの過去の人気ナンバーばかりですが、1960年代という時代に即応して新たな解釈をほどこされ蘇っています。

 

公民権運動の時代でしたし、黒人の人種意識がたかまっていたころ。さらにはロックやソウルといった新しい音楽の台頭を受けて、過去のオリジナル曲をもう一度違うふうにやってみようとしたのでしょう。

 

さらにデューク自身の垂直系なピアノ演奏がたくさんフィーチャーされているのも大きな特徴です。もともとむかしから力強い演奏を聴かせるピアニストではありましたが、本作での演奏ぶりは格別きわだっています。

 

それは「ムード・インディゴ」「ソフィスティケイティッド・レイディ」みたいな曲でもいえることで、デュークだけでなくメンバーのソロや伴奏、さらにオーケストラ・サウンド全体に時代にあわせた強靭さが聴きとれると思います。

 

演奏終盤でジャズ・ロックに変貌する曲もあるし、66年録音という当時の流行をデュークとしても無視できなかった、ばかりか積極的にとりいれたということでしょうね。

 

(written 2024.1.19)

2024/02/06

サブスク世代レイヴェイの大成功

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(3 min read)

 

日本時間2月5日の午前行われた2024年第66回グラミー賞授賞式。毎年これといって興味もないんですけど、今年は違いました。それはなんといっても愛するレイヴェイが『Bewitched』(2023)で最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム賞をもらったこと。

 

主要六部門の一つということで、このレイヴェイの受賞はうれしかったです。前から推しまくっていますから。もう大成功したということでしょう。こんな日が来るなんてねえ。以前は予想もできなかったことですよ。

 

2021年にデビューEP『Typical of Me』を出したころはほとんどだれも知らないといった存在で、翌22年夏にファースト・アルバム『Everything I Know About Love』がリリースされてようやくちょっと...という感じにはなりましたがヒットにはほど遠く、まだ知る人ぞ知るといった感じでした。

 

そこから約二年でグラミーをもらうまでになったんですから、急上昇のカーブを描いたんですよね。いちばん重要なことはレイヴェイが完璧なるサブスク世代だということです。

 

フィジカルをほとんどリリースせず、サブスクだけでここまで来たっていうのはレイヴェイがおそらく史上初。時代はやはり大きく変わりました。いまや音楽産業の大半をサブスクでの収入が独占しているというにひとしい状態ですもん。

 

さらにはソーシャル・メディアを本人が大活用。従来的な主要メディアを通さず、みずから宣伝したり作品リリースを予告したり近況を報告したりなどなどファンに向けてダイレクトに声を伝えています。

 

サブスクとソーシャル・メディア、この二つの活用こそ次世代音楽ビジネスのありかただというのを前からぼくは強調していますけど、今回そうした姿の象徴ともいえるレイヴェイがグラミー賞をもらったことで、ハッキリ証明されたんじゃないですかね。

 

(written 2024.2.6)

2024/02/05

なんでもないジャズ・ピアノ・トリオだけど 〜 立石一海

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(3 min read)

 

Kazumi Tateishi Trio / meets Beautiful Standards

https://open.spotify.com/album/0eEfR2lSeW2SaYZ4BEFXUH?si=RpAMMZtLSdqbfPAfCCOb6g

 

立石一海(たていしかずみ)というジャズ・ピアニストに出会う機会がありました。オフィシャル・ホームページがあるのでくわしいことはそちらをぜひお読みいただきたいと思います。そこに書いてある以上の情報はぼくも知りません。

http://www.kazumitateishi.com/

 

聴いたのは『Kazumi Tateishi Trio meets Beautiful Standards」(2023)というアルバムで、タイトルどおり立石が数々のスタンダード、かなり有名なやつで、しかも多くがきれいなバラードをとりあげて、ひたすら美しく淡々と弾いているもの。

 

ジャズのピアノ・トリオで、有名スタンダードをそのままひねりなくきれいに演奏しているだけなんてものに興味を示すことができないよというかたもいらっしゃると思います。ぼくもちょっと前までそうでした。

 

そりゃあそうだよね、本作でやっているのは「酒とバラの日々」「いそしぎ」「いつか王子様が」「セント・ルイス・ブルーズ」「マイ・フーリッシュ・ハート」など、あまりにも知られすぎているド定番なものばかり。

 

それをそのままきれいに弾くだけじゃあ、もはやいまどきなにも表現できないよ、2023年なんだよ、という考えもあると思います。ジャズ進化幻想みたいなものにとらわれていれば。

 

ぼくは考えかたがこのごろちょっと変わりました。レトロ・ブームというのもあるし、おなじみの定番スタイルがいま再び見なおされるようになってきているじゃないかというのをひしひしと感じ、共感もしています。歴史は回るんです。

 

立石は数々のミュージシャンのプロデュースなどもこなしているということで、いはば熟練のプロ音楽製作者ピアニストが弾くとこうなるっていう一種のお手本、ケース・ワークみたいなものを本作で示しているんじゃないだろうかと思うんですよね。

 

それになによりいっさい波風立たないひたすらおだやかできれいなスタンダード演奏の世界っていうのは、聴いていてぼくは気持ちいい。いまは心身ともに弱っていますから、そうした音楽が沁みるっていうか癒しになるという個人的な事情もあるんです。

 

(written 2023.12.12)

2024/02/04

小出斉さんが亡くなった

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(2 min read)

 

ということで、この訃報に土曜日に接し悲しみにくれています。ぼくとしてもやはり大きなショックです。

 

小出さんのことはとにもかくにもブルーズ・ライターとして知りました。1995年初版の『ブルースCDガイド・ブック』。これで初めて小出斉という名前を知ったのです。

 

あるとき書店の音楽コーナーに並んだ初版を手にとって眺め、なんだかこれはよさそうと思って買いましたが、それがブルーズの世界にのめり込むきっかけとなったのです。

 

もうブルーズCDのことはなにもかも小出さんのこの本に教えてもらったと言っても過言ではないくらい。そこまでではなくとも『ブルースCDガイド・ブック』のお世話にならなかった日本のブルーズ・ファンを想像できにくいと思うくらいの存在だったと思います。ぼくはお世話になったなんてもんじゃなかったです。

 

1995年初版ですが、ちょうど90年代はブルーズCD発売ブームだったこともあって、それもあいまって絶好のタイミングで出版された本だったと思います。小出さんの『ブルースCDガイド・ブック』がなかったら、ぼくはここまでのブルーズ・リスナーになっていなかったかも。

 

とにかくあの本はボロボロになるまで使いたおしました。すみからすみまでなんども熟読し、格好のディスク・ガイドでもあったし、なにより読ませる文章が書けるライターでしたね。

 

本業がブルーズ・ギターリストであることはしばらく経ってから知り、ステージでの生演奏に接する機会もありました。ライターとしても『ミュージック・マガジン』でティナリウェンのことを書いたりもしていたことが記憶に残っています。

 

(written 2024.2.4)

2024/02/01

ブームというより時代 〜 ジェイレン・ンゴンダ

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(3 min read)

 

Jalen Ngonda / Come Around and Love Me

https://open.spotify.com/album/0E2PgtXRUHCslZ7gRselUq?si=gHIG3kKVS9i6d4DylR6o2g

 

萩原健太さんのブログで知りました。

https://kenta45rpm.com/2023/09/12/come-around-and-love-me-jalen-ngonda/

 

レトロ・ソウルの新星、ジェイレン・ンゴンダ。US生まれだけど現在はUKで活動しているらしいです。そのファースト・アルバム『Come Around and Love Me』(2023)が出ました。これがいい感じのニュー・ソウル・リスペクトぶりを発揮していて、ぼく好み。あくまで個人的な好みだってことです。

 

聴けばそのレトロぶりはだれにでもわかる鮮明さで、まるで1970年代ふう。マーヴィン・ゲイかカーティス・メイフィールドかっていう没頭ぶりで、いいですねえ。フィリー・ソウル味もあり。

 

こどものころから父親のレコード・コレクション(往年のジャズ、ソウルなど)を聴いて育ったがため、自然とそういう音楽が好きになり、自分でもやってみたいと思うようになったのだとか。けっこう多いですね、こういうケース。

 

レトロだとかルーツ・リスペクトだとかで1970年前後ふうな音楽を指向する若年世代が急増している背景には、そうした文化というか家庭環境みたいなものがおおきく影響しているのでしょう。ジェイレンの父親というとちょうどぼくくらいの世代になるでしょうし。

 

本作も黄金のソウル・サウンドを満載。リズム・セクションを中心とした伴奏陣に、+適所にストリングス、コーラス、サックス、ヴァイブラフォン、グロッケンなど往年のポップ・ソウルには欠かせないアイテムを巧みに配しています。

 

一聴、女性歌手なのか?と聴き間違うかもっていうくらいなジェレインのハイ・トーン・ヴォイスは、ときおりファルセットもまじえながら、ニュー・ソウル・ムーヴメントが盛り上がっていた70年代前半の高揚感を思い出させてくれます。

 

じじいキラーな音楽ではありますが、あんがいこういうのが近年の20代のあいだでは受けているみたいですよね。もう間違いなく明確なトレンド。ブームっていうより時代なんでしょう。

 

(written 2023.12.6)

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