2020/11/29

わさみんオンライン・トーク・イベント 11.28

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(写真は岩佐美咲オフィシャル・ブログより)

 

(5 min read)

 

きょう11月28日は、Zoomアプリを使ってのわさみん(岩佐美咲ちゃん)オンライン・トーク・イベントでした。ネット越しとはいえ、わさみんと1対1でおしゃべりできるわけですから、ファンとしてはそりゃあもう嬉し楽しいイベントなわけですよ。

 

Zoomを使ってのわさみんのオンライン・トーク・イベントはいままでに二回開催されていました。七月と九月。そのうち一回目は日程が合わずパス、二回目の九月イベントには申し込むもののみごと落選、悔し涙にくれました。

 

それで二回目の応募で今度こそ!と勢いこんだ11.28開催分にはなんとか当選することができたわけです。ぼくは二枠お願いしたので計九分。午前11時すぎからZoomでわさみんとのオンライン・トークを存分に楽しみましたよね。

 

九分があっというまに終わってしまいましたが。

 

2ショットのスクリーン・ショットも撮ったんですけど、それはネットに上げちゃダメっていう決まりになっているので。わさみんはブルーのニットを着ていました。午前中だったので、まだちょっとテンション低めだったかも(※オフィシャル・ブログが更新されましたので、その写真を上で使いました)。

 

ほんとうだったら本業の歌の話をもっとしようと思っていたんですけど、なにぶんわさみんとのトークは約一年ぶりですからねえ。舞い上がるやら緊張するやらで(Zoomで順番待ちするのもドキドキするし手に汗をかく)想定どおりには話せませんでした。

 

ちょうど11/25から銀座山野楽器の「元祖どこでも演歌まつり」というのがネット配信番組として開催されていて、わさみん分をきのうもきょうもみましたから、その話を中心に、歌のできぐあいがどうだったとか選曲とか、そんなことを話しようと思っていたのに、九分の枠内ではほとんどしゃべれず。

 

一回のログインで巻き戻せばなんどでも見られるっていうのは、わさみんたぶん知らなかったかもしれません。それを言うと、ちょっとビックリしていましたもん。

 

山野楽器「元祖どこでも演歌まつり」の話は、また機会をあらためて記事にすることがあるかと思います。

 

そのほかはウクレレの話が中心になりましたね。なんでウクレレかっていうと、ちょうど部屋のなかにふだん弾きのウクレレがあるので、それを抱えてZoomイベント開始の順番待ちしていたら、パッと画面が開いたときに案の定わさみんがそれに食いつきました。

 

わさみんはギターを弾きますが、ギターのチューニングとウクレレのチューニングはぜんぜん違うとか、弦も違うとか(ウクレレはナイロン弦)、ヘッド部分にクリップ・チューナーをつけているので、取り外してみせるとクリップ・チューナーの話題にもなりました。

 

予想どおりわさみんもふだんやはりクリップ・チューナーを愛用しているとのことです。そう、いまやいちばんカンタン便利なチューナーですもんね。でもぼくがギター弾きはじめた40年以上前にはクリップ・チューナーとかなくて、そもそもチューナーじゃなくAの音叉でギターの5弦を耳で聞いて合わせて、残りの弦は…、とか、そんな昔話になっちゃいました。通じたのかな、あの耳チューニングの話。

 

現在25歳のわさみんの世代だと、そんなギターのチューニングで苦労するっていう経験もあまりないかもしれませんね。ウクレレ、わさみんに「ちょっと弾いて聴かせてよ」って言われたんですけど、あくまで話のネタというか飾りとして抱えただけなので、遠慮しておきました。

 

そうそう、2021年わさみんカレンダーもウチに届いたのを見せたら、「あっ、買ってくれたんだ」と、その話にもなりましたね。「何枚目がいちばん好き?」とか、いや、ぜんぶいいけど、ぼくは特にこれかなとか、はっきり言ってそれもこれも他愛のない話題ですけど、愛するわさみんとオンラインでも九分間生でおしゃべりできて、大満足なぼくだったのでした。いやあ、楽しかった。

 

さぁ、オンライン・トークもいいけど、わさみんの本業は歌手なんです。いま現在、山野楽器「元祖どこでも演歌まつり」が配信されている真っ最中ですが、そのほかやはり歌を聴かせるイベント、配信ライヴ、ハイブリット・コンサートなどのたぐいをもっとどんどんやっていってほしいですね。

 

そんな歌の企画こそ、長良プロと徳間ジャパンには強く強くお願いしておきたいところです。その気になれば、配信ライヴなど、もっともっとできるのではないでしょうか。なんといってもわさみんは歌手なんですから。

 

(written 2020.11.28)

2020/11/28

明るく愉快なラウンジ・ジャズ 〜 ルパート・クレメンドール&ジョン・バディ・ウィリアムズ

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(6 min read)

 

Rupert Clemendore, John Buddy Williams / Le Jazz Primitif from Trinidad

https://open.spotify.com/album/248iaWKUvBK7AiR3U27Tu1?si=h5DbwjBrQzu5wCA840Wa1A

 

この、スミソニアン・フォークウェイズからリリースされているアルバム『Le Jazz Primitif from Trinidad』(2012)には二種類のセッションが収録されていて、たがいにとくに関係もないみたいです。だからたんなる時間あわせというか、どっちも一方だけでは尺が短すぎるからというだけのことなんでしょうね。

 

アルバム題に出ているトリニダード・トバゴとは、後半に収録されているジョン・バディ・ウィリアムズにかんしてのことみたいですけど、あるいは前半に入っているルパート・クレメンドール(この読みでOK?ルペール・クレモンドールだったりする?)もトリニダードのジャズ・ミュージシャンなのかもしれません。

 

ともあれ、前半六曲がルパート、後半五曲がジョン・バディと、それぞれの名義録音ですね。アルバムは全体的にとってもゆるく、これはたぶん一種のラウンジ・ジャズっていうか、BGMふうっていうか、イージー・リスニング・ジャズですよね。1961年の録音である模様。

 

ジャケットがこんな感じですから、ちょっとお化けでも出てきそうなおそろしげな暗い雰囲気で、これは完璧に失敗ですね。これだけ見て聴かずに敬遠するひとも多そうです。中身を聴けば、かなりとっつきやすく明るい感じの陽気なカリビアン・テイストのイージー・ジャズなんで、もうちょっとどうにかならなかったのかこのデザインは、スミソニアン・フォークウェイズさん。

 

くつろげるラウンジ・ジャズだという側面は、特に前半六曲のルパート名義の音楽に色濃く出ていて、だから楽器がヴァイブラフォンなのでその音色もあって、ということですね。ヴァイブラフォンとパーカッションがルパートの担当楽器みたいで、曲によってヴァイブは入ってなかったり。それ(+ピアノ)+コントラバス+パーカッション、でしょうか。あ、ギターが聴こえるものも一個だけあるなあ。

 

5曲目「ザ・フライ」にはドラマーとサックス奏者がいて、+ピアノ+ベースで、ワン・ホーン・カルテットでの演奏になっていますが、そういうのはこれだけ(ドラマーだけ1曲目にもいるけど)。アルバム前半を占めるルパートの音楽でぼくのお気に入りは、特に2曲目「ボンゴ・ムード」、3「ウィー・マンボ」、6「マンボ・バッソ」あたり。パーカッションのリズムがどれもいいんですよね、楽しくて、明るいカリビアン・ジャズで。ラウンジふうで雰囲気もいいし、聴きやすいです。

 

なお、4曲目のタイトルが「ワン・ベース・ヒット」ですけど、ディジー・ガレスピー作でモダン・ジャズ・カルテットもやった同名曲とは関係ないみたいですね。でも聴いた感じ、同じくヴァイブラフォンが入っていたり、同様にくつろげる室内楽ふうなラウンジ・ジャズということで、共通点がまったく見いだせないわけでもなさそう。ムードがちょっと似ているんじゃないですか、ルパートとMJQ。

 

キューバン・ジャズなテイストも感じられたアルバム前半のルパートの音楽に比し、後半のジョン・バディ・ウィリアムズの五曲は、わりと鮮明なトリニダード・カラーに染まっていて、これらはかなりはっきりしたカリプソ・ジャズですね。シリアスなというかシビアな音楽リスナーにはこの後半のジョン・バディの音楽のほうが歓迎されそうです。

 

ジョン・バディの音源は、リズム隊+複数人数(大編成というほどでもなさそう)のホーン・セクション+ヴォーカル・コーラスという編成によるもので、リズムもそうだけどぼく的にはホーン・アンサンブルの楽しさがグッと来る感じ。リズム・スタイル、アンサンブルのハーモニー、メロディの音階というか動きなど、すべてトリニダードのカリプソがベースになったジャズです。

 

アメリカ合衆国のモダン・ジャズがお好きなみなさん向けにてっとり早く解説すれば、かのソニー・ロリンズの「セント・トーマス」(『サクソフォン・コロッサス』)、あれにそっくりだということになります。ロリンズの両親は、トリニダードではないけれど西インド諸島にあるヴァージン諸島の出身で、ソニーも子ども時分からカリブ音楽には親しんでいたんだそう。

 

きょう話題にしているこのアルバム後半で聴けるジョン・バディ(ベーシスト)の音楽には、ジャズといえどアド・リブ・ソロのパートはあまりなくて、ほぼ全面的に譜面化されたアレンジを演奏しているのも大きな特色ですね。譜面はボスのジョン・バディが書いているのかどうかわかりませんが、その際に同地のカリプソ・カラーを全面的にとりいれようとしたんでしょう。アメリカ合衆国のジャズ・ミュージシャンがやるカリビアン・ジャズとは比較にならないすばらしさですね。ダンサブルだし。

 

スミソニアン・フォークウェイズがつけたアルバム題には “Primitif” とのことばがありますが、とんでもない、かなり洗練された進んだ音楽です。

 

(written 2020.9.29)

2020/11/27

ジャジーなサンバ・カンソーン 〜 マルシア

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(4 min read)

 

Márcia / Prá Machucar Seu Coração vol.1

https://open.spotify.com/album/3nosZmmmM7esOLIcDm6sgL?si=XbzMvGx6QVuQs0AXM4dRHw

 

bunboniさんに教わりました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-08-17

 

ブラジルの歌手、マルシア…、って実はネットで検索する際ちょっと困っちゃうんですよね。日本で活動する演歌歌手のマルシアがいるでしょう、猪俣公章の弟子だったそのマルシアも(日本系三世の)ブラジル出身で、アルファベット文字での綴りも同じ。「ブラジル マルシア」だけのキーワードでは演歌のマルシアばっかり出てきちゃいます。困っちゃうな〜。

 

ともかく、こっちはブラジルで活動したブラジル人歌手のマルシアのアルバム『Prá Machucar Seu Coração vol.1』(1995)。アルバム題はジョアン・ジルベルトも歌った有名曲「Prá Machucar Meu Coração」のもじりですね。大好きな一曲で、だからそれを見ただけでちょっと聴いてみたくなるっていう。

 

それにしても「Prá Machucar Meu Coração」っていう曲、作者はアリ・バローゾだったんですね。アントニオ・カルロス・ジョビンじゃなかったんだぁ、恥ずかしいです。大学生のころ『ゲッツ/ジルベルト』が愛聴盤だったぼくは、あのアルバムA面にあったこの「プラ・マシュカ・メウ・コラソン」が大のお気に入りで、あのアルバムはジョビンの曲を集中的にとりあげたものだから、と思ってよく確認していませんでした。

 

その「Prá Machucar Meu Coração」がきょう話題にするマルシアのこのアルバムでも4曲目に収録されています。これがとってもいい内容じゃないでしょうか。イントロ〜無伴奏での歌い出しあたりはそうでもないですが、パッとリズム伴奏が入ってきてからが極上のムード。でもって、これはサンバのリズムですよね。ベース、打楽器群がそれをわりとはっきり表現していると思います。

 

しかしカーニヴァル向けのダンサブルなサンバじゃなくて、すわって聴くための歌謡サンバ。だからbunboniさんのおっしゃるようにサンバ・カンソーン的な資質の歌手だったということになりますね。しかし一般にサンバ・カンソーンに分類されている多くの歌手たちみたいなねっとりと粘りつく湿度はマルシアにはなく、もっとアッサリ乾燥風味。だからそこを取るとボサ・ノーヴァ歌手っぽいとなる評価もなんだかわからないでもないっていう。

 

しかも伴奏のバンド演奏にはジャジーなテイストもあって、実際よくわかんない、けど上質、っていうアルバムですねえ。しっとりした(しばしばテンポ・ルバートな)バラード調のものも悪くないんですけど、個人的には軽いビートが効いてテンポのいい、つまりサンバっぽいアレンジで演奏・歌っているものが大の好み。

 

だから4曲目「Prá Machucar Meu Coração」とか、8曲目「Errei...erramos!」とか、11曲目「Não Me Diga Adeus」あたりがなんともいえず心地いいですね。とくに8曲目、これは最高の逸品ですよ。バンドの演奏するリズムやシンセ・リフ(たぶんピアノ奏者が弾いている、しばしばMIDI同期で)なんかも快感で、その上に乗るマルシアの歌うメロディの動きがなんともいえないサウダージ。も〜う、なんべん聴いてもタメイキが出ちゃいます。この雰囲気ですよ。

 

(written 2020.9.26)

2020/11/26

ジャズのアルテミス登場

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Artemis / Artemis

https://open.spotify.com/album/2NHS9RKnUaFqVU13hHgDAP?si=8ZYWX2jeTLCW2tSAG5jq9w

 

今年9月11日にブルー・ノートからアルバム・デビューしたばかりのスーパー・グループ、アルテミス。Artemisは古代ギリシア神話に登場する狩猟の女神の名。アメリカを拠点に活動するグループですからアーティミスと書くべきか、ちょっと迷いました。

 

女神名からグループ名もとっているように、アルテミスは全員女性の七人メンバーで構成されています。アルバム・デビューしたばかりといっても新人ではなく、全員がしっかりしたキャリアを積んできている評価の高い実力者ばかりで、だからスーパー・グループなんですね。

 

以下にグループ・メンバーを書いておきます。

・リニー・ロスネス(ピアノ)
・メリッサ・アルダナ(テナー・サックス)
・アナット・コーエン(クラリネット)
・イングリッド・ジェンセン(トランペット)
・ノリコ・ウエダ(ベース)
・アリスン・ミラー(ドラムス)
・セシル・マクローリン・サルヴァント(ヴォーカル)

 

女性ばかりというだけでなく、アメリカ合衆国、カナダ、フランス、チリ、イスラエル、日本、と多様に異なった文化背景を持つ多国籍集団であることもアルテミスの特徴。リーダーで音楽監督役リニー・ロスネスの呼びかけで、2017年にヨーロッパのフェスティヴァル・ツアーをまわるために集められたのがグループ結成のきっかけだったそう。

 

2018年8月のニュー・ポート・ジャズ・フェスティヴァルでこのアルテミスのステージに接したブルー・ノートの社長ドン・ウォズが、その充実した内容に感動したようで、それが今年のデビュー・アルバム・リリースにつながったのでしょうね。

 

アルバム『アルテミス』収録曲は、カヴァー四曲以外すべてメンバーが持ち寄った自作の数々。以下にその作者名を記しておきましょう。

1)ガッデス・オヴ・ザ・ハント(アリスン・ミラー)
2)フリーダ(メリッサ・アルダナ)
3)ザ・フール・オン・ザ・ヒル(レノン・マッカートニー、イングリッド・ジェンセン編曲)
4)ビッグ・トップ(リニー・ロスネス)
5)イフ・イッツ・マジック(スティーヴィ・ワンダー、リニー・ロスネス編曲)
6)ノクターノ(アナット・コーエン)
7)ステップ・フォワード(ノリコ・ウエダ)
8)クライ・バターカップ・クライ(ロッコ・アクセッタ、編曲だれ?)
9)ザ・サイドワインダー(リー・モーガン、リニー・ロスネス編曲)

 

アルバム収録曲は、どれもかなりしっかりと細かく(特にリズムが)アレンジされています。新世代ジャズというわけじゃない、従来的なメインストリーム・ジャズの範囲内にある音楽でしょうから、演奏フォーマットもテーマ合奏〜ソロまわし〜テーマ合奏という従来的なものを踏襲していますけれども、それでも細かな、特にリズム・アレンジをソロのあいだも綿密に行き渡らせていて、決して一発勝負的なものにしていないあたりには現代性を感じますね。

 

しかもその(テーマ演奏部ではもちろん)各人のソロ・パートでもていねいにアレンジされたリズムがかなり柔軟で、伸び縮みしたり変化したりはしませんけれど、しなやかなやわらかさを感じる演奏なんですね。従来的なハード・バップってそのへんリズムが硬いっていうか、一方向的だったと思うんですが、アルテミスのリズムにはのびやかな双方向性を感じます。

 

ソロ内容だって充実していますが、しかしソロで聴かせる音楽でもないような気がします。もっと総合的にっていうか、イントロ〜最初のテーマ合奏から演奏全体をトータルでみたときに魅力を感じられるグループじゃないでしょうか。

 

メンバーのオリジナル・チューンでは、もちろん幕開けの「ガッデス・オヴ・ザ・ハント」からみごとなんですけど、ぼくが特に感心するのはたとえば2曲目「フリーダ」の清新さ、みずみずしさとか、4「ビッグ・トップ」の迫真の迫力とパワーとかですかね。そのほかの曲もふくめ、ソロはコンポーザーが中心にとっているみたいです。

 

全四曲のカヴァー・ソングのほうが、実はもっと内容がいいように聴こえるんですが、なかでも圧巻はラストに入っているリー・モーガンの「ザ・サイドワインダー」。リーのオリジナルや種々のカヴァーと比較しても、このアルテミス・ヴァージョンは特筆すべきできばえですよ。

 

グッとテンポを落としヘヴィに重心をおいて、低域を強調したダークで不穏でロー・ダウンなフィーリングに(リズムもハーモニーも)アレンジされたアルテミス・ヴァージョンの「ザ・サイドワインダー」は、不気味で落ち着かないフィーリングを聴き手のなかに巻き起こします。このダウン&ブルーな感触こそ、いまの、2020年の、時代の音だなという感じがしますね。近年のコンテンポラリーR&Bなんかにも通じる空気感で、実にみごとな再解釈です。カァ〜ッコイイ!

 

(written 2020.10.15)

2020/11/25

やっぱりジャジーなマット・ローリングズの新作がとっても沁みる

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Matt Rollings / Matt Rollings Mosaic

https://open.spotify.com/album/49Fvb3Ntjzp3xxQLLpISPT?si=coRE_fGBSgq7TLe0EdDNcw

 

萩原健太さんのブログで知りました。
https://kenta45rpm.com/2020/08/19/matt-rollings-mosaic/

 

鍵盤奏者マット・ローリングズ。セッション・ミュージシャンとして、ジャンルを超え各方面でひっぱりだこの人気者ですね。1990年のジャズ・アルバム以来という30年ぶりの自己名義作品『マット・ローリングズ・モザイク』(2020)は、一曲ごとに参加歌手を替えながらさまざまな著名曲のカヴァーでモザイクした、いわばアメリカン・ソングブックみたいなアルバム。マットって自身名義のソロ作品というのはあまりつくらないひとなんでしょうか。

 

ともかく最新作『マット・ローリングズ・モザイク』がこりゃまた沁みる内容の音楽で、しかも大のぼく好み。その最大の理由は、やっぱりこれもオールド・ジャズふうに展開した感触の作品だからですね。健太さんはぐっとアメリカーナ寄りの作品とお書きですが、個人的にはジャズ風味を強く感じます。

 

それになんたって1曲目「テイク・ミー・トゥ・ザ・マルディ・グラ」(ポール・サイモン)が、完璧なアバネーラにアレンジされているのがかなりポイント高し。あれっ、こんな曲だっけ?と驚いて、ポールのオリジナルを聴きなおしてみたけど、ちっともカリビアン/キューバンじゃないんですもん。

 

だからマットが今回わざわざキューバン・アバネーラに仕立てあげたというわけで、ぼくは大のアバネーラ好きだから、もうこのアレンジとリズムだけで心地よさに満たされていきます。このオープニングはほんとうにうれしかったですね。ホーン・アンサンブルだってニュー・オーリンズ・ジャズふうで、そりゃマルディ・グラだからそうなります。カリブ文化とは切っても切れない縁のクリオール文化首都ですからね、ニュー・オーリンズって。

 

アルバム全体でもニュー・オーリンズふうの古典的なジャジーさを強く香らせるできばえで、同地のジャズには抜きがたくカリビアン・ミュージック要素が混じり込んでいることを、マットのピアノ・プレイのタッチに随所でしっかり感じます。

 

ピアノ(だけじゃなく多重録音でオルガンやシンセサイザー も弾いている様子)のタッチがどうこうといっても、このアルバム、基本、どの曲もゲスト参加の歌手をフィーチャーしていて、ピアノでもなんでも楽器ソロはまったくなし。伴奏のピアノ演奏だってこれみよがしにオブリガートを入れることもなく、ただひたすら淡々とマットは地味に弾いている堅実さ。

 

だからこそかえって職人気質が気高く思えるっていう内容に仕上がっているんですよね。そのほかのミュージシャンもベースとドラムスだけのトリオ編成っていうのが基本で、そこに曲によってはちょこっと弦楽器や管楽器などがゲスト参加して装飾しているだけ。

 

なかにはアイリッシュ・ソングを思わせるものもあったり(3「ステイ」、7「ウェン・ユー・ラヴド・ミー・スティル」、10「スランバー・マイ・ダーリン」)、それはたしかにアメリカーナですけれども、ほかにはたとえばライヴ・ラヴェットが歌う2曲目「アクセンチュエイト・ザ・ポジティヴ」はオールド・ジャズ・スタンダードですし、ブラインド・ボーイズ・オヴ・アラバーマ参加の4「ウェイド・イン・ザ・ウォーター」だって、ゴスペルというよりジャジーな香味のほうが強いアレンジになっています。

 

クライマックスであろう、ライル・ラヴェット、ランブリン・ジャック・エリオット、ウィリー・ネルスンの三人が参加して歌っている8曲目「ザット・オールド・ラッキー・サン」なんかも完璧オールド・スタイルのジャズ・ソングに仕上がっていて、ビートも2/4拍子、マットのピアノなんかストライド・スタイルだもんねえ。ニンマリ。

 

ウィリーの子ルーカス・ネルスンを迎えての9曲目「アイル・カム・ナキン」でも、こんなふうに地味&滋味深くルーカスも歌えるのかと驚くほどの落ち着いたできばえ。支えるマットのピアノ・サウンドがしっかりしているからではありますが、それにしてもねえ、アレンジ次第で化けるもんです。ジャジーですけど、でもたしかにちょっぴりアメリカーナっぽいかも。

 

アメリカーナっぽさよりもジャジーな味を個人的に強く感じるのは、このアルバム、ギターリストがまったくといっていいほど参加していない、ピアノ・トリオ中心のサウンドで構成されているからかもしれません。そのなかにカリビアンだとかアイリッシュだとか、もともとアメリカン・ミュージックのルーツになったような音楽要素も混ぜ込んで味わい深く聴かせるマット・ローリングズ。自身のプロデュース・ワークも光っています。

 

(written 2020.9.21)

2020/11/24

ブラジリアン・ジャズ・スキャット 〜 レニー・アンドラージ

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(4 min read)

 

Leny Andrade / Leny Andrade

https://open.spotify.com/album/3pnY6lMWo3nfqe2Ie5soBs?si=LtcASDL2STaV5d-sVeOD8w

 

bunboniさんに教えてもらいました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-08-15

 

ブラジルの歌手、レニー・アンドラージ(Leny Andrade)1984年のライヴ・アルバム『レニー・アレンドラージ』が真夏にピッタリということでbunboniさんが紹介なさっていて、ぼくも熱帯夜が続いていた八月なかばに聴いて、とてもいいなと感じましたが、文章化するのは涼しくなったいま九月も下旬です。以前も書いたけどメモがたまっていて順番があるからで、書き上がったもののストックもたまっていますから、ブログに上がるのは寒くなってからでしょう。

 

レニー・アンドラージはブラジリアン・ジャズ・シンガーといっていいと思いますが、この1984年ライヴは少人数のコンボ編成。たぶんこれ、ギター、ピアノ、ベース、ドラムスと、たったそれだけじゃないですかね。ライヴだけあって、かなりこなれたナチュラルな演奏ぶりで、スムースなスキャットを駆使するレニーのヴォーカルがいっそう映えます。

 

はじめて聴くからよくわかっていないんですけど、レニーってこういう、勢いというか雰囲気、ムード一発で歌う歌手なんですかね。細かくていねいにフレーズをつづっていくといったヴォーカル・スタイルとはちょっと違うかなと、そういう印象を持ちました。ライヴだからってこともあるでしょうか。

 

だからバンドの演奏とともにハマるときはいいけど、雑になりやすい資質の歌手かもしれませんね。この1984年ライヴではいいほうに出ている、成功しているなと思えます。それはバック・バンドの、こちらはかなりていねいにつむぐ繊細な演奏ぶりが支えているんでしょう。ライヴならではのスポンティニアスな雰囲気も満点でいい感じ。

 

洗練されたコード・ワークを駆使したジャジーで有機的な演奏ぶりで、特に中心になっているのはピアノとギターでしょうね。ソロは主にギターリストが弾いていますが、だれなんでしょう、かなり細かいフレーズを息長くうねうねとくりだす、うまいひとだと思います。ピアノはバンド・サウンドのキーになっているし、全体の牽引役かなと感じます。

 

1曲目でゆっくりとしたテンポのボサ・ノーヴァっぽいノリでレニーが歌いだし、まあまあかなと思っていたら、ワン・コーラス終えたところでバンドの演奏がパッと止まり、一瞬の空白のあとレニーが勢いよくスキャットをはじめるや否やバンドがアップ・テンポでなだれこんできます。そこからは疾走感満点で、レニーのスキャットが終わったらギター・ソロ。そのへんで、あぁ、これはいい、すばらしいジャズ・ヴォーカル・ライヴだと実感しますね。

 

どの曲でもレニーはジャジーなスキャットを駆使していて、爽快に乗りこなしているし、ブラジリアン・ジャズ・フュージョンみたいなバンドの演奏も聴きやすくてみごと。ブラジルの曲が並んでいるなかで気を引くのは9曲目の「ディス・マスカレード」。もちろんリオン・ラッセル(アメリカ合衆国)の書いたものです。前後と違和感なくおさまっていて、もとからそういう曲調のものだからなんですけど、みごとな選曲ですね。レニーはこれだけ英語で歌っています。

 

(written 2020.9.21)

2020/11/23

ナチュラルな音像とインティミットな質感 〜 メアリー・チェイピン・カーペンター

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(4 min read)

 

Mary Chapin Carpenter / The Dirt and the Stars

https://open.spotify.com/album/01Ik011bsnoj52aeyE6XXg?si=JT6ePQ1rSPO8QMOV2QYc6g

 

萩原健太さんに教えていただきました。
https://kenta45rpm.com/2020/08/14/the-dirt-and-the-stars-mary-chapin-carpenter/

 

アメリカ人歌手、メアリー・チェイピン・カーペンターの新作アルバム『ザ・ダート・アンド・ザ・スターズ』(2020)は、イングランドのバースにあるピーター・ゲイブリエルのリアル・ワールド・スタジオに(コロナ情勢下だけど)ミュージシャンを集めてのライヴな一発録りで制作されたものだそうです。

 

メアリー・チェイピンはやっぱりカントリー系のシンガー・ソングライターかなと思うんですけど、独特の辛口な深みとインティミットさをたたえた曲づくりと歌声はそのままに、新作ではグッとアメリカーナに寄ったような内容になっています。もとよりカントリーの枠内におさまる音楽家ではなく、1990年代からずっとフォーク、ルーツ・ロックや、あるいはブラック・ミュージック的な要素もあわせ持つ存在ではありました。

 

今回の新作ではプライヴェイトで内向的な色彩感を帯びた内容が多く、それは主に曲のテーマ設定や歌詞、サウンドのテクスチャーやカラーリングなどに感じるんですけど、できあがりの肌触りがとても親近感のある、やさしくやわらかい心地がするんですね。全員集合の一発ライヴ収録ということで、ナチュラルな音像やリアルな歌声が楽しめる作品に仕上がっているのもいいですよね。

 

4曲目の「オールド・D-35」はマーティンのギター D-35 のことだと思うんですけど、これはメアリー・チェイピンの恩師的存在で故人のジョン・ジェニングズ(ギターリスト、プロデューサー)に捧げられたものみたいですね。1987年のデビュー作『ホームタウン・ガール』をプロデュースしたのがジョンでした。そのほか個人的な生活事情(年齢の積み重ね、人生の変化など)を歌い込み、サウンドもそんなインティミットな質感で彩っているアルバムのように聴こえます。

 

ビートの効いたノリのいい曲だってあります。たとえば5曲目「アメリカン・ストゥージ」や8「シークレット・キーパーズ」。後者はストレートなロック・チューンに思えますけど、前者はマット・ローリングズのハモンド・オルガンが効いているせいもあってか、なかなかファンキーです。これら二曲ではバンドの一体感のある演奏もグッド。デューク・レヴィンのエレキ・ギターだって聴きものですね。

 

そんなファンキーな5曲目「アメリカン・ストゥージ」に続く6「ウェア・ザ・ビューティー・イズ」なんか、これは必ずしもビート・チューンじゃないですけど、メロディがやさしくやわらかくて、しかもとっても美しいです。こんなにきれいなメロディ、なかなか聴いたことないと思うくらいで、それをそっとやわらかくつづるメアリー・チェイピンのヴォーカルもすばらしいですね。

 

アルバム・ラストの11曲目「ビトゥウィーン・ザ・ダート・アンド・ザ・スターズ」。実はこの曲こそぼくがこのアルバムでいちばん気に入っているもので、これはローリング・ストーンズの「ワイルド・ホーシズ」のことを歌ったバラードなんですね。これも歌手の人生からくるプライヴェイトな内容の歌ですが、約八分間のうちヴォーカルは前半で終わり。後半は最後までずっとデューク・レヴィンのエレキ・ギター・ソロなんですが、それがほんとうにヤバイんです。超カッコいいし、物語をつむいでいるソロですよね。

 

(written 2020.9.20)

2020/11/22

『俗楽礼賛』を音で聞く

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(4 min read)

 

https://open.spotify.com/playlist/0ss9z4PwrQD44lCKVl9la3?si=SwCmaX8BTzKFWPnyqJzYdw

 

っていうSpotifyプレイリストがあるんですけど(上掲リンク)、これ、なんでフォロワーがぼくを入れて三人しかいないわけ〜??中村とうようファンは多いはずなのに、そんなみなさんはSpotifyやっていないんでしょうか。もったいない。

 

この「『俗楽礼賛』を音で聞く」プレイリストを作成されたのは、Twitterでおつきあいのあるcintaraさん。とうようさんの名著『俗楽礼讃』(1995)に登場する歌手たちを、実際の音源でたどれるようにしたものですね。ぜんぶがぜんぶSpotifyにあるわけじゃないんで、だから可能な範囲で、ということでしょう。

 

といいましてもぼく個人はあの『俗楽礼賛』がもう手許にないんで、だからあの本とこのSpotifyプレイリストを比較して突き合わせながら聴くっていうことはできないんですけど、『俗楽礼賛』の内容はちょっとだけなら憶えているので、あるいはあの本をご存知ないかたがただって、じゅうぶん楽しめるプレイリストだと思いますよ。

 

プレイリスト「『俗楽礼賛』を音で聞く」は、とうようファンのあいだで、そうでなくとも日本でもむかしから大人気のパティ・ペイジではじまりますが、その後もあの本を愛読していたファンならもちろん知っている名前ばかり並んでいます…、のはずなのですが、個人的には忘れていた歌手もいました。

 

『俗楽礼賛』を、というか多くの本を、愛媛に戻ってくる2011年に手放したのでしかたがないかなとは思いますが、たとえばLos Torovadores de Cuyo、Jaime Guardia、La Niña de los Peinesあたりはわかりませんでした。そういうのはこの三組だけなんですけど、『俗楽礼賛』に登場していたということなんですよねえ、う〜ん。

 

でもそれら以外はおなじみの歌手たちばかり並んでいて、あの本やとうようさんを愛読していたファンのみなさんなら思わずニンマリするはず。上でもちょろっと言いましたが、とうようさんの愛読者じゃなかった、中村とうようなんて知らないよというリスナー向けにも、幅広い音楽ジャンルを包摂したプレイリストとしてなかなか楽しくできあがっているなと感じます。とうようさんをご存知ないかたが『俗楽礼賛』名のプレイリストに興味を示すかどうかはともかく。

 

個人的にはトルコの二名(ヌレッティンとゼキ・ミュレン)あたりからはじまるパートがほんとうに好きで、アスマハーンを経てヌスラット、エルフィ・スカエシなんかで、聴きながら微笑んでしまいます。最終盤の日本の歌手パートもすごくいい。川田義雄とミルク・ブラザースってマジ楽しいな〜。そこから小畑実を経て美空ひばりで締めくくる流れも抜群の構成。

 

一人一人、一曲一曲、Spotify内を検索して拾っていって並べたのに違いありませんから、なかなか骨の折れた作業だったろうとねぎらいのことばをcintaraさんにかけたい気分です。歌手や曲の並びも考え抜かれているし、聴いて楽しい構成になっていますよね。必ずしも『俗楽礼賛』での登場順じゃないあたり、実際の音で聴くとどうなるか、よくご存知のひとが編んだものだということがわかります。

 

『俗楽礼賛』という本は、活版印刷、糸かがり、布製表紙など、あの時代でも消滅しつつあった製本技術を駆使してつくられ出版された渾身の一冊だったので、絶版となっているいまや、復活の可能性もありません。でもこうやって実際の音楽として聴けるようにしてくださるかたのおかげで思い出し、忘れずにいることができますね。

 

(written 2020.9.24)

2020/11/21

音楽のいいも悪いも気分次第(字余り)

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(6 min read)

 

音楽って、一回、二回聴いてピンとこなくても、寝かせておいて、しばらく経ってからもう一回聴いてみたらとてもいいと感じることがよくありますよね。そのときそのときのこっちの気分次第でどうにでも変わるっていうことだってあります。

 

気分次第という面と、それからリスナーである自分の耳の成長といった面もあると思いますね。いろんな音楽を聴いて知らなかった世界を知り、その結果、それまでイマイチだな〜と思っていた音楽が、実はこうこうこういうことだったんだと気がついて、おもしろさがわかるようになったりします。

 

ぼくのばあい、音楽も知らないことだらけですから、毎日どんどん聴いて新たな発見があったりして、それでカッコよくいえば知見を深めるっていうようなことがありますからね、だから聴いて最初つまんないなぁと思っても即断しないように心がけています。しばらく時間が経ってからもう一回聴くとこりゃいいねと感じるっていうことのくりかえしばかりで人生をやってきていますから。

 

どんどん次から次へと聴いているひとのばあいですと、そのへん余裕がないかもといいますか、長時間寝かせておいてしばらく経ってからもう一回聴くとかいうようなチャンスがあまりないのかもしれないですよね。ちょっとわかりませんが、そういったひともいるんじゃないかと推測します。ぼくはただのヒマ人アマチュア趣味音楽リスナーですから、そのへんはまったく自由にふるまえます。

 

時間が経過してからもう一回聴いてみると印象が変わるっていうのは、だから知見が深まって、という面と、そのときそのときの気分とか心理状態でそれぞれ聴こえかたが違ってくるから、だから感想も変わるという面と、両方が作用しているんだなというのがぼくの実感で、気分にムラのないリスナーなら後者の作用はないのかもしれませんが、ぼくはわりと気分屋ですからね。

 

たとえば以前書いたサンバ〜ボサ・ノーヴァ系のアルバム『Eduardo Gudin e Léla Simōes』。これ、ジャケットが最高なんで、それきっかけで聴いてみようと思って最初に接したときはピンとこなかったですからね。二回くらい聴いてフ〜ンと思っただけで、そのまま放ったらかしだったんです。でも、すぐに見捨ててはならないっていう経験則がありますので、ずっと「次聴くもの」というメモには残しておいたんです。あ、ぼくはCD買わないんで、売るとか処分するとかじゃなくて、メモから消すかどうかということだけなんです。メモからデリートすると、もう忘れちゃいますからね。

 

そんなわけで、一、二ヶ月くらい経った八月初頭の真夏の猛暑さなかに『Eduardo Gudin e Léla Simōes』をもう一回聴いてみたんです。そうしたら、季節のせいだったのか、真夏にピッタリ合う音楽だからなのかどうか、こ〜りゃすんばらしい!と感動しちゃいましたから、人間って、いや、ぼくって、わからないですよねえ。

 

この『Eduardo Gudin e Léla Simōes』のばあいは、いろんな音楽を聴いて知見が深まった結果わからなかったものがわかるようになったということではなく、たんに季節とか気分とか、そんな雰囲気だけの変化で違って聴こえるようになったということでしょう。楽しい、美しいと思える音楽がちょっとでも増えたほうが人生楽しいんで、だから「時間をおいて聴きなおす」、これ大切です。即断は禁物ですね。

 

もちろん逆のケースもあって、一聴惚れっていうか、一回パッと聴いてこりゃすごい!と感動してくりかえし聴いていても、ちょっと離れていて時間が経ってからもう一回聴いてみたら、アレッ?こんな音楽だっけ?イマイチだなぁ〜って感じることもあります。ぼくはそんなケースが少ない人間なんですけど、たまにあり。たとえば、うん、ちょっと告白するのは勇気がいりますが、去年夏ごろに熱狂したブダペストのアフロ・グルーヴ・ユニット、アバセ(Àbáse)はいまではちょっぴり物足りないかも。

 

マイルズ・デイヴィスのことだって、『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』『カインド・オヴ・ブルー』『アガルタ』などは一回聴いての一発感動で、いまでもそれが続いていますが、『マイルズ・デイヴィス・アンド・ミルト・ジャクスン』『マイルズ・アヘッド』『キリマンジャロの娘』『イン・ア・サイレント・ウェイ』などがこんなにもすばらしいアルバムだっていうことは、わりと最近になってようやくわかってきたことですからね。

 

特に『キリマンジャロの娘』、いまではこれがマイルズの音楽史上最高傑作だと言いたいほど大好きで、実際頻繁に聴きますが、そうなったのはここ四、五年ほどのことです。はじめて聴いたのが40年近く前ですから、ずいぶん時間がかかりました。1曲目の「フルロン・ブルン」とかラストの「マドモワゼル・メイブリー」なんか、いまでは身震いするほど聴けば感動しますが、数年前までなんだこれ?!っていう感じだったんですからねえ。

 

(written 2020.9.4)

2020/11/20

英語による自作のラテン・ジャズ・ヴォーカルがいい 〜 エバ・コルテス

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(5 min read)

 

Eva Cortés / Todas Las Voces

https://open.spotify.com/album/7IMCnusXQEtCVuELxrg36l?si=jz98oVUbThG6j3g6dyRQXQ

 

エバ・コルテス(Eva Cortés)はホンジュラス生まれスペイン育ちの歌手。現在はアメリカ合衆国のニュー・ヨークで活動しているみたいです。その2020年作『Todas Las Voces』は、ジャケットを(パソコンで)一瞥して魅力を感じ、それで聴いてみたら正解でした。

 

アルバムにはスペイン語題の曲と英語題の曲がまじって収録され、実際中身もスペイン語/英語で歌い分けていますが、たぶんこれ、英語曲はシンガー・ソングライターでもあるエバの自作ナンバーで、スペイン語曲はラテン名曲のカヴァーだということでしょう。

 

アルバム・プロデューサーはダグ・ビーヴァーズ。現在のNYラテン界における重要人物のひとりですね。参加ミュージシャンも豪華で、ダグのトロンボーンのほか、エリオ・ヴィジャフランカ(ピアノ)、ロマン・フィリウ(サックス)、クリスチャン・マクブライド(ベース)、ルケス・カーティス(ベース、1&4曲目)、ルイシート・キンテーロ(パーカッション)、エリック・ハーランド(ドラムス)といった面々。

 

それで、曲数からいっても内容からしても、エバ自作の英語曲のほうがこのアルバムでは聴きどころだという気がするんですね。それらはさながらラテン・ジャズ・ヴォーカル作品といった趣で、手練れのミュージシャンたちのこなれた演奏に乗って、(あたかもヴォーカリーズのような)アブストラクトな器楽的ジャジー・ラインをエバが歌いこなしています。

 

アルバムに四つあるラテン名曲はたしかに美しいメロディを持っているし、エバの歌唱もバンドの演奏もみごとなんですけど、ぼくにはエバ自作の英語曲でのジャジーな味わいのほうがピンときたというわけなんです。特にキモになっているのはクリスチャン・マクブライドのベースとエリオ・ヴィジャフランカのピアノでしょうか。とくにエリオのピアノがリフを演奏したりオブリガートで装飾したりするときに、えもいわれぬ快感があります。クリスチャンのベースはジャズ要素を代表。二本のホーン陣はラテンな味付けをくわえる伴奏役に徹していることが多いです。

 

全体的によく練られた演唱だなという印象で、アレンジはダグ・ビーヴァーズがやったのかなという気がしますが、演奏の中心役はエリオですね。あるいはエリオがアレンジしたんじゃないかと思えるフシがあるというか、そういう演奏ぶりです。5曲目「レターズ・アンド・ピクチャー・フレイムズ」で冒頭の二管ハーモニーが聴こえてきたら心地いいし、その後のリズム・セクションのキューバン・スタイルに乗ってエバがジャジーに歌うのもいい感じ。ここでもクリスチャンのベース・ソロがあり(アルバム中多し)。

 

6曲目「バード・オン・ア・ストリング」なんかでは、エバがまるで(ラテンふうにやるときの)サラ・ヴォーンみたいですし、ドラムスのエリック・ハーランドもリム・ショットを混ぜ込みながらの効いた演奏ですね。やはりエリオのピアノが目立っています。7「アウト・オヴ・ワーズ」ではアブストラクトなジャジー・ラインを歌っていますが、一方ちょっぴりロック調の9「レット・ミー・ビリーヴ」は聴きやすくメロディアス。二管ホーン・リフのメロディがいいですね。ほんとアレンジャーだれ?

 

個人的白眉はアルバム・ラスト10曲目の「ピース」。これもエバの自作でしょうけど、ジャジーな要素を排し、完璧なキューバン・ボレーロにアレンジしてあるんですね。伴奏楽器もドラムスとホーン陣は抜き、ピアノ+ベース+ボンゴだけっていう、ラテン・ミュージックそのまんまですよね。こんな8ビートのボレーロ・リズムが大好きなぼくには好物です。ここではクリスチャンがお得意のアルコ弾きで美しいソロを聴かせてくれているのも好感度高し。

 

(written 2020.9.19)

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