カテゴリー「プリンス」の59件の記事

2022/06/04

プリンスのブルーズ ver.2.0

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(4 min read)

 

Prince / Blues
https://open.spotify.com/playlist/4Jc3s1hCpHJjxLmV4n2ez0?si=ac923c3a90084aee

 

1. The Question of U (1990, 90)~ from “Graffiti Bridge”
2. 5 Women (1991, 99)~ from “Vault: Old Friends 4 Sale”
3. Peach (1992, 93) ~ from “The Hits / B-Sides”
4. The Ride (1995, 98) ~ from “Crystal Ball”
5. Purple House (1999, 2004)~ from “Power of Soul: A Tribute to Jimi Hendrix”

 

プリンスのやったブルーズについては、だいぶ前に一度書いたことがあります。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-1b43.html

 

この後知ったこともあるし、あのころまだあまりよくわかっていなかったこともふくめ、あるいはサブスクでプリンスの(ほぼ)全音源が解禁されたので手軽にちょこっと聴いてみることができるようになりましたから、またあらためてもう一度書いておきます。

 

プリンスがその録音人生で残したブルーズ楽曲は、現在リリースされている範囲でいうとぜんぶで五曲。それをいちばん上でリストにしておきました。曲名右のカッコ内は、推定録音年、収録アルバムのリリース年。このうち1「ザ・クエスチョン・オヴ・U」だけがかっちりした12小節定型ではありませんが、こりゃどう聴いてもブルーズでしょう。

 

2以下の四曲は12小節3コードのどブルーズといっていいもの。ジミ・ヘンドリクス「レッド・ハウス」の焼きなおしである5「パープル・ハウス」だけがサブスクにありません。収録アルバム『パワー・オヴ・ソウル』はジミヘン・トリビュートで、さまざまなミュージシャンが参加しているものでしたから、権利関係的にむずかしいのかも。

 

がそれもYouTubeにはあります。公式アップロードじゃないのでご紹介しにくいかもという気がしないでもありませんが、ひょっとしてそれでお聴きになった中から、これならCD買ってみたいぞというかたが出現する可能性も考慮すれば、リンクを貼る価値があるかと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=whbewejw-g8

 

この「パープル・ハウス」とかで聴けるように、プリンスもまたくっさ〜いファンキー&ブルージーなどブルーズをときどきやりました。こういった世界がもとから大好きでたまらないぼくなんかには、しかもプリンスがそれをやっているということで、歓喜の涙を流しそうになってしまいます。も〜快感。

 

特にギターにファズなどのエフェクターをぎんぎんに効かせてダーティに弾きまくるさまには、もうほんとヨダレたらしそうになってくるほどで、好きなんですよねえ、こういったエレキ・ギター・ブルーズが。プリンスだってこれでもかと下世話にあおりまくっていて最高。ぶいぶいうなるエレベはラリー・グレアム。

 

その意味では「ザ・ライド」も同じです。ミネアポリスはペイズリー・パークでのライヴ収録だったもので、ここでもナスティなブルーズを披露してくれています。ブルーズの快感とはこうした一種の音楽的劣情を刺激してくれるところにあるんじゃないかと思うんで、プリンスもそれをよく承知していたということでしょうね。

 

「ピーチ」なんかサブスクでは “explicit” マークがついているくらいで、歌詞はそのものずばり。8ビート・シャッフルの曲調も下品で最高ですが、「パープル・ハウス」「ザ・ライド」あたりと比較すれば、ギター・サウンドにダーティさがうすいかも。まずまずきれいにまとまっているんじゃないですか。

 

「ザ・クエスチョン・オヴ・U」と「5・ウィミン」はB. B. キング的っていうか、「ザ・スリル・イズ・ゴーン」系みたいに聴こえるモダン・ブルーズ。特に「5・ウィミン」のほう。この二曲はプリンスのブルーズにしてはさっぱりしていておとなしいと感じます。

 

いつもではなかったにせよ、こうしたブルーズ演奏を残してくれたっていうことを考えると、プリンスってちょっと古いタイプのブラック・ミュージシャンだったのかもしれませんよね。

 

(written 2022.1.27)

2022/04/03

プリンス『ラヴセクシー』のトラックが切れました、ようやく

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(3 min read)

 

Prince / Lovesexy
https://open.spotify.com/album/6asxKdvUleeZYNrjmK81nJ?si=QAxdAgfgQtykD8p-bgM0qg

 

(同 Apple Music のほう)
https://music.apple.com/jp/album/lovesexy/1608900425?l=en

 

きょうたったいま発見したんですが、プリンス1988年の『ラヴセクシー』、サブスクだと全九曲が公式に切れた状態になっていますね。いつから?いずれにせよ歓迎したいことです。CDのほうが同様のフォーマットでリイシューされたかどうか確認していませんけども。

 

YouTubeや各種サブスクで音源が(ほぼ)ぜんぶ公式に解禁されたり、種々の未発表音源が発掘発売されたり…といった一連の動きは、もちろんプリンス本人が亡くなった(2016)からこそ可能になったこと。『ラヴセク』のトラックがとうとう切れたのだってそうでしょう。

 

もちろんアルバムをワン・トラックで発売するというのは『ラヴセク』しかプリンスもやらなかったんで、いくら自分の音楽はアルバム全体をトータルで連続体としてしっかり聴いてほしいという意向だとはいえ、かなりの不評を買ったというのを自覚していたんでしょうね。聴きにくいもんねえ。ラジオ番組なんかはどうしていたんでしょうか。

 

がしかしそれも今後は心配する必要がなくなりました。音楽的にはたいへんな傑作に違いない『ラヴセク』の人気も評価も一般的にイマイチだった最大の要因が1トラック形式だったことにあったんだと感じてきましたけど、これからはしっかり聴かれて評価されていくことを望みたいですね。

 

2「アルファベット・ストリート」、4「アナ・ステシア」、7「ウェン・2・R・イン・ラヴ」、9「ポジティヴィティ」など、このアルバムにいくつかある超絶名曲も聴きやすくなったし、なにより曲単位で抜き出してコンピレイション的なプレイリストに追加できるようになったのはかなり大きなことです。

 

1980年代中期〜後半ごろのプリンスは生涯でも創造活動の絶頂期にあったんだというのは間違いありません。『パレード』(1986)『サイン・オ・ザ・タイムズ』(87)という二大傑作に続くものだった『ラヴセク』は、発売当時ぼくも胸をワクワクさせて宇田川町時代の渋谷タワーレコードで買って帰ったものの、聴き進むうち「なんやこれ…」と思ってしまいましたからねえ。

 

そこから34年。ようやく初めてマトモなかたちでこのアルバムが聴けるようになって、もうホントうれしいなんてもんじゃありません。音楽内容はもちろん変わりませんし、音質的向上もありませんが、ちゃんとトラックが切れているとなんだか以前よりちょっといいアルバムに聴こえたりするから不思議ですよ。

 

(written 2022.4.2)

2021/09/08

プリンスの初期カタログをリマスターしてほしい

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(5 min read)

 

プリンスのアルバムの音質が発売当初からちゃんとなったのはいつごろからだったか、ていねいに順にたどってみないといまちょっとわかりませんが、たぶん1990年代に入ったあたりからですかね、マトモな音質になりました。

 

だからそれ以前の1970〜80年代に発表されたアルバムは、どれも音質がショボかったんですよ。あの時代としてもちょっとありえないと思えるほどのペラペラさ加減で、あれはどうしてだったんだろうなあ、どれもほぼひとりでのスタジオ密室作業で多重録音をくりかえしたせい?素人にはわかりません。

 

それでも『1999』(1982)『パープル・レイン』(84)『サイン・オ・ザ・タイムズ』(87)の三つの傑作だけは、それぞれ2019、2017、2020年にリマスター盤が出ました。いずれも著しい音質向上で、やっと安心していい音で聴けるようになりました。

 

ってことはそれ以外のプリンスの初期カタログは、レコードだったのがCDになったり配信に乗ったりしたものの、オリジナルのままの変わらぬヘボ音質で、いままでずっと来ているんですよねえ。こりゃちょっと問題ですよ。音量もなんだか小さいしねえ。クリアじゃなくてこもっているというかモコモコで、楽器とヴォーカルの分離も鮮明じゃないし。そういうロー・ファイ志向の音楽家じゃなかったんですからね、プリンスは。

 

個人的にプリンスをリアルタイムで聴くようになったのは1984年の『パープル・レイン』からですが(それもロック好きの下の弟が買ってきたレコードで)、それ以前だと『1999』はリマスターされましたけど、その前の『ダーティ・マインド』(1980)も『コントロヴァーシー』(81)もペラいダメ音質。

 

『パープル・レイン』で大ブレイクしたんだからそれ以後のものはちゃんとすればよかったと思うのに、次作の『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』(1985)も、その次の『パレード』(86)も、いまだに音質的にはダメダメです。音楽は最高ですけども。特に『アラウンド〜』がヘボすぎる。

 

1987年の『サイン・オ・ザ・タイムズ』が、音質的なことをいえばいちばんのダメ・アルバムだった(最高な音楽性と比較しての話)んですけど、これは昨2020年ちゃんとリマスターされて立派なサウンドに立て直されましたので、いまでは大安心。Spotifyは圧縮音源なんですけど、それでも違いが鮮明にわかりますからね。

 

しかしその次の発売だった1988年の『ラヴセクシー』はやっぱりリマスターされずに音がもっこりモコモコのままじゃないですか(それでもこのころになるとちょっぴりマシになりつつあるような?)。その後数作を経て1994年の『カム』あたりで、ようやく当時からちゃんとしたといえる音質になったような気がします。

 

問題は、ここまで書いてきたどのアルバムも、音楽内容的には最高だということですよ。なかでも『1999』のへんから『パープル・レイン』を経て『ラヴセクシー』に至るまでの数年間は、この音楽家の創造力が生涯でピークにあった時期で、どんどん湧き出て止まらなかったんですからねえ。

 

それなのに、その時期に発売されたアルバムが、リマスターされた一部を除きいまだに音質的にはチープでショボいまんまっていうのがもう残念で悔しくてたまりません。それら傑作群を、ちゃんとした音で聴きた〜い!って思うのはごく自然な気持ちだと思います。

 

だから、プリンス・エステートと、この時期の音源の発売権を持つワーナーには、ぜひこの問題に取り組んでほしいなと強くお願いしたいです。どうか、デビューから1980年代いっぱいくらいまでのプリンスのアルバムをリマスターしてリリースしなおしてほしい。

 

リマスター盤発売の際にボーナス・ディスクがついたデラックス・エディションみたいになるかどうかは、どっちでもいいです。肝心なのはオリジナル・アルバムの音質で、それさえちゃんとしていただければそれだけでOK。音楽的には最高なんだから、それに見合ったしっかりした音に仕上げてほしいんです。

 

どうかお願いします>プリンス・エステート&ワーナー。

 

(written 2021.5.22)

2021/08/21

プリンス・エステートは『ラヴセクシー』のトラック切れたのを出しなおしてほしい

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(5 min read)

 

Prince / Lovesexy

https://open.spotify.com/album/49YqSdLkadJY5RADpR3LsZ?si=Xkl_pdKxTHmTo42dI-f9GA

 

1 Eye No
2 Alphabet St.
3 Glam Slam
4 Anna Stesia
5 Dance On
6 Lovesexy
7 When 2 R in Love
8 I Wish U Heaven
9 Positivity

 

プリンスの、大傑作だとぼくは思っている『ラヴセクシー』(1988)。そういう評価をされず一般的な人気も低いのは、殿下ナルシシズム全開のジャケット・デザインが気持ち悪いといったことだけでなく、やはり全九曲のトラックが切れていないせいに違いありません。

 

ジャケットが問題だっていうのはですね、聴くときに見なければいいんですから、音と違って、だから実はさほど問題じゃないんですよ。路面店でレジに持っていくのは恥ずかしかったかもですが、発売当時と違って現代はネット通販もあります。

 

でも音楽作品なんだから音のほうは無視できませんよねえ。みなさんご存知のとおり『ラヴセクシー』の全九曲、トラックが切れていなくて、ずるずるつながって一個なんですよねえ。これじゃあ聴きにくくってしょうがないってぇ〜の。

 

デューク・エリントンにしろマイルズ・デイヴィスにしろ、突出した音楽家はたまにこういったたぐいの主張をくりひろげることがありますけれどもね、『ラヴセクシー』でのプリンスも、1988年ということでCDメディア出現当初という時期、ぽんぽんトラックをスキップして飛ばし聴きするのが容易になったというのに抵抗したかったんでしょう。

 

自分の作品は、アルバムで一個の音楽作品なんである、トータルで通してじっくり味わってほしい、という希望からこのような1トラック仕様にしたのでしょうけど、その結果、そもそもハナから聴かれすらもしないという結果とあいなってしまいました。あたりまえだと思います。

 

なぜなら、ひとことで言ってアルバムの全貌がつかみにくい。曲がわかんないんですもん。だって45分間以上も「一曲」じゃあ聴きにくいことこの上ないんですもんねえ。最初からそのつもりで作曲・構成された作品ならOKでしょうけど、『ラヴセクシー』はそうじゃない、通常の数分単位で録音された九曲を並べただけ。

 

一曲一曲の姿がわからなかったら、結局そのアルバムが全体でどんなものかも把握しにくいっていう、立派な証拠となってしまっていますよね。みんなが『ラヴセクシー』にはイライラしてきていて、いまやサブスクで聴く時代になりましたけど、Spotifyでみてもやはり1トラックっていう、これはもはや無意味なんじゃないの。

 

Spotifyアプリだとどんどんスキップできるし、でも1トラックで曲がないから、そもそもチラ見してやめちゃうんじゃないですかね。その証拠に総再生回数がプリンスの作品にしてはかなり少ないです。

 

ぼく個人はですね、数年前、自分で『ラヴセクシー』のトラックを切りました。そうしないと聴きにくいですからね。CDからパソコンにインポートして、その(iTunes)ファイルをオーディオ・エディタ(Audacityを愛用)で書き出して、各トラックを手作業で切り分けたんですよ。

 

切り分けた九つのファイルをふたたびiTunesに読み込ませ、一個のプレイリストにして、無事みごとトラックの切れた『ラヴセクシー』の完成。このアルバム、トラックの切れ目は聴けばわかりやすいんで、切り分け作業はメンドくさいだけで、カンタンでした。それをCD-Rに焼いて、プリンス好きの友人にあげたりもしました。

 

もちろんプリンス・エステートやワーナー側が、九つそれぞれのトラック別々に所持していることはわかっています。各種公式ベスト盤などには「アルファベット・ストリート」など一曲単位で収録されていたりするんですからね。

 

だから、公式がその気になれば、トラックの切れた『ラヴセクシー』を発売することは容易であるはず、フィジカル&配信で。わりと大勢がそれを望んでいると思うのに、どうしてやらないんでしょうか。故人の1988年当時の意思だったから?それを尊重したい?いやいや、遺族や関係者はもっとファンの利便を考えてくれてもいいと思いますよ。当時も今も不評でしょう。

 

(written 2021.4.27)

2021/05/07

プリンスがギターの天才だったのはこれでよくわかる

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(4 min read)

 

1960年代から「ギターの神様」と賞賛されてきたエリック・クラプトンは、あるとき「”ギターの神様” と呼ばれるのはどんな気分?」と聞かれ、「その質問はプリンスにしてほしい」と答えたんだそう。

 

つまり、正真正銘、だれもが認める本当のギター神はプリンスだったということです。その腕前は自身のいろんなアルバムでも証明されているところですが、ここにそれをとても強く印象づける一個の動画があります。ロックの殿堂公式アカウントが2012年に公開したもの。
https://www.youtube.com/watch?v=6SFNW5F8K9Y

 

2004年「ロックの殿堂」式典で披露されたビートルズ(ジョージ・ハリスン)の「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」のパフォーマンス。ダニー・ハリスン、トム・ペティ、ジェフ・リン、スティーヴ・ウィンウッドらが共演しているもので、そこにプリンスも参加しています。

 

今2021年4月24日、この映像の新たな編集版が公開されて話題になっていますよね。ニュー・ディレクターズ・カットと名付けられたそれはプリンスに焦点を当てたもので、このパフォーマンスでの彼のギター・ソロがどれだけすばらしいものなのかを強調しています。
https://www.youtube.com/watch?v=CdfMh8QgJjA

 

2004年の「ロックの殿堂」式典のオリジナル放送を監督およびプロデュースしたジョエル・ギャレンによる再編集ヴァージョンで、式典パフォーマンスから17年が経過して、この「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」におけるギター・ソロの際のプリンスのクローズ・アップをいくつか追加していますよね。

 

現実問題、サウンドがリマスターされたわけじゃないし未発の新映像が発掘されたのでもなく、だからこのパフォーマンスにおけるプリンスのギター・ソロのみごとさが2012年版と21年版で違うとか、新しいほうがよりよくわかるようになったとか印象強くなったとか、そういったようなことはないかなあというのが個人的な感想です。

 

この「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」、歌はAメロをトム・ペティが、サビをジェフ・リンが歌っていますが、それが終わった約三分半すぎからギターでプリンスが登場。演奏終了まで数分間にわたり、これでもかとそのヴァーチュオーゾぶりを見せつけるかのように弾きまくっています。

 

後半部は完璧にプリンスの独壇場。しかしこれ、まったく呼吸するようにギターを弾きっぱなしにしないでほしいよと思うほど。スペースへの斬り込みかたもシャープで際立っているし、ぺらぺら自由自在に思うがまましゃべりまくる人間みたいに、思うがまま弾いています。こんだけなんでもないように自然に凄腕を披露できるギターリストが、いくら一流のプロでも、はたしてどれだけいたでしょうか。

 

あらゆるポピュラー・ギター・ミュージック界でぶっちぎりのトップだったことを図らずも証明してしまったプリンスのこのソロ。ギターでプリンスにできなかったことなどなにもなかったと痛感する超絶パフォーマンスですねえ。この「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」でのソロに匹敵する内容は、いかなプリンスでもほかにあまり例がないのでは?

 

まさにギターの神かなにかが降臨しプリンスに憑依したのだろうかと思わせるほどのソロ・パフォーマンス。ファンなら、いや、すべてのロック・ギター・ファンにとって、必聴の No.1であることは間違いありません。

 

(written 2021.5.1)

2021/04/20

プリンス基準とはなにか 〜 亡くなった音楽家の死後リリースについて

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(4 min read)

 

今年七月にプリンスの未発表アルバム『ウェルカム・2・アメリカ』が公式リリースされるという発表がありましたよね。そのことでネット上をぶらぶらしていたら、こんなブログ記事が見つかりました。

 

・「なぜプリンスの”新作” 『Welcome 2 America』を買うべきではないのか?」
https://mochizukisana.com/prince-welcome-2-america/

 

これを読み、プリンスにかぎったことじゃなく、亡くなった大物音楽家の音源発掘・発売にかんして、ぼくもちょっと思うところがありましたので、きょうは上掲記事を踏み台にして、ちょっと書いてみたいと思います。

 

プリンス本人が「これは出さない」と判断した(のかどうかの意思も実ははっきりしないのではありますが)ものは、つまり世に出していい自分の「プリンス基準」に達していないダメ音楽ということなんだから、それは死後リリースべきでないのだ、本人も望んでいなかったから、という発想は、実はちょっとあぶないものかもしれないなとぼくは考えています。

 

プリンスの『ウェルカム・2・アメリカ』にしてもそうなんですが、死後残された音源について、発売するべきかそうするべきでないのかの判断は、おそらくだれにもできないはずです。本人には発売する気はなかったとか、お蔵入りさせたものなんだから発掘せずそっとしておくべき、それが故人の遺志に沿うことだ、とも簡単には言えません。

 

いったい遺言などで死後の取り扱いが指定されていたばあいはともかくとして、そういう確たるものがないばあい、未発表音源をどうするのか、それは遺族や関係者の気持ちひとつにかかっているとも言えます。ぼくはただのいちファン、聴き手ですから、プリンスならプリンスの録音したものなら<すべて>を聴きたい、リリースしてほしいという気持ちがあります。

 

たとえば、ぼくの大好きだったマイルズ・デイヴィス。1991年9月に亡くなりましたが、死後実にたくさんの未発表音源が出ました。『ドゥー・バップ』や『ラバーバンド』のようなしっかりしたアルバムもあれば、しかし大半はお蔵入りしていたライヴ音源で、なかにはただたんなる別テイクとかスタジオ・リハーサルとかどうでもいい断片に過ぎないようなものまで、ほんとうにさまざまな音源がこの世に出たのです。

 

それらは生前マイルズが出さないぞとお蔵入りにしたものなんだからそっとしておくべきだった、出すべきではなかったしファンも買うべきではなかった、とはだれも言えないと思うんですね。シンプルに言ってしまえば、亡くなってしまうと残された音源はすべてこの世に出てしまうものだと覚悟しておかねばなりません。

 

死ぬ、とはそういうことなのです。

 

未完成品、リハーサル、リリース基準に達していないものなどなど、諸々すべてをふくめてこその音楽家の全貌なんじゃないか、ファンだったらもろともすべてを知りたいと、聴きたいと、聴いて判断したい、どんな音楽家だったのか、どんな人間だったのか、どういう音楽人生を送ったのかをつぶさに知りたいと、そう考えるんじゃないかというのがぼくの発想ですね。

 

それで、生前には知れなかったその音楽家の意外な素顔や隠されていた音楽的真実がわかり、生前リリースされていた公式アルバムにあらたな光が当たって、再評価されたり聴きかたが深くなったり、その音楽家についての理解が進むといったことだってあるんですね。

 

偉大な音楽家のばあいならなおさら、偉大であればあるほど、<発した音>は、すべて、聴くべきですし、リリーされるべきです。それが遺された人間のつとめでもあるとぼくだったら考えますね。

 

(written 2021.4.18)

2020/10/01

プリンス1987年大晦日のペイズリー・パーク・コンサート

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(12 min read)

 

Prince - Sign O The Times (Super Deluxe Edition) disc 9 DVD

https://www.youtube.com/watch?v=v_aAug_PpUM&t=4s

 

2020年9月25日にリリースされたプリンス『サイン・オ・ザ・タイムズ』スーパー・デラックス・エディションの九枚目DVDは、1987年12月31日、ミネソタはミネアポリスにあるプリンスの本拠地ペイズリー・パークで行なわれたベネフィット・コンサートをフル収録したものです。同年の『サイン・オ・ザ・タイムズ』発売記念ワールド・ツアーの最終日。

 

それがYouTubeで完全無料フル公開されていますので(上掲リンク)、フィジカル買わない人間でも問題なく楽しむことができるんですね。いやあ、ありがたいありがたい。と思うと同時に、いまやこれからはこういったリリース形態がスタンダードになってほしいという時代感覚もあります。音楽フィジカルの時代は終わっているんですから。

 

この1987年大晦日コンサート最大の話題は、やはりなんといってもジャズ・レジェンド、マイルズ ・デイヴィスとのステージでの唯一の共演がふくまれている、それが観られるということでしょう。たぶん熱望したのはマイルズ側で、前年にワーナーに移籍してレーベル・メイトになっていたマイルズは、音楽的にプリンスに接近していましたし、現実の交流も望んでいました。

 

ステージでも共演したかったはずで、日頃からマイルズ はプリンスのコンサートに参加する機会をうかがっていたのかもしれないですね。そこへもってきて1987年大晦日に規模の大きなベネフィット・コンサートをやるとなって、じゃあというんで、プリンス側もマイルズにちょっとやらないかと持ちかけたのではないでしょうか。

 

公式YouTube音源の説明文にはセット・リストが添えられていて、その左に書いてある時刻をクリックすればその曲へジャンプしますので、1:43:51 の「マイルズ・デイヴィス・ジャム」をご覧ください。曲はアンコールだった「イッツ・ゴナ・ビー・ア・ビューティフル・ナイト」です。

 

パープルの衣装(!)を着たマイルズは、しばらくたむろしてからおもむろにオープン・ホーンで吹きはじめます。バック・バンドに演奏させておいてその上で適当にパラパラっと遊ぶようにフレーズをつむぐというのはこの時期あたりから自分のバンドでもマイルズはやっていたことです。

 

マイルズが吹いているあいだはプリンスも完全に主役を譲っている感じ。ステージ上をぶらぶらしているだけで、バンドに指示する以外とくになにもしていないですね。四分ほどマイルズが吹き、ツー・ショットにおさまって、ステージ上手(向かって右)にマイルズが消えていく際に「Mr. Miles Davis!」との声で見送ります。

 

さてさて、この日のライヴ全体は1987年の『サイン・オ・ザ・タイムズ』ツアーの最終日でしたが、きのう書いた同年六月のユトレヒト・ライヴと基本的な流れは同じです。この二枚組新作からの曲を中心に、しかしこの大晦日は特別に長尺のイベントだったということで、そうじゃない古い曲もわりとたくさんやっています。

 

出だしはやはり「サイン・オ・ザ・タイムズ」(ボスのギターがブルージーで快感!)「プレイ・イン・ザ・サンシャイン」「リトル・レッド・コルヴェット」と続き、その後「エロティック・シティ」とか「ドゥー・ミー・ベイビー」とかやっているのはこの日の特別メニューでしょうね。

 

このあたりの中盤に「アドア」がありますが、この曲、ほんとうに美メロなバラードですよねえ。スタジオ・アルバム『サイン・オ・ザ・タイムズ』で聴いてうっとりしていましたが、こうやってライヴでやると美しさがいっそう際立っているような気がします。会場の観客も酔ったのでは。

 

「レッツ・プリテンド・ウィア・マリード」「デリリアス」「ジャック・U・オフ」なんかは古い曲で、しかしそれらも1987年のコンテンポラリーな様相に変貌しているのがおもしろいところ。おなじみの曲はメロディをきれいにぜんぶは歌わず、バンドの演奏に乗せて観客に要求しているのはペイズリー・パークでのライヴならでは。

 

またシーラ・Eが生演奏ドラムスを叩いていますけど、曲によってはそれと同時にコンピューター・プログラミングによるデジタル・ビートをも並行して鳴らしていて、その混合がえもいわれぬ肌触りで、実に快感なんですね。「サイン・オ・ザ・タイムズ」「ホット・シング」「イフ・アイ・ワズ・ユア・ガールフレンド」なんかリズムだけ聴いていて気持ちよさに身を委ねられます。

 

「レッツ・ゴー・クレイジー」「ウェン・ダヴズ・クライ」「パープル・レイン」という三曲連続の『パープル・レイン』セクションはユトレヒト・ライヴにもありました。大きな違いは、曲「パープル・レイン」の大半が「オールド・ラング・サイン」(スコットランド民謡、「蛍の光」として日本でも有名)になっていることです。

 

バンドはまず「パープル・レイン」のコード進行とリズムで演奏をはじめるんですけど、それに乗せてプリンスは延々と「オールド・ラング・サイン」をギターで弾いていますよね。後半でちょろっと歌ってもいます。

 

日本の「蛍の光」はお別れの歌ですけど、アメリカでの「オールド・ラング・サイン」は新年や誕生日などのお祝いで歌われることが多く、この日のこのコンサートは大晦日の深夜でしたから、日付を越えて新年になったという記念として「オールド・ラング・サイン」をやっているのでしょう。その前のほうの曲のときに、途中すでにプリンスは「ハッピー・ニュー・イヤー!」と叫んでいます。

 

いちおうその最後に「パープル・レイン」も歌い、それふうなギター・ソロも弾きます。そのまま「1999」へとなだれこみ。この日のこのヴァージョンはかなりカッコイイし、タイトにキマッていますよねえ。特に決め手はビートとホーン・リフかな。そして次の「U・ガット・ザ・ルック」でコンサート本編は終わりとなります。

 

アルバム『サイン・オ・ザ・タイムズ』での「U・ガット・ザ・ルック」はポップなロック・ソングでしたが、この日のコンサートでは、サイド・ギターリストのカッティングのおかげもあってすっかりファンク・チューンに変貌しているのも楽しいですね。シーナ・イーストン・パートはキャットが歌っています。キャットは同時にティンバレスも演奏。

 

「U・ガット・ザ・ルック」が終わると、ボスの「サンキュー、グッドナイト!」の声で全員がいったんはステージからはけますが、すぐにふたたびビートが入ってきてアンコールの「イッツ・ゴナ・ビー・ア・ビューティフル・ナイト」に突入。プリンスはギターを持っていません。

 

ドラムスの席をプリンスとシーラ・Eが交換し、シーラが前に出てのラップ・パート。ふたたび戻ってボスが前へ。そのままホーン・ソロやリフなどジャム・パートになって、上のほうで書いたマイルズ参加のセクションに移行していきます。

 

マイルズ・ジャムのパートが終了すると、「イッツ・ゴナ・ビューティフル・ナイト」のまま一瞬「ハウスクエイク」になったと思ったら、次いでアリーサ・フランクリンの「チェイン・オヴ・フールズ」(ドン・コヴェイ)になると同時にジェイムズ・ブラウンの「コールド・スウェット」のホーン・リフが出たり。このへんは要するにライヴならではのフリー・ジャムみたいな感じなんですよね。

 

エリック・リーズの長尺サックス・ソロがあり、演奏が止まったり再開したりしたあと、パッとキーをチェインジして別のジャム・パートがくっつきはじめている気がしますが、そこからは完璧JBマナーのライヴ・ファンク・メドレーみたいな雰囲気です。「マザー・ポップコーン」も出ますしね。ふたたびエリックのジャズ・ファンクなサックス・ソロ。

 

ボスが「サンキュー、グッドナイト」となんども言うけれど終わらず。そのたびに、あるいは「キック・サム・アス!」と叫ぶたびに、キーとリズムをどんどん変えてはジャムが続いています。デューク・エリントンの「A列車で行こう」がちらっと出て、やはりジャムは連続。

 

このあたり、音だけ聴いているとピンとこない部分もありますが、視覚的にかなりショウ・アップされていて、だから映像も見ながらだと楽しさが増しますね。プリンスはどんどんアド・リブで歌ったり(ウィルスン・ピケット「ダンス天国」の例のリフも出てくる)声で指示を出したり。ギターは持っていませんが、ちょろっと壇上のグランド・ピアノ(登場の機会はここだけのはず)を弾いたりはします。

 

バンドはずっとジャムを続けていて、一定の演奏が延々と連続していますが、結局この、マイルズが退場してからのジャム・パートは20分以上も続いて、現場にいれば楽しかったかもですが、ヴィデオで見ているとイマイチ冗長な感じもあります。「コンフュージョン!」(ぐちゃぐちゃ!)とのボスの掛け声でリズムとホーンズがなだれのように入り乱れ、コンサートは本当に終了します。

 

(written 2020.9.27)

 

2020/09/30

プリンスの1987年ユトレヒト・ライヴが楽しい

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(9 min read)

 

Prince - Sign O The Times (Super Deluxe Edition) disc 7&8

https://open.spotify.com/album/2Uv3zad993qvBkrOcIqdgq?si=4eLJL8IfQja_tpHkk175Ag
(ユトレヒト・ライヴは、これをパソコンで見たときの7&8枚目)

 

ーーー
プリンス(ヴォーカル、ギター、キーボード、ドラムス、パーカッション)
シーラ・E(ドラムス、ヴォーカル)
ミコ・ウィーヴァー(ギター、ヴォーカル)
Dr. フィンク(キーボード)
ボニ・ボイヤー(キーボード、ヴォーカル)
リーヴァイ・シーサー(ベース、ヴォーカル)
エリック・リーズ(サックス、フルート)
アトランタ・ブリス(トランペット)
キャット(ダンス、ヴォーカル、パーカッション)
ワリー・サルフォード(ダンス、ヴォーカル)
グレッグ・ブルックス(ダンス、ヴォーカル)
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2020年9月25日に発売されたばかりのプリンス『サイン・オ・ザ・タイムズ』スーパー・デラックス・エディション、(CDでいうところの)七、八枚目に、1987年6月20日のユトレヒト・ライヴが収録されています(ユトレヒトはオランダの都市)。とにかく聴けば楽しいですね。

 

といいますのも、そもそもプリンスの公式ライヴ音源というのはめずらしく、あまり発売したがらない音楽家だったんで(生涯通じてほとんどなし)、ましてや1987年のライヴがCDに公式収録されて発売されるのは、初のことです。ちょこっと感想を書いておきましょう。

 

Spotifyで聴いているからバンド・メンバーがわからないなあと思って、それでもあきらめずネットで検索したら、やはりユトレヒトでの前日6月19日の情報が出ましたので、上のほうに記しておきました。たぶん同じでしょう。ユトレヒトではほぼ変わらないセット・リストで三日間ほど連続でやったみたい。

 

さてさて、生前のプリンスがライヴ音源を出したがらなかったのは、バンドの一回性の生演奏だから不確定要素も多くやや雑になって完成度が下がってしまう、それを商品化するのを嫌ったということじゃなかったかと思います。

 

そもそも生涯にわたり(一部を除いて)バンドでスタジオ録音するということのほとんどなかったひとで、ホーンズやストリングスなどは専門奏者に任せますが、ほぼすべての楽器を自分ひとりで完璧にこなしてしまうプリンス。その緻密な多重録音スタジオ作業で音楽の完成度を上げ、発売。それと同じレベルをライヴではバンド・メンバーに要求したといいますから、どだいムリな話です。それが発売されるようになったのは本人が死んだからに違いなく、ちょっと複雑な気分にならないでもなく。

 

1987年6月20日ユトレヒト・ライヴ。曲目をみるとやはり当時の最新作『サイン・オ・ザ・タイムズ』発売記念ワールド・ツアーの一環だったことがよくわかります。ライヴ冒頭の4曲目までが、この最新アルバムA面1〜3曲目で占められていますよね。バンド・メンバーは生演奏でかなり健闘しているんじゃないですか。厳しいトレーニングの成果でしょうか。

 

そのほか古いというか以前の曲はほとんどなく(「リトル・レッド・コルヴェット」「レッツ・ゴー・クレイジー」「ウェン・ダヴズ・クライ」「パープル・レイン」「1999」だけ)、すべて『パレード』『サイン・オ・ザ・タイムズ』収録曲で構成されているのは、やはり販売促進キャンペーンとの意図があってのことでしょう。

 

ですから、生演奏でもバンドがファンク寄りの音楽を展開しているのは必然的です。ジャジーな色彩感も出ているのはライヴならではですね。楽器ソロやボスのヴォーカル・フェイクなんかはアド・リブ満載ですけど、それでも曲の構成としては(一部を除き)おおむね公式発売されたスタジオ・ヴァージョンにそのまま準じているのというのも印象深いといいいますか、ある意味しめつけがきつかったんだろうなあと想像したりもします。

 

また、「リトル・レッド・コルヴェット」「レッツ・ゴー・クレイジー」「ウェン・ダヴズ・クライ」「パープル・レイン」「1999」といった以前の曲も、いかにも1987年プリンスだけあるっていう、当時のコンテンポラリーなファンク・アレンジメントを施されているのだって聴きどころですね。このあたりもライヴ・ツアーにあたりバンドでリハーサルを積んだのでしょう。

 

「レッツ・ゴー・クレイジー」「ウェン・ダヴズ・クライ」「パープル・レイン」「1999」の四曲はメドレーになって間断なく連続的に演奏されるのもソウル/ファンクのライヴ・マナー。ちょっと間を置いて、続く「フォーエヴァー・イン・マイ・ライフ」で、プリンス(だろうと思う)はアクースティック・ギターに持ち替え。後半はジャムみたいになります。

 

やはりそのままボスの掛け声で間を置かずそのまま「キス」になだれこみ。『パレード』収録のオリジナルからしてファンク・ブルーズ・チューンでしたが、それにないホーン・リフ反復などもここでは入って、いっそうファンク色が濃くなっていますね。

 

その終盤で「サンキュー、バイバイ!」とプリンスが言うけれど終わらず、そのまま次の「ザ・クロス」へ突入。やはりゴスペル・バラード調ですが、後半ぐいぐいともりあがるさまは、いかにもライヴだけあるなといった趣きですね。演奏が終わって「オランダ大好き!グッバイ!」とボスが叫んで、メイン・アクトは終了します。

 

がしかし「アンコール!」と叫んでからはじまる「イッツ・ゴナ・ビー・ア・ビューティフル・ナイト」こそが、この日のライヴ・コンサートのクライマックスに違いありません。バンドもボスもハンパじゃない熱量で迫ります。シーラ・Eのラップ・ヴォーカルが入ったあと、ホーン・リフ。その後のドラムス・ソロはツイン・ベース・ドラムのキック・スタイルに特徴がありますから、おそらくプリンス本人じゃないでしょうか。

 

そのまま長尺のサックス・ソロへ。かなり聴ける内容だと思っていたらパッと止めて「サンキュー、グッドナイト」と言うけれど一瞬置いてすぐ演奏は再開。ドラムス・ソロのあと、プリンスが「コールド・スウェット・オン・ザ・ホーン!ライト・ナウ!」と叫ぶと、ホーン二管がジェイムズ・ブラウンの曲「コールド・スウェット」のリフを(ヴァリエイション付きで)演奏しはじめるのも楽しいですね。

 

そしてその後ホーン陣は、おそらくプリンス・アレンジのかなりうねうねとした(ビ・バップふうの)二管リフの種々のパターンを次々と披露。途中でデューク・エリントン「A列車で行こう」のテーマまで出てきてニンマリ。その後も二管でうねうねリフをどんどん演奏。バンド一体となって熱いジャズ・ファンク・ライヴを展開するのが、ほんとうに楽しいったら楽しいな。「サンキュー!」で今度こそほんとうに終わり。

 

全体的にジャズ・ファンク色を濃く帯びていることもあり(マッドハウスの曲も一つやっているし)、個人的にこんなに楽しいライヴ・コンサートを聴いたことは少ないと思うほど。終盤のもりあがりかたもすごいし、本人がどうしてこういうものを生前リリースしなかったのか不思議に思えてくるっていうか、やっぱりそこまで徹底した完璧主義者だったんでしょうね。

 

(written 2020.9.27)

 

2020/09/29

『カミーユ』とはなんだったのか 〜 80年代中期プリンスの豊穣

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(9 min read)

 

https://open.spotify.com/playlist/4CG8he8Rzm1mtpj3F35BPT?si=__GjNsqmTCeV3mNqjk4KWA

 

プリンスまぼろしのアルバム『カミーユ』(Camilleはカミールじゃなくてカミーユ)については、以前詳述したことがあります↓
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-51d7.html

 

もう一回整理しますと、

 

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(1)『パレード』(1986年3月発売)に続き、『ドリーム・ファクトリー』というLPを計画。86年7月ごろに二枚組として完成した模様。しかしこれをプリンス本人が破棄。

 

(2)直後あたりにレギュラー・バンドのザ・リヴォルーションを解散。

 

(3)1986年10月末ごろからスーザン・ロジャーズとともに『カミーユ』の制作にとりかかる。「ハウスクエイク」から開始し、約10日ほどでアルバム一枚分を完成させる。

 

(4)1986年11月5日には『カミーユ』のマスタリングも終了。多数のテスト盤もカットされた模様だが、発売前に中止を決める。

 

(5)『カミーユ』発売中止を決めたあと、それに収録予定だった曲と、その他の未発表曲(『ドリーム・ファクトリー』のものなど)などもふくめ、LP三枚組の『クリスタル・ボール』を計画。しかし三枚組という規模をワーナーに反対され、発売は断念せざるをえず。

 

(6)破棄したLP三枚組『クリスタル・ボール』からサイズ・ダウンして二枚組にして、1987年3月に『サイン・オ・ザ・タイムズ』がワーナーから公式発売される。

 

(7)『カミーユ』収録予定だった曲は、『ドリーム・ファクトリー』にも存在した。リアルタイムでの公式リリースでは数曲が『サイン・オ・ザ・タイムズ』に入り、またシングルB面になったり(「フィール・U・アップ」「ショカデリカ」ほか)などした。

 

(8)ワーナーが1994年に発売した『ザ・ブラック・アルバム』に、一曲、『カミーユ』セッションから入っている。

 

(8)1998年1月にNPGレーベルからリリースされたCD三枚組『クリスタル・ボール』にも『カミーユ』セッションから少し収録されている。この公式発売された『クリスタル・ボール』は、1986年に予定され未発のまま破棄された『クリスタル・ボール』とは別物。

 

(9)その後21世紀になってネット配信オンリーかなにかで、『カミーユ』からの一曲「リバース・オヴ・ザ・フレッシュ」がリリースされたらしいが、おそらくはもはや入手不可能なのではないだろうか?
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しかしこの、いまや入手不可能なのではないか?と書いた、『カミーユ』収録の「リバース・オヴ・ザ・フレッシュ」が、なんと、2020年9月25日に発売されたばかりの『サイン・オ・ザ・タイムズ』スーパー・デラックス・エディションに公式収録され発売されたのです。

 

っていうことは、『カミーユ』の曲はすべて公式発売された、ぜんぶ聴けるということなんですね。めでたいめでたい。それで、しかし『ザ・ブラック・アルバム』だけがどうしてだかSpotifyにないので(ほんとなんで?)そこは残念なんですけど、それ以外のカミーユ・ソングを一堂に並べプレイリストを作成しておきました。これが『カミーユ』です。一曲足りないけど。
https://open.spotify.com/playlist/4CG8he8Rzm1mtpj3F35BPT?si=JK_Sx51USBu7T0KQ3cm86w

 

さて、カミーユとはなにか?というのは上のほうでリンクした過去記事にくわしく書きましたのでお読みいただくとして、なにが通常のプリンスとカミーユを分つものなのか?というと、端的にいえばテープの回転速度を上げたかピッチ・シフターを用いて高い音程にした女声的なヴォーカルが(一部でも)歌っているように仕上げたものが、それすなわちカミーユです。

 

カミーユはプリンスの音楽的オルター・エゴ(別人格)であって、聴いてみますと、コンピューターでビート・メイクしたゴリゴリのファンク・チューンが多いなという印象です。1986〜88年ごろのプリンスがファンク・ミュージックに強く傾いていたのは間違いないところ。

 

もちろん『カミーユ』のなかには「U・ガット・ザ・ルック」「イフ・アイ・ワズ・ユア・ガールフレンド」みたいなポップなロック・ソングもありますが、全体的にはファンク寄りの色彩が濃いなという印象です。

 

『ドリーム・ファクトリー』を破棄したあと、いやその前からか、プリンスはファンク・チューンを産み出すための母胎としてカミーユという女声音楽自我を編み出したのだという見方もできますね。

 

リアルタイム発売のもので、順番としてぼくたちがいちばん最初にカミーユに触れたのは、『サイン・オ・ザ・タイムズ』A面3曲目の「ハウスクエイク」だったわけですが、これは完璧なるジェイムズ・ブラウン流のファンク・チューンですからね。当時のぼくは、これってモロJBじゃん、でもなんでピッチの高い女声に加工してあるの?プリンスが歌っているんじゃないの?ひょっとして女性ゲスト・ヴォーカル?とかって感じていました。

 

また『サイン・オ・ザ・タイムズ』二枚目A面は全四曲中1〜3曲目がすべてカミーユ・ソングですから、当時リアルタイムで発売されたオリジナル・アルバムではこのサイドにもっとも強く『カミーユ』の痕跡が表出していたわけですね。やはり女性ゲスト・ヴォーカルなのかも?という疑問を当時のぼくは持っていて、この面にはシーナ・イーストンが迎えられている曲がありますから、いっそう混乱していましたねえ。

 

アルバム『カミーユ』の完成→破棄にもっとも近接する時期の公式リリースだったのが『サイン・オ・ザ・タイムズ』ですからね。結局、上記四曲だけで、ほかはシングルB面とか『クリスタル・ボール』に入ったとはいえ、それらはあくまで蔵出し音源集でしたから。

 

ですので、いまだそのかたちでは未発の『カミーユ』ですけど、『サイン・オ・ザ・タイムズ』がそれにいちばん近い作品だった、多くの音源が流用された、ということが今2020年9月25日にリリースされたスーパー・デラックス・エディションでいっそうあらわになったように思えます。

 

特にベース・ドラム音に特徴的な一定パターンが共通する「リバース・オヴ・ザ・フレッシュ」とか「ハウスクエイク」とか「ショッカデリカ」とか「グッド・ラヴ」みたいな、コンピューターでビート・メイクした(当時のプリンスはFairlight CMIを愛用していた)ハードなストレート・ファンクにこそ、『カミーユ』の色彩感が出ているなと感じます。それ+ピッチの高い女声ヴォーカル。

 

どうして女声の音楽的オルター・エゴを思いつく必要があったのか?ピッチの高い声に加工したのはなぜか?通常のプリンス声ではダメだったのか?など、やはりいまでも解けない謎は残りますが、『カミーユ』はプリンス流デジタル・シンセ・ファンクの誕生を告げるものだったと、そう言えると思います。

 

ありとあらゆるタイプの音楽がどんどん産まれ出て止まらなかった1980年代中期の豊穣すぎるプリンス・ミュージックだったからこそ、あえて一個のスタイルとしてああいったファンク・チューンを分類・整理しておく必要があった、それゆえカミーユを誕生させたのだという、そんな気もします。

 

『サイン・オ・ザ・タイムズ』スーパー・デラックス・エディションのリリースで『カミーユ』が完成し、さらに未発のまま破棄された『ドリーム・ファクトリー』『クリスタル・ボール』(レコード三枚組のほう)もだいぶ姿を現すようになった2020年9月だからこそ、きょうみたいなこんな記事が書けました。

 

(written 2020.9.26)

 

2020/09/28

プリンス『サイン・オ・ザ・タイムズ』未発表曲を聴く

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(7 min read)

 

Prince / Sign O The Times (Super Deluxe Edition)

https://open.spotify.com/album/2Uv3zad993qvBkrOcIqdgq?si=ZyoFBAkGTES4DVRHZfRkvA

 

9月25日に発売になったばかりのプリンス『サイン・オ・ザ・タイムズ』スーパー・デラックス・エディション(2020)。CDでいう1&2枚目のオリジナル・アルバムの話はしました。CD3収録の既発曲シングル・エディット&別ヴァージョンとかにはさほどの興味はないので、今回のスーパー・デラックス・エディションではじめて世に出た4〜6枚目の未発表曲のことについて、ちょちょっとメモしておきましょう。

 

4〜6枚目までの三枚に相当するとなれば、けっこう大量にありますよね。CD4収録分でいえば、マイルズ・デイヴィス狂のぼくとしてはどうしても4曲目のマイルズとの共演「キャン・アイ・プレイ・ウィズ・U?」が気になるところ。これ、こうして公式発売されたものを聴いてみると、いままでブートで聴けたものとはやはり内容が違いますね。

 

曲のできばえとしては、う〜ん…、と言わざるをえない「キャン・アイ・プレイ・ウィズ・U?」。お蔵入りにしただけのことはあったと、ようやく納得できた次第です。マイルズがトランペットをオーヴァー・ダブして送り返してきたテープにさらに音を重ね、プリンスは苦心してマイルズ色を薄めようとしたのがうかがえます。

 

シタール(エレキ・シタールじゃなくて本物の生シタールに聴こえる)&タブラを使ってエキゾティックに仕上げたCD4-6「ストレインジ・リレイションシップ」なんかはおもしろいですが、曲そのものはオリジナル・アルバムで聴けました。様子がだいぶ違いますけど。

 

続くCD4-7の「ヴィジョンズ」。これは美しいですね。ヴォーカルなしのインストルメンタルなピアノ独奏で、うん、こりゃきれい。プリンスはときどきこういう演奏をピアノで、スタジオでもライヴででも、やりますよね。聴き惚れます。

 

さわやか涼やかでジャジーなホーン・リフ(といってもシンセ・ホーンだけど)が終始からむ「ザ・バラッド・オヴ・ドロシー・パーカー:ウィズ・ホーンズ」も印象的ですが、続く「ウィットネス・4・ザ・プロセキューション(ヴァージョン 1)」が、これはカッコいい。タイトなファンク・チューンです。

 

そう、『サイン・オ・ザ・タイムズ』期(前後ふくむ)のプリンスの音楽はファンク・ミュージックに傾いていたと思いますし、そうなっている曲のほうがポップなロック・チューンみたいなのより魅力的に響くなあというのが個人的感慨です。

 

だから、このファンク寄りっていう視点で、その後の収録曲をひろっていくと、CD4-11「アンド・ザット・セイズ・ワット?」(ジャジーでもある)、12「ラヴ・アンド・セックス」、16「ビッグ・トール・ウォール(ヴァージョン 1)」(ポップス寄り、タブラ&シタール入り)、18「イン・ア・ラージ・ルーム・ウィズ・ノー・ライト」。

 

CDでいう五枚目分に入り引き続きファンク・チューンをひろうと、CD5-2「イット・エイント・オーヴァー・ティル・ザ・ファット・レイディ・シングズ」(インストルメンタル)、3「エッグプラント」(ヘヴィ)、5「ブランチ」(ギター印象的)、6「ソウル・サイコデリサイド」(かっちょええ〜!JBみたい)。

 

CD5-9「フォーエヴァー・イン・マイ・ライフ」と10「クルーシャル(別歌詞)」はファンク・チューンじゃないし、既発のものだけど、むかしから大好き。とにかく好きです。聴きやすいポップ・バラードですね。「クルーシャル」のほうは『クリスタル・ボール』収録のものと歌詞が違っているだけでなく、ピアノが伴奏に入るというサウンドも異なります。

 

ファンク・チューンを引き続き。CD5-11「ザ・ココア・ボーイズ」(タイトでシャープ、これもJB流)、13「ウィットネス・4・ザ・プロセキューション(ヴァージョン 2)」はディスク4にもあったやつの別ヴァージョン。

 

ファンク・チューンをひろってCDでいう最終六枚目に入ります。CD6-1「イモーショナル・パンプ」(軽め)、2「リバース・オヴ・ザ・フレッシュ」(カミーユ声、カミーユについては別途詳述予定)、5「ワーリー」(ファンク・バラード)、6「アイ・ニード・ア・マン」(他者への提供曲だったらしい、軽め)。

 

CD6 -8「ジェラス・ガール」(曲題はジョン・レノンのもじり?、これも女性歌手が歌う予定だったっぽい)、9「ゼアズ・サムシング・アイ・ライク・アバウト・ビーイング・ユア・フール」はファンクじゃないけど、プリンスにめずらしいレゲエ・チューン。プリンスのこれだけ鮮明なレゲエって生涯これだけでは?

 

CD6-10「ビッグ・トール・ウォール(ヴァージョン 2)」は、ヴァージョン1がディスク4にあったもの。12「ワンダフル・デイ」(まさしくプリンスにしかできないプリンス流ファンク)、13でふたたび「ストレインジ・リレイションシップ」の別ミックス。このミックスは打楽器パートが特色ですが、この曲、好きだったんでしょうかねえ。

 

七枚目以下は1987年ユトレヒト・ライヴなので、稿をあらためます。

 

(written 2020.9.26)

 

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