カテゴリー「ジャズ」の602件の記事

2023/05/25

ジャンゴふうエレガンスの再現 〜 ジョショ・シュテファン

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Joscho Stephan / Four of a Kind
https://open.spotify.com/album/2kYhRDLD1vDZ4CvqedYViF?si=pi6Xpt2KR3-IQ5zNJnhoJQ

 

またまたお気に入りのジプシー・スウィング・ギターリストを見つけちゃいました。1979年生まれジョショ・シュテファンというドイツ人。2023年に二作出しているとSpotifyではなっているうち『Four of a Kind』が大のぼく好み。

 

ジョショは1999年に一作目をリリースしているみたいなので、もうじゅうぶんキャリアがあります。ジャンゴ・ラインハルトばりに弾くスタイルを持ち、『Four of a Kind』ではルーマニア生まれのヴァイオリニスト、コステル・ニテスクをむかえ、+自身のトリオ(2ギター+コントラバス)という弦楽四人編成。

 

アルバムの約半数は1930年代ごろによく演奏された有名スタンダードで、あのころジャンゴらもやりました。さらにフランス・ホット・クラブ五重奏団のオリジナル「Tears」もあり、あとはジョショのオリジナルですが、それもスタイルは一聴瞭然としています。

 

通好みに渋く淡々と弾く職人芸ギターリストではなく、華麗に技巧をみせつけるタイプの弾きまくり系なのがジョショ。今回パートナーに選んだコステルがちょうどステファン・グラッペリ役みたいな感じかな。むかしたくさん聴けたああいった音楽が最新録音であざやかに甦っているのが(ぼくには)うれしい。

 

スタンダードでも他作でも自作でもジョショらの音楽は変わらず一貫しています。二つの大戦間にあった欧州的な粋がここでは生きていて、あの時代のジャンゴ・ミュージックに魅せられ追求しているギターリストはいまだ多かれど、ジョショらの演奏にはまごうかたなきレトロ・ユーロピアン・エッセンスがただよっていて、ほかとは一線を画するところ。

 

たとえば6「Just A Gigolo」(がなにかのプレイリストで流れてきてそれで惚れた)なんかでも香っているさわやかなクールネスっていうか、有名スタンダードをただストレートにやっているだけのなかに独特の空気を持たせるのがうまい音楽家です。体臭みたいなのは消して、エレガンスだけ表現できているっていう、技巧披露系でなかなかいないですよこんなギターリスト。

 

(written 2023.5.17)

2023/05/22

新感覚なハード・バップ 〜 シモン・ムリエ新作

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Simon Moullier / Isla
https://open.spotify.com/album/1VCuhTEr3opMNYw6ygehr5?si=2CB4h_RjQG6Dwm_tKREb1A

 

2020年のデビュー作『Spirit Song』をぼくもとりあげて書いたジャズ・ヴァイブラフォンの新鋭シモン・ムリエ。三作目にあたる最新アルバム『Isla』(2023)は個人的にずいぶん心地よく聴けるストレート・ジャズで、しかもなんだかひんやりさわやかなフィールがあって、いいねえ。

 

マーサー・エリントンの「Moon Mist」とスタンダードの「You Go to My Head」以外はシモンの自作。それをピアノ・トリオを伴奏につけたカルテット編成でシンプルに演奏していく姿には、バップ由来のジャズ伝統を大切にしながら2020年代的な新風も吹きこんでいるさまがハッキリ表れています。

 

滑舌のいいあざやかなマレットさばきを聴かせるシモンのプレイがやっぱりすばらしいですが、同じくらい今作で注目したいのはキム・ジョングクのドラミング。キムはシモンの三作すべてで叩いていますが、人力演奏でありながらコンピューター打ち込みでつくったようなマシン・ビート感があります。

 

ヒップ・ホップ以後的な感性を生演奏ドラムスに反映させているというわけで、ここ15年以上そうしたドラマーが増えているというのも事実。カッチリしたキムのビート・メイクは、バンドが従来的な枠組みのなかでメインストリームなジャズを演奏していても、そこにコンテンポラリーな色彩感をつけくわえるものです。

 

でありながらきわめて自然で、カルテットによるジャズ演奏としてすっと聴きやすい明快さがあり、書きましたようにモダン・ジャズの伝統を大切にしていますから、シモンは、なのでコンテンポラリーなセンスで演奏しながらも目新しさがそんなにきわだたず、いかにも更新してますみたいなてらいになっていないのが好感を呼ぶところ。

 

個人的にことさら気持ちいいなと感じたのは4「Enchantment」と7「Phoenix Eye」、特に後者です。シモンのオリジナルですが、みんながよく知っているスタンダード・ナンバーのフィールがあって、要するにハード・バップ・ナンバー。なのにドラマーの叩きかたは新感覚で、しかもバンドの演奏がサクサク心地よいのです。

 

(written 2023.5.19)

2023/05/15

ダイナミックな生命力 〜 アルテミス二作目

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(3 min read)

 

Artemis / In Real Time
https://open.spotify.com/album/2zkgkyuC0eyxS2d73xTc2o?si=z03C5bxTSjGmJ-wYi0pZUQ

 

ギリシア神話の女神からバンド名をとった全員女性のジャズ・バンド、アルテミス。2020年にデビュー・アルバムをリリースし、ライヴではその前から活発に活動し現在までやってきていますよね。このたび二作目『In Real Time』(2023)が発表されました。

 

今回も音楽はやはり充実しています。メンバーが一作目のころと一部入れ替わり、メリッサ・オルダナとアナット・コーエンが抜け、ニコル・グローヴァー(テナー・サックス)とアレクサ・タランティーノ(マルチ・リード)が新参加。ヴォーカルのセシル・マクローリン・サルヴァントは本作不参加です。

 

いはゆるリーダーみたいなのはいない集合体ですが、ピアノ(5曲目でだけエレピ)のリニー・ロスネスが音楽監督役で、今回もアレンジはリニー。アルバム全体から1960年代中期新主流派(ポスト・バップ)っぽい香りが強くただよっていて、たしかにあのへんはコンテンポラリー・ジャズの源泉だよねえっていうのは前から感じていたところ。

 

あのころのマイルズ・デイヴィス・クインテットとかその周辺とか(が要するに=新主流派)の音楽を継承し、コンテンポラリーに再解釈したのが2010年代的新世代ジャズの素地になっているということで、アルテミスのばあいはヒップ・ホップ以後的なサウンド/リズムづくりはないストレート・ジャズとなっています。

 

ですから現代的な感覚はそなえつつ、旧感覚オールド・ジャズ・ファンの耳にも理解されやすい音楽性を持っているのがこのバンド。2020年代においてこうしたジャズはもはやエヴァーグリーンなんだともいえるでしょうね。情緒的な甘さは徹底排除されていますが、聴きやすくわかりやすい。

 

新作でいちばん耳を惹いたのは終盤7曲目の「Empress Afternoon」です。作曲はリニー。ずいぶんダイナミックなナンバーで、特にリズムの8ビート変形ラテンな躍動感がたいへんすばらしく、新主流派でいえばマイルズの「Prince of Darkness」「Masqualero」(『ソーサラー』)とか「Riot」(『ネフェルティティ』)を連想させるもの。

 

コンポジション/アレンジはもちろん、ドラマーの爆発力(アリスン・ミラー)も、アンサンブルの色彩感も、各人のソロもこの曲がアルバム中異様にきわだってみごとであざやか。奔流のごとくグイグイ迫る生命力にみちあふれた汎カリブ〜アフリカ的なジャズ・ビートは圧倒的です。

 

(written 2023.5.15)

2023/05/11

ジャンプもジャズなのだ(其の弍)〜 レオ・パーカー

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Leo Parker / Rollin’ wth Leo
https://open.spotify.com/album/4iuVTKizRNoo1GqETTVHRH?si=LcUJ3_y_Sy6EewEzGMOqYA

 

bunboniさんのブログで知りました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-05-02

 

ブルー・ノートはブギ・ウギ・ピアノを録音しようと設立されましたが、実際にはモダン・ジャズ以降の歴史がレーベル史とピッタリ重なっている会社なので、プリ・モダン・スタイルというかこうしたジャンプ系のアルバムがあるなんて、ぼくも知りませんでしたレオ・パーカー(バリトン・サックス)の『Rollin’ wth Leo』(1961年録音80年発売)。

 

リズム+バリサク+テナー+トランペットの編成で、やっぱり特にバリバリ吹くレオのブルーズ・バリサクが超快感です。コテコテ(原田和典の発案ではなく、濃厚ソース系の味を表現する関西では古くからあることば)そのもので大好物。薄味好みになったけど、ときには濃い味も。

 

個人的にはやっぱりアップ・ビートの効いたスウィング/ジャンプ・ナンバーが好み。1「The Lion’s Roar」、4「Music Hall Beat」、5「Jumpin’ Leo」、8「Mad Lad Returns」あたり。アップ・ビートじゃないけど、まさにド直球ジャンプな3「Rollin’ with Leo」もいいね。

 

この手のものは主に1940年代に隆盛だった音楽で、当時はビッグ・バンドでやることが多かったんですが、コンボ編成もときおりありました。レオらはそれをそのまま1961年録音の本作で再現しているんですよね。そんなのまったくお呼びじゃなかった時代。

 

ジャンプとはジャズ本流からちょっぴりハミ出て、といっても境目なんかなく連続しているものなんで双方やったミュージシャンも多く、じっさい中村とうようさんと出会う前の時代にジャンプを知ったぼくなんかはメインストリーム・ジャズ、つまり黒人スウィング・バンドからの流れで自然に聴くようになりました(ジャイヴもそう)。

 

ぼくがジャズからジャンプやジャイヴをスムースに知った1980年前後ごろ、松山のレコード・ショップではジャズの棚にふつうにジャンプ系(とその後分類されるようになったもの)のレコードも仲良く並んでいて、ジャズ棚をあさっていておもしろそうなものは次々買っていましたから、自覚も区別もなしに同じように聴いていました。

 

もちろんあのころのジャズ喫茶といえば(ぼくが常連だったビ・バップ前ばかりかける一店舗を除き)シリアスなハード・バップとかモードとかフリーとか、お店によってはクロスオーヴァー/フュージョンも、そんなのをむずかしい顔をして黙って無言で聴くところばかりでした。

 

だからその例外的一店舗 “ケリー” のマスター荒井さんに教えてもらうとか、自分でレコード買って自宅で聴くとかで、それでぼくは古いジャズに夢中になっていったんです。そんななかに(ニュー・オーリンズ、ディキシー、スウィングだけでなく)ジャンプやジャイヴもありました。

 

ってかだからジャンプもジャイヴ(というタームはあのころ知らなかった)もジャズです。でもってリズム&ブルーズやロックの誕生へと間断なくつながった母親なんだってことは、その後とうようさんに教えてもらいましたけど。

 

(written 2023.5.11)

2023/05/03

どうってことないけど、くつろげる(3)〜 スタンリー・タレンタイン

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Stanley Turrentine / Never Let Me Go
https://open.spotify.com/album/67w1QF7VyubwUOJNSAdqp8?si=mBnLYyMHQKGXwzDJfFPV3A

 

以前言いましたがリズム&ブルーズにも片足つっこんでいた泥くさい持ち味のジャズ・テナー・サックス奏者、スタンリー・タレンタインが好き。また一つ『Never Let Me Go』(1963)というアルバムのことを書いておきましょう。

 

私生活でも当時のパートナーだったシャーリー・スコットがオルガンを弾いていて、+ベース+ドラムス+コンガという四人編成。コンガはこのころブルー・ノートでよく起用されていたレイ・バレット。その後ファニア・オール・スターズで活躍しましたね。

 

オルガン+コンガ入りでもさほどアクや泥くささは強くなく、都会的洗練のほうを感じるおとなしめの音楽。それでもテナーの音色やフレイジングなんかはけっこうファンキーですから、マイルドだと感じるのはシャーリーのオルガン・サウンドが一因かもしれません。

 

テンポよく快調に幕開けし、2曲目はビリー・ホリデイの原曲を活かすようにしっとりと。ぼくの最大のお気に入りは3「Sara’s Dance」。トミー・タレンタインの曲となっていますが、ここではラテン・リズムが使われていて、かなりファンキー。こうなるとコンガが効きます。

 

アルバム後半もシャーリーのリリカルなプレイが光る6「Never Let Me Go」なんか絶品バラードですよね。切ないメロディをスタンリーもるるとつづっていていい味です。アルバム題になっているだけに、これを聴かせたい、出来がいいという判断なんでしょう。

 

ラストのスタンダード8「They Can’t Take That Away from Me」もグッドな内容。テーマ演奏部のリズム面でちょっとした工夫があるのもポイントです。そういえばこのアルバム、どんな有名曲もひねりが効いていてストレートにはやらないっていう。

 

こうしたべつにどうってことない凡作、というと語弊があるでしょうがそこらへんにいくらでもころがっているようなフツーの作品を楽しめると、音楽ライフに深みとひろがりが出ます。

 

(written 2023.4.17)

2023/05/02

どうってことないけど、くつろげる(2)〜 トミー・フラナガン・トリオ

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Tommy Flanagan / Tommy Flanagan Trio
https://open.spotify.com/album/6ib55A9F22eHSqsVDjQPvu?si=hRzaKwsGSeKmlWn-6px3cg

 

ちょっと前の新着案内プレイリスト『Release Rader』で流れてきて、そのときちょうど公園をお散歩ちゅうだったんですけど、音楽の美しさにハッとして思わず足が止まりそうになったトミー・フラナガンの『トミー・フラナガン・トリオ』(1960)。

 

ムーズヴィル・レーベル(プレスティジの傍系)からの一作なので、俗にトミフラのムーズヴィルと言われたりしてきたと思うんですが、それにしてもなぜ新着案内で流れてきたんでしょう。あらたにリイシューされたとかでしょうか。う〜ん、べつになにもないと思うんですけど、そのへん確認はしていません。

 

ともあれスタンダードなピアノ・トリオ編成(トミー・ポッター、ロイ・ヘインズ)でおだやか&静かに淡々と弾いているっていうのがいまのぼくには最高に気持ちいいんです。 意図してこうしたサイレント・ムードをねらったような選曲と演奏で、やかましいのも得意なロイだって静か。

 

レイ・ブライアントあたりとも似て、フラナガン自身こうして落ち着いた中庸スタイルが得意なジャズ・ピアニストではあります。トリオ名作として世に名高い『オーヴァーシーズ』があんなにハードなのは背後のエルヴィン・ジョーンズが猛プッシュしているから。

 

本来的にはおだやか淡々路線のジャズ・ピアニストだったんだろうことは諸作を聴けばわかることです。このムーズヴィルの一作も、マジなんてことない、どうでもいいようなピアノ・トリオで、とりたてて傑作良作でもないし、ジャズ史のなかに埋もれたちりの一つにすぎないんですけど、そんな平坦な日常性のなかにも真の美は隠れているんだってことを最近実感しています。

 

(written 2023.4.5)

2023/04/30

ゲキアツだった中村海斗カルテット・ライヴ in 大阪神戸 2 days

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(4 min read)

 

2023年4月27日大阪梅田Mister Kelly’s、28日神戸100ban Hallと二日続けて中村海斗カルテットのライヴに行ってきました。アルバム『Blaque Dawn』リリースにともなう全国ツアーのラスト二日間で、バンドもアルバムと同一の佐々木梨子(サックス)、壷阪健登(ピアノ)、古木佳祐(ベース)。

 

いはゆるレコ発ライヴですけれど、アルバムからの曲をやるという感じではなく、海斗の新曲が中心の構成。アルバム・ナンバーは1stセットで数個やったほかアンコールでも演奏されましたが、それだけ。こうした前向きの新進気質はいいことですよね。

 

二日間ともカルテットの演奏はゲキアツで、以前アルバム・レヴューでも書きましたが四人とも超饒舌で燃え上がるような情熱を聴かせてくれました。ライヴだとそれがいっそう激しかったような印象です。特に海斗と梨子のプレイが目立っていましたが、ほかの二名もすさまじかった。

 

にもかかわらず海斗と梨子の表情はどこまでも淡々としていてクール。顔や体の動きにサウンドがくっきり表出されていた健登と佳祐とは対照的で、観客の反応もなにもいっさい気にするそぶりもなく能面のままであんなにも熱のこもったプレイをくりひろげるなんてねえ。

 

2020年代の新感覚ジャズ・ドラマーとしてすらずば抜けた異次元の叩きっぷりをアルバムでも聴かせていた海斗のドラミングは、ライヴだとそのあまりにも多い手数音数と、さらに複数のリズムが多層同時進行していくポリ・レイヤードなスタイルが、しかし実はかなりさわやかなものでもあるんだと、生で聴きいっそう実感しました。

 

軽やかでしなやかな強靭さ&重厚感とでもいうか、あれだけのサウンドを、しかも音量だってバカでかいのに(神戸ではドラム・セットに一本もマイク立っていませんでしたからオール生音であんなにっていうのは信じられない気分)、振幅のきわめて小さいコンパクトな打撃で実現しているっていうのは驚きでしたね。

 

でありながら、梨子のアルト・サックスとあわせどこかクールで爽快。情熱的な演奏なのに暑苦しく圧倒する感じではなく、春の涼しい風にすーっと当たっているようなさわやかさがあります。外見が落ち着いていて無表情だったこともそう感じた一因かも。

 

いっぽう健登のピアノと佳祐のベース・プレイはフレーズごとに顔や体が大きく動くもの。エモーションが表面に出てくるタイプなんでしょう。汗も飛び散って、ハードなフレイジングのときには顔をゆがめ肩が動き体をよじるような演奏ぶりでした。二名ともそれぞれ即興フレーズを口ずさみうなりながらユニゾンで弾いていましたし。

 

四人ともたがいの出す音をとてもよく聴いていて、フレーズ構成の流れを予測しながら次の瞬間の音をピタリ合わせていくバンド演奏ぶりも一体感を感じるもので、この能力は特に海斗が高いようでした。次にピアノやサックスがどんなタイミングでどんな音を出すか、意外なものでも読めているような瞬間がたくさんあって、ややビックリでしたね。

 

このへんは同一メンバーによるツアー最終盤ということで、その点ではもちろんバンドで音楽が練り込まれていたという面もあったのでしょう。にしてもあまりにも四人の息はピッタリ。しかもすさまじい熱を感じる音楽でありながら、ライヴ終わりでは(新世代らしい)柑橘系のさっぱりしたあとくちを残すライヴでした。

 

二日連続で通って両日ともライヴ前ライヴ後とご挨拶し(そういうファミリアーなヴェニューだった)、どうやら海斗には顔を憶えていただきました。

 

(written 2023.4.30)

2023/04/24

シリアスにならない明るくポップな南ア・ジャズ 〜 テテ・ンバンビサ

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Tete Mbambisa / Tete’s Big Sound
https://open.spotify.com/album/7l90OKF2ooltbS5amoWJB0?si=ery1iEi3RYy8W__RDo92oA

 

南アフリカのジャズ・ピアニスト、テテ・ンバンビサの1974年作『Tete’s Big Sound』がレコードで復刻されたということらしく、おそらくそのタイミングでということでしょうかサブスクでも聴けるようになりました。

 

ジョン・コルトレインやファラオ・サンダースへの南アからの回答といった勇ましい売り文句も目にしましたが、本作はそんなシリアスなスピリチュアル・ジャズとかではなく、サックスも決してブロウしたりしない、明るく楽しく軽いフュージョンっぽい音楽です。

 

ぼくのいちばんのお気に入りは4曲目「Dembese」。もちろんその前の3「Black Heroes」も強い意義を持っている曲でしょう。大海を思わせるゆったりしたグルーヴを持っていてすばらしいです。それに続いて4曲目が流れてくれば、ほんとうに大きな快感。

 

ほどよいビートが効いていてノリいいし、明るく陽気。その陽気なポップさは、上でも書きましたがフュージョンのそれ(ジャズのというよりはどっちかというと)だとぼくには聴こえます。

 

ジャズとなにが融合しているのかここではよくわかりませんが、たぶんこれは南ア現地の伝統音楽がジャズとあわさって展開しているんじゃないかという気がします。シリアスになりすぎないアフリカネスが、ちょうど一時期のフュージョンがそうだったように、こうしたはじける陽光を思わせる明るいジャズになっているのかも。

 

(written 2023.3.22)

2023/04/12

ジャズ・コントラバス&ヴォーカルの新世代 〜 石川紅奈

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https://open.spotify.com/playlist/7M0iOVXWTDpDRh5Mv6cvdu?si=de0a408ee4b94a0a

 

デビューして間もないジャズ・コントラバス&ヴォーカルの新人、石川紅奈(くれな)。話題になっていますよね。サブスクにはアルバム『Kurena』(2023)と若干のシングルがあります。後者にはアルバム未収録曲もあって聴き逃せません。

 

アルバムは前半1970年代初期リターン・トゥ・フォーエヴァーふうな感じではじまって、じっさい2曲目は「500 Miles High」ですし、あのころのチック・コリアあたりを意識したっぽい音づくりなのは小曽根真がプロデュースしているからでもあるんでしょう。ピアノも弾いていそうですね。

 

3曲目のスティーヴィ・ワンダー・チューンだってさわやかジャジーなレンディション。これもほかの曲でもコントラバスでショート・パッセージを反復しているのが軸になっているのはややフュージョン流儀っていうか新世代ジャズっぽさです。

 

そうしたスタイルがピッタリはまったのが5「Off The Wall」(マイケル・ジャクスン)。1979年の原曲からヒプノティックな反復リフが特徴でしたから。もちろん紅奈はそれをコントラバスで。しかもこの曲ではほかの楽器いっさいなしの弾き語りっていう。

 

アルバムはもう一曲あって終わりですが、個人的に紅奈の作品で最も惹かれたのはシングルでしか聴けない「No More Blues」(2022)です。いうまでもなくアントニオ・カルロス・ジョビン作「Chega de Saudade」の英語ヴァージョン。

 

紅奈はこれをコンガとコントラバスのデュオ(+かすかなデジタル・ビート)でやっていて、やっぱり反復リフを軸に、とってもグルーヴィで気持ちいいんですよね。ボサ・ノーヴァっていうより完璧にジャズ。後半ではスキャットとコントラバスのユニゾン・デュオによるインプロ・ソロも聴けます。

 

(written 2023.4.12)

2023/04/09

コンテンポラリー・ジャズに生まれ変わったビョーク 〜『ビョーク・イン・ジャズ』

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(2 min read)

 

v.a. / Björk in Jazz: A Jazz Tribute to Björk
https://open.spotify.com/album/4xOFNUdMlv6DFUlxkFOrNq?si=Ba8SkF9PSHGFUVD52do2zw

 

15組の現代ジャズ・ミュージシャンたちがビョークのソングブックを解釈した、オリジナル・アルバムっていうよりコンピレイションなのかな知りませんが、『Björk in Jazz: A Jazz Tribute to Björk』(2022)がちょっといい。ビョークがどうっていうより現代ジャズのサンプラーとして楽しいです。

 

演者に知っていた名前はほとんどなく、かろうじて2曲目のカミーラ・メサと4曲目のグレッチェン・パーラトだけでした。1993年ソロ・デビューのビョークを聴いて育った若手世代のミュージシャンたちなんでしょうか?

 

原曲いかんにかかわらずジャズ・インストルメンタルになっているものがいくつもあって、ビョーク・オリジナルの姿なんてすっかり面影もないという演奏だって聴けます。ぼくはコンテンポラリー・ジャズよりビョークのほうに思い入れがある人間なんですけどね。

 

それでもオッと耳をそばだてる演奏もあって、たとえば8「Army of Me」のヤロン・ヘルマン。フランス系イスラエル人のジャズ・ピアニストみたいです。11「Hyperballad」のフォックス・キャプチャ・プランもいいな。日本のピアノ・トリオのよう。

 

ラスト15曲目「All Is Full of Love」のピアノも抒情的でステキ。ビル・カンリッフというUSアメリカ人ジャズ・ピアニストで、この音楽家はビョークよりベテランですね。

 

これら以外だって、ヴォーカルものもふくめ、現代ジャズとして聴くときに目立つのは特にドラマーの叩きかた。ビート・メイクの手法はビョークをはるかに超え、ヒップ・ホップを通過したからこそのコンテンポラリーなもの。もちろんそれを(打ち込みじゃなく)楽器人力演奏で実現しているんです。

 

(written 2023.3.12)

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