カテゴリー「ジャズ」の577件の記事

2023/01/26

Z世代最強ドラマー!中村海斗登場

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(3 min read)

 

中村海斗 / Blaque Dawn
https://open.spotify.com/album/5AEfXYcsVxs4VzDImZtTJS?si=o9l4chTaTW6XWLsMBZX8NA

 

2001年ニュー・ヨーク生まれ育ちが栃木→群馬っていう新世代ジャズ・ドラマー、中村海斗(Kaito Nakamura Davis)のデビュー・アルバム『Blaque Dawn』(2022)がものすごいカッコいい。これも昨年12月21日リリースだったもので、なんときのう書いた和久井沙良のと同日だったみたい。

 

なんだか日本のZ世代ジャズ・ミュージシャンが続々デビュー・アルバムを出しているような、それもすべて注目に値する新感覚の充実ぶりで、そういう時代になったなあ〜と深い感慨をおぼえます。

 

アルバムは全曲カルテット編成。すべて海斗の自作コンポジションで、佐々木梨子(サックス)、壷阪健登(ピアノ)、古木佳祐(ベース)という面々。みんな同世代の若手でしょうか、一体となってグイグイ迫りくる勢いに圧倒されます。

 

四人とも饒舌なのが特徴で、ことに梨子の燃えあがるアルト・サックスはすばらしいものがあります。まるでイマニュエル・ウィルキンスじゃん、つまりアルトを吹くジョン・コルトレインだと聴きまがうほどの突出ぶり。健登の弾きまくりピアノも聴きごたえあるし(ときどき垂直系)、なんなんでしょうねこのバンド。

 

イマニュエル・ウィルキンスといえば海斗自身好きなんだそうですよ。たしかにコンポジションに間違いない痕跡があります。そしてなにより細かく手数多く多すぎるくらいに叩きまくるそのポリ・ドラミング・スタイルは、いままでのどんなジャズ・ドラマーでも聴いたことのない異次元のもの。

 

ホントまじこんなん聴いたことないよ!と口あんぐりなんですが、ここ10年くらいかな、USでも日本でも新感覚ドラマーが続出しているのを海斗はすべてふまえ、それらまるごとひっくるめてごっそりアップデートしてくれちゃったような、そんな叩きっぷりなんですよね。

 

個人的に強く惹かれたのは終盤7曲目の「U.R.B.」。アルバム中最長尺の11分以上あるし、これがクライマックスとみていいんじゃないですか。ここで聴ける四人のほとばしるパッションは筆舌に尽くしがたいものがあります。バンドを猛烈にグルーヴさせながらひとり異なるビートを同時進行で刻んでいる海斗のポリリズミック&ゆるぎないアプローチに悶絶。

 

そうでありながら決して重たくシリアスにならないひょうひょうとした軽みというかさわやかさが海斗のプレイにはただよっていて、ぼくこのひと現役日本人ジャズ・ドラマーではいちばん好きだぁ。そんなにたくさん聴いているわけでもないけど、海斗こそ最強の存在と断言しちまいたい。

 

(written 2023.1.25)

2023/01/25

和久井沙良のデビュー・アルバムがヤバいほど天才

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(2 min read)

 

和久井沙良 / Time Won’t Stop
https://open.spotify.com/album/0rQDHxRhpolHbzQYcB510w?si=mHxt_OMaSgC5paCOTe8Z6Q

 

bunboniさんに教わりました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-01-08

 

ジャズ・ピアニスト和久井沙良のデビュー・アルバム『Time Won’t Stop』(2022)がヤバい。カッチョエエ〜〜っ!ぼくが特にシビレているのは1曲目の「tietie」。ドラムスとギターが快感で、こればっかりなんども聴いちゃうな。さまざまなプレイリストに入れたし。

 

&ディープなグルーヴを聴かせる2曲目「Calming Influence」もゾックゾクするし、これらオープニングだけでこのアルバムは決まりですね。大西順子的にノリよくガンガン弾きまくるタイプのグルーヴィな音楽こそ沙良の本領だと思えます。このことは4、5曲目の小休止を経て後半部を聴いてもわかること。6、8曲目の勢いなんかすごい。

 

アルバムにほぼ全面参加のドラマー上原俊亮が細かなビートを聴かせるのもグッドで、完璧に新世代ジャズ・ドラミングのスタイルですよね。特にベース・ドラムの踏みかたがぼくは好き。1曲目の熱くカッコいいロック・ギターはイシイトモキ。

 

沙良はピアノとシンセサイザーを弾くだけでなく、全曲のコンポジション、アレンジをやっていて、それがジャズやクラシックだけでなくネオ・ソウル、ヒップ・ホップをしっかり踏まえたものだとわかるのがいいですね。しかもごく自然なフィールで体内に沁み込んでいます。

 

ラップやヴォーカルの使いかたもうまいし、しかもこんな天才作曲家でありながら融通のきく職人芸的で腕前の確かな即興演奏者でもあるっていう。アルバムもバラエティに富んでいるし、音楽家としてスケールの大きさを感じます。

 

(written 2023.1.21)

2023/01/09

ジャズ入門ガイドにもいい最高のブルー・ノート・アルバム 50

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(4 min read)

 

https://www.udiscovermusic.jp/stories/the-50-greatest-blue-note-albums?amp=1

 

「最高のブルーノート・アルバム50枚」というのを数日前にuDiscovermusicが発表していました。なぜなら1月6日はブルー・ノート・レコーズの創立記念日でしたから。今年で社史84年目。最もアイコニックなジャズ・レーベルなのはもはやだれも疑わないでしょう。

 

記事文は短いもので、本体は下位から順に50作を紹介しSpotifyリンクを貼ってある部分にあります。しかもリストは音楽家名とアルバム題だけシンプルに書いてあって、一言の解説もなし。立派な見識と思います。

 

ジャズ好きなら見たこともないなんていう作品は一つもないはず。ですからみなさんごらんになって、納得するなり異論を持つなりすればいいことで、リンクされてあるSpotifyリンクを踏んで聴いたりCDでさがしてもいいし、めいめいのやりかたで楽しんでいただきたいと思います。

 

21世紀的新世代ジャズといえるものはロバート・グラスパーが選ばれているだけで、かろうじてカサンドラ・ウィルスンもその先駆けかといったこの二つだけ。ほとんどが1950〜60年代に録音発売されたレコードなのは、やっぱりこの会社、アルフレッド・ライオンが現役だった時代こそっていうことなのかもしれません。

 

50作のセレクション、上位に来ているものとちょっと気になるものはちょこちょこ聴きなおしましたが、めっちゃひさしぶりだったものもあります。たとえば一位の『サムシン・エルス』(キャノンボール・アダリー&マイルズ・デイヴィス)も15年ぶりくらい。Spotifyにあるのはオリジナルのモノラル版ですね。

 

これをふくめ、三位までがマイルズ関連であるというのもなんだか興味深いような。このトランペッターとアルフレッドは個人的親交があったものの、作品をたくさんレーベルに残したというほどでもないのに、それでもこうなるっていうのは存在感ゆえでしょうか。

 

こうしたブルー・ノート・ジャズの傑作群に大学〜大学院生のころはそりゃあもう胸を躍らせていたもんでした。夢中でレコード買いまくっていたなあ。そのうちCDで買いなおしたのは七割くらいで、そんでもってサブスク時代になって以後はなんでもあるので(ブルー・ノートは例外なくぜんぶある)おおいに助かります。

 

ちょっと気になれば所有していなくともパパッと聴けて楽しいし、今回のuDiscovermusicの50作セレクションでだってそうです。それでちょっとした感想も浮かぶし、現在未来の私的音楽ライフ形成に役立つので、マジでありがたいこと。

 

それに約10年前ごろからのソーシャル・メディア時代に、この老舗ジャズ・レーベルは完璧対応しているというのもすばらしいところ。個人的にいつも見ているのはTwitterとInstagramだけですが、その他のプラットフォームにもアカウントがあるはず。ニュー・リリースや発掘ものなど、そのほか折に触れて投稿があってハッと思い出したり発見したり。

 

ソーシャル・メディアとサブスクへの対応、この二点は2020年代においてレコード会社が展開してほしい必須のことがらなんで、長い歴史を持つブルー・ノートもそこへきっちり寄せてきているのはみごとですね。ベテランばかりでなく若い新規ファンも獲得しやすいですし。

 

ぼく的にイマイチ好みじゃないとかさほど熱心には聴いてこなかったっていうものもセレクションのなかに多少ありますが、これを契機にまたふたたびチャレンジしていますし、それでいままでにない自分へと変貌することもできるかもしれません。みなさんもぜひ。

 

(written 2023.1.8)

2023/01/08

聴きどころはブラウニーのブリリアンスとホーン・アレンジメントの妙 〜『The Eminent J.J. Johnson Vol.1』

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(2 min read)

 

J.J. Johnson / The Eminent J.J. Johnson Vol.1
https://open.spotify.com/album/4TxTaew1OPodAmKE1ICoIC?si=xRmIPE7jQD2Tbn68Nj2r9w

 

ブルー・ノートの公式ソーシャル・アカウントが紹介していたので、いま『The Eminent J.J. Johnson Vol.1』(このかたちでの発売は1989年)を生まれてはじめて聴いていますが(えっ?)、これめっちゃいいですね。どうしていままで聴く機会がなかったんでしょう、有名作だからアルバム題とジャケットはかなりよく見ていたのに。

 

サブスクにあるこのアルバムは2001年盤CDに沿ったもの。末尾の別テイク三トラックを外せば、10インチ盤オリジナルLP『Jay Jay Johnson with Clifford Brown』(1953)と同じ六曲で、曲順は違えども、これはこれで整理されていて聴きやすく、いいと思います。

 

トロンボーン、トランペット、サックス三管の重なりや動き、リズムとのからみあいなど緻密にアレンジされているのがわかりますが、だれが譜面書いたんでしょう、たぶんピアノで参加しているジョン・ルイスですかね、メンバーのなかでこういうのやれそうなのは。マイルズ・デイヴィスの九重奏団でだってアレンジャーの一人でしたし。

 

ソロ・パートにくると、なんたってトランペットのサウンドがあまりにブリリアントで、そこだけクッキリ浮き出ているように聴こえます。さもありなんクリフォード・ブラウンですよ。1953年6月のセッションですが、なんだか突出したあざやかさ。現在過去未来、これだけ吹けるトランペッターはほかにいないはず。

 

特に3「ターンパイク」ではソロ・リレーの一番手でブラウニーが出て、もうそれだけでいいほうに曲の印象が決まってしまうような、そんなみごとさ。このトランペッターはタンギング技巧がすばらしくて(全ジャズ・トランペッター中私的No.1)、そのおかげでフレイジングがくっきり歯切れいい快感をもたらし、最高です。

 

なんだかおかげでJ.J. ジョンスンもジミー・ヒースもソロはかすんでしまうほどですが、このアルバムの聴きどころはブラウニーのブリリアンスとホーン・アレンジメントの妙にあるんですから、これでおっけ〜。大好きな曲5「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」はJJのワン・ホーン吹奏で、美しく淡々とメロディをつづっているのがまたいいですね。

 

(written 2022.12.20)

2022/12/26

ステファン・フィールで 〜 エリア・バスチーダ

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(4 min read)

 

Èlia Bastida / Tribute to Stéphane Grappelli
https://open.spotify.com/album/26BlMn31cs7svG0qevEIV5?si=_BjSSE26SpauPrdPiZbx0g

 

エリア・バスチーダは1995年バルセロナ生まれ、岩佐美咲や中澤卓也と同い年で、いはゆるZ世代の一員です。四歳からヴァイオリンをはじめてクラシック音楽の修練を積み、17歳でジャズ・バンドに加入したそう。

 

公式ホーム・ページによれば主な影響源はチェット・ベイカー、スコット・ハミルトン、アート・ペッパー、デクスター・ゴードン、ソニー・スティット、ステファン・グラッペリ、サラ・ヴォーン、レスター・ヤング、エリス・レジーナ、ジョアン・ジルベルト、シコ・ブアルキ、フレディ・ハバード、クリフォード・ブラウン、ビル・エヴァンズ、エラ・フィッツジェラルドなど。

 

2017年以後すでにいくつもアルバムを出してきているようですが、最新作『Tribute to Stéphane Grappelli』(2022)は題名どおり偉大な影響源にささげた内容。いいですねこういうの。基本ギター&ベースとのトリオ編成で、曲によりドラムスも参加しています。

 

MJQの「ジャンゴ」だってやっているし(それも二回)、ってことはつまりフランス・ホット・クラブ五重奏団がやったようなああいった音楽を指向しているのかなと思うとすこし違って、トラディショナルなストレート・ジャズをベースにクラシカルな方向性に寄った内容を展開しています。

 

地金がクラシック・ヴァイオリンなんだろうという気がしますが、それでもステファン・グラッペリへの敬意は音色とフレイジングのはしばしに表現されているのがわかって好印象。常に気品高く、決して俗な感じにならない音楽家ですね。

 

おだやかに落ち着いた平坦な音楽で、こういう雰囲気はレトロ&オーガニックな路線が支持されるようになって以後分野を問わず拡大しているものです。劇的で大げさなところのとれたなだらかな老境に入りつつある現在のぼくの心境にはピッタリ。

 

ジャズとクラシックだけでなくブラジル音楽好きを本人は公言していますが、本アルバムを聴くかぎりではブラジルっていうよりカリブ方面へのアプローチが濃く出ているような感じです。それは意識してというよりスペイン人だから自然とラテン性がにじむということかもしれません。

 

特にカリビアンなラテン・ジャズ(・クラシック)っぽさが鮮明なのが4、5、8、13曲目あたり。ヴァイオリン・スタイルはどこまでも典雅ですが、リズムにはっきりした愉快さ楽しさがあります。ボレーロ(だけどアバネーラっぽい)、スウィング、カリビアン・ダンス、ファンクなど。

 

なかでも8「ダンス・フォー・ステファン」のリズムとか13「グラッペリア」のファンクネスなんてすばらしいですよ。どっちもステファン・グラッペリの名前が曲題に入っているわけですから、ことさトリビュートを意識して書いた自作なんでしょう。現代的な相貌をとったグラッペリ・ミュージックとも解釈できます。

 

いっぽうでJ・S・バッハの曲にジャジーなビートを付与して演奏したり(3)、また9「ネイチャー・ボーイ」なんて有名ポップ・ナンバーがクラシカルなヴァイオリン独奏曲みたいになっていたりするのも、エリアの一面でしょう。ヴォーカルを披露する曲もあります。サックスもやるそうですが本作では聴けず。

 

(written 2022.12.22)

2022/12/25

戦後録音のなかではNo.1ディキシーランド・ジャズ 〜 エディ・コンドン

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(3 min read)

 

Eddie Condon / Jam Session Coast-to-Coast
https://open.spotify.com/album/7AG4Cw4RDYvgmmYS66Xc5o?si=5ZVYShLuSsW3HZZ-pEwqqg

 

同じ音楽のことばかりなんども書いてゴメンニャサイほんとうに心底好きなんだエディ・コンドンの『ジャム・セッション・コースト・トゥ・コースト』(1954)。これ、最初にこのブログで記事にしたころはまだサブスクなかったので、外せないと思う重要曲は自分でファイルつくってYouTubeに上げたのをリンクしていました。

 

このレコードでのコンドン・バンドの演奏はA面だけで(B面は別の西海岸バンド、コンドンらは東海岸)、しかも最高にチャーミングだと思えるのはラストのジャム・セッションを除く冒頭三トラックだけ。それらは真なる極上品ですよ。戦後録音のなかではNo.1ディキシーランド・ジャズでしょう。

 

YouTubeファイルに付くたくさんのコメントを読んでいると、このレコードを当時買ってそのまま愛聴し続けているというアメリカ人年配ファンのかたが、たまたまYouTubeでぼくのそれを見つけてうれしくなってコメントしてくださっているというケースが多く。

 

そうですよね、ぼくみたいに(比較的)若い、しかも日本在住の日本人がこんな古いアメリカン・ジャズが好きで好きで、みずから進んでファイルまでつくってアップロードしているんだから、本場(ではいまだ至るところでこの手の音楽は生演奏されている)の古株ファンからしたら「こいつだれ?」ってなりますよねえ。

 

冒頭三トラックのうち、二つ目がとってもきれいでチャーミングなプリティ・バラード三曲のメドレーでうっとりするし、1・3トラック目はドライヴするスウィンガー、それもめっちゃ楽しくて、自室のなかでかけていても踊りだしてしまうし、思わず笑顔になって気分もアップ、イヤなことなんかすっかり忘れちゃうっていう、これぞ大衆エンタメ音楽の真髄ですよ。

 

Spotifyをやるようになった最初のころはこのアルバム入っていなかったと思うんですが、じきに聴けるようになったのがこれ(上と同じ)↓
https://open.spotify.com/album/7AG4Cw4RDYvgmmYS66Xc5o?si=hL7SMzfySQ-UvlChXn63UA

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でもこれなんでこんなジャケットなんでしょうね。同じデザインで古典ジャズ音源がたくさんサブスクにありますから、なにかの復刻シリーズなんでしょう。いっぽうオリジナル・ジャケをきれいに整理して(整理しすぎだけど)、同じ音楽だけどべつなものもSpotifyに最近あります↓
https://open.spotify.com/album/4pvnCA7OPlyFpIfq4nVJaV?si=FZHjRu1yQmmjsG_WF2ZqGw

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ジャケだけ見たらこっちのほうが雰囲気だぞと一瞬思ったんですけど、なんと音質的に問題ありなんですね。聴けたもんじゃないかと思うほど悪い。二つを聴き比べれば違いは瞭然としています。ですからもしこのアルバムをサブスクで聴いてみようかなとお考えのかたは、ぜひ前者のジャケのやつをさがしてください。オリジナルのレコードやリイシューCDに近いのはそっちです。

 

(written 2022.12.18)

2022/12/19

AOSJ 〜 リンジー・ウェブスター

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(2 min read)

 

Lindsey Webster / Reasons
https://open.spotify.com/album/4Uy2jz9YCDn6yoiK5CxuN4?si=B82KmF78QXSnlR3FX1FL4w

 

萩原健太さんに教わりました。いつもありがとうございます。
https://kenta45rpm.com/2022/12/16/reasons-lindsey-webster/

 

スムース・ジャズ・チャート(on ビルボード)常連の歌手、リンジー・ウェブスター最新作『リーズンズ』(2022)は、アダルト・オリエンティッド・スムース・ジャズみたいなもんでしょうね。ドナルド・フェイゲン/スティーリー・ダン的なサウンドというか。

 

スタイリッシュな音楽で大好きなんですけど、特にホーン・セクションの組み立てとあしらいかたがとってもおしゃれで都会的。幕開けから三曲ジャズが続きますが、4曲目はわりとソウルフル。しかもこれはいはゆるグラウンド・ビート(ソウル II ソウル)です。

 

これを聴いてもわかりますが、グラウンド・ビートって3・2クラーベの感覚が独自のハネとなって活きていますよね。1980年代末から好きできたのはそれも理由なんでしょうか。リンジーのこれでは、その上でさらにランディ・ブレッカーのフリューゲル・ホーン・ソロとケヴ・チョイスのラップまでフィーチャーされているという。

 

かと思うと続く5曲目はスティーリー・ダンそのまんまなナンバー。特にホーン・アンサンブルのカラーなんかは完璧なるコピーともいえる内容で、ひょっとしてフェイゲンがペンをとったんじゃないの的な。ポップなフィーリングもあるし、これも好きだなあ。

 

そもそもがあのへんのフュージョンとかAORとか関連諸方面の音楽は、当時からリズム&ブルーズ〜ソウルに立脚してこそ成立していたわけで、はなからソウル・ジャズだったというか多ジャンル接合的だったもの。

 

そう考えればリンジーの本作も「なんだスムース・ジャズじゃん」とケチをつけられる理由なんてなく、ふんわりメロウでおしゃれな表層サウンドの下に、実は21世紀的新世代感を身につけているというかこの手の音楽はむかしからそうだったというか。

 

11曲目でフィーチャーされているニコラス・ペイトンのトランペットだってなかなか渋くて味があるし、アルバム全体でグルーヴがタイトでソリッド。ふくらみすぎずシャープにまとめているなというのはリンジーのヴォーカルについても言えます。

 

(written 2022.12.19)

2022/12/17

“The Teddy Wilson expanded” discography

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(6 min read)

 

The Teddy Wilson expanded
https://open.spotify.com/playlist/3mlZIEPzdEg5H0CoIhoeBd?si=7d605ac70c694636

 

1 Blues in C Sharp Minor (C 1379-1, Brunswick 7684)

Chicago, May 14, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Roy Eldridge (trumpet), Buster Bailey (clarinet), Chu Berry (tenor sax), Teddy Wilson (piano), Bob Lessy (guitar), Israel Crosby (string bass), Sidney Catlett (drums)

 

2 Mary Had A Little Lamb (C 1376-1, Brunswick 7663)

ibid., RE (also on vocal)

 

3 Too Good To Be True (C 1377-2, Brunswick 7663)

ibid., TW (also on organ)

 

4 What A Little Moonlight Can Do (B 17767-1, Brunswick 7498)

New York City, July 2, 1935, Teddy Wilson and His Orchestra: Roy Eldridge (t), Benny Goodman (cl), Ben Webster (ts), Teddy Wilson (p), John Trueheart (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

5 Miss Brown To You (B 17768-1, Brunswick 7501)

ibid.

 

6 Warmin' Up (C 1378-1, Brunswick 7684)

Chicago, May 14, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Roy Eldridge (t), Buster Bailey (cl), Chu Berry (ts), Teddy Wilson (p), Bob Lessy (g), Israel Crosby (sb), Sidney Catlett (d)

 

7 Sweet Lorraine (B 17916-1, Brunswick 7520)

NYC, July 31, 1935, Teddy Wilson and His Orchestra: Roy Eldridge (t), Cecil Scott (cl), Hilton Jefferson (as), Ben Webster (ts), Teddy Wilson (p), Lawrence Lucie (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

8 Sugar Plum (B 18317-1, Brunswick 7577)

NYC, December 3, 1935, Teddy Wilson and His Orchestra: Richard Clarke (t), Tom Mace (cl), Johnny Hodges (as), Teddy Wilson (p), Dave Barbour (g), Grachan Moncur (sb), Cozy Cole (d)

 

9 It's Like Reaching For The Moon (B 19495-2, Brunswick 7702)

NYC, June 30, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Jonah Jones (t), Johnny Hodges (as), Harry Carney (cl, bariton sax), Teddy Wilson (p), Lawrence Lucie (g), Jonh Kirby (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

10 Christopher Columbus (B 18829-1, Brunswick 7640)

NYC, March 17, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Frank Newton (t), Benny Morton (tb), Jerry Blake (cl, as), Tom McRae (ts), Teddy Wilson (p), John Trueheart (g), Lennie Stanfield (sb), Cozy Cole (d)

 

11 All My Life (B 18832-1, Brunswick 7640)

ibid., Ella Fitzgerald (vo)

 

12 (If I Had) Rhythm In My Nursery Rhymes (B 18613-1, Brunswick 7612)

NYC, January 30, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Gordon Griffin (t), Rudy Powell (cl), Ted Mcrae (ts), Teddy Wilson (p), John Trueheart (g), Grachan Moncur (sb), Cozy Cole (d)

 

13 Why Do I Lie To Myself About You (B 19497-2, Brunswick 7699)

NYC, June 30, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Jonah Jones (t), Johnny Hodges (as), Harry Carney (cl, bs), Teddy Wilson (p), Lawrence Lucie (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

14 Guess Who (B 19499-2, Brunswick 7702)

NYC, June 30, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Jonah Jones (t), Johnny Hodges (as), Harry Carney (cl, bs), Teddy Wilson (p), Lawrence Lucie (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

15 Here's Love In Your Eyes (LA 1159 A, Brunswick 7739)

Los Angeles, August 24, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Gordon Griffin (t), Benny Goodman (cl), Vido Musso (ts), Lionel Hampton (vibraphone), Teddy Wilson (p), Allen Reuss (g), Harry Goodman (sb), Gene Krupa (d), Helen Ward (vo as Vera Lane)

 

16 Sailln' (B 20292-2, Brunswick 7781)

NYC, November 19, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Jonah Jones (t), Benny Goodman (cl as John Jackson), Ben Webster (ts), Teddy Wilson (p), Alan Reuss (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

17 Right or Wrong (I'm With You) (B 20410-1, Brunswick 7797)

NYC, December 16, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Irving Randolph (t), Vido Musso (cl), Ben Webster (ts), Teddy Wilson (p), Alan Reuss (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d), Midge Williams (vo)

 

18 Tea For Two (B 20412-2, Brunswick 7816)

ibid., omits MW

 

19 I'll See You In My Dreams (B 20413-1, Brunswick 78169)

ibid.

 

20 He Ain't Got Rhythm (B 20568-1, Brunswick 7824)

NYC, January 25, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Benny Goodman (cl), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Freddy Green (g), Walter Page (sb), Joe Jones (d), Billie Holiday (vo)

 

21 Fine And Dandy (B 20914-1, Brunswick 7877)

NYC, March 31, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Cootie Wiilams (t), Johnny Hodges (as), Harry Carney (cl, bs), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

22 I'm Coming, Virginia (B 21037-1, Brunswick 7893)

NYC, April 23, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Harry James (t), Buster Bailey (cl), Johnny Hodges (as), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

23 Yours And Mine (B 21118-2, Brunswick 7917)

NYC, May 11, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Buster Bailey (cl), Johnny Hodges (as), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Artie Bernstein (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

24 I'll Get By (B 21119-1, Brunswick 7903)

NYC, May 11, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Buster Bailey (cl), Johnny Hodges (as), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Artie Bernstein (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

25 Mean To Me (B 21120-1, Brunswick 7903)

ibid.

 

26 I've Found A New Baby (B 21220-1, Brunswick 7926)

NYC, June 1, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Buster Bailey (cl), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Freddy Green (g), Walter Page (sb), Joe Jones (d)

 

27 Foolin' Myself (B-21217-1, Brunswick 7911)

ibid., Billie Holiday (vo)

 

28 Coquette (LA 1383 A, Brunswick 7943)

LA, July 30, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Harry James (t), Benny Goodman (cl), Vido Musso (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Harry Goodman (sb), Gene Krupa (d)

 

29 Ain't Misbehavin' (LA 1408 C, Brunswick 7964)

LA, September 5, 1937, Teddy Wilson Quartet: Harry James (t), Teddy Wilson (p), Red Norvo (vibraphone, xylophone), John Simmons (sb)

 

30 Honeysuckle Rose (LA 1431 A, Brunswick 7964)

ibid.

 

31 Just A Mood (Blue Mood) (Part 1) (LA 1429 A, Brunswick 7973)
32 Just A Mood (Blue Mood) (Part 2) (LA 1430 A, Brunswick 7973)

ibid.

 

33 You Can't Stop Me From Dreamin' (LA 1405 B, Brunswick 7954)

LA, August 29, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Harry James (t), Archie Rosati (cl), Vido Musso (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), John Simmons (sb), Cozy Cole (d)

 

34 When You're Smiling (B 22194-3, Brunswick 8070)

NYC, January 6, 1938, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Benny Morton (trombone), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Freddy Green (g), Walter Page (sb), Joe Jones (d), Billie Holiday (vo)

 

35 I Can't Believe That You're in Love with Me (B 22195-4, Brunswick 8070)

ibid.

 

36 Don't Be That Way (B 22613-1, Brunswick 8116)

NYC, March 23, 1938, Teddy Wilson and His Orchestra: Bobby Hackett (cornet), Pee Wee Russell (cl), Tab Smith (as), Gene Sedric (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Al Hall (sb), Johnny Blowers (d)

 

37 If I Were You (B 22822-2, Brunswick 8150)

NYC, April 29, 1938, Teddy Wilson and His Orchestra: Bobby Hackett (co), Jerry Blake (cl), Johnny Hodges (as), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Al Hall (sb), Johnny Blowers (d), Nan Wynn (vo)

 

38 Jungle Love (B 22825-2, Brunswick 8150)

ibid, omits NW

 

(written 2022.12.4)

2022/12/16

ぼくのヴィンテージ・ジャズ愛 〜 The Teddy Wilson expanded

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(4 min read)

 

The Teddy Wilson expanded
https://open.spotify.com/playlist/3mlZIEPzdEg5H0CoIhoeBd?si=bc0d487eb5e546ec

 

かつてCBSソニーから発売されていたLP二枚組『ザ・テディ・ウィルソン』をもとに自作した2018年7月末のSpotifyプレイリスト『The Teddy Wilson expanded』がそこそこ好評だというのを実感しています。この手の1930年代ジャズとしては異例の10個ライクがついていますから。

 

CBSソニー盤の二枚組レコード『ザ・テディ・ウィルソン』(何年発売だっけ?)とその収録全33トラック32曲にかんしては、以下の過去記事をごらんください。すべて書いてあります。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/post-5fcf.html

 

なぜ自作プレイリストかって、そりゃLP『ザ・テディ・ウィルソン』は日本でしか発売されず、その後は一度もCDリイシューされていないし配信なんかにもちろんないんですよ。だけど二枚組のソースになっていたSP音源じたいはサブスクにあるからっていうんで、一曲一曲ひろっていってつくりました。

 

そうしたいほど1930年代スモール・コンボ編成のスウィング・ジャズが大好きで大好きでたまらなく、そのなかでも『ザ・テディ・ウィルソン』こそ最愛好だったというか、そもそもぼくがヴィンテージ・ジャズ愛をいだくようになった大きなきっかけがこのレコードでした。

 

いまではもうすっかりサブスク生活が板についているので、なんとかそっちでも同じのが聴けたらいいな〜っていう、そういう個人的な動機で作成し公開したら思いのほか好評で、『ザ・テディ・ウィルソン』なんていまだ忘れられないのは自分だけなんじゃないかと感じていたところ、あんがいそうでもなかった。うれしい。

 

それをベースにして個人の趣味で『拡大版』に追加したのはビリー・ホリデイの五曲。いずれもビリーのアルバムに収録されているがため『ザ・テディ・ウィルソン』には選出されなかったんですが、もとのセッションも当時のSPレコードもテディ・ウィルスン名義の同一ですからね。ビリーの歌がことさらいいものだけ選って分けたという事情でしかないので。

 

それらだってビリーのヴォーカルはほかのもの同様1コーラスだけ、残りは楽器演奏で、そこが極上な逸品をみすみす除外する理由なんてぼくには見つかりませんでした。テディのピアノはもちろんベニー・グッドマン(cl)やレスター・ヤング(ts)など名演ぞろいですから。

 

こういうの、大学生のころから好きだった音楽ですが、ここのところ熱が再燃しているのはあきらかに近年のレトロ・ジャジーなポップス大流行の波にぼくも完全に乗っているからです。そうした最近の歌手たちはみんな1920〜40年代スタイルのクラシカルなジャズに範をとっていますからね。

 

そういった新作音楽をどんどん聴いているうち、(ぼくのなかで)元祖的な存在だったともいえる『ザ・テディ・ウィルソン』みたいなアルバムのことも思い出すようになり、こっちは当時のレコーディングがそのまま生きているわけですからレトロというよりヴィンテージといったほうが正確なんですが、愛好心情としてはレトロな感覚もあるんです。

 

※ 『The Teddy Wilson expanded』、ディスコグラフィーは明日

 

(written 2022.12.4)

2022/12/14

ナベサダ in 南ア 〜 マッコイ・ムルバタ

Img_6404

(2 min read)

 

McCoy Mrubata / Hoelykit?
https://open.spotify.com/album/4ogL5p7CSOR7rDWvnUPcN0?si=ed5QXQN3TUSMG-elwqJC2g

 

bunboniさんのご紹介で知りました。感謝ですね〜。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-11-27

 

っていうのは1曲目がもろ「オレンジ・エクスプレス」そのものじゃないかっていうことだけじゃありません。マッコイ・ムルバタ(南アフリカ)の『Hoelykit?』(2000)は全体的にフュージョン・アルバムだと思うんですよね。

 

それも渡辺貞夫さんが『マイ・ディア・ライフ』でポップ・フュージョン路線に転向するちょっと前、1970年代前半〜なかごろにやっていた音楽にそっくり。フュージョンというのはもちろんジャズとアフリカ音楽の、ってことです。

 

いうまでもなくマッコイが貞夫さんっぽいというのは順序が逆であって、こうしたアフリカン・ジャズがまずあって、なんどかの現地訪問でそれを学んだ貞夫さんが自分の音楽にとりいれたということ。マッコイの本作も南ア・ジャズの伝統を受け継ぎ、現在活況の同国新世代ジャズ・シーンへとそれをつなげた傑作でしょうね。

 

個人的に特にグッと胸に迫るのは終盤8曲目からの三連続。ジャズ〜フュージョンらしさ満開で、貞夫さんがどのへんのアフリカン音楽から吸収したかモロわかりな、つまり言い換えればぼくみたいに貞夫フュージョンからまず聴いていたファンには既聴感ばりばりで、親しみやすく。

 

なかでも8曲目での熱いジャジーなソロの連続にはトキメキます。4/4ビート・パートと8ビート・パートを行き来するリズム・アレンジもいいし、その上でフリューゲル・ホーン、サックス、ピアノ三名のソロもはじけています。ピアノのアンディル・イェナナは印象に残ったので、名前をおぼえておきましょう。

 

世界的にみても1980年代のフュージョン・ミュージックが多ジャンル混淆的な21世紀新世代ジャズのいしずえを築いたことは明白なんですが、マッコイの本作も、現在の南ア新世代ジャズの活況を考えるとき、その先駆けとなったことは疑えないですね。そんなこと言わなくたって、これじたい楽しいですし。

 

(written 2022.12.7)

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