カテゴリー「ブルーズ」の142件の記事

2023/01/20

ファンク・ブルーズ五題(5)〜 ウィル・ジェイコブズ

81puouqv0el_ac_sl1500_

(3 min read)

 

Will Jacobs / Goldfish Blues
https://open.spotify.com/album/37ch8gg8aeKqab8LwgCPO4?si=zmJI6S2ESmup8dk7BVx5gg

 

2022年のデビュー・アルバム『ゴールドフィッシュ・ブルーズ』リリース時点で29歳の新人ブルーズ・ギターリスト&シンガー、ウィル・ジェイコブズ。なんでも10代のころから地元シカゴのローカル・シーン&ヨーロッパでは活躍してきたとのこと。

 

このアルバムもPヴァインの『P-VINE recommended BLUES & SOUL feat. STAN MOSLEY』プレイリストで知ったんだとばかり思っていたからシリーズにつらねたんですけど、どうも違うみたい。そのプレイリストに本作からの曲はないです。

 

じゃあどこで気づいたのかって、もうすっかり忘れちゃいましたゴメンチャイ。いちおうファンク・ブルーズとのシリーズ題につなげてみたものの、ウィルの本作はファンキーというよりぐんと軽くあっさり風味。淡白なポップ・フィールもあります。

 

本人のヴォーカル&ギターのほかはベースとドラムスしかいないトリオ編成で、かなりシンプルで整理されたサウンドだっていうのもそんな印象に拍車をかけています。それでも4、8、10曲目など正調ファンク・チューンもあるにはあって。

 

ファンクといってもディープさはなく、わりと軽めなんですけどね。エレキ・ギターの音色だってほとんど飾らずファットでごてごてした感じにせず(エフェクター類をあまり使っていないはず)、素直なストレート・サウンドにチューンナップしてあるのも淡白系ブルーズとの印象を強めている一因。

 

そうそうギターといえばですね、本作ではどの曲でも二本、三本と同時に聴こえるんですが、あきらかにウィルの一人多重録音だっていうのが疑いなく明白にわかってしまうっていう、ここまでそれがはっきりしているギターリストもめずらしいんじゃないですかね。

 

聴きやすいファンク・ブルーズだっていうか、そもそもが暑苦しくむさい世界なんですけど、本作はまったく印象が違います。聴き手によってはこんなのダメだものたりないよという感想が浮かぶでしょうが、ここ一、二年あっさり薄味系の音楽こそフェイバリットになってきたぼくにはこういうのもときにはいいな思えたり。

 

(written 2023.1.8)

2023/01/19

ファンク・ブルーズ五題(4)〜 サード・コースト・キングズ

A3811524460_10

(2 min read)

 

Third Coast Kings
https://open.spotify.com/album/3vTo93HPZchFgdKcW9XwVs?si=IWJa1Z4zQaCBevrUaIBLKQ

 

これまたPヴァイン製プレイリスト『P-VINE recommended BLUES & SOUL feat. STAN MOSLEY』で知ったもので、サード・コースト・キングズの『サード・コースト・キングズ』(2012)。ほとんどジェイムズ・ブラウン・マナーのファンク・ミュージックで満たされています。

 

米ミシガン州のバンドなのは間違いないみたいですが、同州デトロイト発とするもの(CD販売サイト)とアン・アーバーとするもの(Wikipedia)が併存しています。公式サイトでは “Metro Detroit area” が出身活動地だということになっていますから、たしかにアン・アーバーも近接していますよね。

 

アルバム・トータルで聴くと正直やや一本調子で、しかもアマチュア・バンドくさいゴチャゴチャ感も否めない面があると思うんですが、じっさいこのバンドはアルバムなら2曲目に収録されている「ギヴ・ミー・ユア・ラヴ」を2010年に7インチでリリースして、それ一発で知られるようになったみたいです。

 

ただし、それとか4、6曲目とか一般にこのバンドの代表作とみなされているらしいヴォーカル・ナンバーよりも、アルバムで多数を占めるインスト曲のほうが個人的には好み。よりグルーヴィですし、聴きやすいし、ギターとドラムスがJBスタイルで、たとえば1、3、5曲目あたりカッコいいです。

 

ちょっぴり雑なところもかえって味で、ホーン・アンサンブルにしろきちんときれいに重ならないとかピッチがあいまいだとかいうのが勢いというかパワー、拡散力を産むことにつながっているとも聴こえます。そういうのってアフロビート・バンドなんかでも散見されるフィーリングでしょう。

 

ファンクとかってそうした押しまくる勢いみたいな部分で勝負するといったところもあるんじゃないかとぼくは思っているし、グルーヴ・ミュージックだからそれでいいかなと思います。デリケートでていねいな音楽じゃないですけど、それを求めるものじゃないですよね。

 

(written 2023.1.4)

2023/01/18

ファンク・ブルーズ五題(3) 〜 イーストサイド・キングズ

51q5i63kw0l_ac_

(2 min read)

 

Eastside Kings / テキサス・ファンキー・ブルース最前線
https://open.spotify.com/album/66vmErRZu8DGwDIphPDMiZ?si=_hk_qdIvSjupwwMy7ncMPQ

 

これもPヴァイン製のサブスク・プレイリスト『P-VINE recommended BLUES & SOUL feat. STAN MOSLEY』で知ったもの。イーストサイド・キングズとは個人的に初耳で、アルバム題はなぜかの日本語『テキサス・ファンキー・ブルース最前線』(2016)。日本企画アルバムなんでしょうか。

 

テキサス州オースティンのイースト・サイド出身メンバーがやっているからこのバンド名があるみたいで、リーダーはオルガン奏者&シンガーのピー・ウィー・カルヴィン。ふくめ総勢七名で編成されています。Spotifyにあるアルバムは『テキサス・ファンキー・ブルース最前線』一個だけ。

 

カヴァー曲にもちょっと特色のある作品で、なかでも特に2「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」、7「クライ・トゥ・ミー」、13「ブギ・チルン」あたりはぼくでも知っているくらいな有名スタンダード。それをグルーヴィ&ファンキーに料理しています。

 

それらもオリジナル曲もふくめ、全体的にいかにもテキサスらしいシャッフル・ビートが多く、なかには典型的ジャンプ・ナンバーみたいに仕上がっているものもあり。21世紀の作品ですけど、このへんローカルに根づいたブラック・ミュージックの伝統は不変なんでしょうね。

 

タイトなファンク・チューンやなつかしめフィールのインスト・ナンバーだってあるし、聴いていてとにかく文句なしに楽しい。ブルーズ系のアメリカ黒人音楽、特に1940〜60年代あたりのそれがお好きなファンのみなさんであれば、ぼくと同じように愉快な時間をすごすことができるはず。

 

(written 2023.1.3)

2023/01/17

ファンク・ブルーズ五題(2)〜 クリスタル・トーマス

818hozvfl_ac_sl1500_

(2 min read)

 

Crystal Thomas / It’s The Blues Funk!
https://open.spotify.com/album/5O2aONk6KwqBhP8GEOPhqV?si=aG9_5577TlSYcbgXO7uv3Q

 

きのう書いたスタン・モズリーの新作リリースをきっかけに、発売元のPヴァインがサブスク・プレイリスト『P-VINE recommended BLUES & SOUL feat. STAN MOSLEY』を作成公開しました。これが楽しいので、よく聴いては参考にしています。Spotifyでは2個しかライクがついていません(うち1個はぼく)。
https://open.spotify.com/playlist/1Z9xYaYKThGv91CFFmaMJR?si=6898b06064704a84

 

それで知ったクリスタル・トーマスのアルバム『It’s The Blues Funk!』(2019)がめっちゃカッコいいのでビビっちゃうくらいなんですね。まさにグルーヴィな豪速球ファンク・ブルーズ一直線で、アルバム題なんかその自信に満ちあふれていますよね。

 

トラックリストに共演者としてチャック・レイニーとラッキー・ピータースンの名前が出ていますが、チャック・レイニーってあれですかキング・カーティスやアリーサ・フランクリンなどともやったあのベーシスト?そうですねそのひとしかいませんね。

 

ラッキー・ピータースンはハモンド・オルガン&ピアノで、そのほかにドラムスとギターだけっていうシンプルな編成の生演奏でグイグイ攻めてくるパワーに圧倒されます。インストルメンタルの8曲目でトロンボーンを吹いているのは、その道でも知られたクリスタル自身でしょう。

 

アルバムは1曲目からもうカッコよすぎて、こりゃいいね!とヒザを叩き快哉を叫ぶ痛快なグルーヴィさ。イントロや間奏のギター・ソロもすばらしくノリいいし、バンドもねえ、従来的なファンク・ブルーズの枠内にすっぽりおさまっていて新しさなんかはないんですけど、ここまで熟練のブルーズを聴けばそんなもん必要ねえって気分。

 

2曲目以後も同じ。特にファンクネスがたぎっているようなタイトなグルーヴを聴かせる4、6(JBみたい)、7、8曲目あたりはなんど再生しても最高の快感。クリスタルのヴォイス・カラーには好嫌が分かれる部分があるかもですが、バンドの演奏にはだれも文句つけられないでしょう。

 

もしこれが2022年のリリース作品だったら、年末のベスト9に入れたかったくらいです。ファンク・ブルーズ史上でみても傑作の一つでしょう。

 

(written 2023.1.2)

2023/01/16

ファンク・ブルーズ五題(1) 〜 スタン・モズリー

Xat1245765668

(2 min read)

 

Stan Mosley / No Soul, No Blues
https://open.spotify.com/album/2h7BgA3IliA1QQmvFo37d1?si=TzHBZDwiTZSWPVzZDqZ-cA

 

Pヴァインなどが全面展開しているからですが、2022年暮れ以来日本におけるブルーズやアメリカン・ブラック・ミュージック・ファンの話題をさらっている感もあるスタン・モズリーの新作アルバム『No Soul, No Blues』(2022)。ぼくもシビレています。妹尾みえさん経由で知ったんでした。日本企画作。

 

かつてマラコでも活躍したスタンはブルーズも歌えるソウル歌手といったところでしょうか。本新作はファンク・ブルーズのアルバムみたいに仕上がっていて、そんなところもたいそう好み。タイトなリズムとホーンズがめっちゃカッコいい。

 

スタンのヴォーカルはソウル歌手らしいふくらみを感じさせるもので、シャウト型で鋭角的にガンガンくるというよりはふわっとした印象が(本作では)あります。ちょっぴりニュー・ソウルっぽい?ここは日本人ブラック・ミュージック・リスナーのみなさんと意見が違うところでしょう。

 

それにこのアルバムで個人的にいちばん好きなのは、やわらかくジャジーな6「Undisputed Love」なんですもんねえ。グリッサンドするホーン・アンサンブルもレイド・バックしているし、こういうのが気持ちいい人間ですから、いまは。それでもファンキーな感覚は濃厚に漂っています。

 

アルバム全体のサウンドはゴツゴツしていて迫力があるし、ヴォーカルは「気合」と呼ぶしかないようなフィーリングに満ちているし、ストレートなブルーズらしいものはほとんどありませんが、ソウルフルなファンキーさが横溢していて、ガッツのある(従来的な意味で)ホンモノのブラック・ミュージックをこそ求めているという向きには歓迎されるはず。

 

(written 2023.1.1)

2022/11/11

12 Essential Contemporary Blues Artists(2)〜 ルーシー・フォスター

51xlrpxznql_sy580_

(3 min read)

 

Ruthie Foster / Live at the Paramount
https://open.spotify.com/album/4WpmLRfmXFom0gjfLb9FWG?si=QKiu8KXpT72flqdqrxzsJw

 

以前シュメキア・コープランドをピック・アップしたPopMattersの記事『12 Essential Contemporary Blues Artists』(↓)から、二回目はルーシー・フォスターをとりあげてみます。
https://www.popmatters.com/12-essential-contemporary-blues-artists

 

ルーシーは1997年にアルバム・デビューしているようなので、その点ではやはり新世代っていうわけじゃないんでしょうが、こねくらずガナらずコブシもまわさないヴォーカル・トーンにはジャジーなさっぱり感があって、決して旧タイプの濃ゆい歌いくちじゃないですね。

 

最新作『Live at the Paramount』(2020)は、地元テキサスはオースティンのパラマウント・シアターでやったショウをライヴ収録したアルバム。大きな編成のバンドをしたがえていて、そのアレンジを(マイルズ・デイヴィスとの共演歴もある)ジョン・ビーズリーがやっています。

 

ちょっぴりハイ・ソウルっぽいフィーリングも香る音楽で、だからブルーズの枠で知りはしたものの、本作で聴くかぎり実態はさわやかジャジー・ソウルみたいな持ち味です。ジャズ・シンガー寄りかなという感触がしますね。

 

なんかフュージョンっぽいのも三曲ほどあったりするし、それでいて従来的なジャンプっぽい強いシャッフル・ビートの効いたストレートなブルーズ・ナンバーで声を張るものも複数あるっていう。

 

しかしどんな曲をどんな伴奏でやるにせよ、ルーシーのストレート&ナイーヴなヴォーカル・スタイルは一貫していて、それがあるから安心して聴くことができますね。従来的な曲想のブルーズ・ナンバーでは大向こうをうならせるミエを切るような強い発声もできる多彩なスタイルの持ち主。

 

アルバム全体でみると、ブルーズの枠で知り聴いてみたもんだからどうしても「けっこうさっぱり淡白なジャジーさだ」という印象が先行してしまいますが、ほんとうはそっち、つまりブルーズも歌えるジャズ歌手、と考えたほうがいいのかもしれません。バンドのサウンド・アレンジも手伝って、そういう気になってきました。

 

なお、ラストでアンコール的に二曲のジャズ・ナンバー「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「マック・ザ・ナイフ」をやっていますが、その前の「フェノメナル・ウーマン」がとってもいいです。キャロル・キング/アリーサ・フランクリンの「ア・ナチュラル・ウーマン」を意識した曲なのはあきらか。

 

決してロー・ダウン&ダーティな感じになることがなく、どんな曲をやっても常にクラッシーなのがルーシー。その意味では、もはやベテランに近いくらいのキャリアの持ち主ではありますが、(ブルーズ歌手とみれば)新世代的な感覚を備えているといえる面があるかも。

 

(written 2022.10.27)

2022/10/03

ブルーズ界最長老にして最現役 〜 バディ・ガイ

71zdvl6cx4l_ac_sl1500_

(3 min read)

 

Buddy Guy / The Blues Don’t Lie
https://open.spotify.com/album/4l9eneOLKyG0u5W4bkDQwp?si=ttryH2pdTM-cW3ApwrkrVQ

 

1936年生まれ58年デビューだから今年でバディ・ガイは86歳キャリア64年目。影響を与えたギターリストなら星数で、代表的有名どころだけでもエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、ジミ・ヘンドリクス、キース・リチャーズ、スティーヴィ・レイ・ヴォーンなどなど。

 

そしてそれら弟子格のだれよりも2022年ではバディ・ガイのほうがばりばり最前衛の現役感を発揮しているっていう。これはすごいことですよ。そう「すごい」なんていう安直すぎてふだんは使えない表現しか出てこないほど、このブルーズ・ギターリスト&シンガーは突出しています。

 

出たばかりの新作『ブルーズ・ドント・ライ』(2022)でもそんなとんがったブルーズ表現が健在で、加齢で衰えるなんてこととはまったく無縁。どうなってんのこのひと?音楽じたいはずっと不変のもので、いまさらとりたててどうということもないんですが、こんな作品を2022年に86歳が発表できるっていう事実は、はっきりいって特例的だと思います。

 

本作ではメイヴィス・ステイプルズ、エルヴィス・コステロ、ジェイムズ・テイラー、ボビー・ラッシュ、ジェイソン・イズベル、ウェンディ・モーテンといった豪華で多彩なベテラン・ゲストもむかえ、それらもすべてバディ・ガイの土俵にひきずりこんで飲み込んでしまうという器のデカさを如実に示しているのもすごい。

 

楽しくグルーヴするファンク・ブルーズが中心だけど、たとえばメイヴィス・ステイプルズやジェイムズ・テイラーと共演したものなんかはややシリアスな社会派の眼差しも歌詞にあって、いかにもこの共演者だねっていうタイプをしっかり発揮しているのも好ましく、それでいてギターは変わらずバディ・ガイのサウンドを出しています。

 

それもこれも吸収しての「ブルーズ」なんだよという老熟な境地はやはりしっかり聴きとれて、考えてみればこのジャンルはむかしからある意味社会派な音楽でもあったというか、個と社会がピッタリ張り合わせになった地点をこそつづってきたもの。60年以上ブルーズをやってきたバディ・ガイなら骨髄に沁み込んでいる事実でしょう。

 

つまり不変=普遍の人間感情とか存在のありようをペンタトニックに乗せて表現してきた音楽であるブルーズなんて、決して時代遅れになることもないし流行とか更新とかそういったことを意識する必要もないっていう。むかしから変わらないこの音楽の根っこの核心部分だけ煮詰めて煮詰めて凝縮したようなある種のイコンと化したのが、2022年のバディ・ガイだということでしょうね。

 

(written 2022.10.2)

2022/09/03

意識的なブルーズの声 〜 シュメキア・コープランド最新作

71tavyu9p4l_sl1500_

(3 min read)

 

Shemekia Copeland / Done Come Too Far
https://open.spotify.com/album/3509A3ATMDnr5hYBji4RcV?si=pZf_nu2eRoegrkH9956ZvQ

 

ブルーズ歌手、シュメキア・コープランド。きのうの文章を書いてしばらく寝かせていたら、そのあいだに新作が出ちゃいましたね。『ダン・カム・トゥー・ファー』(2022)。Spotify公式の新作紹介プレイリスト『Release Rader』で知りました。

 

カッコよくノリいいファンキーなグルーヴ・ブルーズがやはり中心で、なかにはアクースティックなものやザディコやカントリー・ナンバーなんかもありますが、エレキ・スライド・ギターがぎゅわ〜んと鳴るようなものがシュメキアの本領で、たっぷり聴けます。

 

なんですけども歌詞に耳を向けるとかなりな社会派っていうか、シリアスでヘヴィな内容を正面から歌い込んでいて、シュメキアはウィル・キンブロー(プロデューサー)と組んだ2018年の『アメリカズ・チャイルド』からこれで三作、ずっとこの路線。メイヴィス・ステイプルズ、リアノン・ギドゥンズあたりと共鳴するような意識的な黒人歌手といえます。

 

本新作でも銃乱射事件、黒人差別問題、奴隷制度、父から子への性虐待など重いテーマが扱われていて、シャウト型といえるシュメキアの濃厚な発声と歌いまわしはこうした内容を歌って強い説得力を持たせることのできるものですよね。BLM以来のアメリカ黒人の声といえるかもしれません。

 

シュメキアにかぎりませんが、そんな深刻なテーマの数々を歌いながらも決して暗くグルーミーなフィーリングになることがなく、どこまでも強くしっかりしたグルーヴを保っているのはアメリカン・ブラック・ミュージックの美点でしょう。

 

サウンドとかビート面でいえば、個人的には2曲目「ピンク・ターンズ・トゥ・レッド」がアルバムでいちばんの好み。1曲目ではゲストとしてサニー・ランドレスの名前がトラックリストに出ていますが、この2曲目でも同様の粘りつくスライド・ギターが聴けます、だれが弾いているんでしょう。ドラマーもいいな。

 

8「ベアフット・イン・ヘヴン」でもビート感とトゥワンギーなギターが心地いいし、マディ・ウォーターズ「フーチー・クーチー・マン」みたいなリフを持つラスト12「ノーバディ・バット・ユー」は父ジョニー・コープランドの曲。これもいいですね。

 

ジャズやロックにおける(オヤジ嗜好的な)ブルーズ成分はもはや時代遅れで、薄ければ薄いほどいい、できればないほうがいいというのが2010年代以後的なアメリカン・ミュージックのトレンドなんですけど、どう転んでもぼくなんか(音楽感覚的にも)オヤジ世代でしかなく、ブルーズ大好きなもんで、時代意識をこうしたサウンドに乗せて聴かせてくれるシュメキアみたいな歌手の音楽だって、ある意味最新型の一つと言えるはずだと思います。

 

(written 2022.8.31)

2022/09/02

12 Essential Contemporary Blues Artists(1)〜 シュメキア・コープランド

71jcsxufgul_ac_sx522_

(3 min read)

 

Shemekia Copeland / Deluxe Edition
https://open.spotify.com/album/747l6AGzZzDh8yBQLJgLgT?si=yVzrhPkBTN2_lP9YoPSGRg

 

今年四月ごろだっけな、PopMattersが「12 Essential Contemporary Blues Artists」という記事を載せていました。ざっと読んで、聴けるだけ聴き、印象に残ったものは書いておきたいと思います。
https://www.popmatters.com/12-essential-contemporary-blues-artists

 

きょうは一番手ということでシュメキア・コープランド。日本では一般に「シェメキア」というカナ書きをされているみたいです。1990年代末にデビューしているので「新世代」と言いにくいかもしれませんが、コンテンポラリー・ブルーズ・シーンの注目株として活躍するようになったのは今世紀に入ってから。

 

もっともぼくは上掲PopMattersの記事ではじめて知った歌手です。サブスクで聴けるものをすべて聴いてみたら、2011年の『デラックス・エディション』がいちばんの充実作と思えました。最新は20年の『アンシヴル・ウォー』(2022年8月8日時点)。アメリカーナを意識したそれもよかったですけど。

 

シュメキアのブルーズ・ヴォーカルは朗々とした声を強く張ってリキを込めるシャウト型ですね。ガナる瞬間もあったりするので、そんなにリキまずもっと軽くすっと声を出したらどうか?と思わないでもないですが、でも粘りつくようにグルーヴィで、ファンキーでかなりカッコいいので。

 

『デラックス・エディション』というアルバムは、このタイトルどおりさまざまなミュージシャンを迎え多様な曲を多くのプロデューサーと組んでやってみたという力作。ストレートなグルーヴ・ブルーズが多いには多いですが、なかにはドクター・ジョンがプロデュースしたニュー・オーリンズ・スタイルというかカリビアンな3・2クラーベ・ブルーズもあったり。

 

メロウなスローもあるし、あるいはなぜかのおだやかなジャズ・ナンバーもあって(13)それもおもしろいと思います。そこではシュメキアも強さのなかにまるでジャズ・シンガーみたいなやわらかなたたずまいをみせて、バンドの演奏も2/4拍子の平穏でトラディショナルなもの。

 

それでもやはりシュメキアの本領はあくまでストロング・フィールなファンク・ブルーズでしょう。1、7、12などで聴かせる押し出す感じのノリいい「強い女」イメージは、女性ブルーズ歌手シーンにあってはむかしから定番ではありますが、現代にはいっそうの訴求力、同時代性をたたえたものだといえるかもしれません。

 

(written 2022.8.8)

2022/08/16

ブルーズ in ハード・バップ

819e7ca37f894e68b507b4928ff460a2

(5 min read)

 

Blues in Hard Bop
https://open.spotify.com/playlist/6LfXg7WFpFqSoM8YCCIQz0?si=2270d98b18a9401f

 

が、もうホント、好きで好きでたまらないっていう人間のぼく。ひとにより退屈だとかいうケースがあっても各人それぞれの嗜好なのでそれでいいと思います。個人的に好きなものを聴き続けていくってことで。

 

そういうわけで、きょうはハード・バップ・ブルーズのなかから特に大好きという、しかもみんな知っている超ベタな有名すぎるところだけ10曲選んで、プレイリストにしておきましたのが上のリンク。

 

1)Horace Parlan / Us Three (60)
2)Miles Davis / Freddie Freeloader (59)
3)Lee Morgan / The Sidewinder (63)
4)Herbie Hancock / Watermelon Man (62)
5)Sonny Clark / Cool Struttin’ (58)
6)Curtis Fuller / Five Spot Ater Dark (60)
7)Horace Silver / Señor Blues (57)
8)Charles Mingus / Wednesday Night Prayer Meeting (60)
9)Sonny Rollins / Blue 7 (57)
10)The Modern Jazz Quartet / Bags’ Groove (88)

 

それはそうと、Spotifyで見るとカーティス・フラーの「ファイヴ・スポット・アフター・ダーク」だけカナ表記なんですが、これなんで?アルバム中でもこれだけ。英語設定で使っているし、どんな曲名も基本原語表記で出るアプリなんだけどな〜。

 

ともあれ、ここに並べた10曲のジャズ・ブルーズは、どなたにとっても説明などまったく不要の名曲ばかり。ラストのMJQだけ88年の発売になっていますが、収録は解散前の74年。それでも新しいかもしれませんね。でも曲は52年のものですから。『ラスト・コンサート』ってぼくは好きなアルバムです。

 

これ以外はすべてハード・バップ全盛期の50年代後半〜60年代初頭の録音発売です。選んでいったら結果的にそうなったのは必然の成り行きなんでしょう。いまの気分では、静かでおだやかな音楽と(その真逆みたいな濃ゆい)ブルーズ in ジャズ & ロックが音楽趣味の二本柱みたいなもんです。

 

きょう選んでおいたのは、いずれもブルーズの定型コード進行(I度、IV度、V度)そのままのものばかり。といってもモダン・ジャズですから、特にコーラス終わりとかで、ちょっぴりの変化はあるんですけれども。まずまずわかりやすくとっつきやすいし、聴き慣れた人間にとっても延々と同一パターンを反復するのには理屈抜きの身体的快感があります。

 

これらのなかでは、おそらくソニー・クラークの「クール・ストラッティン」あたりが、特に日本人ジャズ好きには最も典型的でシンボリカルなハード・バップ・ブルーズだと認識されているでしょう。カーティス・フラーの「ファイヴ・スポット・アフター・ダーク」もかな。

 

こういったあたり、あまりにもベタすぎるので、ジャズ・ファンになってまもなく通ぶるようになったぼくは、むかし大学生のころ、横目でチラ見しながらケッ!とかって思っていたかもしれません。いまや高齢者、そんな気取りというか冷淡ムードは消えたので、いいものはいい楽しいと心から素直に周囲にも言えるようになって、ここでこうしてプレイリストに選んでいるというわけです。

 

ベタというのは言い換えればミーハーということです。そう、ハード・バップにおけるブルーズ定型はミーハーな世界なんですよね。ありきたりでお決まりのワン・パターン。でもミーハーで一途な愛好情熱こそ、どんな世界でも、常に時代を動かしてきたものなんだということを忘れないでほしいですね。

 

一曲だけ、ソニー・ロリンズの「ブルー・7」だけはあまりブルーズくささのないクールな演奏で、それでも途中ソロを弾くピアノのトミー・フラナガンだけはいつものブルージーなリックを連発して、和声を感じさせないボスのテナーと好対照。マックス・ローチのドラムス・ソロがこれまた二小節単位で動くブルーズ進行を叩いているような内容で、それも楽しい。

 

(written 2022.8.15)

より以前の記事一覧

フォト
2023年1月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ