カテゴリー「ブルーズ」の150件の記事

2024/02/28

ブルーズ女子 〜 マリン・ブラッドリー

Screenshot-20240203-at-120622

(3 min read)

 

Muireann Bradley / I Kept These Old Blues

https://open.spotify.com/album/5MjoBf6hON9meluGYgLECs?si=1UGS052nSA-VHO8tmuqTig

 

若いくせにどうこうとか、ぼくはあんまり言わないんですけど。年齢差別だし、そもそも10代でデビューする音楽家はめずらしくもないでしょ。でもこのマリン・ブラッドリーのデビュー作『I Kept These Old Blues』(2023)のばあいは17歳の少女ということがことさら特別なことに思えてきます。

 

なんたってやっているのがブラインド・ブレイクそっくりな第二次大戦前のオールド・ブルーズ弾き語りなんですから。マリンというか日本のレコード・ショップなんかではミューリアンと表記されていますけど、アイリッシュで、YouTubeにある弾き語り動画を視聴すると自己紹介であきらかにマリンと発音していますからね。

 

ともあれ、父親が熱心なオールド・ブルーズ・ファンで、家でも車のなかでも聴きまくり、そのよさを熱心に語りまくるというひとであるらしく、そういう家庭環境で育ったせいで子のマリンも自然とオールド・ブルーズ・ファンになったんだとか。

 

しかも父は自分でギターを弾くので、それを聴いていたマリンは自分でもやってみたいと思うようになり、9歳のときに小さなギターを買ってもらって弾きはじめたみたいです。

 

育った家庭環境に影響されて古いジャズとかブルーズとかその他レトロな趣味を持つようになったという例は近年きわめて多いようにみえます。いままでも多数書いてきました。それがマリンのばあいはブラインド・ブレイクみたいなブルーズだっただけで。

 

アルバムはゲイリー・デイヴィス師の「キャンディマン」ではじまって、以降、ミシシッピ・ジョン・ハート、ブラインド・ブレイク、エリザベス・コットン、ステファン・グロスマン、ジョン・フェイヒィらのレパートリーがならんでいます。

 

フィンガー・ピッキングで弾くギターのほうの腕前はすでに一級品。自分でもそこに自信があるのかそれを聴かせるギター・インストルメンタルも二曲あります。じつにうまいですよ。チューニングも多彩なものを駆使。

 

そしてヴォーカル。17歳が「無垢」だとは必ずしも思わないんですがぼくは。でもこのアルバムで聴くマリンの声はかなり幼いです。そこがですね、こんなガキじゃあブルーズやったって説得力ないよと思うか、それともおもしろい効果を産む結果になっていると思うかで評価は分かれそうですよね。

 

(written 2024.2.12)

2024/02/04

小出斉さんが亡くなった

Screenshot-20240204-at-121334

(2 min read)

 

ということで、この訃報に土曜日に接し悲しみにくれています。ぼくとしてもやはり大きなショックです。

 

小出さんのことはとにもかくにもブルーズ・ライターとして知りました。1995年初版の『ブルースCDガイド・ブック』。これで初めて小出斉という名前を知ったのです。

 

あるとき書店の音楽コーナーに並んだ初版を手にとって眺め、なんだかこれはよさそうと思って買いましたが、それがブルーズの世界にのめり込むきっかけとなったのです。

 

もうブルーズCDのことはなにもかも小出さんのこの本に教えてもらったと言っても過言ではないくらい。そこまでではなくとも『ブルースCDガイド・ブック』のお世話にならなかった日本のブルーズ・ファンを想像できにくいと思うくらいの存在だったと思います。ぼくはお世話になったなんてもんじゃなかったです。

 

1995年初版ですが、ちょうど90年代はブルーズCD発売ブームだったこともあって、それもあいまって絶好のタイミングで出版された本だったと思います。小出さんの『ブルースCDガイド・ブック』がなかったら、ぼくはここまでのブルーズ・リスナーになっていなかったかも。

 

とにかくあの本はボロボロになるまで使いたおしました。すみからすみまでなんども熟読し、格好のディスク・ガイドでもあったし、なにより読ませる文章が書けるライターでしたね。

 

本業がブルーズ・ギターリストであることはしばらく経ってから知り、ステージでの生演奏に接する機会もありました。ライターとしても『ミュージック・マガジン』でティナリウェンのことを書いたりもしていたことが記憶に残っています。

 

(written 2024.2.4)

2023/12/17

ぼくは大のフュージョン好きですよ

Screenshot-20231217-at-122134

(3 min read)

 

「私の中では、レイボーンはフュージョン・ミュージックの範疇です」というコメントがブログにこないだつきました。ブルーズ・ロック・ギターの記事でスティーヴィ・レイ・ヴォーンに言及したからだと思います。そのかたのなかではフュージョンをくだらない、つまらない音楽の代名詞として使っていることが文脈から読みとれました。

 

どの音楽家が好きかどうか、評価できるかどうかは個人差が大きくて、他人の考えはぼくには関係のないことですから、レイ・ヴォーンをどう思うかはどっちでもいいと思います。問題はそこではありません。

 

ぼくの考えでは二点、問題があると思います。(1)否定的なコメントを、それが好きだと書いてある文章にわざわざ向ける必要があるのか(2)フュージョンというタームを否定の代名詞として使うこと。

 

なにかが好きだと発言している主に向けて、いやそれは自分はあんまり好きじゃないといきなり言う必要などぜんぜんないと思うんですよね。こちらは気分を害するだけで、建設的要素がなにもないです。

 

自分はこれが好きじゃない、嫌いだ、評価できないとかいった種類のことは、自分のアカウントなり場所で一人で勝手に発すればいいだけのことで、他人のブログであれなんであれ、それが好きで聴いているという人物に向けることはないと思うんですよね。

 

こういったことは、ひょっとして10年くらい前に世間の常識として定着したんじゃないかと思っていたのですが、Twitterとか見ていてもやっぱり相手にわざわざ向けて見えるように発言するかたがまだまだいるようです。ちょっとね、もうそういうことはやめてほしいわけです。

 

フュージョンという音楽はくだらない、つまらないものなんかじゃ決してなく、むしろとっても楽しいし評価できるものなんだというテーマはやや大きなことで、きょうのぼくの手に負えるものではありません。

 

個人的には1979年にジャズやその関連領域にハマるようになったので、当時全盛期だったフュージョンをリアルタイムで聴いていて、いいな楽しいなと当時から実感していましたし、いまでもその気持ちは変わりません。

 

この大きなテーマを展開するパワーがいまはありませんが、2020年代のコンテンポラリー・ジャズの源流の一つでもあるし、少なくともぼくのなかの気持ちとしてはフュージョン大好き、いい音楽だという認識があることだけはみなさんに知っておいていただきたいと考える次第であります。

 

(written 2023.12.17)

2023/07/12

1978年のレトロ・ポップ 〜 アルバータ・ハンター

1753720

(4 min read)

 

Alberta Hunter / Amtrak Blues

https://open.spotify.com/album/1m4GnCnP6Z6jS4YcX3Vl8y?si=LTGjhQzFSrSSpAY98Fso0Q

 

以前「落ちぶれたらみんな知らん顔」プレイリストに選んで思い出したアルバータ・ハンターの復帰作『アムトラック・ブルーズ』(1978)。78年のリリースですが79年にジャズ・ファンになったぼくは当時の最新アルバムとして知り買いました。『スイングジャーナル』誌にレヴューが載ったか話題になっていたはず。

 

『スイングジャーナル』はジャズ雑誌でしたが、あのへん1920年代に最隆盛だった米北部都会派女性ブルーズは同時代のジャズとたいした違いはなく、当時から伴奏陣は全員ジャズ・ミュージシャンでしたし、音楽性も似たようなもんです。べシー・スミスだってぼくが知ったころは(CBSソニーの同じシリーズで)ジャズ・レコードの棚にならんでいたんですからね。

 

じゃなかったらジャズ・ファンになりたての時期のぼくがベシーとかアルバータとかに出会って買うなんてことはなかったはず。ロックからブルーズに入ったファンがこういった種類のものにイマイチ苦戦する心境を吐露なさるケースがあるのもこれが理由でしょう。

 

『アムトラック・ブルーズ』も、ブルーズのことをなにも知らない当時のぼくだってジャズ・アルバムとしてまったく違和感なく聴いて好きだったんですから。っていうかつまり完璧にジャズ・アルバムだとしか思っていませんでした。

 

選曲もなにもかも内容は1978年時点からしたって古いというか、いまふうのタームでいえばレトロ・ポップな内容で、2023年に聴くとそんなところがかえって新鮮かも、ある意味で。

 

最新の良好録音で古いSP時代スタイルの音楽をやるっていうそんなレトロ趣味に『アムトラック・ブルーズ』はピタッとくるかもしれません。いまや全員が忘れている作品でしょうけど、これが初アルバータ、初北部都会派女性ブルーズだったぼくには決して忘れられない思い出の一作なんです。

 

とにかく好きなのがトップの「ザ・ダークタウン・ストラターズ・ボール」。これは79年当時からいまでもずっとそう。ピアノ・イントロもジャジーですてきだし、最初の1コーラスをリズムだけでバラード調にしんみりつづるアルバータとバンド(特にピアノ)がとっても沁みます。

 

明夜のバンドのライヴに遅れたくないからちゃんと迎えにきてねお願いしますよ踊りたいからっていうだけの曲で、アルバータが歌うそんな心情も音楽好きだったら心から共感できるものに違いありません。

 

1コーラス終わるとバンドが猛然と快活なビートを刻みはじめますが、その瞬間のスリルもたまりません。スウィング調になってからは管楽器が入ってきて、オブリガートを吹いたりソロをとったり。伴奏だけ雰囲気をちょっとづつ変えながら、アルバータは同じ歌詞をなんどもくりかえしています。

 

プロデュースはジョン・ハモンド。制作陣も歌手にしても78年になにかやろうと思ったわけじゃなく、20年代から歌ってきた同じものをずっと維持していた(といっても引退していたけど)のをそのまま出しているだけで、録音技術とバンドが新しくなったことでレトロな視点と雰囲気が誕生したっていう作品じゃないですかね。声は若くないですけど。

 

(written 2023.5.1)

2023/07/03

拡大された『24 ナイツ』でもブルーズ・サイドが好き 〜 エリック・クラプトン

1008663018

(4 min read)

 

Eric Clapton / blues side of The Definitive 24 Nights
https://open.spotify.com/playlist/1IoHl9NYgUwgiWU1PZgL6A?si=08473e5594614768

 

CD二枚組だったエリック・クラプトンの『24 ナイツ』(1991)が拡大されてCD六枚+ブルーレイ三枚というボックスになった『The Definitive 24 Nights: Deluxe Box Set』(2023)から、CD2のブルーズ・サイドだけ抜き出して一個のプレイリストにしたのが上のリンク。

 

1990/91年のロイヤル・アルバート・ホール長期レジデンシー公演からのライヴ音源だった『24 ナイツ』のことは個人的にちょっと好きでずっときているというのが事実。昨年一度書きました。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2022/09/post-b01b0d.html

 

なかでも好みだったのがCD1後半四曲のブルーズ・サイド。バディ・ガイ、ロバート・クレイ、ジョニー・ジョンスンなどUSアメリカの黒人ブルーズ・ミュージシャンを一同にバンドにむかえ数々のブルーズ・スタンダード・チューンをくりひろげていたもの。

 

90年代あたりからのクラプトンがやるブルーズについては、特に次作にあたる『アンプラグド』(92)なんかできわだっていましたがクロウト筋からは散々な評判で、世間的にバカ売れしたという事実とは裏腹に従来からのブルーズ(・ロック)・ファンからは「こんなのダメ」と言われたものでした。ブルーズ・アルバム『フロム・ザ・クレイドル』(94)にしてもそう。

 

なんの心境かあのころクラプトンはかなり意識して積極的にブルーズ・スタンダードをたくさんやっていましたが、端緒となったのが『24 ナイツ』のブルーズ・サイドだったんじゃないでしょうか。その後しばらく連続していますからね。キャリア初期からブルーズばかりなひとですけれども。

 

あくまで個人的にはですね、『24 ナイツ』ふくめこのへんのクラプトンがやるあっさりこぎれいなこじんまりブルーズのこともちょっと好きで、エモーションとかスケール感とかはないものの、聴きやすいし、なんだかね、うんシティ・ポップ的洗練というか、とにかくさっぱりしていて胃もたれ胸焼けしないんです。

 

泥くさくないおしゃれでスタイリッシュなブルーズってわけで、裏返せばいくら聴いても心に残らないガツンと来ないものですから、そんなのちょっとね…とみなさんおっしゃるのはマジで理解できます。ぼくもかつて同じでしたから。この歳になってくると薄塩味がいいってだけの話で。この手の告白が恥ずかしくなくなったし。

 

ですから1991年オリジナル『24 ナイツ』でたった四曲だったブルーズ・サイドがディフィニティヴ版では13曲1時間28分となり、これでもかとたっぷり楽しめるのは(ぼくにとって)うれしいんですね。もとの四曲もきちんと再録されているし。

 

91年オリジナルにはなかったバディ・ガイやアルバート・コリンズなどクラプトン以外が歌うナンバーも収録されていますし(違いがきわだっていますけど)、一曲ジョニー・ジョンスンが完璧1930年代スタイルのブギ・ウギ・ピアノを披露するものだってあります。そういうのはどうやったってオリジナル版には入れられなかったものでしょう。タイトなファンク・ブルーズも複数あっていいですよ。

 

なお、このブルーズ・サイド、通して聴くと起承転結があって、一回のコンサートをそのまま収録したみたいな流れに聴こえますけど、じっさいには90年ものか91年か、日付だってバラバラでしょうし、それぞれベスト・テイクと判断できたであろうものを並べてつなげてあるんでしょう。

 

(written 2023.6.27)

2023/03/22

アルバート・コリンズ直系 〜 ミシシッピ・マクドナルド

1008562544

(2 min read)

 

Mississippi MacDonald / Heavy State Loving Blues
https://open.spotify.com/album/3Yh5Oq9qa4e7PvKN3bCPTQ?si=a6FPNTpjSumrYJQmnIeLdg

 

若手新世代ブルーズ・ギターリスト&ヴォーカリスト、ミシシッピ・マクドナルドの新作『Heavy State Loving Blues』(2023)が出ました。ぼくも前から注目していた存在ですが、今作はひときわ切れ味がよくなったので、これだったら書き残しておこうという気になれます。

 

聴きどころはなんたってアルバート・コリンズ系といえるパキポキ・ギターのカッコよさ。歯切れよくたたみかけてくるこうしたサウンドはヤミツキになっちゃう生理的快感で、じっさいラスト10曲目「Blues for Albert」なんか明確にコリンズへささげたインストルメンタル・ブルーズ。

 

全編ブルーズ・ギター・ソロなんですが、はさまれるように途中でちょっとだけナレイションが入ります。そこではミシシッピ・マクドナルドがいつどうやってコリンズのレコードを知ったかという出会いや感謝のことばがつづられています。

 

これだけでなくアルバム全編でサウンドの粒だちがよく、ギターがよく鳴っているのがわかりますし、自作のファンキーなソングライティングも以前に増して充実しているし、だれがアレンジをやっているのか適度にカラーを添えるホーン・セクションもほどよいころあい。

 

ヴォーカルのほうは正直いって「がんばっているな」という以上の感想を持ちにくいんですが、今後はさらに向上するでしょうし、なによりこれだけ弾ければね、エリック・クラプトン〜スティーヴィ・レイ・ヴォーンの系譜に連なる新世代として現役のパワフルさを聴かせつける力作といえるはず。

 

(written 2023.2.21)

2023/02/24

みんな、いまぼくらは歴史をたどっているんだよ 〜 エディ 9V

81xhj68hvnl_ac_sy355_

(3 min read)

 

Eddie 9V / Capricorn
https://open.spotify.com/album/34kckA5C2zC6ouE5ncMJfI?si=ujZvVbtETp-4RYqN1jqW6A

 

おととし12月ごろでしたか、デビュー作をとりあげたエディ 9V(ナイン・ボルト)。若手サブスク世代のレトロなブルーズ・ギターリスト&シンガーなんですが、二作目『キャプリコーン』(2023)が出ました。

 

ジョージア州メイコンにあるキャプリコーン・スタジオで録音したもので、それゆえでのアルバム題。ここはオールマン・ブラザーズ・バンド、マーシャル・タッカー・バンド、ウェット・ウィリー、チャーリー・ダニエルズ・バンド、ボニー・ブラムレットなどが数々の名作を生み出してきた南部の名門レコーディング・スタジオ。

 

それもあってかエディ 9Vの今作はブルーズだけでなくもっと幅広いサザン・サウンドを展開していて、ソウル/スワンプ・ロック寄りの内容になっているのが、ある意味前作以上にとってもいい。3、8曲目はカヴァー。

 

ブルージーなエレキ・ギター・ソロが今回も全編でたっぷり聴けますが、前作と違ってエディ本人ではないようです。メンバーのギターリストにまかせているみたいで、本人はヴォーカル中心。ドゥエイン・オールマンばりのスライドが聴けたりするので名前を知りたいな。

 

そのスライドがカッコいい2曲目、8曲目(ボブ・ディラン)なども特に出来がよく、聴きごたえありますね。シル・ジョンスン → ボニー・レイトな3もすばらしい。ホーン・セクションの入りかたまでまさに南部ふうで、1970年前後ごろの雰囲気満点。

 

ギターをさほど弾かずともヴォーカルだけでじゅうぶん魅せるエディは、歌手としてもここまでの存在なんだということを立派に証明しています。ナイン・ボルトっていうステージ・ネームがエレキ・ギターへの言及で、前作なんかはそこにフォーカスしていた感じでしたが。

 

2曲目が終わって3曲目に入るとき、エディがバンド・メンバーに向けてしゃべっているんですけど「great brothers, we’re tracking history right now, ya all」って。本人もアトランタ出身であり、歴史を創ってきた南部の名門スタジオでやっているんだぞっていうある種の高揚感が伝わってくるようじゃないですか。

 

(written 2023.2.10)

2023/02/01

ブルーズの年輪 〜 アンジェラ・ストレイリ

A1207943089_10

(2 min read)

 

Angela Strehli / Ace of Blues
https://open.spotify.com/album/1Yx4Cwak3jUGTZxWR74oga?si=CECNkKwiQpaMkBXEVa81pg

 

テキサスのブルーズ・クラブ、アントンズ設立にも関係したベテラン・ブルーズ歌手、アンジェラ・ストレイリの最新作『Ace of Blues』(2022)は、このアルバム題で推察されるとおりO.V. ライトの「エイス・オヴ・スペイズ」をカヴァーしているのがキモ。

 

そもそもが(ラスト12曲目を除き)カヴァー・アルバムなわけですが、個人的にことさら印象的なのが「エイス・オヴ・スペイズ」と「トライング・トゥ・リヴ・マイ・ライフ・ウィズアウト・ユー」(オーティス・クレイ)という二曲のソウル・ナンバー。

 

これら以外はブルーズ・ナンバーでベテランらしいこなれた無難な内容ですが、っていうかそれら二つのソウル・カヴァーだってオリジナルをほぼストレートに尊重していて驚きや意外性はないのですが個人的にはなんだか好き。

 

ブルーズだってこうしたトラディショナルなソウルだって、時代を経てもそうは変わらない世界なわけで、一枚の紙のオモテとウラみたいにして一体でともに歩みながらずっとやってきたというのを、アンジェラみたいなベテランが証明しているともいえますね。

 

声はもうすっかり老齢のものですけれど、コクのあるしっかりした歌いこなしをみせていて、バンドのサウンドだって堅実。みずみずしさよりも渋みのまさる音楽で、年輪を重ねただけあるという重厚感みたいなものが歌にあって、こういうのいいとぼくは思います。

 

唯一のオリジナルであるラスト12曲目の「SRV」というのはもちろんスティーヴィー・レイ・ヴォーンへのトリビュートでしょう。夭折した同郷テキサスの天才ギターリストを思い出しながらしんみりと思いをつづっています。

 

(written 2023.1.16)

2023/01/20

ファンク・ブルーズ五題(5)〜 ウィル・ジェイコブズ

81puouqv0el_ac_sl1500_

(3 min read)

 

Will Jacobs / Goldfish Blues
https://open.spotify.com/album/37ch8gg8aeKqab8LwgCPO4?si=zmJI6S2ESmup8dk7BVx5gg

 

2022年のデビュー・アルバム『ゴールドフィッシュ・ブルーズ』リリース時点で29歳の新人ブルーズ・ギターリスト&シンガー、ウィル・ジェイコブズ。なんでも10代のころから地元シカゴのローカル・シーン&ヨーロッパでは活躍してきたとのこと。

 

このアルバムもPヴァインの『P-VINE recommended BLUES & SOUL feat. STAN MOSLEY』プレイリストで知ったんだとばかり思っていたからシリーズにつらねたんですけど、どうも違うみたい。そのプレイリストに本作からの曲はないです。

 

じゃあどこで気づいたのかって、もうすっかり忘れちゃいましたゴメンチャイ。いちおうファンク・ブルーズとのシリーズ題につなげてみたものの、ウィルの本作はファンキーというよりぐんと軽くあっさり風味。淡白なポップ・フィールもあります。

 

本人のヴォーカル&ギターのほかはベースとドラムスしかいないトリオ編成で、かなりシンプルで整理されたサウンドだっていうのもそんな印象に拍車をかけています。それでも4、8、10曲目など正調ファンク・チューンもあるにはあって。

 

ファンクといってもディープさはなく、わりと軽めなんですけどね。エレキ・ギターの音色だってほとんど飾らずファットでごてごてした感じにせず(エフェクター類をあまり使っていないはず)、素直なストレート・サウンドにチューンナップしてあるのも淡白系ブルーズとの印象を強めている一因。

 

そうそうギターといえばですね、本作ではどの曲でも二本、三本と同時に聴こえるんですが、あきらかにウィルの一人多重録音だっていうのが疑いなく明白にわかってしまうっていう、ここまでそれがはっきりしているギターリストもめずらしいんじゃないですかね。

 

聴きやすいファンク・ブルーズだっていうか、そもそもが暑苦しくむさい世界なんですけど、本作はまったく印象が違います。聴き手によってはこんなのダメだものたりないよという感想が浮かぶでしょうが、ここ一、二年あっさり薄味系の音楽こそフェイバリットになってきたぼくにはこういうのもときにはいいな思えたり。

 

(written 2023.1.8)

2023/01/19

ファンク・ブルーズ五題(4)〜 サード・コースト・キングズ

A3811524460_10

(2 min read)

 

Third Coast Kings
https://open.spotify.com/album/3vTo93HPZchFgdKcW9XwVs?si=IWJa1Z4zQaCBevrUaIBLKQ

 

これまたPヴァイン製プレイリスト『P-VINE recommended BLUES & SOUL feat. STAN MOSLEY』で知ったもので、サード・コースト・キングズの『サード・コースト・キングズ』(2012)。ほとんどジェイムズ・ブラウン・マナーのファンク・ミュージックで満たされています。

 

米ミシガン州のバンドなのは間違いないみたいですが、同州デトロイト発とするもの(CD販売サイト)とアン・アーバーとするもの(Wikipedia)が併存しています。公式サイトでは “Metro Detroit area” が出身活動地だということになっていますから、たしかにアン・アーバーも近接していますよね。

 

アルバム・トータルで聴くと正直やや一本調子で、しかもアマチュア・バンドくさいゴチャゴチャ感も否めない面があると思うんですが、じっさいこのバンドはアルバムなら2曲目に収録されている「ギヴ・ミー・ユア・ラヴ」を2010年に7インチでリリースして、それ一発で知られるようになったみたいです。

 

ただし、それとか4、6曲目とか一般にこのバンドの代表作とみなされているらしいヴォーカル・ナンバーよりも、アルバムで多数を占めるインスト曲のほうが個人的には好み。よりグルーヴィですし、聴きやすいし、ギターとドラムスがJBスタイルで、たとえば1、3、5曲目あたりカッコいいです。

 

ちょっぴり雑なところもかえって味で、ホーン・アンサンブルにしろきちんときれいに重ならないとかピッチがあいまいだとかいうのが勢いというかパワー、拡散力を産むことにつながっているとも聴こえます。そういうのってアフロビート・バンドなんかでも散見されるフィーリングでしょう。

 

ファンクとかってそうした押しまくる勢いみたいな部分で勝負するといったところもあるんじゃないかとぼくは思っているし、グルーヴ・ミュージックだからそれでいいかなと思います。デリケートでていねいな音楽じゃないですけど、それを求めるものじゃないですよね。

 

(written 2023.1.4)

より以前の記事一覧

フォト
2024年3月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ