カテゴリー「ロック」の267件の記事

2022/12/21

だらだら流し聴きで気持ちいい 〜 トム・ペティ at フィルモア 97

Becj8yxc41391712890037

(4 min read)

 

Tom Petty and the Heartbreakers / Live at the Fillmore, 1997
https://open.spotify.com/album/1XtnMkxeV9wdELLvBZxktL?si=inzl22NsTx6HS1fKbAvgtw

 

トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの『ライヴ・アット・ザ・フィルモア、1997』(2022)。これも大部なボックスもののようで、フィジカルはおろかサブスクですらそうしたものへの興味が消え失せつつあるぼくなんかケッとか思って、縁はないだろうとたかをくくっていたんですけども。

 

それでもちょっと気を取りなおして、なにを聴いてもいいヒマな時間がたっぷりあったのでだらだら流し聴いてみました。そうしたらとても心地いいんですね。なんでしょうかこれ。どこがそんなに?というと、古典的なロックンロール・スタンダードを当時のスタイルのままでたっくさんカヴァーしているところ。

 

ロカビリーだってあれば、ヴェンチャーズみたいなインストものあり、ブルーズ、カントリーなどもりだくさんで、さながらロック系アメリカン・ミュージック史の見本市みたいになっています。三時間半もあるからじっくり腰を据えて向きあうには長すぎるんですが、BGMとして流し聴きしていればいい雰囲気なんですね。

 

ただなんとなくやってみたというんではなく、この1997年の一ヶ月間にわたるフィルモア・ウェスト・レジデンシー公演20回(録音されたのはラスト6回)でのトム・ペティには、はっきりした意図があったんじゃないかと思わせるロック・クラシックス・トリビュート的な内容です。ぼくみたいな常なる古典派人間にはうれしいところ。

 

とにかく全体の半数以上がカヴァーなんですから、ボブ・ディラン/ビートルズ以後自作自演オリジナル至上主義でやってきたロック界ではめずらしいこと。ですから、もちろんスペシャルなライヴ・シリーズだったというのがあったにせよ、トム・ペティ自身なにかクラシックスを意識した面がこのときはあったと思うんですよね。

 

チャック・ベリー、リトル・リチャード、ボ・ディドリー、J.J.ケイル、ローリング・ストーンズ、リッキー・ネルスン、ゼム、ゾンビーズ、ヴェンチャーズ、ブッカー・T&ザ・MGズ、キンクス、グレイトフル・デッド、ザ・バーズ、ボブ・ディラン、レイ・チャールズ、ビル・ウィザーズなどなど。

 

なんと007映画の主題歌だったジョン・バリーの「ゴールドフィンガー」までやっているし、さらにはジョン・リー・フッカー本人をゲストでむかえての三曲なんか、ある意味このアルバムの私的クライマックスともいえる高揚感。フッカー御大はいつもどおり淡々と自分のブルーズをやっています。それとは別にロジャー・マグイン(とトムは発音)が参加するパートもあり。

 

どれもこれも、聴くとはなしにぼんやり流していてアッと感じるおなじみのギター・リフなんかが耳に入ってきたときのなんともいえない快感、その刹那思わず笑顔になって、本作だと大半そんなカヴァーだらけだからよろこびが持続するっていうか、トータルで聴き終えて充分な満足感があるんです。

 

このライヴが行われた1990年代にはシックスティーズなロック・クラシックス再評価・回帰機運が顕著でしたし、もちろんあのころはそうしたあたりがどんどんCDリイシューされていたからなんですけど、1950年生まれのトム・ペティにとってはリアルタイムで青春期の情熱を燃やした音楽の数々でもあったはず。

 

じっさいトラヴェリング・ウィルベリーズなんかにも参加していたし、そうしたロック・クラシカルな音楽性はこのひと本来の持ち味に違いありません。このフォルモア・ライヴだとそれがオリジナル曲ではなく、インスパイア源だった古典的カヴァー・ソングで鮮明に表現されているといった感じ。

 

(written 2022.12.11)

2022/12/20

嫌いになったもの

Beatlesletitbe2021boxset

(20 sec read)

 

コンプリート・ボックス
デラックス・エディション
レガシー・エディション
スーパー・デラックス・エディション
アニヴァーサリー・エディション
コレクターズ・ボックス
エクストラ・ボーナス
オルタネイト・テイク
アルティミット・ヴァージョン
スーパー・ゴールデン・エクストラ

こういうのをサブスクで聴かせないボブ・ディラン

 

(written 2022.12.7)

2022/12/02

ソノラの国境沿いから 〜 リンダ・ロンシュタットほか

61ilzlx8ql_ac_sl1200_

(2 min read)

 

v.a. / Feels Like Home: Songs from the Sonoran Borderlands ~ Linda Ronstadt’s Musical Odyssey
https://open.spotify.com/album/5l5aIt3uKxZsMmU3vO4SBP?si=iEOSb5SjQvWUMpe-CDvhDQ

 

米西海岸で活躍したリンダ・ロンシュタットが育ったアリゾナ州南西部メキシコ国境地帯ソノラでの思い出を、歌でつづる回顧録みたいに仕上げたのが本作『フィールズ・ライク・ホーム:ソングズ・フロム・ザ・ソノラン・ボーダーラインズ』(2022)。

 

これが最高なんですよね。USAとメキシコがクロスするあたりのもの、西海岸の音楽家はむかしからとりくんできたものですが、ここではリンダの叙事詩っぽい個人的感慨もこもった音楽になっているということで、いっそう胸に迫ってくるものがあります。リンダがここまでラテン・ルーツを歌で表現したのは初めてのはず。

 

アルバムはライ・クーダー&ラロ・ゲレーロで幕開け。その後収録曲はどれもすばらしく、テックス・メックスというかラテン・ボーダーの音楽にしみこむ情緒感をしっとり伝えてくれます。やはり西海岸ジャクスン・ブラウン昨夏の新作からの再演もあり。今回のヴァージョンのほうがメキシカン・フィールが強く、イスパニック系移民がテーマの曲なのでより沁みます。

 

個人的にはリンダ自身がヴォーカルで参加している(といっても何年の録音だろう?パーキンソン病で引退しているはずなんだけど)数曲(2、5、8、9)がずいぶんいいなと感じます。特に「アクロス・ザ・ボーダー」(w エミルー・ハリス)とか「アイ・ウィル・ネヴァー・マリー」(w ドリー・パートン)とか。

 

トータル一時間半CDなら二枚組サイズになりそうな大きなテーマではありますが、今作は、でもプライベートな内容でもあるので、あっさり39分というレコード尺におさめてささっと聴かせるあたりも工夫が効いていますね。肩肘はらない自然体という感じで、こうした歌の数々はリンダにとってはあたりまえの日常だからでしょう。

 

(written 2022.12.1)

2022/11/25

再台頭する若手新世代ブルーズ・ロック 〜 ラーキン・ポー

51h9zdsw4bl_sy580_

(3 min read)

 

Larkin Poe / Blood Harmony
https://open.spotify.com/album/7a1OYhSHt34tgtafwQnmBE?si=g_c2DtPnQHG5gGOKdOqcMw

 

説明不要の存在になってきたラーキン・ポー。最初にここでとりあげた数年前は「だれっ?!」っていうような反応でしたが、やっぱこういう1960年代末〜70年代前半という黄金期に時代を画したブルーズ・ロック・スタイルってなんだかんだいまだ愛されているんですよね。ある意味不変。

 

最新作『ブラッド・ハーモニー』(2022)は日本盤も出たばかりか、なんと日本先行発売だったので大きな話題を呼び、またしても新規ファンを獲得した様子。それもこれもこの二人姉妹の確固たる指向・信念の継続あればこそでしょう。

 

曲が終了した瞬間に思わずもれる声を聴けば、アルバムは五人のバンド・メンバー(ベースとドラムスと鍵盤はサポート陣)による緊迫感に満ちたライヴ一発録りだったとわかり、そんなところも伝統的なマナーを堅持しているというかレトロというか、音楽本来のありかたを希求しているというか。

 

今回はジャケットを一瞥なさればおわかりのように “LARKIN POE” の文字がレッド・ツェッペリン・フォントになっています。音楽も、まさにツェッペリンが表現していたようなサザン・アメリカン・ブルーズを土台にしたギター・ハード・ロック一色で、刹那刹那にラーキン・ポーもツェッペリンへのオマージュを意識したなと思わせるサウンドがあります。

 

個人的には特に8「Kick the Blues」〜9「Might As Well Be Me」〜10「Summertime Sunset」あたりの流れにぐっと胸をつかまれるものがありますね。姉メーガンのブルージーなラップ・スティール・ギターも最高に斬れ味抜群で聴きごたえがあって、もう気持ちいいったらありゃしない。大好き。

 

ロック(やジャズ)におけるブルーズ要素は21世紀に入って以後どんどん薄くなるばかりで、いまやできればゼロがいいというのがトレンドなんですけども、そうはいってもですね、高年オヤジとしてはラーキン・ポーみたいな若手新世代に伝統的なブルーズ・ロックをしっかり継承し価値を共有するバンドが再出現してきているのをなんとも好ましく思うわけなんであります。

 

トレンドが一方に傾くと他方は思いっきり無視されてしまうというバランス感覚の欠如は居心地がとても悪くって、ブルーズ・ベースのギター・ロックが2022年にあったっていいじゃないか、そういうのが好きで応援するファンはかなりいるし、”あのころ” から現役の高齢ロッカーばかりじゃないんだぞとラーキン・ポーはしっかり示してくれています。

 

(written 2022.11.25)

2022/11/13

1970/2020年のダブル・ヴィジョン 〜 ミコ・マークス

91mrbasqqcl_ss500_

(3 min read)

 

Miko Marks & The Resurrectors / Our Country
https://open.spotify.com/album/5e5PRCyX77IfDVxTQF0vUZ?si=lssvvJtARhOCY-hcqN6k4g

 

そいで、ミコ・マークスがレッドトーン・レコーズと契約しハウス・バンドのザ・リザレクターズと組むようになってからの第一作『アワ・カントリー』(2021)も聴いてみました。このチームによるきのう書いた最新作ですっかり気に入っちゃったので。

 

こっちはザ・バンドっていうよりレイド・バックしたディレイニー&ボニーみたいなLAスワンプ・ロック色が強く、ホンキー・トンクなフィールもあります。ジャケット・デザインも断然こっちがより好みで、いいなあこれ。

 

収録曲は2「ハード・タイムズ」がかのスティーヴン・フォスター作で、ラスト10「ナット・ビー・ムーヴド」がトラディショナルをベースにリアレンジしたものなのを除き、ミコ&レーベルのジャスティン・フィップス&バンドのスティーヴ・スズキ・ワイアマン三者の共作か単独作ですね。

 

いずれもカントリー、ブルーズ、ゴスペルなどが渾然一体化していた1970年ごろのスワンプ・ロック・スタイルで統一されていて、ミコのカントリー・ソウルな志向とレーベルやバンドの方向性が合致しているという喜びや充実感がサウンドにあふれています。

 

1曲目「アンセスターズ」だけ聴いてもそれはあきらか。このグルーヴ感ですよ、こういうのこそぼくがロック(やその周辺)に求める最も強い快感。それにこのエレキ・スライド・ギター、かっちょええ〜っ!まるでドゥエイン・オールマンみたいなこれはおそらく中心人物のスティーヴ・ワイアマンが弾いているんでしょう。すばらしいのひとこと。

 

フォスターの「ハード・タイムズ」も、なんだかソウルウルにしあがっているし、3曲目以後もアクースティック楽器を中心としながら、適度にエレクトリックなサウンドを按配する加減がいい。どっちかに決めつけないバランス感覚もあのころのロックがしっかり持っていたものでした。

 

ブルーズ、カントリー、ソウル、ゴスペルなど人種に関係なくアメリカ音楽の混淆を実現している姿勢は、ある意味現代のBLM的意味合いをも帯びているといえて、じっさい歌詞にそうした主張が色濃く表現されている曲もあり。この点においても1969〜70/2020年代以後的な重層性がミコの音楽にはあります。

 

(written 2022.11.2)

2022/11/12

教会とジューク・ジョイントが立ち並ぶ光景で 〜 ミコ・マークス

Ab67616d0000b273cb0271da1e221d60d9ac38c7

(3 min read)

 

Miko Marks & The Resurrectors / Feel Like Going Home
https://open.spotify.com/album/7cT12Vf8M9wtFZ9vAM7Now?si=URIZL9kcRJybRj1gRUKu0A

 

萩原健太さんのブログで教えてもらいました。
https://kenta45rpm.com/2022/10/19/feel-like-going-home-miko-marks/

 

現役でいえばメイヴィス・ステイプルズとか、いやいやなによりも1970年前後ごろのザ・バンドやディレイニー&ボニーあたりがそのまま甦ったようなオールド・ファッションドな音楽であるミコ・マークスの最新作『Feel Like Going Home』(2022)は、ですからあのへんが大好きなファンにはこたえられないもののはず。

 

ミコは黒人ながらオールド・カントリーの世界でデビューしたらしく、これがアメリカーナとかだったらそうでもなかったんでしょうが、ナッシュヴィルあたりで保守的な発想をいまだ硬固に持つみなさんには受け入れがたいものがあったようで、苦労したみたいですよ。

 

考えてみればザ・バンドとか同じころのいはゆるLAスワンプ系などふりかえってもわかるように、白人音楽と黒人音楽はずっと同じパレットに並んでまぜこぜで歩んで時代時代の新しい音楽を産み出し続けてきたというのがアメリカ大衆音楽の真実。

 

2005年のデビュー以来ミコの努力はそうした認識にしっかり立脚し、レトロな原点回帰をしつつ、自分の信じる道をつらぬいてきた結果だったと思うんですね。ようやく結実しはじめたのが2021年にレッドトーン・レコーズに移籍し、ハウス・バンドのザ・リザレクターズと組むようになってから。

 

本アルバムがそうなっての二作目というわけ。バンドとレーベルの全面協力を得て、ごきげんにディープなカントリー・ソウルを届けてくれています。1曲目を聴くだけで本作やミコがどんな音楽性の持ち主なのかくっきりわかろうというもの。時代遅れと笑われるかもですけど、エヴァーグリーンなんだとぼくは考えていますね。

 

ザ・バンドそのまんまというミコらしさが爆発しているのは特に2曲目以後。2「ワン・モア・ナイト」なんてそっくりすぎると思うくらい。その歌詞に「ジューク・ジョイントと教会」というのが出てきますが、まさに聖と俗、それらが併存するアメリカ南部社会のリアルな光景を思い浮かべるようなサウンド。

 

以後もメイヴィス・ステイプルズ、シスター・ロゼッタ・サープ、アリーサ・フランクリン、エタ・ジェイムズなど、偉大な先達からの影響を色濃くたたえた極上のカントリー・ソウルを聴かせてくれるミコのその歌声そのものに教会とジューク・ジョイントとが共存しているフィーリングが聴こえますよね。

 

黒人だけでなく、もちろんザ・バンドとかジョー・フォガティとかジョー・コッカーとか、あの当時のそのへんの白人男性ロック歌手をも意識しているようなヴォーカル・トーンですし、バックをつとめているザ・リザレクターズがそんな傾向のバンドなんでしょう。

 

(written 2022.10.26)

2022/11/05

グラウンド・ビートなマドンナ『エロティカ』

R156050814945990317873

(4 min read)

 

Madonna / Erotica
https://open.spotify.com/album/2QjCLLlSs1k7YVEWZ0moCV?si=qYSc9T5NS1ioDDQrjA5f7g

 

こないだなんの気なしにちょっと聴きたくなってふらりとかけてみたマドンナのアルバム『エロティカ』(1992)でエッ?と思いました。これ、グラウンド・ビート作品じゃないですか。ソウル II ソウルとか、あのへん。リリース当時気づいていなかったなあ。

 

アルバム題といいジャケット・デザインといい以前からのイメージといい、セックス・シンボルとしてのマドンナという見かたしかしていなかったんですよね。音楽的なことをちゃんと聴いていなかった。ぼくだってソウル II ソウル「キープ・オン・ムーヴィン」(89)以後しばらくグラウンド・ビートには夢中だったのに、それとマドンナが結びついていなかったんでしょう。

 

たしかにセックスとロマンスがテーマのアルバムには違いないんですが、いまとなってはそういう部分よりサウンドやビートへ耳が行きます。プロデューサーはシェップ・ペティボーン(曲によりアンドレ・ベッツ)。ビートのつくりかたなんかは大半がハウス・ミュージックのそれだなとわかります。

 

ハウスは性差別問題が大きなテーマだったので、『エロティカ』みたいな内容でハウスのサウンド・メイクをとりいれるのは納得です。そしてハウスの手法はUKに飛び火して、ソウル II ソウルを産んだジャマイカ系移民コミュニティのなかでグラウンド・ビートへと展開したという面があると思います。

 

マドンナが『エロティカ』制作にとりくんでいた1991〜92年はグラウンド・ビートの最盛期でソウル II ソウルがいちばん売れていた時期。ぼくもこれはリアルタイムで実感がありました。シェップ・ペティボーンがどう考えたか知りませんが、すくなくとも同時代的共振みたいなことはあったはず。

 

いや、ここまでソウル II ソウルに酷似しているというのは、おそらくかなり意識して利用したに違いありませんよ。もちろん『エロティカ』のぜんぶの曲がっていうんじゃなく半分くらいですけどね、グラウンド・ビート使ってあるのは。個人的に大好きだったから印象が強くなります(なのに当時はどうしてスルーしたのか)。

 

特に1〜5曲目あたりのアルバム前半でソウル II ソウルの痕跡が顕著というか打ち込みでつくったクローズド・ハイハットの16分音符連打というあのスタイル。3「バイ・バイ・ベイビー」なんて、まるで「キープ・オン・ムーヴィン」そのまんまじゃないですか。

 

ジャズ歌手もよくやるスタンダードの2「フィーヴァー」までそうなっているんですからね。エロスがテーマだからこの曲をカヴァーしたんでしょうけど。そんでもって7曲目がまたソウル II ソウルの代表曲の一つ「バック・トゥ・ライフ」にビート・メイクがよく似ているし。8、9曲目もそうか。

 

コンピューター・ビート満載ななか、アンドレ・ベッツがプロデュースしたアルバム・ラスト13「シークレット・ガーデン」(もエロ意識な曲だけど)だけは、なぜだかのコントラバスを使ってあって、それが一定の短いパッセージをひたすらヒプノティックに反復し、生演奏らしきドラムスがオーガニックなビートを刻むという、当時としては例外的な内容。

 

2022年の耳で聴くと、マシン・ビートなソウル II ソウル寄りのものが時代を感じさせる一方で、この生演奏グルーヴを持たせた「シークレット・ガーデン」だけが異様な現代性を帯びているようにも響きます。

 

(written 2022.10.3)

2022/10/15

ひとりぼっちのトニー・ジョー・ワイトがいい 〜『ザ・ビギニング』

607396547814

(2 min read)

 

Tony Joe White / The Beginning
https://open.spotify.com/album/5CijRmgFDpNamMyRoRGoZf?si=y5xinEXRSvi8mozYt1XLkw

 

萩原健太さんのブログで知りました。
https://kenta45rpm.com/2022/09/12/the-beginning-tony-joe-white/

 

トニー・ジョー・ワイトの熱心なファンというわけでもないけれど、こないだリイシューされたばかりの『ザ・ビギニング』(2022)には惹かれました。このアルバムがなんであるか、上でリンクした健太さんの文章にくわしいので、ぜひお読みください。

 

個人的にはトニー・ジョーがひとりぼっちでアクースティック・ギターを淡々と弾きボソッとしゃべるように歌っているっていう(若干の多重録音あり)そのたたずまい、雰囲気みたいなものに魅せられてしまいました。孤独感はサウンドにもちゃんと出ています。

 

そして、ギター・プレイのほうはぼくだって熟知の世界だという気がしてじっくり聴いてみたら、この弾きかたはカントリー・ブルーズのそれですよね。ヴォーカルのほうはそうでもないと思うんですが、トニー・ジョーは南部人なので、やはりそうした地点に立ちかえるということがあるのでしょうか。

 

9曲目「リッチ・ウーマン・ブルーズ」は曲題どおりのストレートな定型ブルーズですが、このアルバムのギターがカントリー・ブルーズのそれだというのはもっとひろい意味で、ほかの曲でもフレイジングのイントネーション、コロケーションの隅々にまでブルーズ香がしみ出ているのを聴きとることができると思うんです。その世界を聴き慣れた人間ならば皮膚感覚で理解できることのはず。

 

ファンキーでブルージーでダーティで、切なくて孤独な、この世界。荒々しい目つきでなにかをさがし求める者たちのたむろする世界。飢え。叶わなかった希望、破れた夢。亡霊のようなならず者。むさ苦しさ。孤独な旅人。

 

アクースティック・デモ・ヴァージョン集みたいな感じのアルバムですが、バンドでやった曲の再解釈とかもふくまれていたりもするので、なかなかどうして侮れず、シンプルだけど奥の深い音楽だという気がします。

 

(written 2022.9.30)

2022/09/10

クラプトン『24 ナイツ』がわりと好き

71nigqf8gsl_ac_sy450_

(4 min read)

 

Eric Clapton / 24 Nights
https://open.spotify.com/album/6buXSkzKCNuC3ieAjYsmDk?si=AG7S-czSTXC-UPQvSaMiEA

 

それにしてもエリック・クラプトンって、そのファンであることがちょっと気恥ずかしいような存在だということなのか、多くのみなさんが遠慮しながら自嘲気味に発言しています。ぼくにはもうそんな若々しい気分なんてないので、いいものはいいと素直に言いたいです。それが歳を重ねたということ。こんなこと言っていいだろうか?笑われない?って思わなくなりました。

 

それで、全肯定の熱心なファンを除けば一般にはクラプトンって1980年代なかごろまでだった音楽家という見かたが支配的で、ぼくも同意見ではありますが、それ以後の作品にだって好きなものはちょこちょこあります。その一つが1991年発売の『24 ナイツ』。CDだと二枚組でした。

 

このライヴ・アルバムがなんであるか、ロイヤル・アルバート・ホールでの連続公演のこととか、四部構成でそれぞれテーマがあってバンド編成ががらりと違うとか、調べればくわしい解説が出ますので、どうぞ検索なさってください。該当Wikipediaを読むだけでもおっけ〜と思います。

 

個人的に好きなのはディスク1の2パート。1〜4曲目が1960年代のクリーム・ナンバーを中心に4ピース・バンドでの再演。5〜8がブルーズ・サイドで黒人ブルーズ・ミュージシャンを従えてのカヴァー集。これらがぼくには心地いいんですね。

 

こういうと、60年代からロックやクラプトンを聴いてきている筋金入りのみなさんには、アンタ気は確かか?と思われそう。だけど、個人的な嗜好のことにはだれも注文つけられませんから。それを隠さず正直に堂々と言える年齢になってきましたので。

 

1〜4曲目(2は新曲)なんて、クリームのオリジナル・ヴァージョンよりずっと好き!(えっ?)って思えるくらいですから。特に「バッジ」と「ホワイト・ルーム」。90年代にもなってなんでそんなのやってんの?懐メロかよ!と悪口も言われたでしょうが、バンド演奏のキレとビート感がオリジナルよりずっと好き。ぼくは。

 

ドラマーはスティーヴ・フェローンで、ずいぶんシャープなドラミングをするので、大好きなんです。そのほか三名、合計たったの四人でやっているのに不足ないゴージャスなサウンドに聴こえるし、ライヴ演奏にしてはスキがないし、クラプトンのギター演奏だっていつもに増してきわだっています。

 

5曲目以後のブルーズ・サイドでぼくがいつもじっくり聴いてしまうのは6「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」。クラプトンにとっては60年代から数えられないほどくりかえしやってきた最頻演得意曲で、そのあまりに手慣れた感ゆえ、ここでは悪くいえばクリシェだらけのつまらない演奏に堕しているとも聴こえます。

 

ギターの音色づくりにしたっていかにもだし、フレイジングも手癖だらけのオン・パレード、妙にこぎれいな清潔感ただようとても流暢ないっちょあがり的演奏、こんなの「ブルーズ」じゃないよというのが一般のブルーズ/ブルーズ・ロック愛好家の意見でしょう。ぼくもおっしゃるとおりと思うんですけども。

 

それでもなにかの心地よさ、聴きやすさがこの「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」にはあります。非ブルーズに落ちることの危険性ととなりあわせになった平坦なおだやかさ、エモーションがほとばしらずこぼれおちたりなどいっさいしないありきたりの日常性が、ニセモノ・ブルーズであるとはうすうす感じながらもの愛好感にぼくのなかではつながっているんです。むかしから。

 

(written 2022.9.4)

2022/08/31

ピーター・アースキンのキャリア最高傑作 〜 スティーリー・ダン『アライヴ・イン・アメリカ』2曲目「グリーン・イアリングズ」

81htvfztpfl_ac_sl1425_

(4 min read)

 

Steely Dan / Alive In America
https://open.spotify.com/album/66rBZ848b4aO0hCJQF6GGc?si=jyxN1lbtR8e-31kIAiwG5A

 

スタン・ケントン楽団時代(1972〜)、メイナード・ファーガスン時代(75〜)を経て、78年ウェザー・リポートに起用され一躍名をあげたドラマーのピーター・アースキン。ちょうどジャコ・パストリアス在籍時代と重なりバンドの人気絶頂期だったこともあってか、名声を確固たるものとしましたね。

 

ウェザー・リポートでも最初のころはやや頼りないドラミングが散見されましたが、同バンドで経験を積んで立派な演奏を聴かせるようになったピーターの、そのキャリア最高傑作はスティーリー・ダンのアルバム『アライヴ・イン・アメリカ』(1995)2曲目の「グリーン・イアリングズ」に違いありません(私見)。93年9月10日カリフォルニアでのライヴ。

 

ライヴ・アルバムとしてはスティーリー・ダンにとっての一枚目にあたるこの作品は1993年と94年のアメリカン・ツアーから収録されていて、それぞれメンバーが微妙に違います。ドラマーにかんしては93年がピーター・アースキン、94年がデニース・チェインバーズ。ゆえに本作で聴けるピーターは2、6、8曲目。

 

CDだと付属ブックレットにドナルド・フェイゲン本人の書いた一曲ごとの一言メモが載っていて、それによれば8曲目「サード・ワールド・マン」にかんして “Erskine perfect” となっていました。また2「グリーン・イアリングズ」と編集でメドレーみたいにつながっている3「菩薩」でデニチェンを “awesome” と表現。

 

プロの耳と一般素人の耳は違うもんだとはいえ、ぼくにはどう聴いても「グリーン・イアリングズ」でのピーターのドラミングこそNo.1。傑出しているし、しかも最高に心地いいノリだと思えます。跳ねるバック・ビートが完璧じゃないですか。ウェザー・リポート時代にここまでの演奏はなかったように思います。

 

イントロ〜歌メロ部分からすばらしいですが、なんど聴いても惚れ惚れとためいきが出るのが間奏へ入ってのギター・ソロ部、特に転調する前まで。そこでのピーター独自のスネア使い、ハタハタ・ドラミングと一般に言われるスタイルはあまりにも快感で、ぼくなんかギターを聴かず、ドラムスにばかり耳がいっちゃいます。

 

一曲を通しハイ・ハット、シンバル、スネア、タム、ベース・ドラムを駆使してピーターが織りなす打楽器模様はあたかもタペストリーのよう。曲とアレンジをとってもよく理解していて、ヴォーカルとバンドのサウンド全体を活かせるように徹底して考え抜かれた有機的な構成です(ここはウェザー時代に鍛えられたのでしょう)。

 

まるで歌っているみたいなドラミングでもあり、ビートの根底をこれ以上なく堅実に支え推進させるヴィークルとなり、歌や楽器ソロを引き立ててみずからも存在感を立派に証明しているっていう、これほどまでの演奏をピーターがやったことあったでしょうか。疑いなく最高傑作でしょう。

 

1970年代からスタジオ密室作業でのドラムス演奏にはこだわりまくったフェイゲンだけに、バンド解散後初のライヴ・ツアーをやるとなってドラマーの選択にはうるさく注文をつけたはず。ピーター・アースキンをまず最初に起用したというのには妥当性があったと納得できるできばえを示しているのがこの「グリーン・イアリングズ」です。

 

(written 2022.8.4)

より以前の記事一覧

フォト
2023年1月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ