カテゴリー「リズム&ブルーズ、ソウル、ファンク、R&Bなど」の173件の記事

2024/02/01

ブームというより時代 〜 ジェイレン・ンゴンダ

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(3 min read)

 

Jalen Ngonda / Come Around and Love Me

https://open.spotify.com/album/0E2PgtXRUHCslZ7gRselUq?si=gHIG3kKVS9i6d4DylR6o2g

 

萩原健太さんのブログで知りました。

https://kenta45rpm.com/2023/09/12/come-around-and-love-me-jalen-ngonda/

 

レトロ・ソウルの新星、ジェイレン・ンゴンダ。US生まれだけど現在はUKで活動しているらしいです。そのファースト・アルバム『Come Around and Love Me』(2023)が出ました。これがいい感じのニュー・ソウル・リスペクトぶりを発揮していて、ぼく好み。あくまで個人的な好みだってことです。

 

聴けばそのレトロぶりはだれにでもわかる鮮明さで、まるで1970年代ふう。マーヴィン・ゲイかカーティス・メイフィールドかっていう没頭ぶりで、いいですねえ。フィリー・ソウル味もあり。

 

こどものころから父親のレコード・コレクション(往年のジャズ、ソウルなど)を聴いて育ったがため、自然とそういう音楽が好きになり、自分でもやってみたいと思うようになったのだとか。けっこう多いですね、こういうケース。

 

レトロだとかルーツ・リスペクトだとかで1970年前後ふうな音楽を指向する若年世代が急増している背景には、そうした文化というか家庭環境みたいなものがおおきく影響しているのでしょう。ジェイレンの父親というとちょうどぼくくらいの世代になるでしょうし。

 

本作も黄金のソウル・サウンドを満載。リズム・セクションを中心とした伴奏陣に、+適所にストリングス、コーラス、サックス、ヴァイブラフォン、グロッケンなど往年のポップ・ソウルには欠かせないアイテムを巧みに配しています。

 

一聴、女性歌手なのか?と聴き間違うかもっていうくらいなジェレインのハイ・トーン・ヴォイスは、ときおりファルセットもまじえながら、ニュー・ソウル・ムーヴメントが盛り上がっていた70年代前半の高揚感を思い出させてくれます。

 

じじいキラーな音楽ではありますが、あんがいこういうのが近年の20代のあいだでは受けているみたいですよね。もう間違いなく明確なトレンド。ブームっていうより時代なんでしょう。

 

(written 2023.12.6)

2023/11/30

ロックだってソウルにカヴァー 〜 イーライ・ペーパーボーイ・リード

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Eli Paperboy Reed / Hits and Misses: The SIngles

https://open.spotify.com/album/2eDHdAH6Zzb4lNXzzO0hjf?si=f1kPVfVUT-ifDY1NSTz3Ag

 

萩原健太さんのブログで知りました。

https://kenta45rpm.com/2023/10/20/hits-and-misses-the-singles-eli-paperboy-reed/

 

イーライ・ペーパーボーイ・リードは往年のリズム&ブルーズ、ソウル・ミュージックへの愛を隠さない歌手。そういう路線の作品をずっとリリースし続けてきましたが、最新作『Hits and Misses: The SIngles』(2023)でもそれは変わらず。レア・シングル集で既発ものばかりの寄せ集めですが、新作として聴けるおもむきがあります。

 

三曲を除きカヴァー集なんですが、とりあげあられているもののなかにはロック・ナンバーも三つあります。しかしそれらだってペーパーボーイのここでの解釈は完璧なるソウル流儀。スティーリー・ダンやボブ・ディランがこんな感じになるなんてねえ。

 

まるでサム・クック、オーティス・レディング、アリーサ・フランクリンなどを聴いているようなアレンジとヴォーカル・フィールで、レトロ・ソウルというもおろか、これは一個の立派な愛です。時流に乗ってレトロをねらったんではなく、もとからこういう人物なんですよね、ペーパーボーイは。

 

個人的にいまどきのコンテンポラリーR&Bにいまいちノリ切れない身としては、たまにあるこうしたニュー・リリースでひとときのノドのうるおしを得るといった具合であります。

 

(written 2023.10.25)

2023/08/24

いまだ健在、往時のままのメンフィス・ソウル 〜 ウィリアム・ベル

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(2 min read)

 

William Bell / One Day Closer to Home

https://open.spotify.com/album/6vp9IOGFvvsc6zAZGDyEwe?si=H9WS3Hq7RASO6l3ojr2Zng

 

bunboniさんのブログで知りました。

https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-05-16

 

オープニングの「I Still Go to Parties」には、まだまだ現役でやっているよっていう、つまり曲題からしてですね、そうしたベテラン・ソウル歌手ウィリアム・ベルの気概みたいなものが全編ににじみ出ている新作『One Day Closer to Home』(2023)がとってもいい。

 

「I Still Go to Parties」はどっちかというとファンク・チューンですが、アルバム全編ではまごうかたなき正統派メンフィス・ソウルが展開されていて、60/70年代の雰囲気。でもこれ、この歌手はずっとこういう音楽をやってきたのが83歳でもそのまま衰えず健在だっていうことなんですからね。

 

最近の新人じゃないんだし、いまどき流行のレトロ・ソウルとかではありません。個人的にはべつにレトロにネガティヴな感情など持っていないどころか大好きですが、ウィリアム・ベルの本作は味わいが違いますよね。

 

年輪を重ねていっそうヴォーカルに深みとコクと芳醇さを増しているし、しかもきわめて自然体でスムース。自分のなかにある歌がそのままストレートに表出されているのがわかって、それがここまで円熟したまろやかさをみせているのはすばらしいことです。

 

人力楽器演奏だけですべてを組み立てた伴奏陣といい、2023年でもこうしたアメリカン・ブラック・ミュージックは健在なんである、やろうと思えばやれるんであるという迫力をまざまざと示しているようで、さすがはベテランならではの境地だよなあと感心します。

 

(written 2023.5.27)

2023/08/03

こうした音楽を心の灯にして残りの人生を送っていきたい 〜 カーティス・メイフィールド『ニュー・ワールド・オーダー』

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(4 min read)

 

Curtis Mayfield / New World Order

https://open.spotify.com/album/4M8Zce860gRCdyv1hXOK32?si=CwXoaEREQ6eOgm9xOqAeNw

 

これからはこうした音楽を心の灯にして残りの人生を送っていきたいと心底思えるカーティス・メイフィールドの最終作『ニュー・ワールド・オーダー』(1996)。まえもそんなこと書きましたが、心身がつらくしんどいときに聴きなぐさめられ、いっそう身に沁みるようになりました。

 

それはこれが音楽家人生の終末期に製作されたメランコリアに満ちた作品であるというダークな諦観のトーンに支配されているからだけではなくて、いやそうだからこその人生肯定感、人間への応援歌・讃歌のように聴こえるからでもあります。

 

ジャケットに写るカーティスの顔写真がすべてを物語っているようにも思いますが、死と再生をテーマにした1曲目「New World Order」からアルバム末尾までこのダークなトーンは一貫しています。明るく快活な曲もありますが、それらにしたって深みのある落ち着きが聴かれるでしょう。

 

ソングライターとしても歴史に名を残すカーティス、代表的過去曲のセルフ・カヴァーが二曲ふくまれているのも耳を惹きます。6「We People Who Are Darker Than Blue」、11「The Girl I Find Stays on My Mind」。前者1970年のオリジナルはもちろん黒人差別を扱う曲だったのが、ここでは老齢期ならではのメンタルの暗さのことを歌っているように思えます。

 

そうとらえないとこのレンディションのダーカーでしんみりしたトーンは理解できないと思います。ぼくだってそうだとわかるようになってきたのは還暦を越え心身の衰えに直面するようになってからですもん。ここで歌っているカーティスの心境はいかほどだったか、想像するに余りあります。

 

インプレッションズ時代の「ガール・アイ・ファインド」にしたって、こんど見つけた新しい女の子が気になるけど、いままで全員が去っていったからやっぱりそうかもと思うと踏み出せないっていうこの主人公の心境は、ASDと自覚するようになったコミュニケーション不能症のぼくには心芯からよく理解できます。

 

しかもここのヴァージョンをカーティスがここまで静かに歌うとき、そこにあるのは恋愛関係なんかもう自分の老齢人生に関係ないんだ、もはやどうにもならないというあきらめと落ち着きであり、でもなんかちょっと気になっちゃって…というアンビヴァレンスでしょう。

 

だからこそ、いまのぼくの内面には深く深く沁み込んでくるものがあるんです。これに続くアルバム最終盤の二曲もダークネスが支配していますが、困難な道を歩んできた音楽家にしか表現できない深みがあり、そんな闇に支えられるかたちでの輝き、ライフ・イズ・ビューティフル宣言でもあるのです。

 

(written 2023.7.13)

2023/07/17

さわやかでポップなインスト・ファンク 〜 ハンタートーンズ

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Huntertones / Engine Co.

https://open.spotify.com/album/348I0s4uasv5JMawwbPwWo?si=fDS4Rih2TH6St7K5OYtiCg

 

米NYブルックリンに拠点を置くインスト・ファンク・バンド、ハンタートーンズに出会うきっかけがありました。キャリア二作目にあたる最新アルバム『Engine Co.』(2023)がめちゃめちゃカッコよくてですね、もう大好き。

 

鍵盤なしギター・トリオのリズムにトランペット+トロンボーン+サックスという六人編成。音楽としてはJBズとミーターズを足して二で割ったような感じでしょうか。

 

本作で聴けるハンタートーンズの特徴は、ファンクといっても重厚にグイグイ迫るよりは軽妙でひょうひょうとしているフィーリング。曲によってはインストでやるさわやかシティ・ポップっぽいものを連想させたりします(4「フォー・ロイ」)。だから、ややフュージョンっぽいかも。

 

軽妙でユーモラスという点ではどっちかというとミーターズのスタイルに似たものがあり、じっさい本作ではこのニュー・オーリンズ・ファンク・レジェンドの曲を二つカヴァーしています。ストレートなリスペクトの気持ちがあるんでしょうね。

 

それら二曲「シンキング」「シシー・ストラット」は、いずれも骨格しかなかったようなミーターズのオリジナル・スケルトン・サウンドを軸にして、さらにもっと肉と皮をつけてふくらませたような内容。

 

それはやっぱりこっちは三管ホーンズだからってことと、さらにギターもロックっぽいスタイルで、強いエフェクトをかけてリッチ&ファットにソロを弾いたりもしているからでしょう。ドラマーもやや派手め。

 

音の鳴らない空間を存分に活かしたミーターズ・ヴァージョンはそれだけに味わい深いものでしたが、ポップな肌ざわりもあるハンタートーンズはもっと聴きやすくわかりやすい音楽を目指しているんだなとわかります。

 

(written 2023.5.13)

2023/06/21

コンテンポラリーR&Bもたまにちょっと 〜 ジョイス・ライス

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Joyce Wrice / Motive
https://open.spotify.com/album/2IVlGSUdl1ZTeSjOj8tMEr?si=lCiwKRVbQsOR-EZmcItinw

 

すこし好きなコンテンポラリーR&B歌手、ジョイス・ライスの最新作『Motive』(2022)は、といっても五曲たった14分のEPサイズ。昨年秋に来日公演をやったみたいで、その直前にタイミングをあわせるようにリリースされたもののようです。

 

来日公演には行っていませんが、そのときリリースされた『Motive』を現在までわりとよく聴いているっていうわけです。CDでもリリースされたとのことですよ。現在進行形のコンテンポラリーR&Bがどんななのかてっとりばやくわかるし、それにジョイス・ライスの歌はわりとクールでさわやかですよね。

 

先行シングルだった1「Iced-Tea」、アフロビーツ路線の2「Spent」と、出だしからマジでいい感じ。ソリッドなビートを軸にしたサウンド空間を泳ぐように歌っていくたたずまいもステキです。ヴォーカルにはややアーリー00年代っぽいところもあり。

 

クールでさっぱりした感じで、決して重たかったりムサ苦しかったりしない近年のコンテンポラリーR&Bは、その点において流行のおだやか系ジャジーなレトロ・ポップと相通ずるものがあると、だれも言わないけどぼくはそう感じています。

 

ここ10年ほどのポップス界におけるグローバルな流行、傾向というわけで、全世界的に音楽はあっさりさっぱり淡々とした薄味路線へと舵を切りました。下品で濃厚強烈なものがいいというオジサンだったぼくも以前だったら理解できなかったかも。

 

(written 2023.5.5)

2023/05/28

アダルト・シティ・ソウルの官能 〜 スモーキー・ロビンスン

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(2 min read)

 

Smokey Robinson / Gasms
https://open.spotify.com/album/14xK4FTz2jDiWE8vL1rZaK?si=L7QQg22mT1KGJ2H6vj5RJg

 

スモーキー・ロビンスンに説明など不要。今年リリースされたばかりの新作アルバム『Gasms』(2023)がなんだかやたらステキで、セクシュアルなものに弱いぼくなんか完璧にイチコロ。あまり積極的に聴いてこなかった音楽家だけど、まったく降参。メロメロです。

 

もう冒頭から、オーガズムからとったという「ガズムズ」のアダルト・ソウルぶり。このひとも83歳なんだけど、色気がまったく枯れていない現役ぶり。それでいて押しつけがましいいやらしさが微塵もなく、さわやかで軽いさっぱりした青春の空気すらただよっているっていう。

 

耳元でそっと優しくささやくようなフェミニンなヴォーカル・スタイルが、このひとはずっとこうだったけど、2020年代となってはコンテンポラリーなおだやかメロウR&Bに聴こえたりもするのが抜群で、80すぎて時代にフィットしてきたような感じかも。

 

1曲目だけでなくきわどい性愛がアルバム全体のテーマになっていて、そのために再演もカヴァーもなし、全九曲が今作のための書きおろしオリジナルなんですけど、ブルージーだったりドゥー・ワップふうだったりゴスペル・フィールもあったりなど、どの曲も飛び抜けていい出来なんですね。

 

バックのサウンドは洗練されたフュージョンというかコンテンポラリーなスムース・ジャズふうのポップさに満たされているのもぼく好み。ソウルだけでなくブルーズとかゴスペルとかのブラック・ミュージック要素もあくまでおだやかに溶け込んでいます。

 

特に気に入ってくりかえし聴いているのは1「Gasms」、6「Beside You」、8「You Fill Me Up」あたり。これらで聴けるもうたまらん極上のフェザーなシルク・タッチでそっとこちらの内側に触れてくるスモーキーの音楽は、まるでスロー・セックスのおもむき。静かに、しかし深く熱い熟なフィールをたたえています。

 

(written 2023.5.28)

2023/05/17

歌ごころを大切にしたインストルメンタルのお手本 〜 クラズノ・ムーア・プロジェクト

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(3 min read)

 

Eric Krasno, Stanton Moore / Krasno / Moore Project: Book of Queens
https://open.spotify.com/album/6RwGvHFkks31pCeLlto8Dy?si=GHQr8E2JR6WfBfEzYgTAwQ

 

古くからの友人だったソウライヴのギターリスト、エリック・クラズノとギャラクティックのドラマー、スタントン・ムーアが組んだ新プロジェクトによるアルバム『Krasno / Moore Project: Book of Queens』(2023)は、インストルメンタルによる女性歌手曲カヴァー集。

 

超有名曲もそうでもないのも混じっているので、以下にオリジナル歌手名を一覧にしておきました。もしよかったら気になったものは元歌をぜひさがして聴いてみてくださいね。

 

1 エイミー・ワインハウス
2 シャロン・ジョーンズ・アンド・ザ・ダップ・キングズ
3 ケイシー・マスグレイヴ
4 ビリー・アイリッシュ
5 ブリタニー・ハワード
6 ペギー・リー
7 アリーサ・フランクリン
8 H.E.R.
9 ニーナ・シモン

 

二名のほかにはオルガン奏者がいるだけのシンプルで伝統的なトリオ編成がアルバムの根幹。曲によりゲスト・ギターリストがいたりサックスが参加していたりで、演奏はグルーヴィ&かなりソウルフルに決めています。

 

こういった音楽がレトロなんだっていうのは、ジャケットのふちが年月が経ってこすれた紙のようになっていて、さながら中古レコード・ジャケにみえることでもよくわかります。この手の趣向、最近みかけるようになっていますよね。

 

中身も、まるで1960〜70年代の香りがプンプンしています。あのころこうしたインスト音楽いっぱいあったじゃないですか、それが甦ったようなフィーリング。ブルーズ、ジャズ、ソウル、ロックのバンド・インストを基調としたこの手のものは、いつまでも輝きを失わない不変のものなんだなあと本作を聴いていると実感します。

 

個人的には5「Stay High」(feat. コーリー・ヘンリー)、6「Fever」(feat. ブランフォード・マルサリス)、7「A Natural Woman」と続くあたりの流れが好きで、ラスト9「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」での奔流のようなもりあがりもすばらしい(feat. ロバート・ランドルフ)。

 

いずれの曲も三人+ゲストによる演奏はあくまで歌心を大切にしているのがとってもよく伝わってきて、原曲の持ち味を存分に活かしながら歌うがごとくつむぎだすインプロ・ソロには、インスト・ブラック・ミュージックの醍醐味が詰まっています。

 

(written 2023.4.18)

2023/03/26

グルーヴの体幹 〜 ブッカー・T&ザ・MGズ『グリーン・オニオンズ』60周年

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(2 min read)

 

Booker T. & The M.G.s / Green Onions (60th Anniversay Remaster)
https://open.spotify.com/album/1LMSiyS5O2gcVTUa2rlu9u?si=lJkyojg-SrmDn6HJmsjUKw

 

ブッカー・T&ザ・MGズに説明など不要ですが、名作アルバム『グリーン・オニオンズ』(1962)の60周年記念リマスターが出たということで、あれっ、一年ズレてない?

 

ともあれサブスクにも入ったので、やっぱりもう一回聴きなおしてみました。この作品だってもちろんいまさら解説なんかいらないんですけど、個人的な感想をば手短に。

 

それで、昨年一月、MGズの一員スティーヴ・クロッパー(ギター)の最新作について書いたときの文章とまったく同じことがあたまに浮かぶんですね。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2022/01/post-5bdb75.html

 

集団球技スポーツでは、華麗に技を決めるアタッカーにはたしかにみとれるものの、その実、守備でも攻撃でも堅実な組み立て役(井戸を掘る役、水を運ぶ役 by イビチャ・オシム)が必ずいて、真なるチームの軸として不可欠だったりしますよね。

 

MGズだと、バンド全体でそんないはばグルーヴの体幹を具現化しているようなもので、個人でもバンドでもそうした職人気質な音楽家にむかしから惹かれる傾向がぼくにはあります。決して華麗な技巧を披露するタイプではない存在に。

 

三振を奪うとかホームランを打ったりあざやかなゴールを決めたりで満場のスタジアムを沸かせる存在は、MGズのばあいフロントで歌う歌手であり、みずからはその伴奏に徹しているふだんの姿を、歌抜きインストルメンタルでも変わらずそのまま披露しているだけ。

 

そのぶん、グルーヴの体幹というか骨格みたいなものがかえってくっきりと伝わってくる音楽で、派手さなんかぜんぜんないんですけどエッセンスだけ演奏しているMGズには、ホンモノのミュージシャンシップみたいなものを感じます。

 

『グリーン・オニオンズ』から十数年以上が経過して、ジャズの世界でもブラック・ミュージックの歌伴バンドがそのまま独立したようなフュージョンの世界が出現しましたが、そっちでは技巧ひけらかし系みたいなのも混じっていました。そういうのも好きなんですけどね。

 

(written 2023.2.27)

2023/02/26

1960年代後半への郷愁 〜 エイドリアンズ

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(3 min read)

 

The Adelians / The Adelians
https://open.spotify.com/album/4Tz6y1qG72VP31L53Sd9xr?si=2Ol3UM2KTz6vJalxt1N9mA

 

1960年代モータウンみたいなポップなブラック・ミュージックだなっていうのは聴けばわかるけど、このエイドリアンズって何者なんでしょうか。ほとんど情報がなく、どこでアルバム『ジ・エイドリアンズ』(2017)を知ったのかも忘れたら確かめようがありません。メモしておけばよかった。

 

でもBandcampにページがありました。それによればカナダはモントリオールのバンドで七人編成。ヴォーカルがフロランス・ピタール。ほかギター、オルガン、ベース、ドラムス、サックス二本。『ジ・エイドリアンズ』が唯一の作品のようです。

 

バンドの演奏も歌手の歌いかたも荒削りで一本調子。どうってことない音楽なんですが、なんだか郷愁を強くかきたてられるものがあり、たぶんこれがシックスティーズへの視線を強く持ったレトロ・ソウルだからですよね。

 

といってもぼくは1960年代の洋楽でも邦楽でもほとんどリアルタイムで聴いていなくて、若干テレビの歌番組で触れていた日本の歌謡曲とか演歌とかそのへんだけなんです。当時のジャズやロックやモータウン・サウンドなんてもちろん知らず。

 

しかし当時から日本の歌番組で披露されるヒット曲がそんな洋楽の影響下にしっかりあって、その要素がかなり流入していたよなあと思います。でもこのことだってずっとあとになってからわかるようになったことですから。そうとも知らず知らずに体内に染み込んでいたにせよ。

 

エイドリアンズを聴いていると、まさに「あのころの」っていうことばがピッタリ似合うような音楽で、当時の洋楽なんかリアルタイムではなにも知らなかったぼくですらノスタルジアを感じてしまう、なんだかタイム・スリップしたみたいななつかしさがある、それもやや自覚的に、というのはやっぱり洋楽 in 邦楽をそれとなく感じていたんでしょう。

 

そんなエイドリアンズ、アルバムは音響まで1960年代ふうのサウンドに寄せたようなチープさ雑さで、これモノラルなんですよね。当時のカー・ラジオとかテレビ受像機の内蔵スピーカーとかから流れてきたらちょうどよく響くだろうっていうようなミックスで。

 

レイト60sヒット・チューンのカヴァーだって多少ふくまれているし、ぼくの世代だとちょうど小学生の時分にこんな空気感があったよなあ、それだから少年時代に戻ったような心地がするんだ、洗練されておらずおしゃれじゃないけれど、あのころのあの感じ、それが鼻の奥でツンと匂うみたいな。

 

エイドリアンズのバンド・メンバーがどのへんの年代でどういったひとたちなのか、どういった活動歴かなどは結局Bandcampにもどこにも情報がないんですけど、シックスティーズ・ソウルへのヴァーチャル・ノスタルジアを具現化している存在だっていうのは間違いないんじゃないでしょうか。

 

(written 2023.2.11)

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