カテゴリー「リズム&ブルーズ、ソウル、ファンク、R&Bなど」の159件の記事

2023/01/10

UKレトロ・ソウルのライジング・スター 〜 ミカ・ミラー

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(2 min read)

 

Mica Millar / Heaven Knows
https://open.spotify.com/album/1Y9V7wuiJFJGZe5eGuMuMb?si=e3BcoXlYRR-TWn4FyFolLA

 

マンチェスターの新人レトロ・ソウル歌手、ミカ・ミラーのデビュー・アルバム『ヘヴン・ノウズ』(2022)は昨夏のリリースだったもの。これがわりといいんですよね。ハチロクの三連ビートを基調にした米南部ふうなゴスペル・ソウルもなかにはあって、ぼくなんかには最高。ミカはUKじゃ注目新人としてそこそこ話題になっている存在です。

 

特にグッと胸をつかまれたのがハート・ブレイキングで痛切なトーチ・ソングの8「Will I See You Again」。これがなにかのプレイリストから流れてきたことがぼくがミカを知ったきっかけでしたからね。この曲も三連の米サザン・ソウルふうで、泣いているような歌詞といい切ないメロディといい、ほんとに沁みます。

 

ある意味現代の名曲、名トーチ・ソングに仕上がったんじゃないかとすら思う「Will I See You Again」も、ソングライティング、アレンジ、プロデュース、演奏、ヴォーカルなどすべてだれにも頼らずミカひとりでこなしていて、それはアルバム全体がそう。

 

アルバム・タイトル曲の4「Heaven Knows」も、それから10「Stay」も、なつかしい三連サザン・ソウル・スタイル。その他すべての曲がむかしふうで、2022年の新作なのにヒップ・ホップやネオ・ソウル、現代R&Bを通過した痕跡がぜんぜんなし。全編70年代ふうのソウル・ミュージックで満たされているっていうようなレトロ具合です。

 

(written 2022.12.28)

2022/11/10

ゴスペル新世代?〜 サラ・ブラウン

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(3 min read)

 

Sarah Brown Sings Mahalia Jackson
https://open.spotify.com/album/1sBIYJA6QJMbcV8aGPHspJ?si=l9L4hnZpRs24JRld8FbXKQ

 

ロンドン出身の歌手、サラ・ブラウン。ソロ・デビュー作じゃないかと思うんですがアルバム『シングズ・マヘイリア・ジャクスン』(2022)はそこそこ充実の内容で、しかもコンテンポラリーなさっぱり感もあるっていう。

 

こうしたブルーズとかゴスペルなどの世界は、ここ10年くらいかな、だんだん敬遠されるようになってきていて、注目の新作が出てもあまり話題にならないし、ましてやレヴューなんて書かれないという現状になってしまっていますよね。

 

アルバム題どおり偉大なマヘイリア・ジャクスンのレパートリーをカヴァーした企画もので、だからスピリチュアルズやゴスペル中心の内容。世俗曲もまじっていますが、それらだって解釈は教会寄りのものです。伴奏はジャジーなピアノ・トリオが中心。

 

サラはべつにゴスペル歌手だとかその世界で活動してきたとかってわけじゃなさそうですけど、同じ歴史を背負う黒人としてその大きな先輩歌手にリスペクトを示したい、作品として残したいという思いがあったんじゃないかと想像します。それもまたBLMエラ的アティテュードでしょう。歌手としての資質はジャジーなポップさが特質なんじゃないかと。

 

本作でもわりと自由に歌っているし、それにいくつかの定番有名ナンバーで別な曲をくっつけて大胆に展開したりなど、かっちりした曲の枠組にとらわれすぎないでこなしています。1曲目だってそうですし、4「サマータイム」だってわりとすぐ「マザーレス・チャイルド」になっているし(メロは「サマータイム」のままで)。

 

バンドの演奏する内容というか特にビート感がジャズ・ミュージックのそれで、典型的なゴスペル色は感じさせませんが、サラのヴォーカルだって重さや深刻さがなく、コブシもヴィブラートもなしであっさりすっと歌っているのは、やはり新世代らしいといえるでしょうか。ラテン・ビートを使った曲もあります。

 

歴史をひもとけば、ブラインド・ウィリー・ジョンスンとかシスター・ロゼッタ・サープみたいにゴスペルを世俗的に楽しく自由にこなす存在はずっと前からいたので、サラ・ブラウンの本作もそうした流れのなかにおけば、ポジション的にはことさら新世代ということではないのかも。

 

(written 2022.10.17)

2022/11/08

大人の恋愛性愛をさっぱりとつづる現代サザン・ソウル 〜 アヴェイル・ハリウッド

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(1 min read)

 

Avail Hollywood / Love, Lies, Loyalty
https://open.spotify.com/album/0kvb416o9LD4EKbpDhF1iq?si=S9oRJmOsQCegyGIVEF672Q

 

bunboniさんのブログで知ったコンテンポラリー・サザン・ソウル歌手、アヴェイル・ハリウッド。その後もSpotifyではどんどん新作が『Release Rader』で紹介されますが、いまのところの最新アルバム『Love, Lies, Loyalty』(2022)も納得の内容。

 

サウンドは標準的なものかと思いますが、声のディープさがいいですよね。それでいて暑苦しくなくさっぱりした印象を残すのは新感覚っていうか、いかにもいまどきらしいところ。むさい感じがするところが長年サザン・ソウルに苦手意識を持っていた原因ですから、それがないのはうれしいところ。

 

アダルト・オリエンティッド・ソウルとでもいうべきか、大人の恋愛性愛をこうしたしっとり&さっぱりなヴォーカルでつづるというのがアヴェイルの持つひとつのスタイルなんでしょう。ドラマーなんだということですが、本作のビートは打ち込み(それもアヴェイル担当?)、その他デジタル・サウンドが多用されています。

 

ですが、この声には間違いないアナログな質感や肌ざわり、ヒューマンなぬくもりがあって、ゆえに好感度大。インディーなんでしょう、製作費はかなり切り詰めた低予算サウンドなのが一聴でわかりますが、ヴォーカルはごまかせませんからね。アヴェイルもそこらへんしっかりした実力を感じさせる存在です。

 

(written 2022.10.15)

2022/10/16

楽しすぎるオーティス・クレイ『ライヴ!』本編出だしの2トラック

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(3 min read)

 

Otis Clay / Live!
https://open.spotify.com/album/25kWSndk8zfxTt3bDQX6oK?si=HtzszFzARYyTmgP8R75DQQ

 

なんど聴いてもいまだにライヴ本編部分の最初の2トラック・メドレーがあまりにもカッチョよすぎてばきばきにシビレちゃう、ソウル歌手オーティス・クレイの『ライヴ!』(1978)。同年の日本公演を収録したものです。

 

アルバム1トラック目にはなぜだかリハーサル音源が収録されていますが、ホンマなんでや?ライヴ本編だけでよかったのにっていう思いで、いつもぼくは2トラック目からかけています。そうしたいと思うほど幕開けの司会者による紹介から絶好調で、歌手登場、そのままメイン・パートになだれこむあたり、もうたまらなくゾクゾクしますよね。

 

キレも重量感も満点のリズム・セクションもシャープなホーンズもかっちょいいし、肝心の歌手はちょうどこのころがいちばん脂の乗り切った絶頂期で、声のハリもツヤも完璧。ぐいぐい圧倒する迫力で、なおかつ爽快で聴きやすく、さらにとってもグルーヴィで、文句なしのソウル・ライヴ。

 

このオーティス・クレイの『ライヴ!』のことは一度このブログでも書いたことがあります。ちょうど2016年にこの歌手が亡くなったのに触れて、そのタイミングでとりあげたものでした。CDでリイシューされたのは2014年のことでした。こんな傑作がなぜそんな長いあいだ?という思いでいっぱいでしたよね。

 

といってもそのときの『ライヴ!』CDリイシューが初めてオーティス・クレイを知った機会で、もともと(むさ苦しいとのイメージで)ソウル界を敬遠していたぼくは名前も聞いたことなかったんです。かつてレコードで聴いていたファンのみなさんにとっては、そのときのCDリイシューが天啓みたいなもんだったらしいです。

 

なもんで、CDリイシュー時にかなり大きな話題になっていて、Twitterのぼくのライムラインでも評判だったので、どんなもんじゃろう?と初めてこの歌手のCDを買ってみたのでした。聴いたらブッ飛びましたよね。あまりのグルーヴィさ、カッコよさに。

 

それがいまどきはサブスクにもあるってわけで、いつでもどこでも、カフェでコーヒー飲みながら、すばらしかった晩夏の花火大会からの徒歩での帰り道にだって、ささっと聴けて気分いいし、ダンサブルでもあるので思わず腰が動きステップ踏んじゃいます。スカッとしてストレス解消にもなりますよね。

 

このライヴのなかでオーティス・クレイもなんどか言っていますが「enjoy」「have fun」〜 これこそ娯楽音楽の本質ですから。そのためにならこれ以上の音楽もなかなかないもんだと心底痛感します。

 

(written 2022.9.11)

2022/09/29

デリケートな短編小説集のように 〜 ペク・イェリン

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(3 min read)

 

Yerin Baek / Every letter I sent you.
https://open.spotify.com/album/20hW2P3VSNJ1A7MwjIJ0Up?si=zkCB9ej_RyaVmESk3MMwxw

 

bunboniさんに教わりました。感謝しかありませんね〜。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-08-29

 

韓国人歌手、ペク・イェリンの『Every letter I sent you.』(2019)がきれいで繊細で遠慮がちで孤独で、ほんと、いいです。ささやかにひそやかにそっと歌うラヴ・ソングの数々がじんわり沁みてきて、韓国語だったらちょっと違ったかもですが、本作はほぼ英語なので(それも音楽のカラーを決めているでしょう)。

 

といってもぼくは歌詞の内容は気にしておらず、響きだけ受けとって、このふんわり空気のように漂うサウンドの上に軽く乗ってそっとつぶやくように控えめに歌うイェリンの声がいいなって、そう感じているんです。終盤の一曲を除き全編ずっと抑制が効いたクールなヴォーカルで、トラック・メイクもそうだし、そういったところがお気に入り。

 

基本的に近年のアンビエントR&Bを基調にしたサウンドなんですが、曲によっては80〜90年代的なアシッド・ジャズっぽいムードもただよっているようにぼくは感じます。そしてゆっくり流れゆく雲のように静かでおだやかな音楽だっていうのは、このところのぼくの急所をくすぐるもの。これですよこれ、こういうR&Bが聴きたかったんです。

 

それを韓国人歌手が実現してくれたっていう、それがうれしいですね。むろん日本にもいまこういった音楽はたくさんあって、たんにぼくがうといだけということなんですけども。ヴォーカルもサウンドも聴くたびに表情を変える多貌性みたいなものも持っていて、深みのある音楽です。

 

一つ、8曲目の「Bunny」だけはノリいいグルーヴィなクラブ系ダンス・ナンバーで、イェリンはそれでも抑えて歌っていますが、そのなかに一種の陽光がさしたような明るい雰囲気も感じられ、ある種のテンションが支配しているアルバムだけに、ここではなんだかほっと一息ついて安心できるようなリラックス・ムードがあります。

 

一曲一曲はアルバムのなかでさほど密な結合をしておらず、まるで趣向の異なる短編小説をならべたみたいになっているのも個人的にはとてもいい。この内容だったら実はこの半分の35分程度にまとめられたかもと思いますが、インディ作品だからやりたいようにやっているんでしょうね。

 

(written 2022.9.6)

2022/08/01

超カッコいいさわやかファンキー!〜 Kroi

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(2 min read)

 

Kroi / telegraph
https://open.spotify.com/album/0iA4MRC2v2WBEfgw8FSesc?si=JBuhK3SOTcS5MoWIM2KT0w

 

・ギター、ヴォーカル(内田怜央)
・ギター(長谷部悠生)
・キーボード(千葉大樹)
・ベース(関将典)
・ドラムス(田英知)

 

森保まどかがきっかけでたぐりにたぐって知ることとなったKroi。日本の五人組バンドで、ごた混ぜミクスチャー・バンドだということ(全色混ぜると黒になる)と、いずれも20代のメンバー全員ブラック・ミュージック好きだというところからこのバンド名になったようです。

 

2018年デビューで、今回聴いてみてはまった七月末リリースの最新作『telegraph』(2022)は二作目。こ〜れが!カッコいいんですよね。たしかにアメリカン・ブラック・ミュージックにしっかり根ざしたグルーヴ&サウンドが濃厚で、デビューしてまだ四年ゆえのハジける勢いみたいなもので突っ走る爽やかなみずみずしさにも好感をいだきます。

 

オープニング・トラックはアルバム題を意識してか、ただの電信ログで、それに続く2「Drippin’ Desert」、3「Funky GUNSLINGER」の二曲が完璧なキラー・チューン。あまりにもカッコいい。ノリがファンキーで、これらって完璧なファンク〜R&Bスタイルですよね。バンドの演奏もいいし、歌ったりラップしたりする内田のことばのつむぎかたや発声にビートがあって、それでもってグルーヴを産んでいます。

 

キラー・チューンといえるものはほかにいくつもあって、たとえば7「Juden」もすばらしい。ここではバンド演奏の闊達さも目立ちます。この五人組はぜんぶ人力生演奏なんですよね。達者なんだなというのがとってもくっきり伝わります。そして、やはりヴォーカリストの才覚がみごとすぎる。

 

演奏力の高さを活かしたインストルメンタル・ナンバーも二つあって(8、14)、そこではソウル・ジャズ〜ジャズ・ファンクみたいなかっちょええ演奏を聴かせてくれているのもグッド。ヴォーカル・ナンバーもすべてふくめ、グルーヴ・オリエンティッドな音楽を指向しているんだなというのがよくわかり、ちょっぴりレトロかもしれないけど、かぎりなくうれしいです。

 

年末のベストテンに入る傑作と思います。

 

(written 2022.7.31)

2022/07/11

重量級の骨太なライヴ・ファンク 〜 トロンボーン・ショーティ

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(2 min read)

 

Trombone Shorty / Lifted
https://open.spotify.com/album/4jGggj1AJxwhrVqm5oIJlh?si=XCnJcMMBRCq1owIF3hGjKA

 

最近この手の音楽はちょっと遠慮しておきたいとかやかましいぞと感じることが若干ないわけでもないトロンボーン・ショーティの最新作『リフティッド』(2022)。痛快な傑作であることは間違いありませんので、ちょこっとだけメモしておきます。

 

1曲目「カム・バック」から野太いガッツのあるファンク・グルーヴが炸裂。ホット・ワックス/インヴィクタス系みたいなぐちょぐちょ言うギター・カッティングに続きビートとオルガンとホーンズが入ってきた刹那、もうただそれだけで、のけぞりそうな快感が背筋を電流のようにほとばしります。

 

特にドラムスとホーン・セクションのノリと、それからトロンボーン・ショーティの声の迫力と、この三者に宿る強靭なライヴ・パワーに圧倒され、だから、つまり、こうした眼前で汗と唾が飛び散らんばかりの肉太フレッシュ(flesh)・ミュージックは最近ちょっと遠ざけたい気分のときもあるわけですが、トシとったんだなあ>自分、こういうのばっかり聴いてきたのに…。

 

アルバム一作全編を通しペース・ダウンしたりチェンジ・オヴ・ペースがあったりなどせず、最初から最後まで隙なくそんな極太で豪放なファンク・チューンで貫かれてあるんであれなんですけど、なかでもこれだったらいまのぼくにもちょうどいいんじゃないかと思えるのが7曲目「フォーギヴネス」。軽みがあってメロウでいいです。

 

カーティス・メイフィールド → レニー・クラヴィッツ系のさわやかニュー・ソウルっぽい一曲で、ちょっとアル・グリーンっぽい雰囲気もありますよね。それでもこのスウィート・ナンバーだって底部を下支えしているのは重量級のぶっといグルーヴにほかならないと聴けばわかり、それでもまあこれくらいならまだなんとか。

 

(written 2022.7.10)

2022/07/03

アメリカン・ポピュラー・ ミュージックの王道 〜 ファントム・ブルーズ・バンド

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(3 min read)

 

Phantom Blues Band / Still Cookin’
https://open.spotify.com/album/1snCLFN5TsQbGLzrmc0Guk?si=fQLV6jAJRgGG9WbSPoy31w

 

Astralさんに教えてもらったファントム・ブルーズ・バンド。最初タジ・マハールのバックをつとめるべくマイク・フィニガン(key)を中心に集結した面々らしいですが、自身名義のアルバム最新作『スティル・クッキン』(2020)が痛快な時代錯誤感満載で、最高に楽しい。古いスタイルのファンキー・ブルーズ・ロック、ぼくはこういうのが気持ちいい人間なんです。

 

時代錯誤とか古いとかレトロとかっていうより、こういうのはアメリカン・ポピュラー・ ミュージックの王道として永遠不滅のものなんだろうというのがはっきり言って本音ですけどね。アップデート史観や進化論にとらわれすぎることなく今後とも聴いていきたいと思っておりますよ。

 

『スティル・クッキン』もサウンドの土台になっているのはリズム&ブルーズ、ジャズ、ソウル。そこに適度なカリビアン・ビート香味もまぶされているのはべつに意識したというんじゃなく、アメリカ合衆国音楽ではあたりまえの養分になっているものだから自然に出てくるわけです。

 

ウィルスン・ピケット・ナンバーの1曲目から快調。それ以後もドクター・ジョンふうのニュー・オーリンズ・スタイルが聴けるのもいいですね。鮮明なのは三曲あって2「ウィンギン・マイ・ウェイ」、3「ジャスト・イン・ケース」、7「ベター・バット・ナット・グッド」。ゆったりしたひょうひょうとした味わいがいいんです。

 

はっきりしたラテン・ソウル・ナンバーである8「テキーラ・コン・イェルバ」も最高だし、ブルージー&メロウにただよう都会の夜のくつろぎ感満載なスロー5「ブルーズ・ハウ・ゼイ・リンガー」ではジャジーでムーディなテナー・サックス・ソロも聴きどころ。背後でややハチロクっぽいビートの刻みがあったり。

 

完璧ジャンプ・ブルーズなバディ・ジョンスンの11「アイム・ジャスト・ユア・フール」なんか、こんな時代にまったくおじけづかずストレート真っ向勝負で博物館的なシャッフル8ビート・ブルーズをフル展開していて、こういうのがねえ、生理的快感なんですよね、ぼくはね。

 

(written 2022.5.15)

2022/06/14

聴いたことのない音楽を聴きたい 〜 ウェザー・リポート「キャン・イット・ビー・ダン」

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(3 min read)

 

Weather Report / Can It Be Done
https://open.spotify.com/album/0tXYdgzPsy67uuS0Ugirb7?si=ygvLy4adTY-uxy8TGF-GXA

 

このリンクはウェザー・リポート1984年のアルバム『ドミノ・セオリー』ですが、そのオープニング・ナンバー「キャン・イット・ビー・ダン」が最高にすばらしいと思うんですよね。ずっと前にも言ったことですが、このバンドのNo.1傑作曲だとぼくは信じています。

 

でもそんなことを言っているジャズ・リスナーやウェザー・リポート・ファンっていままでぜんぜん見たことないです。どこにもいないみたい。ぼくだけの感想、というか信念なんでしょう。だいたいこれヴォーカル・ナンバーだし、そもそもジャズですらない。ソウル・ナンバーに違いない真っ黒けな一曲です。

 

そこがいいと感じているんですよね。独裁者だったジョー・ザヴィヌルは1960年代のキャノンボール・アダリー・バンド時代からそういう資質の音楽家だったというのが、ここではフルに発揮されています。でも曲はザヴィヌルのものじゃなく、ワイルド・マグノリアスなどニュー・オーリンズ・ファンクのウィリー・ティーがこのアルバムのために書いた当時の新作。どういう接点があったんでしょうね。

 

ともあれこの「キャン・イット・ビー・ダン」、歌詞も強く共感できるもの。この世にまだ出ていないメロディ、まだ聴いたことのない音楽というものはどこにあるのだろう、ないみたいだけど、それをずっとさがし求めているんだ、という、メタ・ミュージック的な視点を持った一曲。

 

歌うのはカール・アンダースン。ジャズやフュージョンのファンにはなじみがない名前かもしれませんね。ぼくだって『ドミノ・セオリー』ではじめて聴きましたが、タメとノリの深いソウル・グルーヴを表現できる歌手で、84年時点で一聴、惚れちゃいました。

 

この曲、バンドはほとんど出現の機会がなく、たぶんこれ、オマー・ハキムがハイ・ハットでずっと一定の刻みを入れている(&ちょっとだけスネアも使う)以外は、多重録音されたザヴィヌルのキーボード・シンセサイザーしか入っていませんよね。だけどそれが絶品じゃないですか。リリース当時マイルズ・デイヴィスも「あのジョーのオルガンを聴いたか」と絶賛していました。

 

もう音色メイクが文句なしによだれの出るセクシーなもので、フレーズも曲のメロに寄り添いながらそれをひろげたり深めたりして、空間を埋めていくかのようでありながらふんわりとただよい、適切な間を感じさせる絶妙なもの。

 

曲がすばらしいのと歌手の声が深いのと最高なキーボード伴奏との三位一体で、もちろんウェイン・ショーターもだれも参加していませんから「ウェザー・リポートの曲」というにはやや躊躇を感じないでもありませんが、それでもこれだけのグルーヴの前にはひれふすしかありませんよ。

 

(written 2022.4.26)

2022/05/21

これもジャズから連続的に産み出されたものなのだ 〜 クーティ・ウィリアムズの40年代エンタメ・ジャンプ

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(4 min read)

 

Cootie Williams Selection
https://open.spotify.com/playlist/0avUTA6AmcGi3LpT6agNr3?si=af12bfde9da54ebf

 

きのう書いた『ホット・リップス・ペイジ・セレクション』と同時期に作成したSpotifyプレイリストがきょう話題にしたい『クーティ・ウィリアムズ・セレクション』。上でリンクしておきましたが、CDだとやはりこれも仏クラシックスの(廃盤)で、サブスクだと同じく「Complete Jazz Series」で、年代順に聴けます。

 

クーティの「Complete Jazz Series」は1941年1月録音からはじまっていますね。デューク・エリントン楽団で名をあげたこのジャズ・トランペッターは、40年にそこを辞めベニー・グッドマン楽団に移籍しています。

 

しかし一年で脱退し自分のバンドを結成して活動するようになってからは、王道ジャズというよりブラック・エンタメ系にハミ出したブルーズ由来の猥雑ジャズをキャピトルやマーキュリーなどに録音しはじめたのが、ですから41年のことです。

 

仏クラシックスのCDもサブスクの「Complete Jazz Series」も、1949年9月録音で終了していますが、Wikipediaによれば50年代のクーティの活動はどうもよくわからないらしく、人気が凋落し、そもそもバンドの規模も少人数編成にしていたそうで、なにがあったんでしょうね。

 

1962年にデューク・エリントン楽団に復帰して以後は、同楽団で王道ジャズ路線を死ぬまで続けたクーティですが(85年没)往時の輝きはもはやなく。ぼくみたいなリスナーには自身のバンドでの40年代ジャンプ系録音がいまでも最高に楽しくて忘れられませんわ。

 

すくなくともその40年代音源だけはサブスクでも漏らさずぜんぶたっぷり聴けるんで文句なしです。30年代にはデュークのところで輝かしいキャリアを誇ったクーティが、その後自分のバンドでこうしたエンタメ系へと移行したのはなぜだったんでしょう。なんにせよ彼我の区分を厳密にせよというのはどだいムリな話。

 

正直に言って、ジャズ/リズム&ブルーズ/ロックの区別をしたがるそれぞれファンのことがぼくはさっぱり理解できないです。好みはひとそれぞれあるからやむをえないにしても、もしどれかを否定する方向に走ると自分の足下もあやうくなるっていう事実を認識してほしいものです。

 

クーティみたいな音楽家のキャリアをじっくり聴くと、ますますこの感を強くしますね。自身のバンドでの1940年代音源では、ジャズを土台におきつつ大きく芸能方面に踏み出してジャンプ〜リズム&ブルーズをやっていたことは、聴けばだれでもわかるはずのこと。

 

なかには1949年の「レット・エム・ロール」「スライディン・アンド・グライディン」「マーセナリー・パパ」みたいな、こりゃもう(初期型)ロックンロールだろう、すくなくともその先駆けには違いないと断言できるものだってあるんですから。それらだってジャズから連続的に産み出されたものですよ。

 

ブラック・エンタメ系にハミ出した1940年代クーティ自己名義音源に(かつてのデュークのところでの「コンチェルト・フォー・クーティ」みたいな)ジャジーなスリルとか快感はないかもしれませんが、曲のノリと猥雑感がこの上なく楽しくてですね、これもまた別の種類の音楽美なんです。

 

(written 2022.4.12)

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