カテゴリー「ブラジル」の101件の記事

2023/01/11

充実のサンバ・パゴージ 〜 ロベルタ・サー

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(2 min read)

 

Roberta Sá / Sambasá
https://open.spotify.com/album/0CMOYF41lPS0w3Lf0GX3Hn?si=4Ik0i-8VQU-pmgecfSQ99Q

 

ジャケットはこんなでアレですけど、ロベルタ・サー(ブラジル)の最新作『Sambasá』(2022)はEPっぽい短さながら充実のサンバ・パゴージで、真っ向勝負。手ごたえあります。

 

ここまで正統的なサンバをロベルタが全面的かつストレートに歌うんですからうれしいですよね。もとから飾らない素直なヴォーカルが持ち味の歌手なので、素材とアレンジ/プロデュース次第でここまで良質な音楽ができあがるということでしょうね。

 

ナイロン弦ギター&カヴァキーニョを中心にした弦楽器群+パンデイロ、タンボリン、スルドその他といった打楽器群でサウンドが編成されているあたりもオーセンティックなサンバのマナーに沿ったもの。そこにアコーディオンやピアノなどがくわわります。

 

ブラジル音楽独自のサウダージが横溢しているのもうれしいところ。1曲目のコーラス部分からもそれはわかります。ロベルタが歌う主旋律はクッキリあざやかに上下するメロディ・ライン。それを重くせずあっさりと軽くふわっとつづっているのがぼくには最高なんですね。

 

2曲目はピアニストがアコーディオンを弾くのとリズムの感じとあわせ、やや北東部ふう。4曲目でゼカ・パゴジーニョ、6でペリクレスという二名のパゴージ界重鎮がゲスト参加して渋いノドを聴かせているのもいい。それら二曲ではサウダージもきわまっている感じです。特に6「Sufoco」。

 

(written 2022.12.29)

2022/12/13

ウェザー・リポート in バイーアみたいな 〜 レチエレス・レイチ

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(2 min read)

 

Letieres Leite Quinteto / O Enigma Lexeu
https://open.spotify.com/album/52Vs6AyLKN7Fzw22WKsUzl?si=4mEOIBeaRzqypZ6j9PuSqg

 

ブラジルの故レチエレス・レイチ。キンテートでの2019年作『O Enigma Lexeu』は<ウェザー・リポート in バイーア>みたいなアフロ・ブラジリアン・フュージョンの傑作だっていうんでおおいに胸をおどらせて聴いてみたら、違わぬ内容でたいへん感動しました。

 

作編曲のレチエレスが管楽器を担当するほか、鍵盤、ベース、ドラムス、パーカッションというバンド編成。特にパーカッショニスト(ルイジーニョ・ド・ジェージ)の存在が大きいと、本アルバムを聴けばわかります。まさにバイーア的というかアフロ・ブラジリアンなリズムの躍動と色彩感を表現しています。

 

最初の二曲はおだやかな70年代初期リターン・トゥ・フォーエヴァー路線のピースフルなものなのでそのへんイマイチわかりにくいんですが、3曲目からがすばらしい。その「Patinete Rami Rami」なんかのけぞりそうになるほどのリズムの祝祭感で、これホントにパーカッショニスト一人だけ?と疑いたくなってくるくらいリッチでカラフル。

 

その後は終幕までずっとそんな感じで、たしかにこりゃバイーアで録音されたウェザー・リポートだっていうおもむきです。もちろんジョー・ザヴィヌルだって、特に70年代中期以後は中南米やアフリカの音楽にしっかり学んで吸収していたんですが、ここまで本格的なのはさすがブラジル当地のミュージシャン。

 

レチエレスのフルートやサックス、ルイジーニョの超人的なパーカッション技巧にくわえ、マルセロ・ガルテルのピアノやフェンダー・ローズも好演。和音楽器を使わないバンドもやっていたレチエレスですが、今作では自由に弾かせてアルバムのキー・ポイントになっています。

 

2019年に知っていたら、間違いなくその年のベスト5に入った傑作でしょうね。

 

(written 2022.11.29)

2022/12/10

躍動的な新世代ブラジリアン・リリシズム 〜 アレシャンドリ・ヴィアーナ

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(2 min read)

 

Alexandre Vianna Trio / Música para Dar Sorte
https://open.spotify.com/album/5aFx0XIgAbce9ZuVQkNReI?si=DvFzJ8LsRfW97-C7tmwLUA

 

ブラジルはサン・パウロのジャズ・ピアニスト、アレシャンドリ・ヴィアーナのトリオ最新作『Música para Dar Sorte』(2022)がすばらしい。近年のサン・パウロはブラジルというより南米随一のジャズ都市で、いい音楽をどんどん産み出していますよね。

 

アルバム・タイトルになった7曲目にも典型的に表れているように、伝統的なジャズ・サンバをモダナイズしたような内容になっているのが大の好み。躍動的なビート感と、それでいて決して荒くはならないおだやかさ、上品さが同居しているのはとってもいいです。

 

紹介していたディスクユニオンの説明ではキース・ジャレットなどの美メロ系ということも書かれてあったんですけど、ジャレットがどうにもイマイチだからそれでは惹かれず。たしかにアレシャンドリも歌うような抒情派っていうかリリシズムがピアノ・プレイの持ち味なので、その意味では納得です。

 

そんなリリカルな部分がうまい具合に現代的ジャズ・ビートで昇華されていて、ぼくの耳にはイキイキとした泉のように水がこんこんと湧き出てくるようなグルーヴ感こそが印象的なアルバムで、ドラマー(ラファエル・ロウレンソ)の活躍もみごとだと思えます。

 

そのへんのバランスっていうか美メロ・リリシズムと(ジャズ・サンバ由来の)躍動感の融合に最大の特色があるジャズ傑作アルバムじゃないでしょうか。

 

(written 2022.11.24)

2022/10/24

サンバの秋だ 〜 ニルジ・カルヴァーリョ

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(2 min read)

 

Nilze Carvalho / Verde Amarelo Negro Anil
https://open.spotify.com/album/41mnwm5xiw9zeRNHRb0bgD?si=SYVxgpMfQ9eZICqRPRk2xg

 

bunboniさんに教えてもらいました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-08-15

 

真夏向きの音楽だと思いながら愛聴しているうちにそのまま秋になっちまいましたが、ブラジルのニルジ・カルヴァーリョ『Verde Amarelo Negro Anil』(2014)、秋にだってなかなか似合う音楽です。むしろ適温になってきたいま10月のほうがよりさわやかでいい感じに聴こえるかも。

 

勢いより落ち着きを感じさせる円熟サンバで、その意味でも秋っぽいフィーリングはあります。ぼくがサンバを聴くようになったのはCD時代になってからなので、ずっと前からなじんでいたみなさんの感慨みたいなものには共感できる者じゃないんですが、そこはそれ、聴き知っていた曲というのもある程度ふくまれています。

 

曲ごとの解説はbunboniさんの記事をお読みいただくとして、もう1曲目から快調にグルーヴするサンバで楽しくヒザや腰が動きます。これこれ、こういうのですよね大衆娯楽音楽の醍醐味は。その後も同傾向のダンサブルなサンバが多いし、同時に佳くメロディアスでもあって聴いてもいい。

 

しっとり聴き込むメロウ系バラードもあります(7)。クイーカが哀愁をさそうのも印象深く、かといってサウダージを感じさせるというふうでもなくさっぱり乾燥した心地がするのは、やはり大人の音楽家らしい味でしょうか。この曲、本作でいちばん好きかも。

 

カルメン・ミランダばりに譜割りの細かい速射砲ヴォーカルを余裕でこなす技巧曲があるかと思えば(9)、ニルジの本来領域であるバンドリンの妙技を聴かせるインスト・ショーロもあったり(12)。クロージングはいかなぼくでも熟知のウィルソン・モレイラ・ナンバー。メロが流れてきた瞬間に頬がゆるみ、ニコニコしたままアルバムは終了。

 

(written 2022.10.20)

2022/07/31

ジャズ・ボッサでビートルズ 〜 オス・サンビートルズ

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(3 min read)

 

Os Sambeatles / Os Sambeatles
https://open.spotify.com/album/22tDpJvjwSFO07hZpvF0VO?si=BkS7L2ofQ-2fbgrxxLzALw

 

これまたディスクユニオンのツイートで出会った作品。だから日本語情報がいま読めず。それでも音楽が極上なので書けると思います、オス・サンビートルズの『オス・サンビートルズ』(1966)。今年LP復刻されたということで知りました。

 

ビートルズ・ナンバーの数々をジャズ・ボッサにアレンジしてインストルメンタル演奏しているもので、中心人物はブラジルのピアニスト、マンフレッド・フェスト。渡米直前の1966年に製作・リリースされました。

 

ですからビートルズ楽曲といってもそこまでのものということなんですが、それでよかったかもと思える内容です。スタジオ作業中心になってからの後期ビートルズには一筋縄ではいかない複雑な曲も増えてきて、ジャズ・ボッサなんかにアレンジしにくいですからね。

 

もとがどんな情感の曲であろうとも、おだやかにくつろげる軽快なサロン・ミュージックに仕上がるのがジャズ・ボッサの美点。なので、ひとによってはどれ聴いてもおんなじじゃんっていう感じかもですが、ビートルズだってこうなれるというのはたいした消化力で、ぼくは大好きですね。

 

1曲目「キャント・バイ・ミー・ラヴ」から楽しくて、ややにぎやかで細かなビートをドラマーが刻み入れているのが快感です。2「ミシェル」ではオルガンも弾かれています。3「ア・ハード・デイズ・ナイト」ではサビ部分でさっとリズム・パターンが変化するのも一興。

 

4「ガール」は冒頭でチェレスタが登場。原曲のやや淫靡だった味をここではかわいらしいムードに変換しています。5「ティケット・トゥ・ライド」6「アイ・シュド・ハヴ・ノウン・ベター」は、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」とならぶ本アルバム最大の聴きどころ。これらで聴ける軽めだけど確かなビートこそ、ぼくには楽しいのです。

 

7「ヘルプ」がかなり愉快なムードになっていて、途中4ビートになったりもしているし、原曲を知っているとずいぶん変わったなと思うところでしょうね。歌詞の意味を重視する歌手はシリアスな曲調に転換してスローで歌うこともあっただけに、そんなところからはちょっと想像できないムードです。

 

ところで8「イエスタデイ」で疑問に思うことがあります。このトラック、なんと12分以上もあって、あれっ?と思いながら聴いていると、9曲目以下の「オール・マイ・ラヴィング」「アンド・アイ・ラヴ・ハー」「アスク・ミー・ワイ」「イフ・アイ・フェル」が同じトラックのなかに続けて流れてくるんです。

 

9トラック目以下、それらの曲はちゃんとまた一個づつ出てくるので、なにかのミスだったんでしょう、Apple Musicでも同じになっています。オリジナル・レコードからそうだったとは思えませんが、しかし本作、サブスクにあるのは盤起こしだし、あるいは復刻LPのミスなんでしょうか。

 

(written 2022.7.27)

2022/05/10

フローラ・プリムのニュー・アルバムは圧巻の傑作

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Flora Purim / If You Will
https://open.spotify.com/album/54jqOozz2WPoJV9KXs7eRh?si=eWjYV3MxQX6ol-Idn92pmw

 

フローラ・プリム15年ぶりの新作『If You Will』(2022)がかなりいいですよね。傑作じゃないかな。キャリアと高齢なりに枯れている・円熟しているということがなく、みずみずしいピチピチした新鮮な魅力にあふれているっていう。もうビックリですよ。

 

基調になっているのはリオ・サンバをベースにしたブラリジアン・ジャズ・フュージョン。ジョージ・デュークと共作した過去曲の1「If You Will」からそれが全開のダンス・チューンで、腰が動きます。しっかしあまりにも声が若いなあ信じられんと思ったら、メイン・ヴォーカルは子のダイアナか。

 

だれが歌うにせよ、ここにはフローラが1970年代から展開してきたサンバ・ジャズ・フュージョンがしっかりと刻印されていて、しかもそれが2022年型にアップデートされているコンテンポラリーネスも聴きとれるのはやはりすばらしい現役感。この手のダンス・ミュージックは古くならないっていうのがあるにせよ。

 

2曲目「This Is Me」からはフローラがメイン・ヴォーカルですが、ダイアナの若々しさに負けていないフレッシュな躍動感があって、80歳にして衰えるっていうことと無縁なんですね、このひとは。音楽的にはまったく老化していません。

 

この2曲目は先行シングルだったもので、やはりこのアルバムに全面参加しているパートナー、アイアート・モレイラのジャム・バンドを現代にアップデートしたもの。ブラジリアン・フュージョンですけれど、快活でダンサブルな、本アルバムの白眉といえる一曲(私見)。楽しいぃ〜っ!

 

英語で歌うリターン・トゥ・フォーエヴァー時代の3「500 Miles High」はやはりジャジーに。エレベ・ソロも聴きどころのひとつです。その後はふたたびサンバ・フュージョン路線で進みます。都会的洗練と野趣が絶妙なバランスで共存融和するサウンドは聴きごたえ満点。

 

8「Dois + Dois = Tres」だけがなぜかのブルーズ、それも1960年代末〜70年代初頭ふうにくっさ〜いどブルーズ・ロックなんですが、これはなんだろうなあ。エリック・クラプトンみたいなエレキ・ギター・ソロはだれが弾いているんでしょうね。これだけアルバムのなかで浮いています。

 

ラストの9「Lucidez」はナイロン弦アクースティック・ギターとフェンダー・ローズのサウンドが熱を冷やす静謐で美しいハーモニーを持つバラード。ちょっとジャジーなミナス音楽を想わせたりもしますね。フローラのヴォーカルもきわだって魅力的に響きます。

 

(written 2022.5.8)

2022/05/01

ポップなリオ新世代の面目躍如 〜 ニーナ・ベケール

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(3 min read)

 

Nina Becker / Acrílico
https://open.spotify.com/album/5Toc0KiEuEohfd7cR3dqid?si=MovfTGMFTH-xPNxQ4KCv_w

 

2014年のドローレス・ドゥラン集『Minha Dolores』が大人気だったニーナ・ベケール。これでこのブラジル人歌手を知りました。あのころこのアルバムを話題にしているひとは多かったですし、ぼくもブログをはじめてから数度書いたくらい。

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その後ニュースを聞かなくなったよなあと思っていたんですが、2017年に新作『Acrílico』を出していたんですね。ついこないだ気がついたばかり。なんか、ぜんぜん話題になっていなかったような気がします。

 

ディスクユニオンの通販サイトくらいしか日本語情報がないので、ファンとしての感想はじゃあぼくが…というわけでとりあげて書いておくことにします。なかなかおもしろいアルバムなので。

 

おだやかなあたたかみに癒された『ミーニャ・ドローレス』から一転、今作はかなり先鋭的で実験的なサウンドで満たされていて、強い不協和音の点描的な連発でほぼ無調に近づいている曲もあったりします。

 

ニーナと他の人との共作が多いようですが、メロディ感も希薄で、なんだかポスト・ロックふうにアンビエントな音像。浮遊するあいまいなサウンドの上をニーナが鋭角的に舞うといった感じででしょうか。

 

そもそもそういった音楽も前からソロではやる歌手で、ドローレス・ドゥラン集がよかったというみなさんには受け入れがたい作風かもしれません。ニーナとともにドゥーダ・メロがプロデューサーとしてクレジットされていて、伴奏はペドロ・サー(ギター)、アルベルト・コンチネンチーノ(ベース)、ラファエル・ヴェルナンチ(ピアノ)、トゥッチ・モレーノ(ドラムス)。

 

曲によりモレーノ・ヴェローゾ、カシン、エヴェルソン・モラエス、ネグロ・レオ、エドゥアルド・マンソなどが参加して、やはりチャレンジングな演奏を聴かせています。前衛的といえる冒険精神が横溢しているんですよね。

 

でも土台にあるのはあくまでサンバやジャズ・ボッサだなと鮮明にわかるのがぼくみたいなファンでもすんなり聴けるところ。ニーナの声にはあたたかみとくつろぎ、そして華があるし、とびきりポップな歌手ですし、こんなとんがった音楽をやってもざわめきばかりにならずレトロなリラックス・フィールが同居しているのには安心できます。

 

(written 2022.4.10)

2022/04/20

声の美しさとリリカルさがいい 〜 カロル・ナイーニ 2013 & 21

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(3 min read)

 

Carol Naine / Carole Naine
https://open.spotify.com/album/1EPbUU9zUrqykndhogcywF?si=r5iTyuU3T4CCNRt26a7rnw

 

Carol Naine / Ao Vivo
https://open.spotify.com/album/4G5iZbYygHbTXxC5OppOsR?si=zwCi9-f6Rl-I3w2EfwUSLA

 

bunboniさんのブログで知った歌手です。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-09-11

 

カロル・ナイーニ(ブラジル)のデビュー作『カロル・ナイーニ』(2013)は、たしかにとにかくアレンジが先鋭的。プロデュース、アレンジ、音楽監督を務める鍵盤奏者のイヴォ・センナがとんでもないサウンドをつくりあげています。

 

曲はソングライターでもあるカロルが書いていて、サンバを基調にした通常的なものですが、こんなすさまじく鋭角的なアレンジと音響がついて、それでいてヴォーカルはそれに引っぱられることなく平常心で美しいっていう。

 

アレンジ・サウンドが先鋭的すぎるせいでそっちばかり聴いてしまいますが、ぼくとしてはそれと曲と歌(声)との三位一体のバランスっていうか、かみあっていないかのように同時並行する感じ、ぶつかりあいがなかなか楽しくて。

 

メタリックに硬質で乾いたイヴォ・センナのペンとは対照的に、カロルの持ち味はしっとり湿っていてリリカルだというのが実際のところ。体温を感じる人間味にあふれていると聴こえます。サンバ・クラシコの持つ深い情緒とメランコリアをそのまま継承しているようで、このデビュー作はそれも聴きどころの一つかもしれません。

 

特にアルバム・ラスト10曲目「Nasso Lar」で聴かせるバラード表現なんか、マジですばらしい。クイーカを効果的に使ったイヴォのアレンジも曲と声のリリカルさをきわだたせることになっていて絶妙ですが、ここではなんといっても歌の情緒感がいい。

 

このデビュー作がかっとびすぎているおかげで、パートナーをチェンジしてしっとり路線になった二、三作目がかすんでしまいますね。昨2021年に出た三作目『Ao Vivo』も、フィジカル・リリースなきゆえか話題にすらなっていませんが、内容はいいと思います。

 

ライヴ・アルバムという題名ですが観客の気配すらありませんから、無観客スタジオ配信ライヴみたいなものなんでしょうね。いや、配信すらせず、ただライヴな生演奏をそのまま収録したというだけの意味かも。

 

さわやかな清涼感すらただよう音楽で、それはピアノを弾くアレシャンドリ・ヴィアーナのスタイルゆえでしょうか。基本ピアノだけの伴奏で歌っていますが、曲によってはチープなビート・ボックスの音も聴こえます。カロルは二作目以後アレシャンドリと組んでこんな路線。サンバ・ベースのMPBというより、かなりジャジーな雰囲気に傾いていて、個人的には好きです。

 

カロルの声の美しさ、高音部でひときわ目立つ繊細な歌いまわし、曲のメロディのよさなどは、こういった路線のほうがわかりやすいかもしれず、上品さと端正さが前に出ていてけっこういいという面だってあるのでは。

 

(written 2022.2.20)

2022/04/05

枯淡のエリゼッチ 〜『アリ・アモローゾ』

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(2 min read)

 

Elizeth Cardoso / Ary Amoroso
https://open.spotify.com/album/2YV6n5bt3OKpBpDraGydxS?si=ypQ42e-tQYyjc2OmQnw1Kw

 

エリゼッチ・カルドーゾ(ブラジル)晩年のアルバム『Ary Amoroso』(1991)。90年に亡くなっていますから、死後翌年にリリースされたということでしょうか。90年リリースという情報もありますが。

 

これ、ぼくはどうして出会ったんでしたっけねえ、昨2021年にCDリイシューされたんだったか、そうだったならディスクユニオンのアカウントがツイートしてくれたので気がついたんでしょうね、きっと。

 

アルバム題どおりアリ・バローゾ曲集で、エリゼッチにとってはキャリアをとおしすっかり歌い慣れているものだったはず。実際かなりの有名曲もふくまれていますが、晩年にアルバム一作全編でバローゾの曲をとりあげようというのはどういう心境だったんでしょう。

 

死が近づいて自身の歌手人生をふりかえるようにバローゾを歌いなおそうということだったのか、なにもわかりませんが、このアルバム、とても枯れていて渋くて、なかなか味わい深いものなんですよね。最近こういった落ち着いた静かでおだやかな音楽が好きになってきました。

 

エリゼッッチといえば、サンバ、サンバ・カンソーンの歌手だったわけですが、このアルバムにサンバ色はさほど強くありません。むしろジャジーな感触すらあって、ラファエル・ラベーロ(七弦ギター)、ジルソン・ペランゼッタ(ピアノ)、マルコス・スザーノ(パーカッション)ら名手たちに支えられ、細やかにやりとりしながら、淡々とバローゾをつづっていく様子が胸に沁み入ります。

 

いうまでもなく声にはもう強さや張りがないんですが、こうして装飾をそぎ落とさざるをえなくなってストレートに歌う枯淡の境地は、音楽や曲の持つ本来の魅力をかえってむきだしにしてくれるようにも思えます。ある意味純度の高い歌唱であるのかもしれません。

 

(written 2022.1.3)

2022/03/30

聴きやすくわかりやすい 〜 オルジナリウスのホワイト・アルバム

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(3 min read)

 

Ordinarius / Blanc
https://open.spotify.com/album/50lnSF0tOslKOWwK8YYsbR?si=RYQk73oVS_qzTMx4uLJLhw

 

ブラジルのヴォーカル・コーラス・グループ、オルジナリウスの新作『Blanc』(2022)がリリースされましたね。渋谷エル・スールでは前々作の『Paralelas』(2020)が今年の最新入荷みたいになっていますが、その後2021年にも一作ありました。

 

このアルバム題とジャケット・デザインをあわせ見ると、やはりどうしてもビートルズの(通称)『ホワイト・アルバム』(1968)を連想するわけですけど、オルジナリウスの今作はアルジール・ブランキ(Aldir Blanc)曲集という意味です。

 

それでもこういうジャケット・デザインにしたんだから「白」というのにもひっかけたのではありましょう。プリンスにも(通称)『ザ・ブラック・アルバム』(1994)という真っ黒ジャケがあったし、ビートルズのあれはなにかとオマージュを産んだ名作です。

 

オルジナリウスの『ブランキ』収録の12曲はすべてアルジール・ブランキの書いたもの。ブラジルの国民的詩人とまで言われたアルジールは2020年5月に新型コロナウィルス感染症で亡くなっているので、追悼の意味を込めたトリビュート・アルバムをつくったんでしょう。

 

このコーラス・グループの音楽性は、ぼくも松山公演に行った2019年秋冬の来日ツアーあたりから三作、微動だにしておらず、いい意味でのマンネリというか金太郎飴状態。不動のエンタメ・ミュージックなんですよね。

 

ここまで続けて同じことを徹底的に練りこめば、もうこれは立派なアート(職人芸=芸術)と言えるし、こういったうきうき楽しい音楽を待ち望むファンにきっちり結果を聴かせてくれているというホンモノのプロだけがなせるワザだということです。

 

しかし前もオルジナリウス関連で言いましたが、楽器演奏にしろヴォーカル・コーラスの重ねかたにしろ、めっちゃ高度に洗練された複雑な技巧を駆使してつくりこまれています。ちょっと聴いてもただ楽しいだけの軽い音楽に思えたりするかもしれませんが、そういうできあがりになる、聴きやすくわかりやすいっていうのが真のすばらしさです。

 

『ブランキ』でも約43分間がただひたすら楽しくてあっという間に終わってしまいますし、アルジール・ブランキというソングライターと書いた曲の魅力を最大限に発揮できているし、アミルトン・ジ・オランダ、トリオ・ジューリオなど多彩なゲスト参加もオルジナリウスのエンタメ性にまるで同化されています。

 

(written 2022.3.29)

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