カテゴリー「ブラジル」の109件の記事

2024/02/26

サウダージあふるる 〜 ルイ・バラタ、パウロ・アンドレ曲集

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v.a. / A Música de Paulo André e Ruy Barata

https://open.spotify.com/album/21EcBp7epRIkGdlmPN1nJL?si=Vc5SQttSRzqrW2JiKLFefw

 

ブラジルはバラ州出身の作詞作曲家、ルイ・バラタの生誕100周年を記念して制作・リリースされたアルバムが『A Música de Paulo André e Ruy Barata』(2023)。ルイ・バラタとその子でシンガー・ソングライターのパウロ・アンドレ・バラタの曲を収録しています。

 

カヴァーしているのはほとんどがぼくの知らない歌手ですが、それでもマリア・リタ、ゼカ・パコジーニョ、レイラ・ピニェイロ、ジョイス・モレーノ、モニカ・サウマーゾといった有名どころもまじっています。それら以外は初めて聴く歌手たちですが、とってもいいですね。

 

いいっていうのはつまり曲がもとからいいということでしょう、このアルバムのばあいは。ブラジルの哀愁感を意味するサウダージに満ちたものが多く、なかには明るい曲もありますが、アルバムを一貫するトーンはあくまでサウダージ。

 

ほんとうにサウダージあふるるアルバムで、ときどきグッと強く胸をつかまれるものがあります。ルイ・バラタの名前もはじめて見たんですが、つまり今回はじめて聴いた曲なんですがぜんぶ、でも前からよく知っているぞという不思議なデジャブがありますよ。

 

(written 2024.1.26)

2024/02/11

ちょっと遠くから聴こえてくる 〜 ウィルソン・バチスタ

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(2 min read)

 

Wilson Baptista / Eu Sou Assim

https://open.spotify.com/album/7tgFLbdVELwvQ0mjtYeqDd?si=WKS6RQNBQaKj0VkmFhSSHg

 

ウィルソン・バチスタ(ブラジル)のアルバム『Eu Sou Assim』(2023)のことはみんながいいぞと言っていますよね。ぼくも好きで去年からくりかえし聴いてきました。

 

バチスタはとっくに故人なので、ヴォーカルは過去音源から抜き出し、それに現代の腕利き演奏家たちによる伴奏をつけたといった具合。バチスタの時代にマルチ・トラック録音はないので、声だけ抜き出すのはたいへんだったでしょう。

 

ビートルズも最後の新曲「Now and Then」を制作するにあたりジョンの声を抜き出すために、AIによるデミックス技術を使いましたが、ひょっとしたら今回のバチスタのアルバムでも同様のAIデミックスを使ったかもしれませんよね。それでもって過去音源からヴォーカルだけ抽出したかも。

 

それと現代の演奏を混ぜるっていう、なんかちょっとふだんなら敬遠しちゃいそうな企画なんですが、聴いてみたらこれが成功しています。ちょっと遠くから聴こえてくるようなバチスタのヴォーカルにはえもいわれぬ孤独と哀愁がただよっていて、とってもいい味。

 

さらに現代の演奏家たちによる伴奏がジャジーに洗練されているというのも個人的には大好きなポイント。ほんとうにおしゃれなんですよね。特にディスク2で目立つように思います。

 

ヴォーカルもバチスタだけでなく多くのゲスト・シンガーを迎え、ソングライターだったバチスタの曲を歌わせているのもグッド。バチスタの声との対比も一つのポイントです。

 

(written 2024.1.3)

2023/08/01

味わい深いサンバ 〜 トイーニョ・メロジア

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Toinho Melodia / Paulibucano

https://open.spotify.com/album/09A1zs4HooSsiUMsCgbf3J?si=qubdRHtbTem876HJUEgynQ

 

Astralさんに教えていただきました。

https://astral-clave.blog.ss-blog.jp/2023-05-07

 

ブラジルのサンビスタ、トイーニョ・メロジア68歳のデビュー・アルバムだったらしい『Paulibucano』(2018)。だれなのかちっともわかりませんが、音を聴けばですね、これに惹かれないサンバ好きもいないのではと思うくらい。ジャケ一瞥で雰囲気はわかります。

 

基本、アルバム全編がオーソドックスなサンバで満たされていますが、ところどころオッと思わせる驚きも。日常やストリートの生活音がサンプリングされて挿入されている部分も複数あって、伝統サンバのアルバムではややめずらしい趣向かも。

 

アコーディオンがブエノス・アイレスを香らせる曲や(3)、あるいはサンバというより完全にバイヨンのリズムになっている曲もあったりします(4)。それでもカヴァキーニョの乾いたカッティング・サウンドはサンバ・スタイル。

 

本人のヴォーカルはもちろん朴訥としていて、しかし枯れているかというとあんがいそうでもなく、若さやみずみずしさを感じさせる面もあるようにぼくには聴こえました。現役感っていうか、そういうのがあってこその音楽でしょう。

 

ラスト13「Vida da Sambista」はナイロン弦ギターの伴奏だけで淡々とつづる曲題どおりサンバ歌手の人生。派手さのない小品ですが、締めくくりにふさわしい味わい深さで、聴き手の胸にも沁み入ります。

 

(written 2023.5.20)

2023/04/26

さわやかな風のように 〜 ナラ・ピニェイロ

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Nara Pinheiro / Tempo de Vendaval
https://open.spotify.com/album/5khFt0geM4dWER1PYQC4Wk?si=SfrAzZdCSDmYo9b4Ifv5nA

 

ブラジルはミナスの新人、ナラ・ピニェイロのデビュー・アルバム『Tempo de Vendaval』(2023)。話題になっていますよね。アントニオ・ロウレイロの全面支援を受けできあがった作品で、ロウレイロは正直いってあまりピンとこない音楽家なんですが、ぼくは、でもナラの本作はかなりいいです。

 

ヴォーカル&フルートのナラはまずフルート奏者として世に出たらしく、本作でも歌が突出しているという印象はありません。楽器と歌が並列しているというか峻別せず対等な立場で並びあう溶けあうというのは、ミナスやブラジルだけでなく近年のポップ音楽における一つの特徴。

 

ロウレイロのプロデュースがそうした側面をいっそう強調させているように思えますね。ナラとロウレイロのほかには七弦ギターとコントラバス奏者という四人編成での演奏で、ロウレイロはもちろんドラムス、パーカッション、ピアノなど鍵盤楽器といった複数を担当しています。

 

情熱というよりまるでさわかやな風がすっと吹き抜けるようなクールな感触がアルバム全体にただよっているのが心地よく、曲はいずれもナラの自作ですが、ていねいに練り込まれアレンジされたサウンドがそれでも聴いた感じスポンティニスに響くのは音楽としてすぐれている証拠。

 

傑作だとか今年のブラジル音楽を代表するだとかはよくわからないんですが、たいへん気持ちのいい音楽であることはたしかです。ブラジル新世代、ミナス新世代がさほどでもないぼくだって、これはなんどもくりかえし楽しんでいます。

 

(written 2023.4.7)

2023/04/19

たぶん一生聴ける 〜 ニーナ・べケール『ミーニャ・ドローレス』

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Nina Becker / Minha Dolores: Nina Becker Canta Dolores Duran
https://open.spotify.com/album/4KKDLia9xJT8NM98jPfRvM?si=d0YJN4nbQNeo2OquSEuaFQ

 

都会の音楽が好きという記事を書こうとしてプレイリストをつくったとき、ふと思いついてニーナ・べケール(ブラジル)の2014年作『Minha Dolores: Nina Becker Canta Dolores Duran』も入れておいたんですが、流し聴きしていると最高に快適なのを、いまさらですが、またまた再確認しちゃいました。

 

Spotifyにあるニーナは全作聴いてみたものの、こんなアルバムほかにないですもんね。傾向がだいぶ違うっていうかMPB路線で、なかには前衛的でシャープなものもあったりして。決してよくないとは思いませんし、一つは記事にしました。

 

ですけれど『ミーニャ・ドローレス』は別格の、スペシャルな、心地よさ。保守的っていうか従来路線っていうか要するにぼく好みの古典派コンサバ音楽なのがいい。基本七弦ギターとバンドリンの二人だけ伴奏だっていうショーロな落ち着いたシンプルさもまたみごと。

 

ボサ・ノーヴァ勃興直前サンバ・カンソーン時代の人物ドローレス・ドゥランの曲をつづるヴォーカルもまろやかなおだやかさ。適切なぬくもりと湿り気を感じるちょうどよき声で、ニーナはふだんの姿から衣替えしてレトロにシフトし成りきっています。

 

いやレトロっていうかこうした静かで淡々と落ち着いた歌謡音楽は不変の魅力をいつの時代でも放っていて決して色あせないものなんじゃないかと思います。社会や人間がどう変わろうともチャームを失わない音楽で、さわやかなクールネスとほどよい官能が同居するこのアルバム、たぶん一生聴けるはず。

 

(written 2023.4.2)

2023/04/03

人生そのものが持つ美しさ 〜『João Gilberto Eterno』

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v.a. / João Gilberto Eterno
https://open.spotify.com/album/4Pi56SuDVvDZPb6cwYrJUf?si=2wKc515PStSCnBF723XEsw

 

この『João Gilberto Eterno』(2021)ってなんだっけ?ジャケットだけ妙に見憶えがあって、ぼくたぶんCDも持っているはずと思うんですけど、ほとんど聴いた記憶がないっていう。ジャケットとアルバム題は初見じゃないけど、中身の音楽は未聴といっていいくらい。

 

Spotifyをぶらぶらしていて再見しふと思い立って、どんな音楽だったかちょっとかけてみよう、なんでも聴いてみなくちゃわからんとクリックしてみたら、これが!完璧にいまのぼく好みの丸くおだやかな現代ブラジリアン・ポップスで、こ〜りゃいいね!聴いてよかった。

 

タイトルどおりジョアン・ジルベルトにささげた内容で、ジョアンのレパートリーを中心に、その90回目の誕生日にあわせて日本で企画・リリースされたもの。Spotifyで見ると演者名がぜんぶカタカナなのはそのためですね。

 

演者は一見しておわかりのとおりジョアンの音楽を敬愛しているブラジルのミュージシャンたち。ジョアン・ドナート、ギンガ、モニカ・サルマーゾ、モレーノ・ヴェローゾ、ローザ・パッソスなど有名人もいて、さらに日本企画ということで伊藤ゴローや小野リサといった日本人ボサ・ノーヴァ・ミュージシャンも参加しています。

 

歌もの楽器演奏もの、いずれも美しく、しかも淡々としていておだやかで、こういう音楽は心に波風が立ったりしませんが、日々の癒しとして常にそばにおいて聴いていたいっていう、そういうなごめるものですよ。結局のところそうした音楽こそ人生で残るようになってきました。

 

ことさらに異様な美しさをたたえているものが多少あって、強く心を動かされた演奏もあります。フェビアン・レザ・パネのピアノ独奏による12「Valse」とジョイス・モレーノの13「Estate」。前者はクラシカルでエレガントな雅を放っていますが、後者はボレーロ的な微熱をも帯びた官能。

 

特に13「Estate」冒頭でジョイスのナイロン弦ギター弾き語りがあって、そこに一瞬のピアノぽろりん刹那ストリングスが流れ込んでくるあたりには、涙がこぼれそうに。なんて美しいのでしょう。人生そのものが本来持っている美しさじゃないかと思えます。

 

(written 2023.3.15)

2023/03/09

アンナ・セットンが聴かせる新境地 〜『O Futuro é Mais Bonito』

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Anna Setton / O Futuro é Mais Bonito
https://open.spotify.com/album/37jrPNa128mZXr7XpnY7Lo?si=W5WYVJUbSZaryf_s3trmhg

 

2018年のデビュー・アルバム『アンナ・セットン』がさっぱりさわやかで心地いい新世代ジャズ・ヴォーカル作品でしたから、それですっかりお気に入りになったブラジルの歌手アンナ・セットン。しかし21年の二作目は個人的にあんまりちょっと…っていう印象でした。

 

今年最新作『O Futuro é Mais Bonito』(2023)が出たもんで、どんなかな〜と思って、前作みたいだったらちょっとあれだな〜ってちょぴり警戒もしつつ期待を持って聴いてみたら、今度はわりといいんじゃないかなという気がします。

 

一作目の路線に戻ったのではなく、冒険っていうか実験的にチャレンジしている内容で、いままでの二作にないひろがりを感じます。それでいながら根底にサンバなど伝統的ブラジル音楽要素やジャジーなシンガー・ソングライターっぽい従来のたたずまいが感じられてグッド。

 

レシーフェでの録音ということで、同地の音楽家であるジュリアーノ・オランダやイゴール・ジ・カルヴァーリョもソング・ライティングに参加。アンナと前からコラボしているジョアン・カマレーロ、ロドリゴ・カンペーロ、エドゥ・サンジラルディもいます。

 

プロデューサーのバロ、ギエルミ・アシスの二人は知らない名前ですが、先進的なサウンド・メイクの鍵を握っているのかも。ブラジル音楽とジャズをベースとしながらも、レゲエやエレクトロニカ/アンビエントなど大胆にとりいれた繊細な表情はニュアンスに富み、なかなか聴きごたえがあります。

 

アンナのヴォーカルもデジタル加工してある部分があり、そうでないストレートな部分でも、歌を聴かせるという面と、さらに全体のサウンドのなかの一楽器として声を使っているというプロデュースもほどこされているように思います。大半コンピューターで音づくりしていて、それがけっこうおもしろいんですよね。

 

それでも一貫してブラジル音楽ならではのサウダージが底流に確実にある、全体的に、というのが間違いないとわかって、だからぼくみたいなコンサバ・リスナーでも共感できるんです。

 

ラスト10曲目「Sweet As Water」だけは歌詞もなぜかの英語。アンナとジョアン・カマレーロとの共作ですが、なんだかレトロっぽいなつかしのUSアメリカン・ポップスみたいなフィーリングで、しかしやっぱり哀愁感に満ちています。

 

(written 2023.3.5)

2023/03/04

雨の日曜の朝に 〜 ファビアーノ・ド・ナシメント

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Fabiano do Nascimento / Lendas
https://open.spotify.com/album/0REb0OWCAqDjbsEnInKJgl?si=yuFIyy_NQ4eEMQq704HEpg

 

ロス・アンジェルス在住のブラジル人ギターリスト、ファビアーノ・ド・ナシメントの最新作『Lendas』(2023)は一月に出ていたもの。ジャケットもきれいだし、すぐになんどか聴いたんですが、そのままほうったらかしで。

 

ところがこないだ二月中旬の雨で湿度の高い日曜日の朝に気が向いて聴きなおしてみたら、その美しさがとっても身に沁みて感動しちゃいました。空気みたいなふわっとしたおだやかで静かな音楽なので、一聴でピンとくるものではなかっただけかも、ぼくには。

 

ジャズでもクラシックでもショーロでもないブラジリアン・インストルメンタル・ミュージックで、でもちょっとジャズ寄りかな、ギターがどうこうっていうよりコンポジションがきわだってすばらしいと思います。八曲すべてファビアーノの自作。

 

ギター・トリオを軸とし、くわえて色彩を添えるヴィトール・サントス・アレンジのフル・オーケストラ・サウンドがあまりにもたおやかでやわらかい。ファビアーノよりむしろそっちのほうが本作の主役にほとんど聴こえ、ストリングスと木管の美しさに息を呑みます。アルトゥール・ヴェロカイの弦楽四重奏も5曲目後半で参加。

 

すみずみまで徹底的に練り込まれたウェル・アレンジド・ミュージックであることもぼくの嗜好にピッタリ。ひょっとしてファビアーノの弾くナイロン弦ギターのラインだってインプロヴィゼイションではないかも。

 

生き生きとした、っていうかナマナマしい、なまめかしさすらたたえていながらも、みずみずしいさわやかさがあって、熱帯を思わせると同時にかなりひんやりしたクールネスをも感じさせる音楽。ふくよかでありながら、同時に筋肉質な痩身の美を放っています。

 

最初はピンときませんでしたが、一度感動体験があるとその後はいつなんど聴いても、あぁなんて美しいんだと惚れ惚れとため息をもらしてしまう、ヤミツキになって、くりかえし再生ボタンを押すのをやめられないっていう、そんな麻薬のような魅惑も持つ音楽、それがこれです。

 

(written 2023.2.22)

2023/01/11

充実のサンバ・パゴージ 〜 ロベルタ・サー

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Roberta Sá / Sambasá
https://open.spotify.com/album/0CMOYF41lPS0w3Lf0GX3Hn?si=4Ik0i-8VQU-pmgecfSQ99Q

 

ジャケットはこんなでアレですけど、ロベルタ・サー(ブラジル)の最新作『Sambasá』(2022)はEPっぽい短さながら充実のサンバ・パゴージで、真っ向勝負。手ごたえあります。

 

ここまで正統的なサンバをロベルタが全面的かつストレートに歌うんですからうれしいですよね。もとから飾らない素直なヴォーカルが持ち味の歌手なので、素材とアレンジ/プロデュース次第でここまで良質な音楽ができあがるということでしょうね。

 

ナイロン弦ギター&カヴァキーニョを中心にした弦楽器群+パンデイロ、タンボリン、スルドその他といった打楽器群でサウンドが編成されているあたりもオーセンティックなサンバのマナーに沿ったもの。そこにアコーディオンやピアノなどがくわわります。

 

ブラジル音楽独自のサウダージが横溢しているのもうれしいところ。1曲目のコーラス部分からもそれはわかります。ロベルタが歌う主旋律はクッキリあざやかに上下するメロディ・ライン。それを重くせずあっさりと軽くふわっとつづっているのがぼくには最高なんですね。

 

2曲目はピアニストがアコーディオンを弾くのとリズムの感じとあわせ、やや北東部ふう。4曲目でゼカ・パゴジーニョ、6でペリクレスという二名のパゴージ界重鎮がゲスト参加して渋いノドを聴かせているのもいい。それら二曲ではサウダージもきわまっている感じです。特に6「Sufoco」。

 

(written 2022.12.29)

2022/12/13

ウェザー・リポート in バイーアみたいな 〜 レチエレス・レイチ

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Letieres Leite Quinteto / O Enigma Lexeu
https://open.spotify.com/album/52Vs6AyLKN7Fzw22WKsUzl?si=4mEOIBeaRzqypZ6j9PuSqg

 

ブラジルの故レチエレス・レイチ。キンテートでの2019年作『O Enigma Lexeu』は<ウェザー・リポート in バイーア>みたいなアフロ・ブラジリアン・フュージョンの傑作だっていうんでおおいに胸をおどらせて聴いてみたら、違わぬ内容でたいへん感動しました。

 

作編曲のレチエレスが管楽器を担当するほか、鍵盤、ベース、ドラムス、パーカッションというバンド編成。特にパーカッショニスト(ルイジーニョ・ド・ジェージ)の存在が大きいと、本アルバムを聴けばわかります。まさにバイーア的というかアフロ・ブラジリアンなリズムの躍動と色彩感を表現しています。

 

最初の二曲はおだやかな70年代初期リターン・トゥ・フォーエヴァー路線のピースフルなものなのでそのへんイマイチわかりにくいんですが、3曲目からがすばらしい。その「Patinete Rami Rami」なんかのけぞりそうになるほどのリズムの祝祭感で、これホントにパーカッショニスト一人だけ?と疑いたくなってくるくらいリッチでカラフル。

 

その後は終幕までずっとそんな感じで、たしかにこりゃバイーアで録音されたウェザー・リポートだっていうおもむきです。もちろんジョー・ザヴィヌルだって、特に70年代中期以後は中南米やアフリカの音楽にしっかり学んで吸収していたんですが、ここまで本格的なのはさすがブラジル当地のミュージシャン。

 

レチエレスのフルートやサックス、ルイジーニョの超人的なパーカッション技巧にくわえ、マルセロ・ガルテルのピアノやフェンダー・ローズも好演。和音楽器を使わないバンドもやっていたレチエレスですが、今作では自由に弾かせてアルバムのキー・ポイントになっています。

 

2019年に知っていたら、間違いなくその年のベスト5に入った傑作でしょうね。

 

(written 2022.11.29)

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