カテゴリー「カーボ・ヴェルデ、アンゴラなど旧ポルトガル語圏アフリカ」の37件の記事

2023/06/04

アップデートしなくていい音楽 〜 ネウザ新作

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(2 min read)

 

Neuza / Mininus 2000
https://open.spotify.com/album/5raLaaXEfWNnbzEbddpFca?si=89owX6uLQHWKkygAIULGFA

 

そいでカーボ・ヴェルデのネウザも新作が今年出たということで、さっそくその『Mininus 2000』(2023)を聴いてみました。そうしたらこっちもかなりいいですね。やはり変わらずアップデートしない王道路線で、こういうのがぼくは落ち着けます。

 

個人的に特に好きなのが三曲あるコラデイラ・ナンバー(2、5、7)。全七曲のうち三つだから、これはもうコラデイラ・アルバムと言いたいくらい。カーボ・ヴェルデの伝統リズムでいちばん好きなものですし、クレオール・ビートの楽しさがつまっていて、ほんと最高。

 

だれがプロデュースやアレンジをやったのか?ここのこの楽器はだれ?っていうたぐいの情報がいっさいありませんが、こうした従前とちっとも変わるところのない音楽性をふまえれば、製作演奏陣のメンツも変化なしなのかもしれません。

 

世のなかには時代にあわせてどんどん変わっていく、更新していく、そうじゃないとすたれていくという種類の音楽と、そんな必要性のない音楽とがあります。ネウザのやっているこうしたものはもちろん後者。ずっと前から姿が変わらないし、ネウザ自身同じことをずっとやっていますが、美味が失われたりしていないですもんね。

 

ジャズ(はやその関連)・ミュージックにおける進化の方程式をなんにでもふりかざしてほしくないと思うゆえんです。それは世界にあるさまざまな音楽の実相にそぐわないし、実はジャズのなかですらそうなんですから。ネウザなんかは同じ一つの歌をやり続けて円熟し、それを維持してずっとイキがいいまんまなんです。

 

(written 2023.5.8)

2023/05/31

王道路線のカーボ・ヴェルデ音楽 〜 ネウザ

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Neuza / Badia Di Fogo
https://open.spotify.com/album/4O37hEglhcvi5kmRkzrv93?si=YmkSkhn6QuCvKG-fCyCw5Q

 

bunboniさんのブログで知りました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-03-17

 

カーボ・ヴェルデ人歌手、ネウザの2018年作『Badia Di Fogo』は、なんでもUSのカーボ・ヴェルデ移民コミュニティが制作したインディものらしく、内部でしか流通しないのだそうです。サブスクで聴ければ、ぼくとしてはフィジカルの入手がどうとか気にしないので。

 

新世代ポップスじゃなくて、コラデイラやモルナなどカーボ・ヴェルデの伝統リズムをストレートに使った従来的王道路線の安定した音楽で、新奇にちっとも色目を使わず、どこまでも堅実な音楽づくりに徹する姿勢はすがすがしく好感が持てますね。

 

特に個人的お気に入りであるコラデイラが多用されているのがなんともうれしい。楽しいしダンサブルで、じっさい部屋で聴いていても勝手にヒザや腰が動いちゃう2、3、5。コラデイラじゃないけど7、8のダンス・ビートもいいな。

 

じっくり歌を聴かせるモルナでも、つくりこまれたしっかりしたサウンドに味のあるヴォーカルが乗って実におだやか。踊れるコラデイラ系とのバランスっていうかアルバムの構成もよく練られていて、プロデュースが好適なんですね。アレンジはカク・アルヴェスらしいけど、プロデューサーはだれだろう。

 

ネウザの歌も落ち着いていてやわらかく自然体な歌いかた。前から言っていますようにこねくったり張りすぎたりコブシぐりぐりなどせず、ナチュラル&スムースに声を出すおだやかな歌手こそ近年のぼくの好みですから。

 

(written 2023.3.23)

2023/04/10

ルゾフォニア・グルーヴの美点がつまったサウンド 〜 マイラ・アンドラーデのライヴ・バンド

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(3 min read)

 

Mayra Andrade / Studio 105
https://open.spotify.com/album/720VPaqxg1xJUglaXZ2so4?si=E_xTf_3VRT2uWuUeene8pw

 

カーボ・ヴェルデの歌手、マイラ・アンドラーデがフランスはパリでやったスタジオ・ライヴのアルバムがあるんだって、ついこないだ知ったばかり。『Studio 105』(2010)。もうだいぶ前の作品ですね。オフィス・サンビーニャが売るというツイートがあってようやく気づきました。

 

これがですね、マイラのヴォーカルがどうこうっていうよりも、アクースティック楽器で固めたバンドのオーガニック・アンサンブルの心地よさでとっても快適に聴けます。ベースだってコントラバスの音をピックアップで拾っているんじゃないかと。

 

マイラにとって三作目だったので、二作目までに収録されていたレパートリーを中心に、なかにはパリ・ライヴだということを意識してのセルジュ・ゲンズブールや、あるいはビートルズの「ミシェル」とかもやってはいますがそれらはイマイチ。

 

やはりルゾフォニアの香り高い自曲こそがすばらしいですよ。アクースティック・ギターを軸に据えたバンドのアレンジをだれが手がけたのかとっても知りたいと思うすばらしいアンサンブル。

 

しかも聴いた感じたぶんギター、ベース、パーカッションだけのシンプルなトリオ編成じゃないかと思います。チェロが聴こえる曲はベーシストの持ち替えでしょう。自由度が高いというより事前アレンジされたカッチリした演奏で、それでいてナチュラル&スポンティニアス。

 

多用される反復リフがノリよくカッコいいし、それでもってつくるバンドのグルーヴがとっても気持ちいい。こなれているし、まったく理想のようなサウンドなんですよね、ぼくには。ホントこれギターはだれが弾いてんのか、音楽を牽引しているように聴こえます。

 

マイラのヴォーカルのことをなにも書いていませんが、正直いってこのライヴ・アルバムだとピッチにややぐらつきがあって、正確に音程をヒットせずあいまい。声のハリやツヤもそんな、なんっていうか、その〜。

 

それよりバンドのアンサンブル・サウンドこそ本作の聴きどころでしょう。ここまで心地よいんだから、それさえあればマイラはべつに、あ、いや。でもこのサウンドにはアフリカン・クレオール・ミュージックの、ルゾフォニア・グルーヴの、美点がつまっているように思えます。

 

(written 2023.3.20)

2022/11/24

ナイト・クラブでカクテルを 〜 アンドレ・ミンガス

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André Mingas / É Luanda
https://open.spotify.com/album/1tUYH9RiAHWkhj3SiFt848?si=roHoOtj7Ry6U08NBIw0Sqg

 

Astralさんのご紹介で知りました。
https://astral-clave.blog.ss-blog.jp/2022-10-23

 

アンゴラのミュージシャンなんですけどアンドレ・ミンガスの2011年作『É Luanda』がとってもおしゃれに洗練された音楽で、土くささやアクのない都会的なムードで、ぼくにはとっても心地いいです。

 

リズムもそうだしストリングスもホーンズもジャジーっていうか、Astralさんはフィリー・ソウルみたいだとおっしゃっていますけど(5、9曲目あたりかな)ほんとそんな感じですね。ボレーロ/フィーリンっぽいやわらかさでもあるなとぼくだったら思います。

 

そして実際ボレーロは本作に複数あります。1曲目のアルバム・タイトル曲こそセンバですけど、それだってファンキー(汗、体臭)さのない洗練されたできあがり。アンゴラ人がセンバをやってここまであっさりと小洒落た感じになるっていうのがアンドレの持ち味なんでしょうね。

 

ブラジル人ミュージシャンを起用してブラジルで録音した作品だというのも、そんなモダンなおしゃれ感をまとう大きな原因になっているのかもしれません。3、7曲目なんかは正真正銘のラテン・ボレーロで、スウィート&メロウな雰囲気満点。こういう音楽がぼくは大好きなんですよね。

 

速く強いビートが効いた曲だって、なんだかジャズ・フュージョンっぽさ(+サルサ要素)すら香らせているし、全体的にシティ・ポップっぽくもあり、日没後のバーやナイト・クラブとかでカクテルとか飲みながら(ぼくは下戸だけど)いいムードでリラックスするのに似合いそうな、そんな音楽ですよ。

 

(written 2022.11.15)

2022/11/17

哀歓センバ 〜 パウロ・フローレス&ユーリ・ダ・クーニャ

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(2 min read)

 

Paulo Flores, Yuri da Cunha / No Tempo das Bessanganas
https://open.spotify.com/album/7v5tR4gWCYoZRPmyQMiv5D?si=p4VdR1NuSvSN_lCamGi1IQ

 

Astralさんのブログで知りました。
https://astral-clave.blog.ss-blog.jp/2022-10-19

 

アンゴラのパウロ・フローレスとユーリ・ダ・クーニャが組んだ新作EP『No Tempo das Bessanganas』(2022)が全編王道センバ路線まっしぐらで、とっても気持ちよくツボを刺激され、くりかえし聴いています。

 

どの曲もいいし、特に2曲目のアルバム・タイトル・ナンバーが大の好み。マイナー・キーに設定された曲調もグッド。これだけじゃなくアルバム全体で、細かく刻みながらゆったり大きくノるっていうクレオール・ミュージックのグルーヴが健在なのはうれしいところです。

 

ヴォーカルは二名で分けあっているものの、ほとんどがパウロ主導で用意された曲みたいですしプロデュースもパウロなので、パウロが主役の作品とみていいんでしょう。なによりいままでの作品傾向からしてそうに違いないと判断できるカラーがあります。

 

そんなパウロ・フローレスといえば、ぼくにはこれが衝撃の出会いだった2013年作『O País Que Nasceu Meu Pai』のことがやっぱり忘れられなくて、大傑作でしたし、くりかえし聴いていまだに新鮮なんですけど、今回のEPはそれを彷彿させるものがあるというか、完璧同一路線な内容で、そこもポイント高いんですよね。

 

あのあと最近までパウロはいろんな傾向の音楽をやってきましたが、個人的にはこうした哀歓センバにつらぬかれたものをやるときに琴線に触れるものがある音楽家なんです。今回はたった六曲27分で、そこもかえってコンテンポラリーに聴きやすく、それでいて不足ない充実の聴きごたえがあります。

 

(written 2022.10.30)

2022/07/25

日常にす〜ぅっと溶け込む歌 〜 ルシベラ

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(2 min read)

 

Lucibela / Amdjer
https://open.spotify.com/album/09x0zF6SJX3yPep6npnZum?si=copTFgZ_RtmbWagNwFS7qw

 

これもbunboniさんに教わりました。感謝ですね〜。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-07-12

 

カーボ・ヴェルデの歌手、ルシベラ。今年出た最新作『Amdjer』(2022)がたいへんすばらしくぼく好み。気をてらうとか大向こうをねらうといったところの微塵もない、日常的な淡々とした音楽で満たされていて、これこれまさにこういうのですよ、いまのぼくが音楽に求めているものって。

 

こういった音楽は、ひとが生涯で積み重ねてきた悩みや苦難やつらさが裏ごしされたみたいにまろやかなスープ状となって溶け込んでいるのであって、その表面的にはなめらかで平坦な変化のないサウンドに真の深みと味わいをいまのぼくだったら聴きとりますね。

 

なかでもアルバムにいくつもあるコラデイラの数々は、その強くもやわらかなさざなみのビートが人生の年輪とひだを感じさせ、なんともいえず胸にぐっと沁み入ります。4、6、9曲目あたりはほんとうにたまりませんね。しっとりモルナだって聴けます。

 

伴奏のサウンド・プロデュースもいいですね。本作で多くの曲を共作しているトイ・ヴィエイラがつくっているんですが、アクースティック・ギター、カヴァキーニョ、ウクレレ、ヴァイオリンなど弦楽器を中心に、ピアノも配したり、ビートはおだやかでオーガニックな生演奏ドラムス+パーカッションで、こうしたマイルドさこそルシベラみたいな歌手の本領を活かすもの。

 

きのうケオラ・ビーマー(ハワイ)の記事で「ひたすらフラットで淡々と続くおだやかで静かな音楽」がいまのぼくの好みなんであると書きましたが、完璧に同じことがルシベラの本作にもいえます。そして、そうしたトレンドが最近の世界の音楽における主流であるというのも間違いのないこと。

 

(written 2022.7.24)

2022/03/23

ユニーヴァーサルな21世紀型オーガニック・ポップス 〜 トトー・ST

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Totó ST / Nga Sakidila
https://open.spotify.com/album/5z6nPM5BNo42iW6QkLKF97?si=iRm_7V-bTy6uF71hJw3hCQ

 

bunboniさんの紹介で知りました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-06-09

 

上のbunboniさんの記事ではアンゴラのトトー・STのアルバムが二作載っていて、両方聴いてみたらどっちもいいので、じゃあとりあえず近作のほうをと思い2019年の『Nga Sakidila』をとりあげてメモしておくことにします。

 

2014年作もそうですが、19年の『Nga Sakidila』もアンゴラ色はおろかアフロ・ポップ・カラーすらほとんどない、ワールド・ワイドに通用するまろやかでソフトで上質で高度に洗練された音楽。ラスト15曲目でだけなぜかブラジルの楽器ビリンバウが使われていますがそれだけで、アルバム全体はギターやピアノなどのサウンドが中心。

 

曲もいいしギター演奏もヴォーカルも伸びやかで、三拍子揃ったいい才能ですよね。ドラムスやベースなどリズム・セクションが参加して軽快にグルーヴするナンバーにも聴き惚れますが、個人的にはトトーひとりでのおだやかなアクースティック・ギター弾き語りみたいなのが大のお気に入り。

 

出だしの1曲目からしてそうなんですが、ほかにも5曲目、12曲目とあります。こういったアンプラグドなギター弾き語りで聴かせるトトーの音楽のやわらかな感触には、リスナーのメンタルをゆっくりほぐしていくような独特のチャームがあって、どっとかというと少人数バンド編成でのオーガニックなビートの効いた曲が多いアルバムのなかでいいアクセントになっています。

 

弾き語りナンバー、バンドでのナンバーと、どちらもすんなり耳になじむユニヴァーサル・カラーがあって、特にアンゴラがどうこうとかアフロ・ポップに興味のない一般の音楽リスナーにもアピールできそうな21世紀型ポップスとして通用します。アメリカン・ミュージック・ファン、J-POP好きだって好きになれるんじゃないですかね。

 

(written 2021.12.15)

2022/02/16

アンゴラとブラジルをつなぐ打楽器ハーモニー 〜 ルシア・ジ・カルヴァーリョ

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Lúcia de Carvalho / Pwanga
https://open.spotify.com/album/2xNQJC823l3SCJbVxL2Dt3?si=atTnWFrcQCy2rdpF50Bpng

 

ルシア・ジ・カルヴァーリョはアンゴラのルアンダ生まれ、フランスを拠点にずっと活動してきた歌手ですね。最新作『Pwanga』(2022)は音楽的にブラジリアンといっていい内容で、そもそもルシアが在籍していたフランスのグループ、ソン・ブラジルはその名のとおりブラジル音楽をやっていたそう。

 

新作にはシコ・セザール、ゼー・ルイス・ナシメント(バイーア出身のパーカッション奏者)、アナ・トレア(サンパウロのシンガー)いったブラジル勢も参加していて、+アンゴラ人ミュージシャンといった編成みたいです。

 

バイーア色が濃いかなと感じるんですが、派手な打楽器群の乱打を中心にビートの効いたアフリカン・ルーツな音楽をやっています。っていうかそもそもアフリカ人なわけですけど、ルシアはブラジルをいったん経由して、それを足がかりにアフリカを眺望するといった視点を持っているのが特徴。

 

そんな傾向は1曲目から爆発しています。2曲目はちょぴりアラブ音楽ふうな旋律とこぶしまわしが聴けて、こりゃなんじゃろう?と思いますけど、基底部のビート感はまぎれもなくアフロ・ブラジリアンです。

 

はじめて聴いたルシアのヴォーカルには溌剌としたはじける元気のよさがあります。それでもキャリアなりの落ち着きも感じられ、いまいちばんいい時期なのかもしれませんね。強い発声でパンチの効いたノビのある歌をくりだす歌手で、こぶしもまわっています。

 

ヨーロッパでマルチ・カルチュラルな仲間たちと活動を続けながらブラジル音楽をやって、そのなかにあるアフリカ要素をとりだし強調することで、自身のルーツをみつめディグし、アイデンティティを確立しているような音楽だと思えます。

 

(written 2022.2.13)

2021/08/20

去りゆく夏の寂寥感のような郷愁 〜 エルヴィオ

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Hélvio / Baia dos Amores

https://open.spotify.com/album/767NKCajPOFWC2ckPOrWjm?si=-LQzKem3QDWz3z6Yanwjwg

 

bunboniさんに教わりました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-02-03

 

(きょうの記事題は、上記リンク先の記事内でリンクされているbunboniさんの過去記事からサンプリングしました)

 

アンゴラの歌手でしょうかね、モダン・センバを歌うエルヴィオの新作『Baia dos Amores』(2018)を聴きました。ぼくは上の記事で教わったので初耳のシンガーです。ところでそのbunboniさんの記事題、「ビター・スウィート・サンバ」(ハーブ・アルパート)のもじりで、ノルべきかと一瞬悩みました(笑)。

 

それはそうと、このエルヴィオ、Spotifyで見るとアルバム題も『Hélvio』になっていますけどね、ジャケット画像中央に青い文字が見えるでしょ、わかりにくいですけど、それを拡大してじっくり眺めると「Baia dos Amores」とあります。これがアルバム・タイトルじゃないんですか。こういったところ、Spotifyはけっこういい加減ですよねえ。

 

ともあれエルヴィオの『Baia dos Amores』では、アフリカン・サウダージともいうべきやるせない哀感がたまらないんですよね。過去作がSpotifyにないもんで、これだけ聴いて判断するしかないんですが、そういった切なさを特色のソング・ライティングをするひとなんでしょうか。

 

ブラジル音楽のサウダージやそれ由来のメロウネスにはめっきり弱いぼくなので、エルヴィオのこのアルバムでもそれがたっぷり聴けていうことなし。センバなリズムもいいですが、それは実はあまり強く表面に出ていないような気がします。それがモダン・センバということでしょうけど。

 

もっとこう、(アンゴラ・ローカルというより)ワールド・ワイドにアピールできうるようなポップなセンティミエントを表現できる歌手なんじゃないかとの感を強くしますね。ビート・メイクやサウンド・メイクも現代的で、ときおりヒップ・ホップ感覚のあるトラックもあり。ロックっぽいエレキ・ギターの刻みも快感ですね。

 

とはいえ、こういった音楽が(フィジカルでは)なかなかアンゴラ国外で世界流通しているという話も聞かず、もったいないことです。もちろんSpotifyなどでは聴けるので、その意味では世界に出ていると言えるんですけど、それで見つけるひとも滅多にいないということで、なんとも。

 

アルバム・ラストの曲後半に収録されている隠しトラックで、ドゥー・ワップふうのヴォーカル・コーラスをやっているのは、いったいなんでしょうかねえ。

 

(written 2021.4.26)

2021/07/06

コクのある声とデリケートなサウンド・メイク 〜 ミリ・ロボ『Caldera Preta』

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(3 min read)

 

Mirri Lobo / Caldera Preta

https://open.spotify.com/album/4zCbK5C2zviUoEmYrttPyu?si=stNz1z6BTsG4ovUw5cTRag

 

『Salgadim』(2019)でミリ・ロボのバラードにとろけたついでに、紹介してくださったbunboniさんは聴いていないという2010年の『Caldera Preta』、Spotifyにあったので、ちょっと聴いてみました。

 

そうしたらこっちもすばらしいじゃないですか。 『Salgadim』では(特にバラード系で)完璧ノック・アウトされちゃたぼくですけど、その世界がすでにできあがっています。バラードだけでなくそのほかもふくめ、この『Caldera Preta』もたいへんすばらしいアルバムですよね。

 

『Salgadim』では消えちゃっている、『Caldera Preta』ならではの音楽的特徴というと、冒頭三曲で聴ける西アフリカ風味です。バラフォンを使ったりコラを使ったり(どっちもサンプリングかもだけど)して、曲調もなんだかマンデ・ポップっぽいニュアンスをかすかに持たせたりしつつ、それをカーボ・ヴェルデ・ポップのなかに隠し味としてうまく流し込んでいます。

 

そのおかげでミリ・ロボのこの音楽に幅が出てきているんですね。ミリというよりサウンド・プロデューサーの功績でしょうけど、だれがやったんでしょうかねえ。アコーディオンが聴こえるのはカーボ・ヴェルデ音楽ではあたりまえですが、西アフリカっぽい曲のテイストのなかにアコが混じることで、えもいわれぬ香味をかもしだしています。

 

4曲目以後は、完璧『Salgadim』の予告編ともいうべき官能の世界。色と艶、コクのあるまろやかな味わいなど、ミリ・ロボのヴォーカルだってすでに100%円熟しているし、言うことなしですね。アルバム・タイトル曲の4「Caldera Preta」は、これまた必殺のセクシー・バラード。ギターのサウンドだけに乗ってしっとりとつづりはじめるミリ・ロボのヴォーカルに身がよじれます。

 

こういうのは『Salgadim』にあった「Mas Un Amor」と完璧同一路線ですから、あるいはこの2010年作もキム・アルヴェスの仕事なのかもしれません。出だし1コーラス目のAメロはギター伴奏だけで歌い、サビから伴奏が控えめに入ってきてグンと雰囲気を昂めるあたりの演出も、同じやりかたですけどなかなかニクイですね。

 

もちろんフナナーやコラデイラ系のビートの効いた曲群もすばらしく、ていねいにつくりこまれたサウンドの上で余裕を持ちながら軽く歌っているかのようなミリ・ロボのこの、年輪を重ねたがゆえに出せているのであろうコクのあるまろやかな味わいに降参してしまいます。デリケートなサウンド・メイクも絶品。

 

(written 2021.3.19)

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