カテゴリー「台湾、香港、中国大陸」の14件の記事

2023/01/24

台湾で爛熟したチルなジャジー・ソウル 〜 薛詒丹

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(2 min read)

 

薛詒丹 / 倒敘
https://open.spotify.com/album/7a2iUG6isz5gYrX0JppnVG?si=t7uNsg1NTA2KlIgING1xkQ

 

Astralさんのブログで知りました。
https://astral-clave.blog.ss-blog.jp/2022-11-28

 

台湾人歌手、薛詒丹(ダン・シュエ)初のフル・アルバム『倒敘』(2022)が最高にたおやかでいい。最初にEPを紹介していたbunboniさんも書いたし、だから言うことなんて残っていないんですけども、自分なりの感想を軽くメモしておきます。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-01-06

 

世紀の変わり目あたりからずっと来ているジャジーなネオ・ソウル系の音楽で、おだやかな都会的洗練が高度にただようチルでおしゃれな一品。それが、昨年ごろからぼくも意識するようになりましたが台湾で爛熟しつつあるとの感を持ちます。

 

本作での個人的好物は、シルキー・メロウな2「飯後點心」、ドラマーの刻む細かいビートと小刻みなギター・リフが心地いい4「沙發危機」、なぜだかなつかしさ的なものがこみあげてくるような切な系メロディの10「倒敘」あたり。全編オーガニックな生演奏なのもグッド。

 

ヴォイス・カラーはちょっぴりビョークっぽいところもある歌手ですが、音楽性は違います。薛詒丹のこうした音楽は、ぼくのみるところ1980年代のフュージョン、AORあたりに源泉があって、その流れで来たスムース・ジャズやヒップ・ホップ通過後の新世代ジャズ、あるいはネオ・ソウルなどが、ここ数年ですべて一体となって溶け合って現在に至っているのではないかと。

 

特に台湾の新世代(薛詒丹、陳以恆、リニオン、レイチン、など)にいえると思うんですけど、多種な新世代音楽の融合はどの要素がどれだけの割合でどう溶け合っているか?がほぼわからない程度にまで渾然一体で消化されているのが特色。ジャズでありネオ・ソウルでありシティ・ポップであるっていう。

 

ですからはっきり分別しすぎないで、あるがまま素直に楽しむのが音楽の実態にそぐうことじゃないかなとぼくは思います。

 

(written 2023.1.10)

2022/10/28

ゆったり流れる静かな時間 〜 以莉.高露

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(3 min read)

 

以莉.高露 / 尋找你
https://open.spotify.com/album/3QeHkPakqCGx4NDZIoSFMT?si=ofrpmmTjSjCsrmIwfRL_Xg

 

Música Terraで知りました。
https://musica-terra.com/2021/07/08/ilid-kaolo-longing/

 

台湾はアミ族のシンガー・ソングライター、以莉.高露(イリー・カオルー)の最新アルバム『尋找你』(2021)がとってもさっぱりしていておだやかで、時間がゆっくりゆっくり流れていくみたいな自然のおおらかさがあって、最高に好み。

 

イリーはみずからナイロン弦ギターも弾いています。アミ族の音楽家ということで、その伝統要素も色濃く感じさせながら、さらにややカリブなクレオール・ミュージックの色がやわらかくただよっているのもいいですね。アフリカンなオーガニックさも感じます。

 

もう1曲目からそんな感じで、お聴きくだされば、この緑と花でかこまれ蝶や小鳥がひらひら舞っているなかをゆっくりのんびりお散歩しながら小川のせせらぎをながめ音を聞いているっていうような、そんなおだやかムードはどなたでも感じていただけるはず。

 

音楽だからオーガニックといってもあれなんですけども、このアルバムにかんしてはことば本来の農業的な意味でオーガニックな色彩感があるぞという、そんなことまで言いたくなってくるような、そんな天然コットン100%っぽい肌心地のよさがあります。

 

3曲目まではずっとそうで、控えめに控えめに、そっとフェザー・タッチでやさしく触れてくるみたいなヴォーカルとサウンドなんですけども、4曲目に香る官能的退廃は、ほぼアルゼンチン・タンゴのそれじゃないかって思うくらい。だからどこまでも洗練された音楽なんですね。

 

かと思うと次の5曲目は先住民音楽を活かしたようなトラディショナルなもので、都会的洗練より野卑さを、というのは違うか、つまりちょっと自然の森林や海を強く感じさせる音楽で、素朴な音楽だとの印象を持ちます。

 

その後アルバム・ラストまで純朴さとソフィスティケイションが共存するようなフィーリングで曲が進み、ジャズがかなりベースになっている部分もある音楽家だと思わせつつ、民族の音楽伝統をうまくソフトな衣でつつんで当たりをやわらかくした手法は、やっぱり高度に洗練されたものに違いありません。

 

(written 2022.10.10)

2022/10/12

最良のチャイニーズ・ポップス 〜 孙露 in 2022

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(4 min read)

 

Recent 孙露
https://open.spotify.com/playlist/7lw97FcPUy0r9RBXrRKAuR?si=a34e0962e8e946a0

 

以前八月はじめだったかな、孙露(スンルー)2022年の最新作(とあのころは思っていた)『忘不了』のことをとりあげて褒めましたけど、そう、ぼくはもうこの遼寧省出身の中国人歌手にすっかり骨抜きにされていて、正直なにされてもかまわない、この身をすべて捧げたいと思うくらいなんですね。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-684849.html

 

しかしこの後もSpotifyの新作案内プレイリスト『Release Rader』で毎週のように(は誇張だけど)孙露の新作っぽいものがどんどん載るもんだから、いったいどうなってんの?今年この歌手はそんなリリース・ラッシュなの?といぶかしんでいました。

 

アルバムにして合計四作『城市民谣』『放你在心里』『明天你是否依然爱我』『当爱已成往事』と週替わりで出てきて、どれも “2022” となっているし、『忘不了』を入れたら今年五つ出した計算になるんです、孙露は。Spotifyでは。

 

いくらなんでもこれは妙だと気がついて、中国情報ならここっていう百度百科で調べてみました。すると、まずいちばん最初に『Release Rader』に出現した『忘不了』は2019年のCDリリースとなっています。

 

その他、順番に『城市民谣』が2018年、『放你在心里』が2020年、『明天你是否依然爱我』が2021年、『当爱已成往事』だけはまだ新しいってことかサイトの更新が追いついていないのでしょう載っていませんでしたから、それが最新作ってことでしょうか。

 

ともあれ、近年の孙露が豊穣だということには違いありません。もとから多作な歌手ではありましたが、ここ数年の活躍ぶりには目を見張るものがあって、Spotifyには今年入ったばかりな五つのアルバムどれを聴いても納得の充実感。

 

この歌手の特質は上でリンクした過去記事や、昨年ぼくがこの歌手と衝撃的だったといってもいいくらいなフェザー・タッチで出会い、なでられ、心底とろけちゃった『十大华语金曲』(2017)のときに書いた記事で、すでに説明し尽くしたという気がします。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2021/11/post-6c6b6c.html

 

いまどきの新世代歌手ではありますが、ヴォーカル・スタイルにはわりと古風なところもあって、しっかり声を張り抑揚をつけてオーソドックスにメロディの上下を表現することもあります。そのへんは曲によりアルバムにより歌い分けているような印象ですね。

 

それでもコブシ系ではぜんぜんなくって(しっかりメロディを歌うときでも)ヴィブラートなどまったく使わずストレートにすっ〜となめらかな発声をするのは新世代的なフラットネス&おだやかさ。中低域寄りで仄暗くただようハスキーさは退廃的で陰で、それもぼくには魅力です。

 

いずれのアルバムも、だれが選曲やアレンジやプロデュースをやっているのか?というたぐいの情報が見つからないんですが、伴奏も生音中心のさっぱりオーガニックで淡色系なのは孙露のヴォーカル特性にあわせているということと、ここ10年くらいのグローバルなトレンドだからでしょう。

 

きわめて個人的には、生涯で知ったなかで最良のチャイニーズ・ポップスだと思えてならず、さほどなじんでいた分野じゃなかったんですが、孙露に会えるんだったら、ナマ歌を聴けるんだったら、中国まで行きたい!という気持ちになってしまうくらい。細かなブレスの一個一個の息の音までいとおしくてたまらず。

 

薄味淡色系のおだやかで静かなポップスを好むようになった近年のぼくの前に出現した最高の音楽じゃないかと、古今東西世界 No.1だと、いまは思っていますね、孙露のことを。もう女神。

 

(written 2022.10.9)

2022/10/06

チルな台北ナイト 〜 リニオン

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(3 min read)

 

LINION / Leisurely
https://open.spotify.com/album/1oAlLcfYvBpOb6PaGM6h4a?si=-2OHgb87SW6NU-Hjy3yphg

 

bunboniさん経由で知りました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-09-12

 

レイチンと同じくこれも台湾の若手音楽家、リニオンの二作目『Leisurely』(2020)は、まさしく大都会台北の洗練されたナイト・ムードがよく似合うチルな音楽。生演奏ジャズでやったネオ・ソウル・テイストなシティ・ポップといえるでしょうね。

 

noteで台湾的音楽をどんどん紹介なさっている石井由紀子さん(レイチンのこともお書きだった)によれば、リニオンもインディーズだから配信でならカンタンに公開できるけどCDなどはかなり限定的にしか流通していないんだそう。置いているお店が少ないみたいで、数をつくらなかったってことかも。
https://note.com/yukiko928/n/n9072f65706d5

 

でもこれ、傑作ですよね。ドラマー以外は全員台湾の演奏家で、一曲レイチンも参加したものがあります。そ〜れが、もうみんなレベルが高くって、いま、ここ10年くらいかな、アメリカとかイギリスなどの新世代ジャズ・ミュージシャンがもてはやされていますけど、台湾とか(ヴォイジョン・シーを核として)中国語圏でも同様の演奏家が出現しています。

 

リニオンの本作はそうした現状を如実に反映したもの。そもそもネオ・ソウルはアメリカでもジャズ系のミュージシャンが大勢セッションに参加していたものですし、リニオンが演奏力の高いジャズ演奏家を起用してこうした新世代台湾的ネオ・ソウルをつくりあげるのも道理です。

 

クロス・ジャンルというか越境的というか、現在の世界の洗練音楽をジャズ/ネオ・ソウル/シティ・ポップなどと分別することにもはや意味なんかなくなっていて、聴き手次第でどう受けとってもいいし、やっているほうはジャンル区分なんか歯牙にも掛けていないっていう。

 

それにしても心地いいくつろげる本作、聴いていたら、特に夜になって部屋の照明をちょっと落とし、これをいい感じでかければ、極上のおしゃれリラックス・ムードになります。そうしたチルな感覚こそこの音楽のキモですね。対峙して聴き込んでもいいけど、BGM的に流してフィーリン・グッド。

 

すべてはそんな気分を演出するためにこそ、技術の高い演奏力がとことんまで活用し尽くされているっていう、それがこうした種類の音楽の特性です。1990年代〜21世紀以後的なラウンジ系っていうかクラブ・ミュージック的な感性がしっかり感じられ、結果、聴き流して楽しんでムーディな夜を味わうのがいいんじゃないですかね。

 

(written 2022.10.5)

2022/10/05

デジャ・ヴなブリコラージュでグルーヴする台湾産ネオ・ソウルの最高傑作 〜 レイチン

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(4 min read)

 

L8ching / Dive & Give
https://open.spotify.com/album/1Zl1TH7j0cZEHf03ScvES2?si=5Sr_ZJawSQS-zzIV3I9ZNA

 

bunboniさんに教わりました。感謝ですね〜。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-09-14

 

台湾の音楽家、レイチン(雷撃、L8ching)のリーダー・デビュー作『Dive & Give』(2021)がメロウでソフトで、とってもいいです。ジャジーでもあるし、都会的に洗練されていて、これはもはや退廃に近いスウィートさ。

 

ぼくが強く惹かれるのはこのひとの編集感覚。といっても録音後にやっているんじゃなくて、演奏時のひとづつきのものだと思うんですけど、さまざまに異なる音楽要素をブリコラージュでちりばめて、寄せ集められたパーツじたいは既視感満載でありながら、これにこれが接合するのか!という驚きは間違いなくDJ的で21世紀の感覚です。

 

作曲編曲段階からそうしたアイデアが活かされていて、演奏時はジャズの生演奏みたいに一回性でやっているんだと思うんですよね。なかでも4曲目「巫女」。これこそ本作の白眉だとぼくは思います。ここではメロウR&B、サンバ・ビート、プリミティヴなチャント(on クラブ・ビート)、ラテン・ボレーロの四つが次々出てきます。

 

基本はメロウR&Bとサンバがトグルで切り替わるんですが、後半突然先住民プリミティヴ・チャント(ロビー・ロバートスンが1998年作でやったようなやつ)が挿入され、すると一転して今度はラテン・ボレーロに変貌するんですね。こんなの聴いたことないよ。

 

まるでかつてのラテン・プレイボーイズみたいですが、しかしレイチンのおもしろさはこんだけの異種混淆をやってゴタ混ぜ感がいっさいなく、グルーヴが一貫していること。はじめからそう作曲された一回性の演奏だからなのか、多要素をつぎはぎしているということを感じさせず、よどみない川のようなナチュラルでスムースな流れがありますよね。

 

そんな「巫女」のあとも、5、6曲目あたりは完璧にぼく好みの音楽。そっとささやくようにやわらかく歌うレイチンのヴォーカルもこうした曲想にはぴったり。やや日本の歌謡曲っぽいフィールもあるなとぼくは感じますが、ルーツをたどればそれだってもらったものです。

 

しゃべり声、こどもの泣く声、日常の生活音など、さまざまにサンプリングされて各所にちりばめられているのも音楽の臨場感と雰囲気を高める大きな要素となっていますが、そうした音は不思議にリアリティというよりファンタジーを感じさせる結果になっているのも楽しい。

 

10、12曲目なんかのさわやかな曲想も大好きで、ビートはかなり強めに効いているのにしつこい感じはなく、あっさり淡白っていうか落ち着いたおだやかな感触があるのは、やはりこのひとも近年のグローバル・ポップスのトレンドに乗っているんでしょう。各パーツはレトロ感覚が基調になっているし。台湾から出現した最高の才能じゃないでしょうか。

 

去年の作品ですが、2022年のベスト・アルバムに選びたいと思うくらいです。

 

(2022.9.18)

2022/08/30

My Favorite 梅朵(精選版)

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(4 min read)

 

My Favorite 梅朵(精選版)
https://open.spotify.com/playlist/1yDx2eyj8j3DZJSgVere0L?si=02fdeca98bbd4783

 

マジすばらしいし、七曲30分と選りに選ったので、ぜひちょっと聴いてみてほしい『My Favorite 梅朵(精選版)』プレイリスト。ぼくがつくりました。梅朵(メイドァ)は1970年北京生まれの中国ポップ歌手。孙露(は遼寧省出身でずっと若い)きっかけで知り、梅朵にもハマって、もはや抜けられず。

 

梅朵の魅力をひとことにすれば「さわやかに香る笑み」。聴いていると吸い込まれてしまい、身動きできない、じっとこのままでいたいと思えてくるような心地よさ、快適な明るさがあります。曲がそもそもそうしたメロディなんですが、梅朵のこねくらないふわっととした軽快なヴォーカルでそれがいっそうきわだちます。

 

それにしても七曲までしぼるのは難儀しました。プレイリスト『孙露 Mix』で耳にして惚れてしまい、ある意味孙露以上に好きかもと思え、Spotifyで聴けるだけのものをぜんぶ聴いちゃおうとみてみたら、141曲10時間半。ベテランにしては少ないでしょうが、梅朵はどうも2016年デビューみたいです(百度百科情報)。

 

1970年生まれなのにデビューは遅かったんですね。SpotifyにはアルバムとEPが一つづつあるのを除き、ほかはシングル・ナンバーのみ大量に。ここは百度情報と食い違うところですが、フィジカルとサブスクの差っていうことでしょうか。そもそも梅朵のCDは日本にいながらだとどこで買えるんでしょう?

 

とりあえずSpotifyで聴ける梅朵141曲は漏らさず聴きました。それでまず最初30曲くらいのプレイリストにして、そこから厳選して12曲まで減らし、最終的に「精選版」七曲となったわけです。サブスクで、それもまったく見ず知らずの歌手へのとっかかりとしては、自分もみなさんも短いほうがいいだろうと。すべてシングル曲です。

 

いずれもほんとうにとっても心地いいんですが、曲の作者を見ても当然ながら知らない名前ばかり。プロデューサー欄は空白で、このさわやかサウンドをだれがアレンジしつくりあげているのか、とっても知りたいです。名前の漢字表記だけわかってもちんぷんかんぷんでしょうけどね。

 

ビートはすべて打ち込み。それ以外の部分もかなりデジタル・サウンドっていうかプログラミングされたコンピューター・サウンドです。そこにピアノやギターやサックスなどの演奏楽器もうまく交え、さらにこれ、頻用されているのは古筝でしょうか、その音色に聴こえるんですが、伝統的というより不思議にコンテンポラリーに響くっていうマジック。

 

なかでも個人的にいちばんメロメロなのは3曲目に入れておいた「有没有一种思念永不疲惫」(2020)。この曲では中国楽器の使用なし。なんですかね、このさわやかなよい香りは。晴天のもと通りすがりにふわっとただよう柑橘系の香気を思わせる空気感。アクースティック・ギターのシングル・ノートとそのバックに薄くからむシンセ・サウンドっていうイントロだけでノックアウトされますが、そこに人力演奏みたいなオーガニックふう打ち込みドラムスが刻みはじめたその刹那、もう昇天。

 

歌がはじまってからの梅朵のヴォーカルもひたすら心地よい緑の草木のごとき。明るくやわらかい陽光が注ぐ公園をゆっくりお散歩して、小鳥や蝶がひらひら舞い、小川の水がさらさら流れていく 〜 まるでそんな光景のさなかに身をおいたかのような気分で、もうただひたすらの癒しです。

 

(written 2022.8.28)

2022/08/24

孙露 Mixで聴くチャイニーズ・ポップス良き

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(3 min read)

 

孙露 Mix
https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1EIW9iW7WOze8X?si=6f4e136480104693

 

個人的にもうメロメロの中国歌手、孙露(スンルー)。最近そればかり聴いている日常なので、さっき8/22夜、Spotifyに『孙露 Mix』というプレイリストが出現しました。もちろんぼく向けにAIがカスタマイズしたもので、計50曲約三時間半、いんや〜、心地いい。

 

孙露ヘヴィロテだからできたプレイリストなので、50曲の中身はもちろん孙露中心。くわえ同傾向のおだやか淡白路線なチャイニーズ・ポップスをミックスしてあるっていうわけ。簡体字表記の人名曲名が並んでいますので、おそらくすべて中国大陸(内地)歌手なんでしょうね。

 

まったく無知な分野ですが、孙露と同傾向のおだやか系ばかりチョイスされているっていうのは、世界の流れに沿うように近年の中国ポップスにもそうした流れがあるんでしょうか。それともAIが自動判断できるようにその手の情報までデータとして分析・蓄積されているのかなあ。

 

いずれにせよ、この『孙露 Mix』で流れてくる中国歌手たちの歌は、いまのぼくのフィーリングにぴったり。そういうジャンルなのかもしれませんが、ドラマティックでもダイナミックでもなく、声を荒めに強げたりすることなどちっともなしに、しとやかなメロディ・ラインをひたすらソフトに平穏につづるだけだっていうのが、いまのぼくには最高にくつろげる音楽に聴こえるんですよ。

 

無知だから、孙露以外だれひとり知りませんでしたが、なかにオオッこれはひときわすばらしいと思ってメモしておいた歌手もできました。それが梅朵(メイドァ)。百度百科で調べてみたら、1970年北京生まれで、作品もたくさんあります。だから(孙露と比較して)ずっとベテランの域ですよね。なのにコンテンポラリーなあっさりネスを身につけていて、ぼくには文句なし。

 

やや陰な翳や都会的な退廃も感じさせる孙露に比し、梅朵は素朴で明るくさわやかに香る笑みの表情が声と歌いまわしにあって、曲のつくりや伴奏もそうだけど本人のヴォーカルのクォリティがそうしたテイストをただよわせていて、なんともいえずすばらしいと感じチェックするようになったので、そのうち梅朵についての記事も書くかも。

 

8/22夜7時すぎごろに誕生したばかりの『孙露 Mix』なのに、こうしたプレイリストの常として日々中身が入れ替わるという具合なので、きょう8/23に聴いている内容はもはや同じではなく(だから梅朵はもういない)、それでも最愛の孙露だけは軸としてしっかりいるので、それきっかけでこれから近年のおだやか系チャイニーズ・ポップスをディグしていきたいと思っています。

 

(written 2022.8.23)

2022/08/04

テレサは菩薩 〜『淡淡幽情』

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(2 min read)

 

鄧麗君 / 淡淡幽情
https://open.spotify.com/album/5ylz7ilTcwYSDIRQC5CaLp?si=iLBQ8vVWS9-ajA6sQjp0yQ

 

孙露が最新作で二曲とりあげてカヴァーしているのを耳にしていたらもうたまらなくなって、やっぱり聴きなおしました鄧麗君(テレサ・テン)の『淡淡幽情』(1983)。宋代の詩に現代台湾のコンポーザーがメロディをつけ、北京語で歌ったもので、いまのぼくにとってはまさに理想郷のような音楽です。

 

オリジナルは香港盤ですが、ぼくが出会ったのは1990年代なかばごろの日本盤CDリイシューで。しかしその当時、ケバいとんがったハードな音楽がまだまだ大好きだったので、こんなのどこがいいの?という感想しか持たなかったかもしれません。

 

テレサのことは日本の演歌系歌謡曲を日本語で歌う歌手としてテレビ歌番組などでよく見たり聴いていたので、存在を知ってはいました。それがいまではもうテレサの歌みたいなのがないと生きていけなくなりましたから。

 

『淡淡幽情』でもわかるテレサの真骨頂とは、すなはちどこまでもおだやかだということ、これに尽きます。そんな部分こそがいま還暦のぼくのフィーリングに深く深く沁み込んでくるところなんです。その底にはとてつもなくすぐれた歌唱力があって、それでもって全体が支えられているからこその平穏なのだ、ということもわかるようになりました。

 

テレサならではだと思うのは、そんな落ち着いたヴォーカル表現のなかにとってもやわらかい笑みの表情を浮かべているようなところ。『淡淡幽情』を聴いていると、まるですべての参拝者をそっとつつみこむ菩薩像でもながめているような気分になってきます。さわやかなあたたかみが声や歌いまわしにあって、こんな包容力は真に秀でたトップ歌手だけが持ちうる資質でしょう。

 

ほんの五、六年前まで、こういったことをぼくはちっともわかっていませんでした。心底納得できて骨髄の芯奥まで染みわたるようにテレサの歌をとりいれるようになったいまでは、これ以上にスケールの大きな歌はない、より偉大な歌手なんてどこにもいない、テレサこそ真のNo.1なのだと、これはこちらが歳をとったからこそはじめて理解できるようになったことですけれど。

 

(written 2022.8.3)

2022/08/03

孙露推し 〜『忘不了』

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(4 min read)

 

孙露 / 忘不了
https://open.spotify.com/album/1UL8CRnyaqwSlBjWvodInI?si=fqsN-H6RTyibvPU88i0SwA

 

中国遼寧省生まれの歌手、孙露(スンルー)の新作アルバム『忘不了』(2022)が出ました。リリース月日をよく見ると4月14日になっていますが、これはCDリリースのタイミングなんでしょう、Spotifyではつい先週末の新作紹介に載ったばかり。

 

この歌手については、以前2017年作『十大华语金曲』のことを書いたことがあります。正直言って(孙露にかぎらず)こうした夕凪のように変化なく平坦でおだやかで淡々とした世界に、もうゾッコンなんですね。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2021/11/post-6c6b6c.html

 

そして新作でもまったく同じ路線がつらぬかれていて、一聴でぼくは溶けました。『忘不了』という中国語のアルバム題の意味はよくわかりませんが、ジャケットには英語で「Cannot Forget」とも記されています。忘れられない大切な愛の思い出を切なくつづった一作なんでしょうか。

 

といっても歌手と伴奏の表現はどこまでもおだやかで静か。失われたものを泣くように希求する哀切なんていうものはちっともなく、とことんそっとやさしくソフトに、エモーションをあたかも殺すように抑揚のない、まるで仮面をかぶっているかのごとき無表情で、そこになにもないかのごときフラットな音楽があるだけです。

 

ここには内奥のひだに深く刻まれた傷、喪失感が決して癒えもせずじっとたたずんでいるのであって、その深さゆえに日常生活の一部となって心身に染み込んでいて、それが表面的にはおだやかで、さわやかさすら感じさせるクールなたたずまいとなって表出されているんです。

 

人間だれしも歳をとるとそうしたおだやかな境地にたどりつきますが、歌手や音楽家は、自身は若くともそんなぼくらのフィーリングに寄り添うようなソフトなサウンドとヴォーカルを与えてくれるんですね。聴き手でしかないぼくは、20代だったころ孙露と出会っても、よさが理解できなかったはず。

 

今回は鄧麗君(テレサ・テン)が『淡淡幽情』(1983)で歌った二曲をカヴァーしているのもうれしいところ。孙露のほうは簡体字表記なので、トラックリストだけ見ていても気づきにくかったですが、聴けば瞭然、7曲目がテレサの「但願人長久」、11曲目が「幾多愁」。

 

「但願人長久」での孙露はテレサ・ヴァージョンよりもいっそう声の抑揚を抑え、徹底的におだやかに平坦に世界をつづっていく様子に感動をおぼえます。あえて故意にメロディの上下をなくそうと、あくまでフラットさを貫こうとつとめているような歌いかた。

 

「幾多愁」でも甘さは控えめ、そもそもテレサの声よりもいっそう薄味でビターなハスキー・ヴォイスですから、それでもってまるで感情がないかのように淡々と静かにつづっていく様子は、まるでベテラン高齢歌手の枯淡の味わいのよう。

 

それでも全体的に孙露の歌いかたは、声の出しかたやメロディの細かな節まわしにほんとうにデリケートな扱いを聴かせていて、とってもとっても小さな抑揚や変化を愛おしむようにやさしくそっと触れていくような、そんな繊細さを備えているんですね。

 

(written 2022.8.2)

2022/07/20

最愛...鄧麗君

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(3 min read)

 

最愛...鄧麗君
https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DX3fJV4e8nUd6?si=c47701126d7b4924

 

今年はじめごろSpotifyに登場した公式プレイリスト『最愛...鄧麗君』。愛聴しています。テレサの代表的な歌を中国語のものも日本語のものもとりまぜていっしょくたで流してくれるというもので、50曲三時間弱、これ一個あればだいたいわかるとしても過言でもないような。

 

台湾出身のテレサは日本でも(それこそ東アジア全域で)かなり活躍したので、いまだそれをよく憶えているファンが相当な数いて、当時を知らない若手歌手のなかにもお手本とするひとは多いし、演歌歌謡曲の歴史に名を残す大きなスターとしてしっかり認識されています。

 

でもちょっとくやしいなと日頃からぼくが感じているのは、テレサの日本語の歌と中国語の歌を聴く層が分離して重なっていないこともあるようにみえていること。それじゃあこの大歌手の真価を理解できないですよ。プレイリスト『最愛...鄧麗君』では区別せず流れてくるので、あらためてこのことを思い出しました。

 

中国語圏でのスタンダードもあれば、日本語で歌ったみずからのレパートリーだけでなく有名演歌歌謡曲のカヴァーも多数あり、また日本語で最初歌ったものを中国語に翻案して歌いなお(すことをテレサはよくやった)してあるものだってどんどん流れてきて、傾向というかこのプレイリストには一定のポリシーみたいなものがないのかなとは感じるんですが。

 

でもテレサ本人は中国語の歌も日本語の歌もぜんぜん区別なんかしていなかったんだよなあということもよくわかります。そのへん、どうも、日本人演歌ファンはそっちばっかり聴いて中国語圏スターとしてのテレサを聴かないし、(主に中村とうようさんの手引きで)鄧麗君を聴くようになったワールド・ミュージック・ファンは、演歌歌謡歌手テレサなんて…と見向きもしない。

 

もったいないですよ。東アジア全域で大活躍し急逝したテレサの歌のほんとうの魅力をちゃんとしっかりとらえたいなら、中国語の歌も日本語の歌もおんなじように並べてどっちも差別せず聴いたほうがいいと思います。それがテレサを理解し、歌手としての全貌に寄り添うことなんですから。

 

それからもう一個。これは最近ふだんから言っていますが、感情の激しい起伏をともなわない、エモーショナルというよりクールな、す〜っとなめらかでおだやかで静かな音楽が、ここ数年グローバル規模で流行し、確固たるトレンドとなっていますよね。テレサはそんな世界の完璧なる先駆けだったのではないでしょうか。

 

コンテンポラリー・ポップスのそんなトレンドがはっきりしてきた2020年代だからこそ、テレサみたいなおだやかに歌の世界をそのまま強い個性を込めずに届けてくれていた歌手が、ふたたび脚光を浴びてもいいような気がしますよ。

 

(written 2022.7.18)

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