カテゴリー「音楽(その他)」の379件の記事

2023/01/14

最高に楽しいクリスマス・ミュージック 〜 キム・テチョン

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(2 min read)

 

Kim Tae Chun / Santa Don’t Knock at Your Window
https://open.spotify.com/album/7jOBfcsGt90M6vi6ImcfyA?si=WxJT07QuT6qyvj1540w41Q

 

bunboniさんに教わりました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-12-25

 

クリスマス・ミュージックの季節じゃなくなりましたが、年中いつ聴いても楽しいものはやっぱり楽しいってわけで、韓国人音楽家、キム・テチョンの『Santa Don’t Knock at Your Window』(2014)がとってもいい。アルバム題も曲題もハングルですが、サブスクだと英題も併記されていますのでそっちを使いました。

 

ハワイアンふくめのアメリカン・ルーツ・ミュージックで仕立てあげたクリスマス・ソング集で、プサンを拠点とするキムはアクースティック・ギター弾き語りのカントリー・スタイル。それでぐいぐいスウィングするノリいい音楽を聴かせるんですよね。

 

1曲目からもうほんとめっちゃ楽しくて、サウンドはギターを中心とするリズム・セクションで組み立てられています。それがもうほんと極上。投げやりでちょっぴり邪悪に突き放したようなキムのヴォーカルもいい。がちゃがちゃからみながら入ってくるバック・コーラスだって痛快。

 

この1曲目と4曲目が個人的にはこたえられない大好物。やっぱり軽快なスウィング感がたまらないんですよね。キムはハワイアンなスライド・プレイも全編で聴かせていて、それだってうまいですよ。アルバム・タイトル曲の2なんかはちょっとスクリーミン・ジェイ・ホーキンスを思わせるムードだったり。

 

キリスト教会ふうのオルガン・サウンドをバックに歌われる5曲目に続くアルバム・ラストの6はおなじみ「きよしこの夜」。キムはハミングだけで歌詞は歌わず、ハワイアン・スタイルのギター・スライド・プレイに徹していて、まるでライ・クーダーなどアメリカン・ルーツ系のギターリストみたいですよ。

 

(written 2023.1.9)

2022/12/01

肉感的で痩身なコントラバス独奏 〜 ハーン・メスリアン

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(3 min read)

 

Kham Meslien / Fantômes… Futurs
https://open.spotify.com/album/1D9axOGORyXV8UuM1ukX5n?si=NPF1MOalQdWB0doNtoBOFA

 

bandcampにページがあるだけで、それ以外アルファベットで検索すれどなにも情報がないハーン・メスリアン(という読みでいいの?かもわからず)のアルバム『Fantômes… Futurs』(2022)。出会ったのはぼく向きにカスタマイズされたSpotifyの新着紹介プレイリスト『Discover Weekly』でのこと。

 

流れてきたコントラバス・サウンドに思わず釘づけ、魔法にかけられたかのごとく惹き込まれ、これだれ?どんなひと?と思っても、どこのエリアの音楽家なのかすらわかりませんからね。ジャケ写が本人だとすれば、男性コントラバス奏者なんだろうということしか手がかりがなく。

 

アルバムの音楽に感動してInstagramに投稿しているうち本人アカウントに見つかって相互フォローのお友だち状態になってしまったから、そのへんはDMかなにかで聞けば教えてもらえるかもしれないんですけども(なぜ聞かない?>じぶん)、いまのところすべてがミステリー。

 

でも音楽にはひじょうに強い牽引力、ほぼチャームのマジックといってもいいくらいなあざやかなものがあります。基本的にコントラバス独奏で構成されていて、そのナマナマしい極太サウンドをとらえた録音もみごと。こんなぶっとい肉感的なベースの音は聴いたことないよなあ。

 

エレクトロニクスな気もしますが打楽器音や、人声とか、コラ(じゃないかと思うなにかの弦楽器)などトラックによりコラージュされてありますが、それらもハーンの演奏なのかどうなのか。Anthony Josephの名がありますから4曲目での英語のスピーチはそのひとなんでしょうけど、それ以外はわからないです(どうしてbandcampのページにクレジットを載せないのだろう)。

 

でもあくまでベース独奏でできあがっている音楽で、そのベースはたいていのトラックで二重にオーヴァー・ダビングされているように聴こえます。一本がオスティナートみたいな一定の短いパッセージを反復し、他本がその上で自由に即興しているという感じ。

 

純粋に音しかここにはなく、物語も、情緒感とか人間的な風味みたいなものも徹底的に排除されたドライな音楽。ベースの音色はとても野生的で肉感的であるものの、音楽性としてはいっさいのムダがない極限の痩身にまでとことん削ぎ落とされた美を聴く思いです。

 

(written 2022.11.13)

2022/11/30

アデデジの肉感アフロ・ファンク

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(2 min read)

 

Adédèjì / Yoruba Odyssey
https://open.spotify.com/album/6YBfiq0YiRY4l4UaieAYRx?si=HlUTtemRRSqoCPlzTDtszQ

 

bunboniさんに教わりました。感謝ですね〜。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-10-30

 

ナイジェリアのアデデジ。いままでの作品は洗練されたジャジーな感じでしたが、最新作『Yoruba Odyssey』(2022)では豪快で野生的なぶっといアフロ・ファンク寄りの音楽になっていて、これも最高ですよね。

 

しょっぱなからおしまいまでアッパー。アクセル全開でつんのめり気味に疾走するさまに、初老のぼくなんかタジタジになってしまうんですが、ちょっぴり聴きづらいかもと感じないでもないのはそのため。豪速球ばかりのピッチャーみたいで緩急がなく、ややのっぺりしているというか。

 

だけどこの野太いファンク・グルーヴの快感にはひれ伏すしかありません。ストレートな勢いを感じさせる内容で、リズムもホーン・セクションも絶好調に疾走します。そのなかを、これだけはいままでと同じアデデジのクリア・トーンなエレキ・ギターが縫っていくという構成。

 

実はちょっとエフェクト足したほうがこの手のサウンドには合うのでは?という気もしますが、これがジャズ・ギターリストたるアデデジの本領でしょう。

 

ヴォーカルのほうは乱暴に投げつけるようなスタイルで迫力があります。あくまでギターのほうが本分なんでしょうね。ギターといえばアデデジはそのみずから弾くリフを土台に音楽を組み立てているのが聴いているとよくわかって、今作はあまり装飾しないゴツゴツした骨組があらわになっている音楽ですから、こうしたことは利点ですよね。

 

(written 2022.11.19)

2022/11/24

ナイト・クラブでカクテルを 〜 アンドレ・ミンガス

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(2 min read)

 

André Mingas / É Luanda
https://open.spotify.com/album/1tUYH9RiAHWkhj3SiFt848?si=roHoOtj7Ry6U08NBIw0Sqg

 

Astralさんのご紹介で知りました。
https://astral-clave.blog.ss-blog.jp/2022-10-23

 

アンゴラのミュージシャンなんですけどアンドレ・ミンガスの2011年作『É Luanda』がとってもおしゃれに洗練された音楽で、土くささやアクのない都会的なムードで、ぼくにはとっても心地いいです。

 

リズムもそうだしストリングスもホーンズもジャジーっていうか、Astralさんはフィリー・ソウルみたいだとおっしゃっていますけど(5、9曲目あたりかな)ほんとそんな感じですね。ボレーロ/フィーリンっぽいやわらかさでもあるなとぼくだったら思います。

 

そして実際ボレーロは本作に複数あります。1曲目のアルバム・タイトル曲こそセンバですけど、それだってファンキー(汗、体臭)さのない洗練されたできあがり。アンゴラ人がセンバをやってここまであっさりと小洒落た感じになるっていうのがアンドレの持ち味なんでしょうね。

 

ブラジル人ミュージシャンを起用してブラジルで録音した作品だというのも、そんなモダンなおしゃれ感をまとう大きな原因になっているのかもしれません。3、7曲目なんかは正真正銘のラテン・ボレーロで、スウィート&メロウな雰囲気満点。こういう音楽がぼくは大好きなんですよね。

 

速く強いビートが効いた曲だって、なんだかジャズ・フュージョンっぽさ(+サルサ要素)すら香らせているし、全体的にシティ・ポップっぽくもあり、日没後のバーやナイト・クラブとかでカクテルとか飲みながら(ぼくは下戸だけど)いいムードでリラックスするのに似合いそうな、そんな音楽ですよ。

 

(written 2022.11.15)

2022/11/22

今年で50歳

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(4 min read)

 

というアルバムがたくさんあると思います、ちょうどリリースから半世紀が経過したってものが。なぜなら1972年ごろはロックやソウルなど米英ポピュラー・ミュージックの最盛期で、傑作がどんどん出ていましたから。昨年も71年産の音楽に触れて同じようなことを書きましたね。あのころからちょうどハーフ・センチュリー。時代を感じます。

 

そんな72年作からパッと思いついた四つを上で画像タイルしておいたわけですが、音楽家名もアルバム題も、いっさいの説明も、なにもかも不要という問答無用の傑作ばかり。さっと一瞥しただけで中身の音楽が自動で脳内再生されるというかたもたくさんいらっしゃるはず。

 

71、72年ばかりか、こうしたことは1969年ごろからはじまって、75年あたりまでずっと続いたことだと思うんですね。米英大衆音楽史でひときわ豊穣でスペシャルな時間だったのは間違いなく、そのころすでに50年以上レコード史のあったジャズでも、ファンクやロックやブラジル音楽など他ジャンルとフュージョンするようにして新時代の刺激的傑作を産んでいました。

 

あのころ(1960年代末〜70年代なかごろ)のロックその他など、なぜあそこまで豊かだったのか、いま聴きなおしても、これはなにかとってもスペシャルなものだと新参者でも直観できる魅力がどこにあって、どうしていまだにファンを獲得し続けているのか、社会状況はじめ時代とどうクロスしたのかなど、ぼくみたいな人間には摩訶不思議なマジックがあったとしか思えず。

 

あのころ一連の傑作群をぼこぼこと誕生させていた当の音楽家本人は、年老いて衰退したか亡くなってしまったというケースがあるものの、いまだ健在で、往時のまばゆい輝きはなくなっても、ずっと元気に活動を続け円熟味を発揮しているひとだって多いですよね。

 

1972年に25歳だったと仮定したら、50年経過していまは75歳。健康寿命も伸びている現在、ましてや音楽創作活動に没頭する種類の人間にとっては、まだまだやれる歳のはず。上でタイルした四作のうち、ドクター・ジョンとカーティス・メイフィールドは亡くなって、スティーヴィはちょっとペース落ち気味かな、でもストーンズはいまだ第一線ですから。

 

そのほかポール・マッカートニーにもロビー・ロバートスンにもカエターノ・ヴェローゾにもまだまだ新作を届けてほしいと、永遠に生きられる人間はいないし、年代からすればぼくのほうが死ぬのはあとなんで残されてさびしい思いをすることになるでしょうけど、まだあと10年は期待を寄せたいです。

 

むろん、そういったみんながあの時代に創り発表したああいった超絶名作に匹敵するようなものは若手新世代が産んでいくということになるんですけど、そのためのヒント、きっかけになるような要素をベテランはたくさん持っているんじゃないでしょうか。

 

ぼくも還暦、日本人男性の平均寿命を基準に考えたらおそらくこの先21年ほどなんで、そのうち健康で音楽を楽しめる時間がどれくらい残されているか、どれだけ時代の生まれ変わりを音楽で実感していくことができるかわかんないんですけども。

 

(written 2022.11.10)

2022/11/17

哀歓センバ 〜 パウロ・フローレス&ユーリ・ダ・クーニャ

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(2 min read)

 

Paulo Flores, Yuri da Cunha / No Tempo das Bessanganas
https://open.spotify.com/album/7v5tR4gWCYoZRPmyQMiv5D?si=p4VdR1NuSvSN_lCamGi1IQ

 

Astralさんのブログで知りました。
https://astral-clave.blog.ss-blog.jp/2022-10-19

 

アンゴラのパウロ・フローレスとユーリ・ダ・クーニャが組んだ新作EP『No Tempo das Bessanganas』(2022)が全編王道センバ路線まっしぐらで、とっても気持ちよくツボを刺激され、くりかえし聴いています。

 

どの曲もいいし、特に2曲目のアルバム・タイトル・ナンバーが大の好み。マイナー・キーに設定された曲調もグッド。これだけじゃなくアルバム全体で、細かく刻みながらゆったり大きくノるっていうクレオール・ミュージックのグルーヴが健在なのはうれしいところです。

 

ヴォーカルは二名で分けあっているものの、ほとんどがパウロ主導で用意された曲みたいですしプロデュースもパウロなので、パウロが主役の作品とみていいんでしょう。なによりいままでの作品傾向からしてそうに違いないと判断できるカラーがあります。

 

そんなパウロ・フローレスといえば、ぼくにはこれが衝撃の出会いだった2013年作『O País Que Nasceu Meu Pai』のことがやっぱり忘れられなくて、大傑作でしたし、くりかえし聴いていまだに新鮮なんですけど、今回のEPはそれを彷彿させるものがあるというか、完璧同一路線な内容で、そこもポイント高いんですよね。

 

あのあと最近までパウロはいろんな傾向の音楽をやってきましたが、個人的にはこうした哀歓センバにつらぬかれたものをやるときに琴線に触れるものがある音楽家なんです。今回はたった六曲27分で、そこもかえってコンテンポラリーに聴きやすく、それでいて不足ない充実の聴きごたえがあります。

 

(written 2022.10.30)

2022/11/14

空調の効いたスタバでかかっていそうなチルい 〜 イリアーヌ・イリアス

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(4 min read)

 

Eliane Elias / Quietude
https://open.spotify.com/album/0SzEjiRsCBU2SWT0C6ydUs?si=qOfCbdIwT3mvLsbPZWdSLA

 

イリアーヌ・イリアス(というカナ表記でおっけ?)を一度もSpotifyで聴いたことがないのに、なぜだかこないだの新作案内プレイリスト『Release Rader』に出現した最新作『Quietude』(2022)。

 

このプレイリストは、聴いたことのない音楽家でもふだんのぼくの聴取傾向から勘案し向いていると判断したものを出すことがよくあるので、ってことはイリアーヌも好みなんじゃないかとAIに思われたってことだなあ。う〜ん、そんなには…。

 

このブラジル出身在USAのピアニスト&ヴォーカリストは、たしかぼくが大学生のころ(もうちょいあとだっけ?)から活躍し、当時はちょっとした話題で、でもいまだ現役で新作をリリースしているっていうのは案内があるまで気づかなかったというか、正直これといった興味を持ったことは生涯一度もなかったというか。

 

でも最近音楽の趣味が静か et おだやか寄りに傾いてきているし、そもそも人生ってどこに縁があるかわからないし、せっかくだからと聴いてみたんですよね、イリアーヌの『Quietude』。そうしたらけっこう悪くないじゃんと感じましたから、やっぱりぼくは変わったよなあ、こういう音楽、歯牙にもかけなかったのに。

 

ひとことにしておしゃれカフェ・ミュージックというか、たとえばぼくもよく行くスターバックスあたりの店内BGMとしてかかっていそうなムード。小洒落た <ジャズ&ボサ・ノヴァ> というふうにくくるときの音楽が好きだっていうような層があるかと思いますが、そうした室内楽としてイリアーヌの本作なんかはピッタリ。

 

カドがまったく立たず、丸く静かで、おだやかな凪の海のよう。むかし(といってもまだそんな長い時間は経っていないけど)「ジョイカフェ青山」っていうサイマル・ラジオ番組があったんですけど、青山奈央っていう美声の持ち主がDJで、おしゃれカフェ・タイムをいろどるジャズ&ボサ・ノヴァを選曲しかけてくれるという週一回30分。奈央さん、お元気ですか?

 

ビ・バップ好きのひでぷ〜(hideoさん)らといっしょに、Twitterをはじめた2009年11月からしばらくのあいだ毎週ジョイカフェを楽しんでいたんですけど、その番組でかけたらピッタリきそうな音楽ですよ、イリアーヌの本作。番組がもしまだあったなら間違いなく流れそう。

 

それでも8曲目「Bolinha de Papel」なんかジャズとしてまずまず聴きごたえあるし、ドリヴァル・カイーミとのデュオでしっとり聴かせるラスト11曲目「Saveiros」もいいし。

 

だいたいかの『ゲッツ/ジルベルト』路線なんで、あのへん近年再評価いちじるしいわけですから、イリアーヌのこうしたくつろぎサロン・ミュージックに耳を傾けるというかだらだら流してちょうどいいチルなサウンドとして楽しむのもいいんじゃないかと。

 

ジョイカフェを聴きはじめた2009年には、こうした室内向けのチルい音楽はまだたいした流行になっていなくて、ここ数年じゃないですかね、大きなうねりになってきているのは。ロー・ファイ(・ヒップ・ホップ)あたり、音の表層としてはかなり違うものですけど、実は本質において同種のものかもしれません。

 

あっ、それでイリアーヌがSpotifyの『Release Rader』に出てきたわけ〜?

 

(written 2022.10.22)

2022/11/01

秋の夜に沁みる情感 〜 エズギ・キュケル

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(2 min read)

 

Ezgi Köker / Elbet Bir Gün Buluşacağız
https://open.spotify.com/album/0e7yyfdXWcwwEAse751zqJ?si=AaUaf3Z_R8S5MxO67W1pYQ

 

トルコ古典音楽の歌手、エズギ・キュケルがリリースしたばかりのミニ・アルバムというかEPなんですけど 『Elbet Bir Gün Buluşacağız』(2022)が、ちょうどこの時期くらい、秋の夜の暗く気温が下がってきた時間帯にピッタリ似合う情緒感で最高。

 

夜のお風呂あがりごろから部屋のなかでリピート再生モードにして流しっぱなしにすると特にいいムードで、くつろげます。一回だけだと20分ほどしかないんで。深い哀感をたたえつつも、さっぱりさわやかなクールネスもただようのがいい感じ。古典ならではってことかもしれませんね。

 

今回はエルデム・シュクメンという名がフィーチャーされている共演者と全曲で記されています。知らない名前だと思い調べてみたら、イスタンブルのアクースティック・ギターリストみたい。たしかに聴いても伴奏サウンドの九割くらいがギター。

 

素材はやはりオスマンからトルコの古典歌曲で、それをエルデムのギターだけというにひとしいようなシンプルな伴奏(+αのこともあり)で、エズギが淡々と、しかし情緒感を込めてしっとりと切なく歌うさまは、こうした分野が好きだというファンにはこたえられないものでしょう。

 

あっさりしたさわやかさ、薄味のエレガンスみたいなものがはっきりしているのは、こうした分野にも近年のグローバル・ポップスのトレンドが押し寄せてきているというんじゃなくて、もとからそうした世界だったのだとみるほうがただしいでしょう。このことは例のアラトゥルカ・レコーズのシリーズを思い起こしても理解できることです。

 

アラトゥルカ・レコーズといえば、その第一作『Girizgâh』(2014)でヤプラック・サヤールが歌っていた「アマン・ドクトール」がここでもとりあげられています。聴き比べればまったく異なる解釈で、エズギ・ヴァージョンのほうがより哀爽感を増しているように聴こえますね。

 

(written 2022.10.31)

2022/10/20

星座の物語 〜『ア・トリビュート・トゥ・レナード・コーエン』

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(3 min read)

 

Here It Is: A Tribute to Leonard Cohen
https://open.spotify.com/album/7dcCXRBgb3p86KCg4ZUTff?si=VuObVr7hTiaIuuqyXAfvJw

 

レナード・コーエンって名前くらいしか聞いたことなかったのに、こないだリリースされたばかりのニュー・アルバム『Here It Is: A Tribute to Leonard Cohen』(2022)にハマってしまっているのはなぜでしょう。聴いてみようと思ったのはやっぱりブルー・ノートからのリリースだからです。

 

でもジャズ・アルバムってわけではないし、ロックでもカントリーでもポップスでもないっていう。そのへんの多ジャンル接合的なありようは、いかにも21世紀的といえるのかもしれません。ブルー・ノートだってそんなレーベルになりました。本作はラリー・クラインのプロデュースですからいっそう。

 

ことばが自然に集まっておのずとストーリーをつむぎだすようなスポンティニアスさをとっても大切にしてアルバム制作にとりくんでいったということがよくわかるのもうれしく納得で、そのためにラリーが選んだコア・バンドのメンバーはビル・フリゼール(ギター)、イマニュエル・ウィルキンス(サックス)、ケヴィン・ヘイズ(ピアノ)、スコット・コリー(ベース)、ネイト・スミス (ドラムス)。

 

+グレッグ・リース(ペダル・スティール)、ラリー・ゴールディングズ(オルガン)で、これがアルバム全体で動かない固定メンバー。ジャズ系の腕利きミュージシャンが中心ですね。全曲をほぼこのメンツで演奏しているがため、一曲づつさまざまなジャンルの歌手をむかえレナードの曲を歌わせていても、色彩感に統一した意図を感じる結果になっています。インストも二つあり。

 

ことさらすばらしいと思えるのが、ピーター・ゲイブリエルによる2曲目「ヒア・イット・イズ」、グレゴリー・ポーターの3「スザンヌ」、ジェイムズ・テイラーの7「カミング・バック・トゥ・ユー」、イギー・ポップの8「ユー・ウォント・イット・ダーカー」あたり。

 

それらはいずれもダーカーでグルーミー。サウンドもそうならヴォーカルだって下向いてぼそっと内省的につぶやき落とすかのよう。これが現代のカラーでしょうか。そしてバンドの演奏で曲の輪郭がふちどりされくっきり浮かびあがるようで、もとはといえばレナードの曲ってサウンドやリズム面は簡潔なものでしたから、これら今回のレンディションは格別です。

 

みごとな演奏で曲の姿がいっそう鮮明になり、暗さとないまぜの鈍く輝くあざやかさを増しているというのは、本作に収録されたどの曲でもいえること。レナードの曲の本来的なみごとさと同時にコロナ・パンデミックでいろどられた2020年代的な沈鬱なレレヴァンスをあきらかにしています。

 

ネットでひろがる音楽という無限の天空に光る星々を一つ一つ好みで拾っていくようにながめているのもいいけれど、想像された星座の総体的なストーリーをひとまとまりで味わえるような、そんなアルバムです。

 

(written 2022.10.19)

2022/10/19

砂漠のブルーズでここまでロックにカッコいいものってありましたっけ 〜 ティスダス『Yamedan』

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(1 min read)

 

TisDass / Yamedan
https://open.spotify.com/album/2zKhH3BwA1tRA1h11ZH9V0?si=gNSamefgS_W2273wao5j6w

 

そいで、ティスダス(ニジェールのトゥアレグ・ギター・バンド)、こっちのほうがもっといいぞっていうのは間違いないとぼくも思うデビュー・アルバム『Yamedan』(2015)のこともちょこっと手短に。くわしいことはbunboniさんのブログをごらんください。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-09-08

 

もう1曲目からキルジャテ・ムサ・アルバデのトゥアレグ・ギターが炸裂し、極上の快感。そのまま4曲目らへんまで熱く疾走。特に4「Yhabiti Yamiditine」でのソロなんか、エッジの効いた鋭角な音色でそりゃ激しく燃え上がり、こ〜りゃ相当な聴きものですよ。

 

そうかと思うと、アクースティック・ギターでの無伴奏弾き語りである5曲目がグッと沈み込むようにとぐろを巻くディープさで、別な意味でめっちゃシビレます。達者なギターの腕前もよくわかる一曲で、これもいいなあ。(砂漠の)カントリー・ブルーズって感じ。ひょっとしたらこれが本作の裏白眉かも。

 

そしてなんたってラスト10曲目「Adounia」。間違いなくこれがアルバムのクライマックスでしょうね。リーダーの回転ギターがすばらしいだけでなくバンド全体でぐいぐいドライヴするさまは灼熱かつ爽快ですらあって、砂漠のブルーズでここまでロックにカッコいい曲って聴いたことありましたっけ。サイコー!

 

(written 2022.9.28)

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