カテゴリー「クリスマス」の10件の記事

2023/12/24

サマーラ・ジョイでジョイフル・クリスマス

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(2 min read)

 

Samara Joy / A Joyful Holiday

https://open.spotify.com/album/2VEsXkmIycyL3VL2vvbneU?si=6z6_Ae9yR1CYngqPE8c9sg

 

サマーラ・ジョイのクリスマスEP『A Joyful Holiday』(2023)もやわらかく楽しい音楽で、やはり無視できなかったので、書いておくことにしました。アルバム題はもちろん本人の名前にひっかけてもあるのでしょう。

 

それにしても米英などキリスト教圏では年末が近づくと毎年クリスマス・アルバムが競うようにどんどん出て、シーズン向けにとりあげる話題には事欠かないです。今年は特に豊作だったような印象があって。

 

だからクリスマスは一回だけとはいえ、やまほど出るシーズン・ミュージックも毎年一作しか書かないっていうんじゃもったいないです。去年も二つ書きましたし、今年はこれで三つめ。あきらめたものもいくつかあるんですよ。

 

サマーラの本作はわりとよく知られたクリスマス・ソングを中心に六曲。いずれも本人のお気に入りナンバーだということです。伴奏はいつものようにギター+ピアノ・トリオ。リッチでゴージャスな声がクリスマス・シーズンにはぴったりだと思います。

 

なかにはスティーヴィ・ワンダーの歌った「Twinkle Twinkle Little Me」があったり、また4「Have Yourself A Merry Little Christmas」はノラ・ジョーンズ&レイヴェイのコラボ・シングルでも歌われていましたので、聴き比べるのも一興でしょう。

 

温かくてステキな雰囲気にあふれた一作、フィジカルもあるようですし、ぼくはサブスクでじっくりなんども楽しんでいますけれど、かなり秀逸なクリスマス・アルバムになっているといえます。静かで落ち着いたジャズ・ヴォーカルでかざるクリスマスもいいもんです。

 

(written 2023.12.19)

2023/12/21

とうとうノラ・ジョーンズとレイヴェイが共演 〜「クリスマス・ウィズ・ユー」

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(2 min read)

 

Norah Jones, Laufey / Christmas with You

https://open.spotify.com/album/2cWrkknTj4squbs2aANuHp?si=nzEww7HgTsq-WIdz7GXGfA

 

ノラ・ジョーンズと共演することが夢みたいなもんだったレイヴェイにとっては、まさに念願かなってのシングルがリリースされました。それがクリスマス・シーズン向けの「Christmas with You」(2023)。レイヴェイ、うれしいでしょうねえ。

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シングルに収録された二曲は1「Have Yourself A Merry Little Christmas」がスタンダード、2「Better Than Snow」のほうはノラ&レイヴェイの共作による新曲です。後者は、あなたといっしょにすごすクリスマスは雪が降るよりもいいという内容の歌。いうまでもなくどちらも二名のコラボ演唱。

 

ヴォーカルは二名で交互に分け合い、楽器はノラがピアノ、レイヴェイは1曲目でチェロ・ピチカート(ソロもあり)、2曲目でギター。二名以外に参加ミュージシャンはまったくおらず、完璧100%のデュオです。

 

ノラのラフでルーズなヴォーカル・スタイルとレイヴェイのエレガンスが好対照で、絶妙なコラボ効果を生んでいますよね。聴き分けはだれにとっても容易なはず。いまのぼくはどっちかというとレイヴェイのファンなので、その声が流れてきただけでハッピーな気分です。

 

コラボは親密さを大切にするためにスタジオで二人きりで実施されたそう。むろん圧倒的なキャリアの差がありますから、二曲ともノラが主導権をにぎっているように進み、そこにレイヴェイが客演しているといった感じ。

 

クリスマスを静かにおだやかにすごしたいという向きには、やはりレイヴェイの声のクラシカルな優雅さがもってこいだと思えます。それがノラとのコラボで聴こえてくるんですから、例年にないうれしいクリスマス・プレゼントになりました。

 

(written 2023.11.18)

2022/12/23

クリスマス with レイヴェイ

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(3 min read)

 

Laufey / A Very Laufey Holiday
https://open.spotify.com/album/0NXOmjbsRluHO8QLpZFEBd?si=QJVktP83QWm-kIC5R_cuuA

 

毎年クリスマス・イヴにはクリスマス・ミュージックのことを書いていますが、今年は愛するレイヴェイ(アイスランド)の歌うそれで楽しみます。個人的心情ではレイヴェイ・イヤーでしたし、じっさい大きくブレイクしたし、愛好度もいちじるしく増したというわけで。

 

レイヴェイがこないだリリースしたクリスマス・ソングは「ザ・クリスマス・ウォルツ」(2022)。最初これ一曲だったのが、その後カップリング・ナンバーも追加されました。曲はフランク・シナトラのためにサミー・カーンとジュール・スタインが書いた、初演は1954年のシングルB面。その後スタンダード化しました。

 

レイヴェイの「ザ・クリスマス・ウォルツ」は、まずじわっと入ってくる瀟洒なストリングス・サウンドではじまります。弦楽は最初と最後に出てきていろどりを添えていますが、データがないのでどこのオーケストラかなんてことはわかりません。

 

ただいま(11月)欧州ツアーのまっただなかでレイヴェイがこれをリリースできたということは、あるいはひょっとして(わからないけど)故郷レイキャヴィクのアイスランド交響楽団という可能性があるかもしれません。10月末に同地で共演コンサートを行ったばかりですし、そのとき実家にしばらく滞在していたようですから。

 

レイヴェイのライヴはほぼ常にひとりでの弾き語り中心で、ときたまサポート・メンバーがつくケースがありはするものの、いずれにしても「ザ・クリスマス・ウォルツ」で聴けるような大規模弦楽と行動をともにするチャンスはほとんどありません。いつも陰キャなベッドルーム・ポップっぽいのがレイヴェイ。

 

「ザ・クリスマス・ウォルツ」だって、弦楽が聴こえていない時間はやはり弾き語りで、自室で録音したような響きを中心に構成されていますよね。終盤こどものヴォーカル・コーラスと、しめくくりにそのまま「メリー・クリスマス!」とみんなで元気に叫ぶ声が入っています。

 

カップリングの「ラヴ・トゥ・キープ・ミー・ウォーム」は2021年12月にシングル・リリースされていたものをそのまま流用。ドディーとのデュオ・ヴォーカルで、こっちもチャーミングです。やはり季節感ピッタリな冬の歌ってことで選んだのでしょう。

 

(written 2022.11.20)

2021/12/24

レイジー&ブルージーなクリスマス 〜 ノラ・ジョーンズ

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(4 min read)

 

Norah Jones / I Dream of Christmas
https://open.spotify.com/album/60SJnVimx7BPaZz2nec9vO?si=fIGnAk3dTUG3aO08JR2unA

 

数日前にノラ・ジョーンズの新作アルバム『アイ・ドリーム・オヴ・クリスマス』(2021)がリリースされました。キリスト教圏の音楽界では定番のクリスマス・アルバムで、この文章を書いているのはまだそのムードのない10月中旬ですけれど、リリースされたばかりのホットな時期に書いておいて、イヴの日が来たら上げましょう。

 

有名クリスマス・キャロルと、先人ポップ歌手が歌ってきたクリスマス・ソング・スタンダードに、このアルバムのためのノラの自作新曲も数個まじえ、おなじみブライアン・ブレイドを中心とするジャズ・バンドがアクースティックな伴奏をつけています。

 

ノラのヴォーカルについてはスモーキーという形容詞がよく使われるわけですが、個人的にはそれをブルージーと言いかえてもいいように前から感じています。ジャジーというよりもブルージーあるいはソウルフル、それがぼくの実感。

 

ピアノ演奏もそんなタッチですし、ヴォーカル・スタイルもあわせ、ひとことで言ってレイド・バックしている、それがノラです。くつろいでいると言っても同じことですが、なんだかちょっと酔っ払いがグダグダとろれつのまわらない、だらしない様子をみせているような、ノラの音楽はそんなフィーリングに聴こえるんですよね。

 

いい意味でダルで気怠いリラックス・ムードをノラのピアノ・タッチにもヴォーカル・スタイルにも感じてきて、それをブルージーさとぼくは表現しているわけですが、今回のクリスマス・アルバムでもそんな持ち味は不変です。クリスマス・アルバムというと華やかでにぎやかなものが多いかもしれないですが、ノラのこれはだいぶ印象が違いますね。

 

だからなんというか日常の生活感覚に根ざしたような、よそ行きじゃない普段着の、人間味のある音楽を、今回もやっぱりノラは聴かせてくれているなと思います。たとえば2曲目「クリスマス・ドント・ビー・レイト」で聴けるホーン・セクションのこの気怠そうでブルージーなグリッサンド・フレーズの決めかたなんか、もうねえ。アレンジはそれをかなり意識したと思います。完全なるリズム&ブルーズ・クリスマスでしょう。

 

4曲目のおなじみ「ホワイト・クリスマス」とかではばっちりジャジーに決めているノラとバンドですが、エルヴィス・プレスリーが歌った6曲目「ブルー・クリスマス」では、またしてもレイド・バックしたブルージー・ムード満開。ピアノのフレイジングにもファンキーなタッチが目立ちます。

 

9曲目の「ウィンター・ワンダーランド」が本作収録曲のなかでは最も有名なクリスマス・キャロルでしょう。ノラはふだんの姿勢をくずさず、やはりやや仄暗くスモーキーな発声で自身の世界に引き寄せているのがいいですね。決してクリスマスらしい祝祭ムードじゃありませんが、こういうのもまたよし。

 

ローリング・ストーンズのキース・リチャーズもソロでやった11曲目「ラン・ルドルフ・ラン」は、なんとラテン・ブルーズなクリスマス・ソングになっています。コンガなどパーカッションの音が聴こえますが、それもブライアン・ブレイドかもしれません。ピアノが短い定型リフを反復しつつ、ソウルフルなオルガンもまじえ、ブルーズ・リック満載でノラが歌うのも、快感です。

 

(written 2021.10.17)

2020/12/24

コロナ時代のクリスマス・ソング 〜 アイオナ・ファイフ

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(4 min read)

 

Iona Fyfe / In The Bleak Midwinter (Scots)

https://ionafyfe.bandcamp.com/track/in-the-bleak-midwinter-scots

 

今年もそろそろクリスマス記事を書きたいなと思っていたところ、ちょうどきょうの正午に一通のメールがBandcampから届きました。アイオナ・ファイフ(スコットランド)のニュー・シングル「イン・ザ・ブリーク・ミッドウィンター(スコッツ)」リリースのお知らせです。上掲バンドキャンプのページでストリーミングやダウンロードできます。ぼくは1ポンドで買いました。

 

そう、そうなのでした、昨晩だったかな、アイオナは自身の各SNSアカウントで、明日朝ちょっとした一曲をリリースします、それはクリスマス・キャロルなんですよ、と告知してくれていたのでした。それで、それが公開されたというメールが(日本時間の)今昼バンドキャンプから来たわけですね。

 

「イン・ザ・ブリーク・ミッドウィンター」は英国の古典的クリスマス・キャロル。クリスティーナ・ロセッティが1872年に書いた詩にもとづくもので、メロディはその死後にグスターヴ・ホルストが書いたものがスタンダード。

 

アイオナはそれをスコットランド語に翻訳し、オリジナルにない三連目のヴァースもくわえて、あたらしいスコッツ・クリスマス・キャロルとして生まれ変わらせていますよね。スコットランド語がさっぱりなぼくですけど、バンドキャンプのページに歌詞が掲載されているので助かります(でも音で聴いたほうが英語に近いような)。

 

多くのクリスマス・キャロルは宗教的なおごそかさに満ちていて、当日に教会で静かに過ごす際のBGMとしてふさわしい雰囲気を持っていますが、そこは無宗教のポップ・ミュージック・ファンなぼくですから、にぎやかで派手な感じに解釈されたものをいままでの人生で楽しんできたわけです。

 

クリスマスが楽しくにぎやかなイベント、というのはキリスト教観点からしても、いいと思うんですよ。そういうふうに布教した、世界にひろめたと思いますし。実際、ポップ歌手がやる楽しげなクリスマス・ソングを人生でたくさん聴いてきました。それで気分が上がればオッケーと思うんですね。

 

ところが、今年は全世界的なCOVID-19パンデミック。大勢が近距離で集合したりすることは避けなければなりません。キリスト教圏で今年のクリスマスをどう過ごすのか、どんなプランが立てられているのか、まったく知りませんが、やはり例年どおりとはいかないでしょう。

 

そんなわけで、陰鬱で暗くつらかった今年のクリスマスには、派手でにぎやかでポップなクリスマス・ソングよりも、宗教的に敬虔な、静かでおごそかで、じっとひとりで部屋のなかで過ごすような、そんな様子にぴったり似合う「イン・ザ・ブリーク・ミッドウィンター」みたいなクリスマス・ソングがいいかも。

 

ましてやそれが愛するアイオナ・ファイフの歌で聴けるんですから、もはやこれ以上なにを求めようというのでしょう。今年のぼくにとっては、ピアノ一台の伴奏で歌うアイオナのこの「イン・ザ・ブリーク・ミッドウィンター」こそが最高のクリスマス・プレゼントです。

 

ありがとう、アイオナ、ぼくのサンタ。
xxx

 

(written 2020.12.4)

2019/12/24

ヒバ・タワジでクリスマス

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https://open.spotify.com/album/1XaS1MuxlxF1UJFpQLMym2?si=VXDmbirhT2CHoVZjVaIbdQ

 

キリスト教は中近東地域発祥です。現在アラビア語がひろく通用しているエリアでは全体的にイスラム教徒ばかりかというとそんなこともないんです。少数とはいえキリスト教徒だって現在でもいますよね。レバノンの歌手ヒバ・タワジが2017年にクリスマス・アルバム『ハレルヤ』をリリースしたのには、たぶんそんな文化背景と、もうひとつは世界的に活躍しているヒバだからマーケットのことを考慮したという面もあったんじゃないでしょうか。さらに、いまやクリスマスは宗教の枠を超えた大きなイベントになっているからでもありましょうね。

 

ヒバ・タワジの『ハレルヤ』、現地では2017年に CD が発売されていて、それと同時に日本でも Spotify などストリーミングで聴けるようになっていましたのでぼくも親しんでいましたが、エル・スールさんに入荷したのは今2019年初頭。そのころぼくはまだフィジカルをどんどん買っていたので、ヒバのこれも買いました。それでようやく今年のクリスマスにあわせてこの文章を書いているというわけです。

 

ヒバの『ハレルヤ』、全12曲(Spotify のでは11曲)のなかには欧米などキリスト教世界で人気のクリスマス・キャロルが多くあります。2「ジングル・ベルズ」、4「サイレント・ナイト」などは日本でも知らぬひとはいませんが、ほかにも5「ガッド・レスト・イェ・メリー・ジェントルメン」、6「オ・カム・オール・イェ・フェイスフル」、7「ハーク!ザ・ヘラルド・エンジェルズ・シング/グローリア」もキリスト教会ではスタンダードです。

 

ちょっとした変わり種は Spotify のには収録がない(なぜ?)8曲目でしょうか。CD の裏ジャケットにはアラビア語題の下に「オ・モスト・ワンダフル・クリスマス」などと英語題の記載がありますが、これはジャズ・サックス奏者ジョン・コルトレインなども得意とした世俗のポップ・スタンダード曲「マイ・フェイヴァリット・シングズ」にほかなりません。ウサマ・ラハバーニとヒバはクリスマス体裁にしてここに収録しているというわけですね。といってもぼくにアラビア語はわかりませんからピンときていないんですけど、どうして「マイ・フェイヴァリット・シングズ」が選ばれたのでしょう。

 

たぶんそれはヒバの資質をウサマも考慮したということかもしれないですね。ヒバはオペレッタみたいなのが得意中の得意で、ドラマティックな歌唱がサマになる歌手です。「マイ・フェイヴァリット・シングズ」の初出はみなさんご存知のとおりロジャーズ&ハマーシュタイン作のミュージカル『サウンド・オヴ・ミュージック』。ジュリー・アンドルーズ主演で映画にもなりました(たぶんこれが最有名)。ミュージカル、つまりオペレッタですよね。

 

そういえばアルバム『ハレルヤ』のなかでも、この8曲目ではけっこう大きくもりあがる劇的な歌いかたをヒバはしているなと思うんです。もとがミュージカル・ナンバーなだけに、クリスマス・ソング仕立てになってはいても、ここは本領発揮とばかりにグイグイ迫る迫力の歌唱でヒバは歌い込みます。ウサマのオーケストレイションも派手な感じになっていますよね。

 

言いかえれば、このアルバムにある8曲目以外のものでは、ヒバはふだんの持ち味をグッと抑え、控えめで抑制の効いた落ち着いた静かめのフィーリングで歌っているなと感じるんですね。ウサマのアレンジも同様で、両者ともふだんアラブ歌謡をやるときとはやや様子が違っていますよね。たぶんクリスマス・アルバムだからでしょう、派手さよりも宗教的な敬虔さ、厳かさを前面に出すことを意識したんじゃないでしょうか。

 

おかげで、ヒバやアラブ歌謡の(ばあいによってはトゥー・マッチと感じるかもしれない)あの濃厚でグリグリとした派手な世界から少し距離を置いているなと感じないでもないです。それでもヒバの声に常時漂っている微妙な震え、振動、揺れはアラブ歌手特有のものですけれども、だからやっぱりアラブの歌手だなとはわかるんですけれども、それでもアルバム『ハレルヤ』では聴きやすい身近なフィーリングを獲得できているととらえることができますね。

 

なお、このアルバムに収録の、上で書いたキリスト教世界で知られているクリスマス・キャロルでは、ヒバは一部の歌詞を英語でも歌っていますね。そのほかの曲をふくめ大部分はアラビア語で歌っていると思います。有名クリスマス・キャロルやスタンダード・ナンバー以外は、このアルバムのための書き下ろしかもしれません。

 

(written 2019.12.16)

2018/12/24

ささやかなジェリー・クリスマス

 

 

ドブロ・マスター、ジェリー・ダグラスの手がけたクリスマス・アルバムが今日の話題。ドブロ(Dobro) とはリゾネイター・ギターのブランド名。リゾネイター、すなわち反響板をギターのボディにつけて音量増幅を狙うべく開発されたもの。ふつうのアクースティック・ギターは音の小さい楽器だからさ。第二次世界大戦前のアメリカのギター・ミュージックでは、ナショナル社製のものとあわせ、リソネイター・ギターはよく使われた。木製ボディと金属製ボディとがある。

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音量増幅は、その後電気でできるようになりエレキ・ギターが爆発的に普及したので、この目的だけでドブロでもナショナルでもリゾネイター・ギターを用いる意味はなくなったし、現実、そんな弾き手はいなくなったと思う。しかしいまでもドブロを弾くギタリストが絶えないのはレトロ感と、あとはやっぱりひとえにその独特の音色のおもしろさ、美しさにあるんだろう。特にスライド・バーで演奏したばあいなど、えもいわれぬ妙味をかもしだす。ジェリー・ダグラスもまた、そんな魅力にとりつかれたひとり。

 

 

ジェリー・ダグラスはドブロしか弾かないというわけじゃない。いろんなアルバムでほかの各種ギターなども演奏しているが、やはりこのギタリストの特色は当代随一のドブロ弾きという点にある。本当に美しく弾くんだよね。ジェリーの弾くドブロ・サウンドを聴いていると、たとえばスライド・プレイなどでも、うっとりとして時間を忘れて聴き惚れ、ほうけてしまう。それほど美しいギター・トーンなのは、2009年のクリスマス・アルバム『ジェリー・クリスマス』でもよくわかっていただけるはずだ。

 

 

『ジェリー・クリスマス』の全12曲中、ジェリーの自作曲は11「マウイ・クリスマス」(Spotfy にあるのだと「マウイ」とだけの記載)だけ。ほかは伝承的なクリスマス・キャロルや他作のクリスマス・ソングなどを、ほぼどれもインストルメンタル演奏のみで仕上げている。例外的にヴォーカルが入るのは、4「ニュー・イヤーズ・イヴ」、6「サンタ・クロース・イズ・カミング・トゥ・タウン」だけ。後者はマイケル・ジャクスンも歌ったよね。

 

 

この二曲以外は、すべてドブロを中心とするギターが主役のストリング・アンサンブルでひた走る。エレキ・ギターが聴こえたりもするが例外で、ほぼアルバム全編がアクースティック・サウンドで占められているのもクリスマスの雰囲気をいい感じに表現できている。キリスト教のミサの敬虔でおごそかな感じも出せているし、また宗教関係なくアメリカン・ギター・ミュージックの世界に興味をお持ちのかたなら楽しめる音楽作品だ。

 

 

楽曲や演奏内容の解説は今日は不要と判断する。有名曲でも無名曲でも、伝承ものでも個人作でも、ジェリー・ダグラスがひたすらていねいに、美しく、ドブロなど各種ギターをていねいに奏でているのに身を任せればそれでいい。つまり、ジェリーはオーヴァー・ダブで音を重ねてある。ひとりギター・アンサンブルと言いたいところだけど、『ジェリー・クリスマス』にはもう一名のギタリスト、ガスリー・トラップも参加している。6曲目「サンタが街にやってくる」ではガスリーしか弾いていない。ジェリーは Scary Vocal とのクレジット。この声がジェリーなんだね。

 

 

ベース奏者はほぼ全曲で参加。ドラマーはいたりいなかったり。それからヴァイオリンだね、かなりいい感じなのは。ルーク・ブラ(Luke Bulla)という名前がクレジットされている。美しい演奏だ。ぼくはやっぱりジェリーの、ドブロを弾く、それもスライド・プレイに耳をそばだてるのだが、それの次にうっとりするのがルークのヴァイオリンだなあ。きれいだ。それ以外ことばがない。クリスマス時期の、寒く引き締まったキリリとする空気感もよく表現できているように思う。

 

 

特にアルバム7曲目「イン・ザ・ブリーク・ミッドウィンター」と8「クリスマス・タイム・イズ・ヒア」のあたりの美しさは筆舌に尽くし難い。ハッと息を飲むようなクールな輝きがあるんじゃないだろうか。ジェリーのドブロ・サウンドがなんたってすばらしいが、ルークのヴァイオリンだって見事。テンポ設定含むアレンジ全体もかなりいい。

 

 

アルバム唯一のジェリー自作曲、11「マウイ・クリスマス」だけ、バンド編成ではなく、ジェリーがひとりですべての楽器をこなしたワン・マン多重録音トラックとなっている。なぜマウイなのか?音楽的にハワイアン要素があるか?というと、やはりあるように聴こえるね。チューニングの異なる各種ギター類楽器をジェリーは演奏して重ねてあるが、そのアンサンブルにはハワイのスラック・キー・ギター音楽のあの独自の色彩感があると思うんだ。

 

 

ハワイアン・ギター・クリスマスの次の、アルバム『ジェリー・クリスマス』の終幕は、3/4拍子にアレンジした「ベツレヘムの美しい星」。クリスマス・ソングだけど、ジェリーのこのアルバムのなかでは唯一ダンサブルなフィーリングに仕上がっていて、とてもいい。キリスト教の関連があるのかないのか、ヨーロッパのフォーク・ダンスっぽいワルツに解釈してある。しんみりとおだやかに、でも陽気に楽しく、クリスマスのお祝いをしましょう。

2017/12/24

レイディ・サンタからのプレゼント 〜 ハッピー・クリスマス 2017

 

 



サンタ・クロースはきっといるんだと僕は思う。正確には、いるのかいないのか科学的に証明できない。実証できないことについては、どうだか分らないとして判断を保留するのが理性的な態度というものだろう。サンタ・クロースなんてガキのものじゃないかと大人は笑ってバカにするかもしれないが、それは冷静でロジカルな姿勢じゃないのかも。

 

 

少なくとも僕にとっては音楽の贈り物があるるんだもんね。毎年毎年楽しいプレゼントがある(ってか自室にて自分で掘り起こして聴くわけだけど)。今2017年のクリスマスは、いちばん上でご紹介した Spotify のプレイリストが僕へのクリスマス・プレゼントだ。届けてくださったのはしぎょういつみさん。もちろんこれは公開されてあるプレイリストなので、しぎょうさんはみんなにこのクリスマス・プレゼントを配ってくださっている。立派なレイディ・サンタ・クロースじゃないか。みなさん、ちょっと聴いてみて、このクリスマス・ポップ・ソング集を。

 

 

 


これはポップ・フィールドにある曲ばかりなので、純宗教的な分野にある賛美歌などはない。クリスマスをテーマにしたもののなかから、あくまでポップ・ソングに限定し全30曲をチョイスしてある。ふつうの(ジャズっぽい)ポップス、ロック、ソウル、カントリー、ラテン、アイリッシュ、ポルカまで、彩り鮮やかで、本当に楽しい。色彩感の豊かさはまるでオーナメントがたくさん付いたクリスマス・トゥリーを眺めているような気分じゃないか。

 

 

もちろんいろんな曲があって、たった一人ぼっちのクリスマスに、だれかを、 なにかを思い出しているようにシンミリしていたり、社会的なメッセージを投げかけたり(サンタ、貧民街へ行け)、バック・ドア・サンタ(意味は調べてね)になったり、刑務所で過ごすクリスマスや、最悪のクリスマスだと嘆いたり、クリスマスにその誕生を祝福される人物は社会的反逆者だったんだからと言って、資本社会の深い問題を突いたり、などなど。

 

 

それでもまずは賑やかで楽しいキンクスの「ファーザー・クリスマス」で幕開け。ダンサブルでいいね。まるでクリスマス・パーティで騒いでいるような気分だ。ファズの効いたエレキ・ギターが派手に鳴って、僕、こういうの大好きだ。次がビーチ・ボーイズだが、三つ目のジョニ・ミッチェル「リヴァー」で僕はシンミリ。これはたぶんロスト・ラヴ、ロスト・ホームのクリスマス・ソングだよね。ピアノだけで弾き語るジョニの声は陰影に富み、シットリしてていいなあ。寂しい曲だということはちょっとおいておこう。音楽美の話だ。

 

 

ジョニの「リヴァー」が収録された『ブルー』のことを僕もどれほど好きかってことは今日の話題に関係ないので、また来年にでも。しかしこのプレイリストで三つ目にこれが流れてきたとき、僕は本当に聴き入っちゃって、う〜ん、このころこうやって歌うジョニってマジで素晴らしかった、美しかったと、いまさらながら惚れなおしたんだよね。ジャコ・パストリアス時代もいいけれど、『ブルー』はマジで美しい。

 

 

こんな調子で全曲書いていくわけにはいかないので、かいつまんで。6曲目のパティ・ペイジ「ブギ・ウギ・サンタ・クロース」と14曲目のドリス・デイ「シルヴァー・ベルズ」が、僕の個人的音楽趣味からすればいちばんの好物。パティ・ペイジのやつは中村とうようさん編纂のクリスマス・ソング・アンソロジーにも入っているので、みなさんご存知のはず。もともとアメリカでは「テネシー・ワルツ」SP の B 面だった。

 

 

ジェイムズ・ブラウンのやダニー・ハサウェイのやつも楽しいが飛ばして、9曲目、盲目の歌手ホセ・フェリシアーノが歌う「フェリス・ナビダード」。スペイン語で「メリー・クリスマス」の意だが、ホセは英語もまぜて歌っている。軽いラテン調があって、ホーン・アンサンブルも楽しいオール・アクースティック編成での演奏。

 

 

個人的にもっとよかった、というかこんなにチャーミングな歌手だっけ?と新鮮な発見だったのが、続く10曲目のオリヴィア・ニュートン・ジョン「クリスマス・オン・マイ・レイディオ」。声がさぁ、ほっんと〜っにカワイイんだよ〜。いままでルックスばかりチャーミングだとか見ててごめんなさい。三連のダダダ、ダダダというリズム・パターンに乗ってオリヴィアが可愛く、そしてちょっとセクシーに、さらにソウルフルなフィーリングすら持って歌うクリスマス・ソングだ。曲終わりでの “turn up the radio” に続く「ンン〜」でやられてしまいました。好きです、オリヴィアさん(って、だれのことでも好きなんやな、戸嶋くんは)。

 

 

ポルカでやる11曲目ジム・リーヴズ「ザ・メリー・クリスマス・ポルカ」も楽しい。間奏で左チャンネルからアコーディオンが聴こえる。ジム・リーブズはナッシュヴィル・サウンドでやるカントリー畑のアメリカ人歌手だけど、北米だけでなく中南米でも、ヨーロッパ大陸から入ってきたポルカは非常に重要な役割を果たしていた。ロックだってショーロだってそうなんだよ。

 

 

「毎日がクリスマスだったらいいのに」と歌うウィザードのグラム・ロック(っぽくなくて、オールド・ロックンロールみたいだが、この曲は)な13曲目もいいし、15曲目のイーグルズもイイ。イーグルズの「プリーズ・カム・ホーム・フォー・クリスマス」は、これまた三連パターンのリズムに乗って、歌っているのはたぶんグレン・フライかなあ?そんな声に聴こえるけれど、違っているかもしれない。

 

 

16曲目のポーグズはアイルランドとイギリス合体のケルト・ロック・バンド。でもここでカースティ・マッコール(でいいの?Kirsty の読みは?)を迎えてやる「フェアリーテイル・オヴ・ニュー・ヨーク」は、カースティが出る直前からトラディショナルな6/8拍子のアイリッシュ・ジグになる。このリズムはアメリカのゴスペルやリズム&ブルーズやソウル・ミュージック、さらにアフリカ音楽にも多い。

 

 

18曲目ジェスロ・タルのクリスマス・ソングのことは、僕も昨年、一昨年とクリスマス記事で書いたので省略。とにかく大好きです、僕は、あのタルの『クリスマス・アルバム』がね。ラテンな20曲目のことにもちょっとは触れておこう。グラン・コンボのクリスマス・ソング集から一曲目の「ノ・アイ・カーマ・パ・タンタ・ヘンテ」。エネルギッシュなサルサで賑やかなクリスマスになっていいね。みんな来ちゃって寝る場所ないよって歌だ。

 

 

あぁ、大好きなジャクスン5のや、いままでそれほどでもなかったが聴いてみたら好きになったゾンビーズのや、ザ・バンドのや、また上のほうでも触れたがシリアスに社会問題を突くジャクスン・ブラウンの「ザ・レベル・ジーザス」や、そんなこんな、書いている余裕がないよ。

 

 

とにかく楽しい音楽クリスマスになりました。しぎょういつみという名のレイディ・サンタさん、本当にありがとう。

 

2016/12/24

Merry Christmas To You All !

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去年のクリスマス・イヴも同じものの話をしたじゃないかと言わないで。一応内容が違うので。上掲写真左も微妙に違うのだ。

 

 

ジェスロ・タルの『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』がリリースされたのは2003年。それから五年後の2008年にロンドンのセント・ブライズ教会(英国国教会)でタルがやった音楽を含むクリスマス・サーヴィスの模様が録音され、元の2003年盤とあわせ二枚組で2009年にリリースされている。スタジオ録音盤は既に持っているわけだから、ライヴ盤だけ一枚物で出してくれたら一番よかったんだけどね。

 

 

2009年リリースの二枚組『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』の二枚目の方は『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 というタイトルになっている。この2008年のクリスマスに行われたライヴ・コンサートを含むサーヴィスの主な目的はチャリティで、ロンドンのホームレスを経済的に支援しようという慈善企画だった。

 

 

ということが、2009年盤『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』の二枚目『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 に寄せてイアン・アンダースン自身が書いた説明文にある。なんだかちょっと高尚というか非常に格調高い英文で、読むのにちょっぴり苦労した僕の英語力の貧しさよ。

 

 

ジェスロ・タルの『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 は全17トラックで計1時間4分ほど。しかしそれらは全てがいわゆる「音楽」ではない。これは音楽コンサートというよりも慈善目的のクリスマス・サーヴィスの実況録音盤なので、タルの連中が演奏しない朗読みたいなトラックが複数ある。

 

 

ただ詩の朗読をやっているあいだでも、バックで楽器伴奏や聖歌隊の声が小さく入ったりもするので、音楽的要素がゼロだとも言い切れないし、それにそもそも英国はバラッドの伝統がある国だ。そうでなくたってそもそも声に出して読み上げる文学と音楽とのあいだに厳密な境界線は引けないだろう。古代ギリシアの詩人ホメロスの叙事詩にも楽器伴奏が付いた。あの時代、文学は「読む」ものじゃなく「聴く」ものだった。印刷技術はおろか、紙すらもまだない。

 

 

それに文学、特に詩が声に出して読み上げられる時には、しばしば抑揚が付いてメロディアスになり、さらに韻律を伴う場合が多いので、リズミカルにもなるものだ。この音楽化する文学という方向性だけでなく、その逆、すなわち音楽作品が高度な文学的意味合いを帯び、そういうものとして評価される場合もあるのは、今年ボブ・ディランが証明したばかりじゃないか。

 

 

ともかくジェスロ・タルの『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 には詩の朗読と、さらにタルの連中はおそらく演奏に全く関わっていない、聖歌隊だけの賛美歌合唱がいくつもある。それらとさらにセント・ブライズ教会の牧師がサーヴィスを執り行う様子もちょっぴり収録されている。

 

 

とはいえ『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 、一応はジェスロ・タルを迎えて、彼らのやるクリスマス・ミュージックを楽しみ、参加者から少しずつ募金を集めてロンドンのホームレス支援に充てるというものなので、やはり七割程度は、普通のいわゆる音楽だ。

 

 

『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 収録のジェスロ・タルによる演唱は、全部で10トラック。殆ど全て先行する2003年の『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』で披露されていたレパートリーだが、二つだけそれには含まれていない曲がある。一つは4トラック目の「リヴィング・イン・ジーズ・ハード・タイムズ」。1978年の『ヘヴィー・ホーシズ』2003年盤のボーナス・トラックだったもので、特段クリスマスとは関係ない。

 

 

おそらくは慈善目的、しかも経済的に厳しい状況に置かれているホームレス支援、そしてそうでなくても日々過酷さを増す昨今の経済状況を鑑みて、「リヴィング・イン・ジーズ・ハード・タイムズ」がチョイスされたんだろう。曲がはじまる前にイアン・アンダースンがそんな意味のことをちょろっと喋って曲紹介している。

 

 

もう一つは『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 のラスト17トラック目でメドレーの最後に演唱される「シック・アズ・ア・ブリック」だ。これはジェスロ・タルを聴くファンのみなさんには、いやそうでなくたって UK ロック・ファンであればみんな知っている有名曲だから、説明不要。

 

 

ジェスロ・タルが演奏するものでは、これら二曲以外は全て2003年の『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』でやっていた曲ばかり。それらの『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 ヴァージョンとの最大の違いは、ドラムスの演奏が完全にゼロであることと、電気楽器も完全にゼロであること。

 

 

つまり『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 はドラム・セット抜きで完全フル・アクースティックなクリスマス・ミュージックなのだ。前作のクリスマス・アルバムでドラムスを叩いていたドーン・ペリーは既におらず、代わってジェイムズ・ダンカンが参加しているが、ドラム・セットは全く叩かず、カホンなどパーカッション各種を担当している。

 

 

またベーシストもジョナサン・ノイスからデイヴィッド・グディアーに交代しているが、デイヴィドもエレベではなくアクースティックな(おそらくギター型の)ベースを弾いているし、ギターも『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』では効果的にちょっとだけ使われていたエレキは完全に弾かれず、アクースティック・ギター・オンリー。

 

 

鍵盤楽器とアコーディオン担当となっているジョン・オハーラは、ひょっとしてシンセサイザーなのかなと思う音を出す瞬間もあるが、そんなのは極めて稀な例外で、アコーディオンの他はほぼ全てオルガンとピアノを演奏している。あとはマーティン・バーがマンドリンも弾いたりして、その上にお馴染イアン・アンダースンのフルートが乗っている。

 

 

ジェスロ・タルが演唱する個々の曲目については、書いたようにほぼ全て2003年の『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』にあるものなので、取り立てて繰返す必要はないだろう。昨年12月24日付の僕の記事でも少しだけ書いたので、ご参照あれ。

 

 

 

ただ『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 の方は全編ドラム・レスの完全アクースティック・ミュージックなので、そしてそれは英国国教会でのクリスマス・サーヴィスとして行われたものなので、やはり雰囲気が違うのは確かだ。雰囲気を変えているのは、ジェスロ・タルによるアクースティックなクリスマス・ロックのあいだに、敬虔な雰囲気の聖歌隊合唱が挟まれているのも一因。

 

 

『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』 にあるトラディショナルなクリスマス・キャロルは五曲。2トラック目のジョージ・ピッチャー牧師の語りに続く「ワット・チア」、5トラック目の「サイレント・ナイト」、10トラック目の「オー、カム・オール・イェ・ファイスフル」、 16トラック目の「ガウデーテ」、17トラック目のメドレー一曲目「ゴッド・レスト・イェ・メリー・ジェントルメン」。

 

 

これらのクリスマス・キャロルのうち、「サイレント・ナイト」「オー、カム・オール・イェ・ファイスフル「ゴッド・レスト・イェ・メリー・ジェントルメン」の三つは日本でもよく知られているスタンダードだ。最初のものは「聖しこの夜」、二番目は「神の御子は今宵しも」、三番目は「世の人忘るな」(あるいは「神が歓びをくださるように」など)の邦題が広く普及している。

 

 

「ガウデーテ」(Gaudete はラテン語で「歓び」の意)は僕は知らない曲だけど、調べてみたら欧米のキリスト教会ではそこそこ有名なものらしい。いやあ、まあ分らない。僕はキリスト教信者ではないので。17トラック目の「ゴッド・レスト・イェ・メリー・ジェントルメン」だけは、ジェスロ・タルも2003年の『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』で既にやっていたものだ。

 

 

『クリスマス・アット・セント・ブライズ 2008』でも「ゴッド・レスト・イェ・メリー・ジェントルメン」だけは聖歌隊合唱ではなく、ジェスロ・タルの面々によるアクースティックなロック風クリスマス・キャロル演奏になっている。それ以外の四つのクリスマス・キャロルではタルは全く演奏せず、聖歌隊合唱のみ。

 

 

そのアルバム・ラスト「ゴッド・レスト・イェ・メリー・ジェントルメン/シック・アズ・ア・ブリック」は、最も長い10分以上もあるもの。ジェスロ・タルの面々によるインストルメンタル演奏がパッと止まると、イアン・アンダースンがクリスマス向けにちょこっと喋り、また演奏再開。

 

 

それも終ると切れ目なしでパイプ・オルガンが鳴りはじめ、今度は聖歌隊合唱だけで同じ「ゴッド・レスト・イェ・メリー・ジェントルメン」を賛美歌として歌いはじめる。その部分に来ると、完全なるキリスト教会でのクリスマス・ミサの敬虔な雰囲気になる。

 

 

そしてその聖歌隊合唱も終わると、またしても切れ目なしで今度はアクースティック・ギターを刻む音が聴こえはじめ、再びジェスロ・タルの演奏による「シック・アズ・ア・ブリック」に入っていくのだ。「シック・アズ・ア・ブリック」部分は非常に短く、約一分間しかない。そこはイアン・アンダースン一人のギター弾き語り。

 

 

それを終えると、イアン・アンダースン自身が「メリー・クリスマス・トゥ・ユー・オール、サンキュー!」と一言だけ、しかし大きくはっきりとした声で叫び、このクリスマス・サーヴィスは終りを告げる。

 

 

なお、2009年盤の二枚組 CD『ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム』を買うと、その収入は、避難所と食べ物などロンドンのホームレス支援のために廻ることになっていた。あるいは今でもそうかもしれない。

2015/12/24

バロックなクリスマス・ミュージックはいかが?

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他の方に比べたら、季節や時間に応じて聴く音楽を変えるということをあまりしない僕。炎天下の真夏に「枯葉」を聴き、よく晴れた早朝から「ラウンド・ミッドナイト」を聴く。だけど今夜はクリスマス・イヴだから、たまにはたくさんあるクリスマス・アルバムの中から、好きなものの話でもするとしよう。

 

 

今の僕が一番好きなクリスマス・アルバムは、英ロック・バンド、ジェスロ・タルの『クリスマス・アルバム』だ。これはるーべん(佐野ひろし)さんに薦めていただいて買って聴いてみて大正解だった。昨晩は大々的にるーべんさん批判を展開したけれど、別に僕はるーべんさんが嫌いになったわけでもない。

 

 

米英のポピュラー・ミュージックについては、僕などが足元にも近寄れないほど広く深く聴いているるーべんさん(僕の方が詳しいなんてのは、マイルス・デイヴィス関係だけのはず)だから、1995年にネットをはじめた直後に知合って以来(オフ会でも三度ほどお会いした)、別離するまで非常にたくさんの音楽を教えていただいて、今でもそれが僕の血肉になっている。

 

 

僕はあまり熱心なジェスロ・タル・リスナーではなかった、どころの話ではなく、以前なにか一つ・二つ聴いてみて、これは全然僕好みのバンドじゃないなと思って以来、放棄したまま全く聴いていなかった。『アクアラング』だったか『シック・アズ・ア・ブリック』だったかなんだったか忘れたけれど。

 

 

そもそもフルートが入るハード・ロックというのが、僕には全く理解できなかったもんなあ。フルートという楽器自体は大好きで、クラシックでもジャズでもラテン音楽でも、フルートが聞えてくると気持いいもんねえ。好きなものはムチャクチャたくさんあって、特にサルサなんかで鳴るのはたまらないよねえ。

 

 

マイルス・デイヴィス+ギル・エヴァンスの『マイルス・アヘッド』B面三曲目の「ザ・ミーニング・オヴ・ザ・ブルーズ」12秒目でフルートのアンサンブルが導入として入るんだけど、あのアルバムで僕が最も好きな瞬間の一つなのだ。あるいはスティーヴィー・ワンダーの「アナザー・スター」(『キー・オヴ・ライフ』)とかもね。

 

 

だけどジェスロ・タルの場合、ハード・ロックにフルート一本というのは、これはなんなんだろうと思っちゃった。もちろんいわゆるブラス・ロックでも全然ない(ジャズ・ファンだからブラス・ロックは好きな僕)し、ああいうサウンドをどう楽しんだらいいのか、僕にはサッパリ分らなかったんだよねえ。

 

 

だから長年全く聴かないままだったところに、るーべんさんから「ジェスロ・タルのクリスマス・アルバムは凄くいいぞ」と教えてもらって、それでも半信半疑ながらるーべんさんファンだったので信用して買って聴いてみたら、これが物凄くいいんだよねえ。あれは2003年だから、るーべんさんと完全に決裂する直前だなあ。

 

 

『クリスマス・アルバム』は、2003年の作品にしてジェスロ・タルの最後のスタジオ・アルバムになる。僕の世代は、ハロウィンには全く馴染がなかったけれど、クリスマスは当然子供の頃から親しんできて、いろんなクリスマス・ソングも知っているし、大学生の頃からはキリスト教会に行くこともある。

 

 

しかしジェスロ・タルの『クリスマス・アルバム』には、僕ら日本のキリスト教徒ではない音楽ファンが知っているような有名曲は殆ど入っていない。五曲目の「ガッド・レスト・イェ・メリー、ジェントルメン」と、11曲目の「グリーンスリーヴド」だけじゃないかなあ、聴く前から僕が知っていたのは。

 

 

それ以外は、伝承曲かJ・S・バッハやフォーレによるクラシック作品か、それ以外は全部イアン・アンダースンのオリジナル・ナンバーだ。それが最初に聴いた時からもう大変に心地よくて、アルバム全編通して一貫した雰囲気があって、しかもちょっとエレキ・ギターが出てくる他は、アクースティック風。

 

 

メインがアクースティック・ギターだし、マンドリンなども聞え、派手なドラムスは入らず控目で、ベースはエレベだけれど地味だし、シンシンと雪が降るようなクリスマス・イヴにピッタリの静謐な雰囲気の音楽だから、2003年に初めて聴いた時も気に入ったけれど、僕の最近の音楽趣味にピッタリだ。

 

 

イアン・アンダースンのフルートをフィーチャーするインストルメンタル曲もいくつかあって、なんて上手いフルート奏者なんだ、ひょっとしたらこの人はあらゆる音楽ジャンルを通じて現代最高のフルート奏者なんじゃないかと思うくらいだった。みなさんご存知らしく、僕は気付くのがなんとも遅すぎた。

 

 

あの『クリスマス・アルバム』は全編を通して、バロック音楽風だ。これはJ・S・バッハの曲(15曲目)をやっているせいだけじゃなく、プロデュースも務めるイアン・アンダースンの音楽的意向だったはず。それに沿って、従来からのオリジナル曲や伝承曲などのアレンジも創り上げたはず。

 

 

だからアルバム・ジャケットみたいに雪が降り積る中世の城みたいな風景によく似合う音楽(つまり、このアルバム・ジャケットは中身の音楽にピッタリだ)で、こちら愛媛県では今日は快晴でポカポカだったので、ちょっと似合わないような気もするけれど、聴直してみたら、やっぱりこれは最高のクリスマス音楽だね。

 

 

これをるーべんさんに教えてもらって聴いて最高に気に入って以来、イアン・アンダースンとジェスロ・タルのことを考え直して、CDで買い直して聴くようになった。全く聴いていなかったイアン・アンダースンのソロ・アルバムも、書いたように現代最高のフルート奏者だと思うから、買って聴いて気に入った。

 

 

イアン・アンダースンのフルートも、キレイな音ばかりではなく、時々ブワ〜〜ッと震えるというかちょっと音が濁るような瞬間があって、やはりフルートでも濁った音が好きだという、歪み音大好きな性分の僕。声と一緒に出しているように聞える瞬間もあり、大好きなジェレミー・スタイグを思わせることもある。

 

 

みなさんよくご存知のスタンダードなクリスマス・ソングをやっているものでは、フィル・スペクターの1963年『ア・クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター』が一番好き。こっちはポピュラーな曲ばかり。僕はフィル・スペクターのいわゆるウォール・オヴ・サウンドの大ファン。

 

 

でもまあフィル・スペクターのクリスマス・アルバムの方は、本当に有名曲ばかりだから、最高に楽しいけれど、新鮮さや目新しさは全くない。それに比べてジェスロ・タルのクリスマス・アルバムの方は、今聴いても新鮮だし、バロックな雰囲気がクリスマス・イヴにはピッタリだし、言うことないね。

 

 

ちょっとケルト音楽風なニュアンスも感じるジェスロ・タルの『クリスマス・アルバム』。大変素晴しいから、お聴きでない方も是非聴いてみてほしい。やはり元々はケルト文化であるハロウィンにも、こういう素晴しい音楽アルバムがあれば、僕などももっと楽しめるのになあ。
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